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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第九章:資格者達は玉座を目指し、その命は最後の輝きを見せる
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戦友


多国籍軍の一時撤退から数時間後

既に日は落ち、街頭の灯りすらない夜の市街地は完全な暗闇に包まれようとしていた


その中、川を挟んで対峙する多国籍軍と接続者達


嵐の前の静けさか

再びの開戦を目前に、辺りはシンと静まり返っていた。そして・・・


「進軍開始・・・!」


司令官の合図と共に、全ての兵と車両が進軍を開始した!


ダダダダダッッッッッ!!!


多国籍軍の兵士達が隊列を組み銃撃を開始する!


「来たぞ! 迎撃!」


しかし! それらは能力者が作ったコンクリートの壁に遮られる!

そしてすかさず! 銃撃を防いだその隙に別の能力者が能力を発動させた!


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・!!!


多国籍軍部隊の前方頭上に現れる雨雲・・・!

雨を降らせる能力者が敵の頭上に雨を降らせ、氷を扱う能力者がその雨を凍らせる!


スガガガガガッ!!!


直後! ナナメ上から降り注ぐ無数のつららの槍!


「ッ! 退避!」


だが、兵士達は素早く車両の陰に隠れそれをやりすごした!


装甲車を盾に橋を渡ろうと前進する多国籍軍と、能力を駆使し食い止める接続者達


数の上では圧倒的に有利にあった多国籍軍だったが

先の撤退、その時に思い知った接続者の未知なる力


それ故その動きは慎重にならざるを得ず、すぐに戦線は膠着状態に陥る。そして・・・


「予想通りね・・・」


その両者の動きを見守る第三勢力、暗殺課

互いに決定打がなく膠着する戦線をかき乱すべく、暗殺課課長の吹連は暗殺者達を動かす


「全暗殺者、配置完了しました」

「分かったわ。全暗殺者、行動開始・・・!」


そして吹連の号令と共に

川沿いに防衛線を敷く接続者部隊の後方から、暗殺者達が奇襲を仕掛ける! だがその時!!!


「ハハハッ!!! 居た居た見つけた!!! 予想通り!!!」

「何ッ!?」


ザシュッ!!!


襲撃体勢にあった暗殺者の一人が奇襲を受ける!

横合いから突然襲い掛かってきた影、その手にあった中華刀が暗殺者の胴体を斬り裂き鮮血を飛び散らせた!


「あれは・・・ッ!!!」


暗殺者達の前に現れた影、それは・・・!


「やっぱり居た!!! 暗殺者だ!!!」

「あの方の予想通りだね「7」!」


元シングルナンバー・「7」と「8」だった!


「まずは一人! 敵はあと何人だ「8」!?」

「えっと・・・多分あと17人!」

「なら余裕だ! とっとと片付けよう「8」!!!」

「うん!」


そう言うと、笑みを浮かべながら暗殺者達に襲いかかる双子の兄妹!


「ッ! 元シングルだか知らないが、現役の暗殺者をナメるなよ・・・! ナンバー・「46」、暗殺開始アサシネイションスタート!」


そして交戦状態に入る双子と暗殺者達! その頃・・・


「暗殺者部隊! 「7」「8」と交戦を開始! この状態では、川沿いに展開する接続者部隊に対する奇襲は不可能です!」


そう叫ぶオペレーターの声に、モニターの映像を見ながら吹連が呟く


「「7」と「8」が西方面に現れるなんて・・・。いえ、でもそれなら・・・」


その時、その言葉に答える様にスピーカーから声が返ってきた


「こちら側が手薄と言う事じゃな、双葉」

「・・・ええ。予定とは違ったけれど、これは好機よ。「7」と「8」が西に居るのなら、東に展開しているのは「5」と他数名程度のはず。「4」「6」「9」、貴方達3人の誰かがこれを突破し「1」を倒せばこの戦いは終結する」

