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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第九章:資格者達は玉座を目指し、その命は最後の輝きを見せる
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殺人鬼の仮面


「な、なんだ!?」

「爆発か!?」


「9」が「6」を倒す為に起こしたビルの崩落

その激しい衝撃音は、スカイツリー西側方面で戦闘状態にあった多国籍軍と接続者達

南側方面にある暗殺課の前線基地まで響き渡る


そして、その音と同時に通信機に向かって叫ぶ男の声・・・


「どうした!? 今の音は何だ!? 応答しろ! 「6」!!!」


それは暗殺課を裏切り、「6」に「4」と「9」の始末を命令していた男

暗殺課副課長、飛山の声だった


「6」は誰にも知られず秘密裏に行動を起こす為、暗殺課の通信を妨害する「認識阻害」の能力を使っている

しかし、先程の衝撃音と同時にその通信妨害が消え去っていた。それが意味する事は、つまり・・・


「まさか・・・「6」が敗北したのか・・・!?」


そう、先程の衝撃音と同時に「6」は能力を維持出来ない程のダメージを負ったか

もしくは死亡したと考えるのが妥当


「くっ・・・!!!」


手駒である「6」を失った事により焦りを見せる飛山


(「6」がしくじるとは・・・! とにかく今はこの場を離れ・・・!)


そしてすぐさま、デスクの上にあった荷物をアタッシュケースに放り込むとそれを手に椅子から立ち上がる。だが・・・!


「・・・どこへ行かれるのですか? 飛山副課長」

「ッ!!!」


その時、部屋の入り口が開き一人の女性が飛山の前に立ちふさがった


「す・・・吹連・・・!」


そう、それは暗殺課課長、吹連双葉だった


焦った様子の飛山とは対照的に、吹連は落ち着いた様子で告げる


「やはり、暗殺課を裏切っていたのは貴方だったのですね? 飛山副課長」


だがその吹連の言葉に、飛山は首を傾げながら答えた


「裏切りだと? 何を言っている?」


吹連の追求に対しシラを切る飛山

だがその返答は吹連の予想通り、吹連は通信のログに残っていた音声をその場で再生する


「こちら「9」、最後に・・・私の能力を使ってこの「記録」を残す。裏切り者は「6」と奴の監査官である飛山だ・・・」

「ッ!!!」


それは「9」の声

「6」を道連れにし「認識阻害」が解除された後、通信が回復した後で再生される様残しておいた「記録」

自分が死んだ後に発動する、「最後の記録」だった


「シラを切り続けると言うのであればそれでも構いません、これから回収する「9」と「6」の行動ログを調べれば分かる事です。飛山副課長、貴方を拘束させていただきます」

「・・・」


その言葉に無言で答えた後、しばらくしてから飛山は言う


「吹連、お前はあのナンバー・「1」に勝てると思っているのか?」

「・・・どういう事です?」


飛山の意図を確かめる様にそう問い返す吹連

そんな吹連に対し、飛山は断言する


「私は不可能だと考える。人類の産み出したあらゆる兵器、そして我々の保有する暗殺者。その全てを使った所で奴を倒す事は不可能だ。貴様も見ただろう? ミサイル攻撃ですらあの男を止める事は出来ない。そんな男がオリジンすら掌握したのならば、一体誰がそんな存在を倒す事が出来ると言うのだ?」

「・・・」

「奴は言った、旧人類を滅ぼし接続者だけの世界を創ると、それは決して誇大妄想等ではない。間違いなく訪れる、人類滅亡の時だ。だが・・・たった一つだけ、人類が生き延びる手段が残されている。それが・・・」


そう語る飛山の言葉を遮り、吹連が答える


「恭順。全人類に対し、「1」に服従を近い頭を垂れろと仰るのですね?」

「そうだ。それだけが人類が生き延びる手段だ」


そう断言する飛山に対し、吹連は問いかける


「確かに、服従を誓えば「1」とて全人類を絶滅させる事はないかもしれません。ですがそれでは、人類に訪れるのは接続者達の家畜としての未来。それは絶滅よりも悲惨な結果をもたらすのではないですか?」

「それでも、生きながらえる事がが出来るのならば十分だろう。生きてさえいれば、遠い未来であっても人類に再起の機会は訪れるはずだ」


そうよどみなく答える飛山

その答えに対し、吹連はふうっと軽く息を吐くと言う


「・・・なるほど。それが貴方の「正義」と言うわけですか」

「そうだ、私は・・・」


だがその時、そう続けようとする飛山の言葉を遮り吹連は告げる


「それは嘘ですね」

「な・・・何だと!?」


動揺する飛山に対し、吹連は冷酷な目を向けながら言う


「確かに貴方の言っている事にも一理あります。ですが、それは貴方の本当の目的ではありません。貴方の目的は「保身」。全人類が「1」に恭順し、家畜となった後の世界でも、自分の地位と立場だけは保証する様、「1」にそう求めたのでしょう?」

「ッ!?」

「図星でしたか? 貴方は人類が生き延びる為と言いましたが、それは違う。貴方は全人類を差し出して自分一人の身の安全を優先した、人類の「裏切り者」に過ぎません」

「それは違う・・・! 私は人類の代表として・・・!!!」


狼狽しながらも反論しようとする飛山に対し、吹連はキッパリと告げる


「続きは査問会でゆっくりと聞かせてもらいます。今回の件だけではなく、ゾーフ襲撃やチップの横流しについても・・・」


だがその時・・・


「・・・? チップの横流しだと? 何の話だ?」

「・・・えっ?」


予想外の答えに動揺し、一瞬吹連の動きが止まる

そして・・・その瞬間!!!


