根源接続
「「13」!!! ナンバー・「4」を倒せ!!!!!」
「了解・・・!」
その言葉と同時に、「13」は両手のハンドガンを構え「4」に向かって真っ直ぐに突っ込む! だが・・・!
「・・・クッ、クックックッ」
その時、「4」の顔に笑みが浮かぶ
「儂を倒すときたか、クック・・・それはそれは・・・」
そして獲物に狙いを定める様にギロリと、「4」の瞳が「13」を捉えた! 次の瞬間!
「思いあがったな!? 「13」!!!」
地面を蹴ると、真っ直ぐに突っ込んでくる「13」を正面から迎え撃つ!
「ッ!!!」
想像以上の速度で突っ込んでくる「4」に、「13」は意表を突かれ一瞬動揺する
そしてその瞬間、「4」は右手のナイフを真横に一閃!
「13」の喉元を切り裂く様に横薙ぎにする!
「チッ!!!」
すかさず「13」は右手の銃剣でこれを受け止める体勢に入る
だが、刃と刃がぶつかり合ったその瞬間・・・!
ガシャァァァンッ!!!
「13」の身体は真横に思いきり吹っ飛び!
通路の脇、無人となった喫茶店のガラスを突き破り店内まで吹き飛ばされる!
「なっ!? 「13」!!!」
まるで車に跳ね飛ばされた様に吹っ飛んだ「13」に対し、冬香は思わず声を上げるが・・・
「フウッ・・・!」
対刃対弾コートで身を守りながらガラスに突っ込んだ為「13」は無傷、すぐさま銃を構え追撃に備える
だが次の瞬間! 「13」の視界に映った物は!!!
「なっ!?」
それはコンクリートの塊!
軽々と人を押しつぶせる大きさの瓦礫だった!
ドガァッッッ!!!
壁に直撃し粉々に砕ける瓦礫!
「13」は素早くその場から飛び退き、飛来する瓦礫を回避していた! しかし!
「まだ安心するのは早いぞ!!!」
「くっ!!!」
次に迫ってきたのはテーブルだ!
「4」は店内にあった2メートル程のテーブルを軽々と持ち上げると、「13」に対しそれを振り回す!
ドガァッッッ!!! ガシャァァァンッ!!!
まるで暴風の様に店内の全てを薙ぎ払っていく「4」
その圧倒的な暴力に対し、「13」は為すすべなく後退!
「チイッ!!!」
ガラスを突き破って店外へと飛び出し、銃を構える! だが・・・
「クック・・・、どうした「13」? 威勢の良い事を言っておいて逃げるだけか?」
店内から飛び出した「13」に対し、「4」はそう言いながらメチャクチャに破壊された店内から悠々と歩いて出てくる
そして「4」は大型のテーブルから手を離しその場に捨てると、ゆっくりと懐からナイフを取り出す
「・・・」
二人の間に静かな緊迫感が漂う
その時、銃を構えていた「13」がチラリと右手の銃剣に視線を向ける
(・・・ほんの僅かに刃が欠けているが致命的な損傷はない、銃のフレームも問題なし)
「13」が自らの武器の状態を確認していたその時、「4」は笑みを浮かべながら言う
「クック。初手の一撃、自ら飛んで衝撃を流したか。マトモに受けていれば一撃で終わっていたのう?」
「・・・」
そう、互いの刃がぶつかり合ったその刹那の瞬間
「13」は「4」との圧倒的なまでの膂力の差を感じ取り、自ら横に飛んだのだ
(あのまま正面からぶつかっていれば、一撃でこちらの武器を破壊されていた・・・)
凄まじいまでのパワー、それは接続者が持つ身体強化によるものだ
加えて、接続者の身体強化は個々人の能力適正で決まる
(「4」の能力適正は「S」、最上位ランク・・・)
対する「13」の能力適正は「Dマイナス」
しかも身体強化に関しては全くなしの「半接続者」
そのパワーの差は、ダンプカーと軽自動車並の差だ。しかし・・・
(どういうつもりだ・・・?)