「ああ。その通りじゃ」


その言葉に頷く「4」「6」「9」


「じゃあ、ここからは互いの通信は封鎖、監査官の指示に従って行動するって事だったよな?」

「その通りよ「6」」

「了解了解。じゃあ、俺は見つからない様に姿を隠して行くとしますか・・・。ナビは任せたぜ? 飛山」

「フン・・・。言われずとも分かっている、貴様は私の命令に従え」

「はいはい。んじゃ、通信を切るぜ」


「6」がそう告げると同時に通信が途絶えた


「では、私も行動を開始しよう。鳥羽監査官」

「はい。いつでもどうぞ、宗久様」

「うむ。では、互いの武運を祈る」


続けて、「9」との通信も途絶える


「それじゃあ儂も行くか。通信はどうじゃ?」

「この通信を最後に私との直接回線に切り替わるわ。貴方の行動を把握出来るのは私だけだから心配しなくて平気よ」

「了解じゃ。では儂も姿を隠しながら進むとしよう。・・・どこに敵が潜んでおるか分からんからな」


その言葉と共に「4」の反応もモニターから消失

3人の暗殺者はそれぞれ行動を開始するのだった











作戦開始より数分後

その背に大太刀を背負い、戦闘服の上から黒のスーツを着た長身の男

暗闇に包まれた市街地を進む「9」の姿があった


「ッ!?」


その時!

何かを察知した「9」は素早く身を隠す!


「如何なされましたか? 宗久様・・・?」

「・・・前方のビルの陰に敵を発見した」


暗闇に包まれた市街地、その中でも一層闇が濃くなる路地裏

そこに潜む影、手に旧式のアサルトライフルを持った少年兵の姿があった


「・・・確認しました。排除しますか?」

「いや、仲間を呼ばれると厄介だ。迂回しよう」

「承知しました。周辺のマップデータを送ります」


新たなルートを確認すると、「9」は少年兵に気付かれない様に移動する


(少年兵か・・・)


その時、「9」の脳裏にある光景が浮かぶ


それは戦争だ

第二次世界大戦以降、この国でたった一度だけ起こった戦争


暴虐の限りを尽くす接続者達を鎮圧すべく、政府が自衛隊を投入した時の事

国防を担う鳳家の次期当主として、その戦争に参加した時の事。そして・・・


(鳳の次期当主と一兵士。立場は違えど志は同じはずです)

(はい。共に護国の為に戦いましょう、克摩曹長)


脳裏に刻まれた言葉を思い出す


「・・・」


それはほんの一瞬の事だった

ほんの一瞬だけ「9」が意識を反らした、次の瞬間!


「・・・どうした? 戦場でぼうっとするなどお前らしくもないな」

「ッ!!!!!」


キュイーーーン・・・ドガガガガッッッッッ!!!!!


「9」の居た場所に無数の弾丸が撃ち込まれる!


「チイッ!!!」


即座にその場から移動しこれを回避する「9」!

だがそれを追う様に周辺のビルを破壊しながら弾丸が撃ち込まれる!


「これは・・・! 「5」か!!!」


人の大きさ程の巨大なガトリング砲を撃ちまくる男

それは元シングルナンバー・「5」だった!


ドガガガガッ!!!!!


容赦なく撃ち込まれる弾丸の嵐!

止まれば即蜂の巣にされ、その肉体は粉々に吹き飛ぶだろう!


「くっ!」


弾丸を避けるべく、「9」は狭い路地裏を疾走する! だがその時!


ピッ・・・!


「なっ!?」


路地裏の隅に仕掛けられたセンサーが反応!

仕掛けられた罠が起動する!


バンッッッッッ!!!


「クレイモア・・・!!!」


「9」に向かって襲い掛かる700発のベアリング弾!

しかし既に「9」は回避行動を取っていた為、それらは全て空を切る! だが・・・!


「動きが鈍ったな」


ドガガガガッッッッッ!!!!!


「9」が罠にかかるのを予測していた「5」は、「9」が居るであろう地点に弾丸を集中させる!


「宗久様!!!」

「問題ない!!!」


壁を貫通して遅いかかる弾丸!

