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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第八章:革命の生贄は起源へと捧げられ
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闇の中、死神は眠り続ける


「5」「7」「8」

3人の元シングルナンバーと交戦状態に入り重傷を負った「13」

その体がぐらりと揺れ、ビルの縁から外へ向かって倒れていく


「「13」!!!!!」


冬香は咄嗟に叫び声を上げ手を伸ばそうとするが、その手が届くはずもなく・・・


「生きろ・・・」


そう呟くと、「13」はビルの屋上から地面へと落下していった


「サー・・・ティーン・・・」


暗闇の中に消えていった「13」の姿に、冬香はガクリとその場で膝を付いた


「5」はそんな冬香の姿をチラリと横目で確認した後、冬香に背を向けながら「7」と「8」に向かって言う


「帰還するぞ」


その言葉を聞いた「7」は不思議そうに首を傾げる

そして「5」に向かって言った


「は? 何言ってんだよ「5」、そこにもう一人居るだろ」


そう言う「7」に対し、「5」は冷静に答える


「その女は暗殺者でも接続者でもない、ただの人間だ。放置しておけばいい」

「何を馬鹿な事を! 暗殺者と一緒に居たんだから暗殺課の関係者、つまり僕らの敵だ!」

「そうよ! 「7」の言う通り!」

「・・・」


抗議する「7」と「8」に対し、「5」は無言で立ちふさがる


「それにあの方が、「1」がオリジンを手に入れたなら、どうせ今の人類は皆殺しにするんだ。ここで殺しておいた方が手間がかからない!」


そう言って中華刀を構える「7」

しかし「5」はその前に立ちふさがったまま微動だにしない


(何だ・・・? こいつらは一体何を・・・?)


目の前で起こった言い争いに困惑する冬香。その時・・・!


コロン・・・


丁度「5」と双子の間に何かが投げ込まれる

そして一瞬だけ間を置いて、それからブシューッと勢いよく煙が噴き出した!


「何・・・!?」

「スモーク!?」


ビルの屋上が煙に包まれ何も見えなくなる!

そしてその煙に紛れ、一人の人物がその中に突入した!


「ッ!?」


突然、背後に立った人物の気配に振り向く冬香! そして・・・!


「なっ!? お前は・・・!」


そう叫び声を上げようとした瞬間!


ドスッ!!!


「ぐっ・・・!」


腹部に衝撃が走り、一撃で冬香は昏倒した


「・・・」


そしてその人物は昏倒した冬香を抱えると、すぐさまその場から離脱していく!


「ゲホッ! くそっ! 今のは・・・!」

「逃げられるよ「7」!!!」


周囲の煙を振り払うと、「7」は離脱していこうとする人物の背に視線を向ける


「逃がすものか!!!」


そしてその場から走り出そうとした・・・その瞬間!


「うっ・・・ごふっ・・・!!!」


その口から大量の血を吐き出し、その場に崩れ落ちた!


「がっ・・・! ゲホッ、ゲホッ・・・! こんな・・・時に・・・!」

「「7」!!!」


「8」はすぐさま倒れた「7」の元に駆け寄ると、能力「二身同体」を発動させる


「ぐっ・・・、ハァ・・・ハァ・・・」


能力の発動により、「7」はすぐさま立ち直る。だが・・・


「マズイ・・・。発作の感覚が・・・どんどん短く・・・」


その表情は蒼白

一歩一歩近づいてくる死の予感に、「7」は震えながら呟く


「早く・・・早くしないと・・・。僕達には・・・時間が・・・」

「とにかく、今は戻ろう・・・「7」・・・」


心配そうに告げる「8」に対し、「7」はコクリと頷くと

双子の兄妹はスカイツリー跡に向かって去って行った


二人が去ったのを見届けると、「5」はビルの壁を伝い下へ飛び降りる

そしてその場を少し見回し、「あるはずの物」がない事に気付く


「・・・「13」が消えた?」


そう、そこになかったのは「13」の死体だ

消えた「13」を探すべく、その場を注意深く観察する「5」。そして・・・


「ここか・・・」


僅かな血痕が近くの路地裏のマンホールへと続いていたのを発見する。だがその時


「「5」、どうしましたか?」

「・・・サツキか」


背後からのサツキの呼び声に、「5」は振り返る

そして振り返った「5」はサツキに対し戦闘の報告をさせた


「損害報告を」

「ハッ! 軽傷が6名。ですがすでに治療は完了しており、全員すぐに戦線に復帰できます」

「・・・「13」にやられた者は?」

「幸い全員急所は外れていた為、命に別状はありません」

「・・・」


サツキの報告に、「5」は無言のまま考え込む


(急所は外れていた・・・? いや・・・もしくは「外した」のか・・・)


相手は歴戦の暗殺者だ

それを相手にして死者が0と言う事があり得るのだろうか?


