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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第一章:恋の炎はその身を焦がして燃え上がる
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繋がる瞬間


「くおおおおおっ!!!!!」


冬香に向かって放たれた炎!

しかし!飛び込んできた13がすんでの所で炎を右腕で受け止める!


ゴオオオオオッ!!!


「御音ッ!!!」

「くっ!!!」


炎に焼かれ激しく燃え上がる13の右腕!

咄嗟に冬香は着ていたジャケットを脱ぐと炎を消そうとする!


ジュッ!


だがその時!火の粉が冬香の手に触れ、皮膚を焦がした!


「ッ!!!」


冬香の表情が苦痛に歪む!だが冬香は尚も炎に向かっていく!


「よせ!離れていろ!!!」

「そういうわけにいくか!!!」


13の言葉に対しそう叫ぶと、必死に炎を消そうとする冬香!


(私を庇ったせいで・・・!)


そして、なんとか消火する事が出来た冬香はすぐさま13に命令する!


「すぐに撤退するぞ!今すぐ病院へ!」


13の右腕はかなり重度の火傷を負っている、もはや戦闘は不可能だ!

今すぐこの場を離れ病院に向かうべきと冬香は判断する、だが・・・


「・・・問題無い、いいからどいていろ」


心配する冬香を、13は邪魔だと言わんばかりに左手で制す

その13の行動に冬香は思わず叫んだ!


「なっ!?あの炎で直接右腕を焼かれたんだぞ!?問題ないわけが!!!」


そして強引に13の右腕の様子を確かめようとするが・・・


「えっ・・・?」


その時、冬香が見た物は焼け焦げた皮膚・・・


「なんだこれは・・・?」


そして、その下から覗く「金属製」の腕だった

唖然とする冬香に対し、13はスッと立ち上がると平然とした声で告げる


「言っただろう、問題無い。俺の右腕は特別製だ」

「義手・・・」


そう、13の右腕は肩部から先が全て金属製の義手となっていたのだ


「一体どうして・・・?」


それは何に対する疑問だったのだろうか?

冬香自身意味も分からずついで出た言葉に、13は・・・


「ただの過去の負傷だ。それよりも早く離れていろ、戦闘はまだ終わっていない」


そう答えると左手の銃をレンに向かって突きつける13

しかし、そんな13の頬に冷や汗が流れる・・・


(問題無いとは言ったものの・・・。義手の回路の一部を熱でやられたか?右腕が全く動かん・・・片腕で近接戦闘は難しいが・・・。残っている武器はダガーナイフが一本に左手のハンドガン、残弾はさっきリロードした分で最後・・・。この状態でB+の接続者を殺しきるのは難しいが・・・)


今回、13にとってレンとの戦闘は遭遇戦であった

装備も対接続者用の物ではなく通常装備のみ、接続者と相対するには明らかに準備不足


(出来る事なら、ここはコイツの言う通り一度撤退すべき・・・だが・・・)


その時、13はチラリと冬香の方を伺う


(・・・撤退も難しいか)


一人でなら逃げきる事は容易い事だ、しかし冬香を置いていく訳にはいかない

そして、普通の人間である冬香を連れて接続者から逃げ切る事はほぼ不可能


(進退窮まったな・・・)


戦闘と逃走、どちらを選んでも死・・・

だが、圧倒的な死の予感に直面しつつも、13は冷静に呼吸を整え思考を落ち着かせる


(暗殺者の行く道は二つしかない。政府を裏切り接続者として処分されて死ぬか、政府に忠誠を誓い暗殺者として戦って死ぬかだ・・・。コイツを見捨てて逃げたならば、俺は裏切り者として処分されるだろう。ならばせめて、俺の命を使ってコイツが逃げる時間を稼ぐ・・・。それが合理的判断だ・・・)


所詮、暗殺者はただの消耗品

暗殺者と監査官、政府にとってどちらの命が大事かは考えるまでもない

覚悟を決めた13はレンに銃を突きつけたままその様子を伺う、その時・・・


(ようやく・・・死ねるか・・・)


ふと・・・彼はそんな事を思った・・・

だがその時・・・!


