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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第九章:資格者達は玉座を目指し、その命は最後の輝きを見せる
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東京最終戦線


2038年12月


スカイツリー跡に陣取り、オリジンとの完全接続を企むナンバー・「1」率いる接続者達と

ナンバー・「1」の捕獲及び、ゼロ・オリジンの奪取を目論む多国籍軍の戦いの火蓋が切って落とされた


スカイツリーから北西、浅草方面から進撃を開始した多国籍軍に対し

隅田川を挟んで迎え撃つ体勢の接続者達


単純な数での戦力差は1対100以上

圧倒的数を誇る多国籍軍に対し、ナンバー・「1」達の勝ち目は全くないかに思われた。しかし・・・


「フッ」


スカイツリー展望台から眼下を見下ろし、その圧倒的戦力差を目にしながら

「1」は勝利を確信した様に、ニヤリと笑みを浮かべた


その時、「1」の後ろに控えていた双子の一人、「7」が「1」に問いかける


「「1」、僕達も行こうか? 「5」だけに任せておいて大丈夫?」


その問いに対し、「1」は笑みを浮かべたまま振り返るとその質問に答えた


「問題ない。「5」は元軍人、戦争の専門家だ。餅は餅屋と言うだろう?」

「けど・・・」


その答えに対し、双子はやや不満気な表情を見せる。だが・・・


「心配しなくていい、お前達の出番もすぐに回ってくる。今は「5」に任せておけばいい」

「分かったよ、「1」がそう言うなら!」


「1」がそう言うと双子は納得し、笑顔で刀を磨き始める

そして「1」は振り返ると、再び眼下の光景に視線を移し呟く


「さて、精々抗ってもらおう。恐怖、苦しみ、憎しみ。その感情をオリジンへと捧げる為にな・・・」






浅草方面から進撃を開始した多国籍軍

隅田川を渡河すべく言問橋を目指すが・・・


「な・・・何なんだあの化け物は!?」


そこで待ち受けて居たのは元シングルナンバーの一人、ナンバー・「5」の姿だった!


ドォンッ!!!


装甲車両に肉薄したナンバー・「5」がゼロ距離からロケット弾を叩き込むと

車両は横転しながら吹っ飛び炎上する!


撃破した戦闘車両は既に20台

「5」が陣取る言問橋は、横転した車両により完全に封鎖されていた


その時、指揮車のモニターの向こう側から指揮官の怒号が飛ぶ


「どうした!? 敵はたった一人だぞ!? 何故突破出来ない!?」


だがその司令官の激に対し、現場指揮官は恐怖におののきながら叫び返した


「たった一人!? 冗談じゃない!!! 相手は銃で脳天を撃ち抜いても、砲弾で身体の半分を吹っ飛ばしても再生して起き上がってくる化け物だぞ!? あんな相手どうやって・・・!?」


そこまで叫んだ所で現場指揮官は言葉を止める

何故なら指揮車両の窓から、こっちに向かって真っすぐに突っ込んでくる「5」の姿が見えたからだ!!!


「あれか・・・。グラウンドゼロ内部で通信を可能にする為に、わざわざ本部から数キロに渡って通信ケーブルを引っ張ってきたわけか。つまり、あれを叩けば・・・!」


走りながらそう呟くと、「5」は背負っていたロケットランチャーを肩に構える!


「げ! 迎撃!!! 奴を指揮車に近づかせるな!!!」


その命令と同時に指揮車両に搭載されていた機関砲が火を吹く!

近くの歩兵も突っ込んでくる「5」に対し火力を集中させるが・・・!


バスッ! バスッ!!!


身体を貫く無数の銃弾を全く意に介す事なく、「5」は真っすぐ指揮車両に向かって突っ込む!

そして車両の窓ガラスを突き破り、ロケットランチャーの砲身を車体の内部へとねじ込んだ!


バシュンッ!!!


次の瞬間!

車両の内部に直接ロケット弾が撃ち込まれ、指揮車両は空気を入れすぎた風船の様に内側から破裂した!


「指揮車が・・・! 一時後退!!! 一時後退!!!」


それを合図に橋に殺到していた部隊が浅草方面へと後退していく

後退していく多国籍軍部隊を確認すると、「5」もスカイツリー方面へと後退するのだった






橋を渡りきった所で、サツキが戻ってきた「5」に声をかけた


「お疲れ様でした「5」。通信を絶たれた敵は統制を失い後退していきます、追撃を仕掛けますか?」

「いや。今回は凌いだが物量では相手の方が圧倒的に有利だ、こちらから討って出れば数時間と保たない。お前達は引き続き周辺の橋に防衛線を張り、奴らを一人たりともこちら側に通すな」