サツキ隊は「5」が拾ってきた孤児達で編成された部隊

訓練されているとは言え、その多くはまだ子供だ

銃を向けてくる子供達に対し「13」が何を思って引き金を弾いたのか? それは分からない、しかし・・・


「・・・帰還するぞ」

「えっ? ですが・・・」

「あの傷ではどの道手遅れだ。構わん、行くぞ」

「りょ、了解しました!」


そして「13」を追跡する事なく

「5」達もスカイツリー跡に向かって帰還していった











全員がその場を去った後

マンホールの下、下水道の中を壁に寄り掛かりながら歩く「13」の姿があった


「はぁ・・・はぁ・・・」


重傷を負いながらも、からくも戦線から離脱した「13」。しかし・・・

胸と背中に大きな裂傷、さらに3発の銃創

先の戦闘で受けた傷は深く、その傷口からはボタリ、ボタリと血が流れ続けていた


「冬香を助けに・・・戻らないと・・・」


そして「13」は朦朧とした意識のままそう呟くと

力尽き、ドサリとその場に倒れ込む


「まだ・・・俺は・・・」


そしてその瞳から光が消えていき・・・

「13」はそのままゆっくりと、意識を失った











A国特殊部隊による奇襲が失敗した翌日、事態は大きく動き始めようとしていた


暗殺課本部、課長室

暗殺課のトップである吹連に早朝からかかってきた一本の電話


「ええ・・・はい・・・。では我々も行動を開始します」


そう言って吹連は電話を切る

そんな吹連に対し「4」は冷静な声で問いかけた


「出番か?」

「ええ、総理直々に暗殺依頼が来たわ。暗殺課の総力を持って、ナンバー・「1」を殺害せよ、とね」

「ようやく重い腰を上げたと言った所かのう? 他の国からの圧力に関しては解決したのか?」

「いいえ。我々にはあくまで秘密裏に行動しろ、とのお達しよ」

「なるほど。誰にも見られず、多国籍軍と「1」の戦いのどさくさに紛れて奴を殺せと言う事か。まあ儂ら暗殺者らしい仕事じゃがのう」


そう言って「4」はクックと笑う


「それもこれも、「1」のデモンストレーションのお陰じゃな」

「ええ、ミサイル基地消滅のニュースはもう全世界で報道されているわ」


モニターに映し出される各国のニュース画面

それらの全てが、接続者の危険性について声高に訴えていた


「もはや猶予はない。今回の多国籍軍の侵攻が失敗すれば、国際世論は日本と言う国ごと接続者を消滅させる」

「・・・まあその前に「1」に滅ぼされるじゃろうがのう」


「4」の言葉に、吹連はスッと立ち上がると通信機を手に取る


「全職員に通達。これより我々暗殺課はナンバー・「1」を殺害すべく行動を再開する、準備を急ぐ様に」






その一週間後・・・

全ての準備を終えた多国籍軍が、グラウンドゼロ外縁部へと到着した


その規模はもはや内乱鎮圧などと言ったレベルではない

歩兵30000、装甲車両600台、後方にはヘリどころか爆撃機まで用意されている

それは東京と言う街を焦土と化す程の戦力だ


各国の思惑は今なお一致していない

どの国もオリジンを手に入れる事が目的であり、その為には味方と争う用意もある


だがしかし「1」の行ったデモンストレーション

ミサイル基地の消滅は、彼らに接続者に対する恐怖を植え付けた


ナンバー・「1」を無力化させるまではお互いに手出しはしない

各国が結んだ短期間の同盟関係






「それが儂らに残された最後の時間・・・という事じゃな?」


通信機越しに、吹連に向かってそう問いかける「4」


「ええ、その通りよ」


「4」に対しそう答える吹連

その通信を受け取った暗殺課の前線基地、能力で通信を維持していたアイリが吹連に向かって言う


「全暗殺者と通信接続。問題ありません、いつでもどうぞ」


吹連はその言葉にコクリと頷くと、通信機を手に全ての暗殺者に向かって告げる