「いや・・・!違う・・・!アタシはそんな・・・!」

「・・・?」


優位に立ったはずのレンは怯えた様な瞳でブツブツ呟きながら13から後ずさっていた

その表情は先程の狂気に満ちた物とも違う、明らかに焦燥した様子だ


「違う・・・!アタシは違う・・・!アタシはただ自由に・・・!だから・・・!でも違う・・・!」


支離滅裂な言動を繰り返すレン

その時、13と冬香の通信機に安栖からの通信が入る


「これは!精神的ショックで接続が深まっている!このままでは危険だ!13!速やかに彼女を・・・!」


安栖が13に命令しようとした、その瞬間!


「全員動くな!!!」

「なっ!?」


後ろから聞こえてきた声に冬香が振り向く!

そこに居たのは制服姿の警察官達だった!


「一般の警察官!?通報でもあったのか!?」


突然現れた制服警官達に動揺する冬香と13!

だが動揺しながらも即座に、冬香は現れた制服警官達に向かって叫ぶ!


「来るな!私達も警察だ!ここは私達特別治安維持課に任せろ!」


そして冬香は制服警官達を退避させようとするが・・・!


「特別治安維持課・・・!?暗殺者か!!!」

「じゃあまさか!あの金髪の女が接続者!?」


その言葉に制服警官達の間に動揺が走る!その時!


「あ・・・ああ・・・?」


レンの憔悴しきった様な虚ろな視線が制服警官達を捉えた!

それはまるで深淵を思わせる様な強大な虚!


「ヒッ・・・!」


その時!

恐慌に陥った警官の一人が腰のリボルバーを抜き、構える!


「なっ・・・!?やめ・・・!!!」


冬香は咄嗟にその警官を止めようとするが・・・!


「うあああああっ!!!!!」


パンッ!!!


冬香が制止するよりも早く、制服警官が発砲した!


ヒュンッ!


レンに向かって放たれた弾丸!

しかし接続者であるレンにとってはなんという事のない攻撃のはずだ!だが!


バスッ!


レンは回避しなかった、自分に向かってくる弾丸をぼーっと見つめたまま立ち尽くしていたのだ

警官が撃った弾丸はレンの腹部を貫通し、レンの服の上から血がにじみ出す!


「レン!!!」


思わず、レンに向かって駆け出そうとした冬香を13が腕を掴んで引き留める!


「放せ御音!!!」

「逆だ!離れろ!!!」

「えっ!?」


13の切羽詰まった声に思わず疑問の声をあげる冬香、そして・・・!


「暴走する!!!全員離れろ!!!」


13がそう叫んだと同時に!!!


「う・・・うあああああああああああ!!!!!」


ゴオオオオオッ!!!


レンを巨大な炎が覆いつくした!!!






レンを覆いつくした巨大な炎!それは巨大な火柱となって周囲を燃やしていく!


「うああああっ!!!!!何なんだコレは!!!???」


パンッ!パンッ!


突然噴き上がった炎に対し恐怖した警官達は次々と発砲する!しかし!


ジュオッ!!!


炎はまるで蛇の様にうねり、弾丸を飲み込むと一瞬で焼き尽くしてしまう!

恐慌状態に陥った警官達に対し、13は恫喝する!


「いいから下がれ!死にたいのか!!!」

「ヒッ・・・!」


13の恫喝により撤退していく警官達!

そして13と冬香はレンが噴き上げる炎に立ち向かうが・・・!


「レン!くっ・・・!!!」


冬香と13も、あまりの炎の激しさに一旦距離を離す!


ゴオオオオオッッッッッ!!!!!


炎から距離を取り、校庭の中心で激しく吹き上がる炎を見つめる二人


「一体これは・・・!?」


その光景に思わず、冬香は誰ともなく問いかけた。その時・・・


「暴走だ・・・」


13がそう答えたと同時に、安栖からの通信が入る


「どうやら手遅れになったみたいだね・・・」

「どういう事ですか!?安栖研究主任!?」


一体何が起こっているのか理解出来ず、困惑の声を上げる冬香

それに対して安栖は、静かな声で彼女に告げた


「・・・羽崎恋の接続はかなり深い物だった、すでに精神に異常をきたすレベルでね。そして今、「ゼロ・オリジン」との更なる接続によって自我の境界があやふやになり、能力を暴走させたんだろう・・・」

「ゼロ・オリジンとの接続・・・!?それは!?」


ゼロ・オリジン

それは冬香が監査官となる前に聞いた事がある単語だった、確かそれは・・・


「ゼロ・オリジンとは接続者の能力の源、2020年に突然東京に飛来した光る物体の事だよ。人類には解析出来ない超常の物体、それとの「接続」により「人」は「接続者」になる。だが、あれがもたらす力は人間に御し得る力じゃない。接続が深くなれば深くなる程に接続者達は力を増し、同時に精神に異常をきたしていく。そして・・・最後には自我を失い暴走するんだ」

「暴走!?それじゃあレンはどうなるんですか!?」

「・・・暴走した接続者の最後は自滅しかない、彼女は強力になりすぎた自分の炎に焼かれて自滅する。しかし・・・」


尚も激しく噴き上がる火柱!それはじょじょに大きくなっている様に見えた!