これに対し「9」は背中の刀を抜くと、弾丸を切り払う体勢を見せる! だが・・・!


「無謀だな・・・。如何にお前とて刀で防ぎきれる物ではない」


ドガガガガッッッッッ!!!!!


「5」の持っているガトリング砲の発射速度は1分で6000発、つまり1秒間に100発の弾丸が「9」に襲い掛かるのだ!

実際に打ち払うのは命中する数発のみだとしても、それでも常人、いや接続者であろうと防ぎきるのは不可能! しかし・・・!


「既に「記録」は完了している!!!」


そう「9」が叫ぶと同時に、「9」の前方に刀を構えた無数の残像が現れた!


「「記録レコード」!!! 全開放!!!!!」


秒間100発!

それすらも超える無限の閃き!!!


「9」に向かって放たれていた銃弾が全て打ち払われ、「5」への道が開かれた! 瞬間!


ザンッ!!!


それは刹那、いや示現流で言う所の雲鷹の速さか

「9」の持つ長刀が煌めくと同時に、「5」の持っていたガトリング砲の砲門が真っ二つになる!


「何ッ・・・!?」


ドサッ・・・


同時に「5」の胴体がぱくりと割れると、鮮血を飛び散らせながら「5」は地面に倒れた!


倒れた「5」の姿を見ながら「9」はホッとした様に息を吐く


(事前に「記録」しておいた攻撃を全て解放してなんとか届いたか・・・。だが・・・)


「9」が「5」に与えた一撃は致命傷、間違いなく必殺の一撃だ

しかし、「5」が相手の場合に限りどんな攻撃も必殺とはなり得ない。何故なら・・・


グググッ・・・


その時、致命傷を受けたはずの「5」の身体がムクリと起き上がる・・・!

そして平然と「9」の方を振り向いたかと思うと喋りかけた


「甘くみたのは私の方だったな・・・。流石だ「9」」


「不死身の突撃兵 (イモータル)」

どんな怪我を負っても即座に治癒する、正に不死身の能力


(その能力の弱点は・・・ない)


どうやっても殺せない能力

相手の技量や能力など「5」の前には全て無意味だ

何百回殺されようと立ち上がり、たった一回勝てばいい


「「私に出会った」、それがお前の敗因だ「9」。運が無かったな・・・」


そう告げながら「5」は予備の銃を取り出す。だがその時・・・


「いや。私は運が良かった「5」」

「何?」


首を傾げる「5」に対し、「9」は落ち着いた声で話しかける


「どうしても、私は貴方に聞いておきたかった。何故、貴方程の人物が「1」の側に付いたのかを」

「・・・」


「9」の言葉に対し「5」は無言のまま

しかしその様子から敵意の様な物は感じない、無言のまま「9」の言葉に耳を傾けている

その様子を確認すると、「9」は続けて「5」に語り掛けた


「覚えているだろう? あの戦場を。互いに立場は違えど共に戦ったあの戦場を」

「・・・」

「護国の為勇敢に戦い軍の英雄とまで呼ばれた貴方が、何故今この国に敵対する? 答えてほしいナンバー・「5」、いや・・・克摩曹長」


真剣な眼差しのままそう問いかける「9」

しかし、その「9」の問いに対し「5」は・・・


「軍の英雄か・・・」


そう呟くと、ふっとため息をつく

そして続けて「9」に向かって言った


「「9」、いや・・・鳳宗久。確かに私とお前は国の為、共に戦った同士だ。だが鳳の者として後方で指令室の椅子に座っていたお前と、最前線で銃を取り戦っていた私の見た物は同じではない。私が見た戦場とお前が見た戦場は全く違う物だったのだ」

「何・・・? どういう事だ? 一体貴方はあの戦場で何を見たと言うのだ?」

「知りたいなら教えてやる。・・・軍の英雄などと持てはやされた男の真実、私が見た本物の戦場をな」


そして「5」は語る

2021年、東京で行われた自衛隊による接続者鎮圧作戦

それに参加した一人の兵士の話を・・・

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