膂力の差に任せ、正面からねじ伏せる
その「4」の戦い方に、「13」は違和感を感じていた
(本来の「4」であればあんな雑な戦い方はしない、そもそも「絶対回答」があれば・・・)
だがその時、「13」の思考を読んだかの様に「4」が告げる
「「絶対回答」は使わん」
「何・・・?」
疑問の声を上げる「13」に、「4」はニヤリと笑みを浮かべながら言った
「能力なしの状態の儂にすら勝てない様であれば、「1」を殺すなど夢のまた夢じゃ」
「・・・」
「それに。ここまでハンデを与えられた状態で敗北すれば、小僧も身の程と言う物を・・・思い知るじゃろう!」
ダッ!!!
そう叫びながら再び近接戦を仕掛ける「4」!
「13」も同時に間合いを詰め「十字銃術」を仕掛けにいく!
「フッ!!!」
そして突撃してくる「4」に対し、「13」が仕掛けるが・・・!
ヒュンッ!!!
「ッ!?」
「13」が突撃と同時に放った左肩を狙った刺突!
だがその一撃は「4」に紙一重で回避され空を切る!
「ならばっ!!!」
すかさず!
刺突を回避された「13」はその勢いのまま、「4」に右の膝蹴りを放とうとする!
「甘いわ!」
ガッ!!!
しかし! 「4」はこの一撃を左肘で難なく撃ち落とした!
「ぐっ!」
回避と攻撃を同時に行った「4」の行動!
その膝への強烈な一撃に「13」の顔が苦痛に歪む!
そしてその瞬間!
動きが鈍った「13」に対し「4」は追撃を仕掛ける!
ヒュンッ!
顎を狙った右のフック! 顔面への刺突!
「13」はそれらをなんとか回避する! だが!
ギャリィィィッ!!!
ナイフの刃が「13」の仮面の表面を削る!
今の所はなんとか回避しているが、近接戦での速さ、技量比べでも「4」の方が上!
「くっ・・・! 俺の「十字銃術」が・・・!?」
「当然じゃたわけ! お前のそれは初見の相手に対してのみ有効な技、儂の様に何度も技を見ている相手には通用せん!」
ガッ!!!
「ぐっ!!!」
「13」の腹部に「4」の足刀が突き刺さり、「13」は衝撃を逃す為自ら後方に飛ぶ! だが・・・!
「がっ・・・」
間合いを離した後、血を吐きながら膝を付く「13」!
衝撃の大半は流したものの、それでも「4」の攻撃は「13」の内臓に甚大なダメージを与えていたのだ!
その時、二人の戦いを見守っていた冬香は・・・
(私は勘違いしていた・・・。「4」は無敵の能力、「絶対回答」を持つが故に最強の暗殺者なのだと。だが違う、「4」が最強たる所以はその能力ではなく、暗殺者として10数年培ってきた経験そのもの・・・! 能力があろうとなかろうと、「4」は「最強の暗殺者」なのだ・・・!)