「彼女が自滅する前に、彼女の炎は周辺の街全てを焼き尽くしてしまうだろう」

「なっ!?」


レンの火柱がこの校庭を覆いつくし、更に巨大となり辺りに飛び散ったならどうなるか?

この炎が辺りの住宅に燃え移れば、炎は一気に広がるだろう

それこそ、数時間でこの街を焼き尽くす程に・・・!


「そんな・・・」


茫然と炎に包まれたレンを見つめる冬香

その時、安栖は13に向かって静かに問いかける


「13、やれるかい?」


その安栖の問いに、13はいつも通り表情を変えずに・・・


「・・・おそらく」

「そうか・・・。頼む、13」

「了解」


そう答えると、13は左手の銃をホルスターに戻し冬香に向かって言った


「作戦がある。霧生冬香、アンタがレンに向かって呼びかけろ」

「何・・・!?それはどういう・・・!?」


突然、冬香に向かって意味の分からない指示をする13

だが戸惑う冬香に対し、13は落ち着いた声のままで続ける


「一瞬でいい、こちらに注意を向けさせろ。そうすれば後は俺がなんとかする」

「なんとか・・・?一体何をする気だ・・・?」


その冬香の問いに、13はその言葉を告げた


「「能力」を使う」

「能力・・・!?」


13の能力

暗殺者とは、接続者を殺す接続者

であるならば当然、13も能力を持っている事になる

しかし、冬香は一度も13の能力を見た事がない


「ああ、普段は何の役にも立たない能力だが、この事態を解決する事は出来るはずだ」


その言葉に困惑する冬香


(13の能力とは一体・・・?本当にこの場をなんとか出来るのか・・・?)


不安、疑念・・・冬香の心を占めているのはそんな感情だった。だが冬香は・・・


「分かった・・・。お前を信じるぞ御音」


何もかも分からない状態のまま・・・

しかし、13に向かって強く頷くとそう答えた


「ああ、任せろ」


そして、冬香と13はレンに呼びかける為に炎の中心へと向かって行った






激しく噴き上がる炎に全身を炙られながら、冬香と13の二人は慎重に火柱の中心に近づいていく・・・!


「くっ・・・!」


もしあの火炎に飲み込まれたならば、二人とも一瞬で燃え尽きてしまうだろう

そんな生と死のギリギリの位置まで近づいた所で、冬香が火柱の中央のレンを肉眼で確認する


「・・・」


コクッ・・・


その時、冬香に向かって13が頷いたのを合図に・・・


「レンーーーーー!!!!!」


冬香はレンに向かって大声で叫んだ!


「意識を取り戻せレン!!!能力に飲み込まれるな!!!」


しかし冬香の言葉に何の反応も見せず、尚も激しい炎を噴き上げるレン!

だが冬香は、恐れる事なく更に炎へ向かって行きながら叫び続ける!


「君は弱くなんてない!だって君は・・・君はずっとこの街で強く生きてきたじゃないか!世間知らずで何も知らなかった私なんかより、ずっとずっと強く生き続けてきたじゃないか!力なんてなくても君は十分に強いんだ!だから!自分を取り戻すんだ!レン!!!」


その時!その言葉にレンはピクリと反応を見せると、ゆらりと顔を向け・・・


「・・・トーカ・・・?それに・・・おにーさん・・・?」


彼女はそう呟いた・・・

そして!その瞬間!!!


「これで条件は整った・・・!」


13の右目が紫色に激しく輝く!!!


「オマエは俺を見た、そして俺はオマエを見た。その時、俺の能力は発動する・・・!」


13とレンの視線が重なり!そして13は「その能力」を行使した!


接続リンク!!!」


瞬間!

二人の意識は光速を超え、次元を超えた空間へと接続した!!!

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