「ッ!!! 吹連!!!」


チャンスだと見た飛山が懐から拳銃を抜く!


「ッ!!!」


吹連も銃を抜こうとするが、先程の動揺の分一瞬遅く・・・!


パンッ!!!


一発の銃弾が放たれた! しかし・・・!


「き・・・貴様は・・・!」


眉間から血を流し倒れたのは飛山の方・・・!

そして撃ったのは・・・


「・・・鳥羽監査官」


吹連の後ろから姿を現した「9」の監査官、鳥羽御貴だった


飛山を射殺した鳥羽は、吹連に向かって頭を下げる


「・・・申し訳ありません。罰はこの作戦が終わった後」

「いえ・・・、貴方が撃たなければ危ない所でした。重要参考人の殺害に関しては、事故として不問にします」

「・・・はい」


そして吹連は鳥羽の横を通り過ぎ部屋を出ると、部屋の外に待機していた職員達に命令する


「飛山のPCのログを徹底的に調べて。それから他の証拠もあるかもしれません、書類一枚見逃さない様に」

「はっ!」


その言葉と同時に部屋に踏み込む職員達

それを確認すると、吹連は部屋の中に立ち尽くす鳥羽の背中に向かって声をかける


「・・・鳥羽監査官。「9」が倒れた為、貴方はしばらく待機です。個室で休養を取るように」

「・・・了解しました」


背を向けたままそう答える鳥羽

それを聞くと吹連はその場から立ち去る。その途中・・・


「聞こえているわね・・・?」











その頃、「9」が立っていた交差点

ビルの崩落により、辺りはコンクリートの残骸によって何もかもが押しつぶされた後だった


だがその時、瓦礫の一つが押しのけられるとその下から男がはい出てきた。それは・・・


「ハァ・・・ハァ・・・。や・・・やばかった・・・」


そう、それは「9」によって共に押しつぶされたはずの「6」の姿だった!


(あと・・・ほんの一瞬・・・。ほんの一瞬「9」が死ぬのが遅かったら、オレも一緒に潰されていた・・・)


ビル崩落の瞬間

「6」を逃がすまいとその首を掴んでいた「9」だったが、瓦礫がその身を押しつぶす直前に力尽き

それと同時に「6」は「9」の手から逃れ、ギリギリで回避行動を取っていたのだ。しかし・・・


「ぐっ・・・戦闘は・・・不可能か・・・」


なんとか一命だけはとりとめたものの、「6」のダメージは甚大


(左足複雑骨折・・・右手も瓦礫に潰され捨ててくるしかなかった・・・。アバラも5~6本は折れてるな・・・)


よろよろと立ち上がると、その場から歩き出す


(とにかく・・・今は戦線を離脱するしかない・・・)


だが・・・その時!


ドンッ!!!


「・・・何?」


不意に背中側から衝撃を受け、やや前につんのめる様にふらつく「6」

その時、「6」は自分の胴体に開いた小さな穴を気付く


「・・・あ?」


そしてゆっくりと後ろを振り向く、そこに立っていたのは・・・


「・・・「4」」


それは暗殺者・ナンバー・「4」だった

「4」は何の感情も見えない、氷の様な視線を向けたまま

「6」に向かってハンドガンを向けていた


「「4」・・・オレは・・・お前を・・・」


そんな「4」に対し、「6」は折れた足を引きずりながら近づいていこうとする。しかし・・・


ダァンッ!!!


「4」は何の感情も見せず、そのまま2発目の銃弾を「6」の眉間に撃ち込んだ


「がっ・・・」


眉間を撃たれ、後ろに倒れていく「6」。その今際の際・・・


(ああ・・・これで終わりか。まあ、人を殺す事でしか愛せない異常者の末路はこんなもんだろうさ・・・)


「6」の脳裏に浮かんだのは今まで殺してきた者達の絶望の表情

そして、その最後に・・・


(確かあの女は・・・俺が最初に殺した女か・・・)


それは「6」が少年だった頃、初めて殺害した少女の姿だった。しかし・・・


(何だ・・・? アレは・・・?)


絶命した少女の瞳、そこに反射して映っていた物は・・・


(何で・・・? オレが・・・泣いているんだ・・・?)


その意味を知る事なく・・・


(どうしてだ・・・?)


「6」の意識は完全に途絶えた






少年Aの事件


とある少年が突然、同級生女子を殺害した事件


だがその後の捜査により、それは殺人ではなく事故だった事が判明する


しかし・・・


「そうしたかったから」


少年は警察に対し自分が殺したと証言し


その後も、周囲が何を言おうと自分が殺したと言い張り続けた


何故、事故であったにも関わらず、少年は自分が殺したと言ったのか?


何故、それが事故であった事を認めようとしなかったのか?


彼が殺人鬼の仮面を被ったその理由は、もう彼自身にも思い出す事は出来ない・・・











「6」が絶命した事を確認すると、「4」は誰に聞かせるでもなく呟く


「最後の瞬間まで死に理由と意味を求め続け、それ故に本当の自分を取り戻す事は出来なかったか・・・」


「死の六階段」

6つの行動を通して、死の理由とその意味を問う能力

それこそが、本人ですら理解していなかった「6」の心の形


「・・・じゃが、それも貴様の選んだ道。哀れとは思わんぞ・・・「6」」


最後の瞬間まで殺人鬼としてあり続けた「6」の姿にほんの少しだけ眉をしかませると

「4」は背を向けるのだった

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