無敵の能力だけではない、力も技量も全てがトップクラス
暗殺者ナンバー・「4」という圧倒的存在を前に、ただただ畏怖するしかないのだった
何回目かになる打ち合いの末、間合いを離す「13」と「4」。しかし・・・
「ハァ・・・ハァ・・・!」
無数の打撲、裂傷
「13」の身体には着実にダメージが蓄積していた
それに対し・・・
「どうした「13」? それで終わりか?」
「4」の方は無傷
能力を使わないというハンデがあってなお、「13」に対し力の差を見せつけていた
その時、「4」は戦いを見守っていた冬香に対し告げる
「もう分かったじゃろう? 霧生監査官。お主たちだけで「1」を殺すなど不可能。ましてや敵は「1」だけではない、「5」「7」「8」・・・その他にも多数の接続者が「1」を守っている。その中に二人で突っ込んだ所で、犬死するのは明白じゃ」
「そ・・・それは・・・」
「大人しく暗殺課に戻れ。双葉には儂からとりなしてやる」
「4」の言葉は二人の身を案じての言葉だ
確かに「4」の言う通り、このまま二人で「1」を殺しに向かうのは無謀なのだろう
(だが・・・)
しかし、それはつまり「復讐」を捨てるという事
多国籍軍が勝利するにせよ、「1」が勝利するにせよ
復讐の機会はもう二度と訪れない
(それだけは出来ない・・・! 復讐を諦める事だけは・・・! だが・・・)
その時、冬香が考えたのは「13」の事
自分の復讐の為に全てを捨て去り、暗殺課を離れた「13」の事
(私の復讐で私が死ぬのはいい。だが、「13」まで道連れにしていいのか・・・? 「13」を私の復讐の為に犠牲にするのか・・・?)
だがその時、葛藤する冬香に対し「13」は告げた
「・・・引くな冬香」
「「13」・・・?」
「お前の復讐を・・・お前の生きる意味を諦めるな」
諦めるなと、そう告げる「13」
しかしその言葉に対し、冬香は首を横に振りながら答える
「だが・・・! それでは・・・! お前まで巻き込む事に・・・!」
だがその言葉に対し、「13」は仮面を外し冬香の瞳を見つめながら言う
「気にするな、元々生きる意味がなかった死にぞこないだ、今更命なんて惜しくはない。それに・・・」
そして、両手の銃を十字に構えながら言った
「犬死させるつもりもない。ナンバー・「1」は「必ず」殺す」
十字銃術の構えを取る「13」
だがそんな「13」に対し、「4」は冷たく言い放つ
「・・・不可能じゃな」
現実的に考えて、今の「13」と冬香が「1」を殺す事など出来るはずがない
だがそれに対する「13」の答えは・・・
「なら、証明してみせる」
「何・・・?」
「俺がヤツを殺せると。アンタにそれを証明してみせる!」
その時! 「13」の右目が紫色に輝く!
「接続!!!」
「13」の能力「接続」が発動する! だが・・・!
「どういう事じゃ!? 一体「13」は何と「接続」している!?」
そう、それは「4」に向けて放たれた物ではなく、ましてや冬香に放たれた物でもない!
「13」が接続している物、それは・・・!
(あの時・・・冬香がカズヤに刺され倒れたあの時。ほんの僅かにだが、俺には見えた)
それはオリジンに繋がる全て
接続者達が作るネットワーク、そしてその根源に存在する物
おそらくそれは「運命」とでも呼ぶべき物
(あの感覚を思い出せ! もう一度、根源への扉を開け! それ以外に「4」に勝つ手段はない!)
凄まじい能力の発動に、大気がバチッと火花を起こし震える!
「何っ!? 「13」! これはまさか!!!???」
高まり続ける「13」の能力に、「4」が驚愕する! そして・・・!
「グウッ・・・!!! オオオオオッッッッッ!!!!!」
「13」の能力が全力解放され、処理限界を大幅に超えた脳機能がオーバーフローを起こす! その刹那!
(カズミにいさん・・・力を・・・)
一瞬だけ、懐かしい声が聞こえた気がした
「ッ! 見えた!!!」
そして! 能力を発動したまま「13」が突撃する!
「チッ!!!」
右手の銃剣による、ナナメ下から斬り上げる斬撃!
「4」はこの一撃を右手のナイフで打ち払おうとする! だが!!!
キィィンッッッ!!!
激しい音を立て、「4」のナイフが宙を舞った!
力でも技量でもない、何かもっと不可思議な力によって「4」のナイフは弾き飛ばされていた!
そして間髪入れず! 「13」は左手の銃剣で斬撃を放つ!
「クッ!!!」
瞬間! 「4」の両目が紫色に輝く!!!