「了解しました!」


「5」に敬礼を返すサツキとサツキ隊の隊員達

それに対し、「5」は落ち着いた声で静かに告げる


「まだ戦いは前哨戦だ、多国籍軍がこの程度で引きさがるはずはない。そして戦いが続けば、それに乗じて奴等も動き出す」

「奴等・・・暗殺者ですか?」

「そうだ。おそらく日が沈んでからが本番、だがそれさえ凌げば・・・」

「あの方が・・・オリジンを手にする」

「ああ、それで我々の勝ちだ」


オリジンさえ手に入れれば、数の差など問題ではない

オリジンさえ手に入れれば、核をも超える圧倒的な武力を手に入れる事が出来る


「あと少しだ・・・あと少しで全てが終わる・・・」


「5」はそう呟くと大きく息を吐き、その決意を新たにするのだった











その頃、スカイツリーから南

江東区方面へ展開していた暗殺課は、戦線への介入の隙を伺っていた


「どう? アイリちゃん」


暗殺課が置いた前線基地

そこで直接指揮を執っていた暗殺課課長吹連が、側で通信網を維持していたアイリに向かって問いかける


「はい・・・。多国籍軍は部隊の再編制を急ピッチで進めているみたいです。おそらく5~6時間もあれば進撃を再開するはずです」


多国籍軍の偵察を行う暗殺者の一人、その外部電脳を通した「索敵サーチ」の遠隔発動

安栖が遺したシステムを使った索敵網により、アイリは本部に居ながら戦線の全てを把握する事が出来るのだった


その時、二人の元に「4」が現れる


「その頃には日も落ちる。儂らの出番じゃな」

「ええ。暗殺者を配置に付かせる様、全監査官に指示を出すわ」


そう言いながら部下に素早く指示を出していく吹連

その時、「4」が吹連に問いかけた


「儂らの戦力は?」

「貴方達シングルナンバーを含めた暗殺者、全21名」

「21人か・・・。で、どう動かす?」

「まずシングル以外の18名を隅田川沿いに北上。防衛線を張る接続者の部隊に後方から奇襲を仕掛け、多国籍軍の援護を行います」

「川を守る接続者部隊に奇襲をしかけ、多国籍軍を渡河させるわけか」

「ええ。そして暗殺者達にはそれぞれ単独行動をとってもらい、川を渡った多国籍軍と接続者部隊の乱戦に乗じて「有利になっている方」の戦力を削る。なるべく混乱が長引く様にね」

「ふむ。と言う事は本命は・・・」

「その通りよ。多国籍軍と「1」の主力部隊を足止めしつつ、「4」「6」「9」の三人がそれぞれ南、南南東、南東方面からスカイツリーへ侵攻。ナンバー・「1」の暗殺を実行する」


そう、あくまで暗殺課の目的はナンバー・「1」の殺害

多国籍軍とも接続者達とも正面から戦う必要はない。だが・・・


「じゃが、当然向こうもこちらの動きは読んでおるじゃろうな」

「ええ、けれど正面の部隊をこちらに割く事も出来ない。おそらく少数精鋭で迎え撃ってくるはず」

「少数精鋭・・・。儂らにぶつけるなら同じシングル、「5」「7」「8」辺りか」

「おそらく・・・」


シングル対シングル

くしくもナンバー・「1」の言っていた資格者同士の争いとなる形


当然ながら、これも「1」の書いたシナリオなのは間違いない

こちらの資格者である「4」「6」「9」を誘い出し撃滅、オリジンの座へと至る資格を手に入れる為の罠


だが「4」達を下がらせ他の暗殺者を向かわせた所で、「1」達に太刀打ちする事は不可能

今の暗殺課にはこの罠に乗る以外の方法はない


「なに、問題はない。儂が「1」も含めて全員、正面から叩き潰せば済む話じゃ」

「任せるわ。なお作戦開始と同時に、貴方達には他部隊との通信を封鎖し隠密行動を取ってもらいます」

「通信封鎖? じゃがそれでは・・・」

「ええ、他の部隊は貴方達3人の動きを把握する事が出来なくなる。作戦開始後は、各々担当の監査官の判断で行動してもらう事になるわ」


その時、吹連と「4」の目が合う


(なるほど・・・念の為という事か)


それは、監査官以外との通信を封鎖する事により

「1」と繋がっている裏切り者に動きを把握されない為の処置


「了解じゃ。ところで・・・」


その時、「4」がアイリに向かって問いかける


「「13」と霧生監査官の反応はどうじゃ?」


その「4」の質問に、アイリはやや表情を曇らせながら答える


「・・・生存は確認しています。「13」さんの外部電脳、それとゾーフでの作戦の前に冬香さんに渡されていた外部電脳搭載の通信機。それらを通して二人の生体反応は感じとれます」

「場所は分かるか?」

「冬香さんの場所はここから西の・・・この辺りです」


地図上のある地点を指さすアイリ


「ここは両国・・・慰霊堂があった辺りか。何故こんな場所に? 「13」は一緒なのか?」

「分かりません・・・。「13」さんの生体反応は今とても感知し辛い状態にあって、場所が特定出来ないんです・・・。私に分かるのは、まだ生きているという事しか・・・」


それはつまり、現在「13」は瀕死の状態にあるという事。だが・・・


(ここは作戦ポイントから外れている地点。儂らはもちろん、他の暗殺者を向かわせる訳にもいかん)


その時、顔をしかめる「4」に向かって吹連が告げる


「彼らの動向が把握出来ないのは残念だけれど、作戦に変更はないわ」

「双葉・・・」

「もし生きているのならば、彼らもこの期に乗じて行動を起こすはずよ」


そう言いながらまっすぐ「4」の瞳を見つめる吹連

それに対し、「4」はふっと軽く息を吐くと気持ちを切り替える


「そうじゃな。儂らの目的はあくまでナンバー・「1」の暗殺」

「ええ。「4」・・・貴方だけが頼りよ」

「ククッ、任せておけ」


そう告げると、「4」は吹連に背を向けその場から立ち去る。そして・・・


(この程度で死ぬような育て方をした覚えはないぞ・・・。生きて戻ってこい・・・「13」・・・)


最後の戦場へと向かって行くのだった











そして両国、復興記念館跡

廃墟と化した施設の窓から、遠くに聞こえる砲火の方向を見つめる冬香の姿があった。そして・・・


「・・・もう少しで始まる様だ。お前ら暗殺課と「1」達の決戦がな」


部屋のドアが開き、そう言いながら冬香の元に歩いてくる人物の姿

それは冬香もよく知っている人物・・・


身長180センチ程、黒の短髪、フードのついた黒いロングコート

そして両脇のホルスターには「銃剣の付いたハンドガン」が二艇

そう、その人物とは・・・


「カズヤか・・・」


「13」と同じ十字銃術の使い手、カズヤだった

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