「全職員、及び全暗殺者に通達。現在、グラウンド・ゼロ外縁部に多国籍軍が展開完了しており。あと数時間以内に、多国籍軍とナンバー・「1」率いる武装集団の戦闘が開始されるでしょう。多国籍軍の目的はナンバー・「1」を確保し、オリジンを手に入れる事。そしてナンバー・「1」の目的は、彼らとの戦闘で発生する負の感情をオリジンへと捧げ、オリジンを完全制御する事。けれど多国籍軍とナンバー・「1」、我々はどちらの目的も阻止しなくてはならない。多国籍軍の手にオリジンが渡れば、新たな争いの火種となり、オリジンを巡る戦いが延々と続く未来。ナンバー・「1」がオリジンを手に入れれば、「1」の宣言通り人類は抹殺され接続者のみが生きる、力に支配された未来。そのどちらの未来も回避する為、我々は現在オリジンを移送出来る唯一の存在、ナンバー・「1」を殺害する。ナンバー・「1」さえ居なくなれば、各国もオリジンを支配する事を諦めざるを得ず、今まで通りの監視体制に移行させる事が出来ます。オリジンを消滅させる事が出来ない以上、それが我々に出来る最善の手です」


その言葉に、「9」がコクリと頷く


「その通りだ。世界の為、我々は我々に出来る事をしよう」

「うむ。神になるなどと妄言を吐く輩に、現実と言う物を教えてやらんとのう」


そして、全ての暗殺者が固唾を飲みながらその号令を待つ

吹連はふっと軽く息を吐くと全暗殺者に向かって告げた


「殺害対象、元暗殺者ナンバー・「1」及び、それに従う全ての接続者。全暗殺者、暗殺開始アサシネイションスタート!!!」


その号令と共に、東京の闇に潜む暗殺者達は最後の戦場へと飛び込んでいくのだった











迫りくる最後の戦い・・・




護国の為・・・この命を賭して、私は戦おう。鳳の名に賭けて


宗久様・・・どうか、どうかご無事で・・・。私にとっては宗久様だけが、世界の全てなのです


御貴・・・。それでも私は・・・この血塗られた手を明日の為に使う。明久が・・・次の世代が生きる世界の為に・・・




各々の信念・・・




理想の世界・・・あの方が作る理想の世界・・・。死の病に蝕まれた僕達には時間がない・・・


死の恐怖に怯える事のない世界、私達がすがれる物はもうあの方しかいない。私達が・・・


僕達が・・・生きられる世界の為に・・・




各々の願望・・・




しくじるなよ、「6」。これは人類が生き延びる為の選択だ


きっちり仕事は果たすさ、俺は元殺し屋だからな。殺しはビジネス、それ以上でもそれ以下でもない


それでいい。人類が生き延びる為に・・・




それらが交差し・・・




罪を犯す事でしか守れないと言うのなら、私は躊躇いなく引き金を弾くだろう。「1」の理想が叶うまで、私が後ろを振り返る事はない


父さん・・・、いえ、ナンバー・「5」。私達はあの方の理想の為に戦うのではありません。私達は全員、命を救ってくれた貴方の為に戦います


・・・そうだ、これが偽善だったとしても私は戦う。虐げられる者達の為に・・・




ぶつかり合う・・・




戦う理由などとうの昔に忘れた。奴らが言う理想の世界と言う物も儂にとってはどうでもいい


それでいい。貴方はそれでいいのよ、「4」。無慈悲で冷徹で絶対的な力、秩序を守る為の悪。それが私達暗殺課、貴方はそれを体現する者


その通りじゃ。だがな、それだけではない・・・。一つだけ忘れられない物が、忘れたくない物が私の中に残っている。私は、儂は殺す、そのただ一つ残った感情の為に・・・




決戦の地に集う資格者達・・・




世界は生まれ変わる、私がそれを為す。完璧な種だけが生き残り、完璧な世界が誕生する。お前はそれを見届けろ、それがお前の望みでもあるのだろう?


・・・ああ、頼んだよナンバー・「1」。これで計画は完遂される


私が新たな世界の神となる。新生する世界の為に・・・




生き残るのはただ一人

そして・・・











ゼロ・オリジンとの接続・・・・・・完了


能力の検索・・・・・・完了


該当能力1件・・・「外傷治癒ヒーリング


能力ダウンロード・・・・・・完了


対象に対し能力使用・・・・・・完了


対象の生存確率・・・・・・27%




後は・・・残った生命力に賭けるしかない・・・。死なないで・・・カズ・・・ん・・・




全てを殺す死神は、一切の光が届かない暗闇の中

ただ静かに眠り続ける・・・

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