「「絶対回答」!!!!!」
それは「4」の生存本能か
使わないと豪語していたにも関わらず、「4」はその能力を思わず使ってしまっていた
それ程の生命の危機を「4」は感じ取ったのだ! そして・・・!
「見える・・・! 勝利への回答が・・・!」
「絶対回答」によって映し出される勝利の未来!
それは間違いなく「4」が勝利する運命を映し出していた!
ザザッ!
しかし次の瞬間!
それはジャミングによって妨害された映像の様に、ノイズ塗れとなり崩れ去っていく!
「何!? 「絶対回答」が見えなくなったじゃと!?」
そして!!!
「13」の「両目」が激しく輝きを放った!!!
「「根源接続・運命再構築」!!!」
ヒュンッ!!!
瞬間! ピタリ! と、「13」の銃剣が動きを止める!
「・・・ッ!」
喉元に突きつけられた銃剣に対し、「4」が言葉を失った。その時・・・
「「4」・・・。一本取ったぞ」
「13」は静かに、そう告げた
「フン・・・」
それに対し、「4」は初めての敗北に不満そうに鼻を鳴らす。しかしすぐに顔をほころばせ
「・・・見事じゃ、「13」」
そう言うと、「4」は慈愛の籠った笑みを「13」に対して向けたのだった
互いに武器を下ろす「13」と「4」
それを見ていた冬香は不思議そうな顔をしたまま「13」に問いかける
「勝ったのか・・・? 「13」」
だがその問いに対し、「13」は首を横に振る
「いや。今の戦いの間、「4」が俺にトドメをさせた回数は27回。それに対し俺は、「根源接続」を使ってようやく1回・・・」
その時、フラリと「13」の身体が揺れると地面に向かって倒れ込む
「「13」!!!」
咄嗟に、冬香は倒れる「13」を支える
「しかも・・・どうやらその1回で・・・全ての力を使い切ったらしい・・・」
疲労困憊と言った様子で「13」はなんとか声を絞り出す
そんな状態の「13」に対し、「4」は呆れた様に告げる
「たった一回使っただけでそれでは、切り札にもならんな」
「ああ、そうみたいだ・・・」
そう答える「13」に対し、「4」は背を向ける
そして・・・
「「運命を創り出す能力」か。儂の「絶対回答」をも消し去る能力・・・。もしそれを完全に使いこなせたのなら、「1」を倒す事も出来るかもしれん・・・」
そう呟くと、背を向けたまま「13」に告げる
「・・・今この時点で、お前は暗殺者でもなんでもないただの接続者となった。殺されたくなければ、二度と儂の前に姿を見せるな」
そして「4」は、その場から立ち去ろうとする。だがその時・・・
「・・・「4」」
その背中に向かって、「13」が呼びかける
「・・・何じゃ?」
背中を向けたまま問いかける「4」に、「13」は一言・・・
「今までありがとう」
そう、告げた
それに対し「4」は、両手を腰に当てナナメ上の天井を見ながらふう っと息を吐く。そして・・・
「・・・さらばじゃ」
そう答えると、音も立てずにその場から消え去った
暗い地下街で、倒れた「13」を介抱する冬香
しばらく経って、回復した「13」は立ち上がると冬香に向かって告げる
「行くぞ冬香。ヤツを・・・ナンバー・「1」を殺す為に」
「ああ・・・」
そして二人はナンバー・「1」達が陣取る東京スカイツリー跡へ向かうのだった
それからほんの少し経った頃
暗殺課本部の課長室へ「4」が帰還する
帰還した「4」に対し、デスクに座ったまま吹連は言った
「ご苦労様、「4」」
「ああ」
そう答えると、「4」も近くのソファーに腰掛ける。そして・・・
「状況はモニターしておったんじゃろ? あの二人は暗殺課の下を離れた。・・・これで「お前の指示通り」じゃな?」
「ええ。全て想定通りよ」
「4」の言葉に対し
吹連はそう、事もなげに答えたのだった




