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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第一章:恋の炎はその身を焦がして燃え上がる
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そして死神は現れる


「ァッ・・・!!!」


冬香の口から苦し気な息が漏れる!

冬香を片手で持ち上げたまま、レンはその様子をぼんやりと眺めていた


「ッ・・・!!!」


足をばたつかせながら、レンの腕を掴み振りほどこうとする冬香!


(駄目だ!ビクともしない!!!)


だが接続者となったレンの腕力は正に超人のそれ

ただの人間である冬香の力では指一本引きはがす事すら出来ない!


(・・・駄目だ・・・意識が・・・)


徐々に白く染まっていく意識、苦しいという感情すらなくなっていく。だが・・・!


チャキ!


最後の力を振り絞り、冬香はレンの頭部に持っていたリボルバーを突きつける!

例え能力者と言えど、至近距離から頭部に銃弾を食らえば即死は免れない!

だがその時、その銃口をぼんやりと見つめていたレンが呟く


「いいよ・・・撃っても・・・」

「ツ・・・!」

「撃ちなよ、トーカ・・・」


レンは目の前に銃を突き付けられながらも何の行動も見せない


(撃たなければ私が死ぬ・・・!レンを殺すしか、私が助かる道はない!)


迷っている猶予はない!冬香はリボルバーの引き金にかけた指に力を込める・・・!だが・・・!


ガシャンッ!


冬香が下ろした右腕からリボルバーが地面に落ちた

それを見下ろしていたレンの表情がほんの少しだけ悲しそうに歪む


「撃たないんだ・・・優しいねトーカは」


そしてレンは冬香を掴んでいた左手に更に力を込める


「・・・ガッ、ァァァァッ・・・!」

「大丈夫、トーカはアイツラみたいに燃やしたりしない。綺麗なまま殺してあげる・・・」


もはや助かる術は無い

最後の手段も自ら手放してしまった


(私は・・・死ぬのか・・・?こんな所で・・・何を成すことも出来ず・・・)


目の前に死が迫ってきているのを感じる

その最後の瞬間に冬香の脳裏に浮かんだ物、それは・・・


(ごめんなさい・・・お父さん・・・)


冬香の瞳から一筋の涙が流れ落ちる

そして冬香の身体から力が抜け、その命が失われようとした・・・その瞬間!!!


ダンッ!!!


放たれた一発の銃弾!


「ッ!?」


レンはトーカの首を離すと咄嗟にその銃弾を回避する!


ドサッ!


「ガハッ・・・!ハァ・・・ハァ・・・!!!」


レンの腕から解放された冬香は、地面にうずくまりながら苦しげに呼吸する


「一体・・・誰が・・・?」


そして冬香は教室の隅、銃弾が飛んできた方向へ視線を向ける

そこに立っていたのは・・・


「おにーさん・・・?」


黒いコートを身に纏い

右半分は笑い、左半分は悲んでいる

そんな異様な仮面を被った、白髪の青年だった・・・!






コッ・・・コッ・・・


静寂に包まれた教室にブーツの音だけが響く

そして暗闇の中、一歩一歩近づいてくるその仮面の男にレンは問いかける


「おにーさんなの・・・?」

「・・・」


そのレンの問いに、仮面の男は顔を覆っていた仮面を外す


「み・・・御音・・・」


そう、それは暗殺者の装束に身を包んだ御音だった

地面にうずくまったまま呟く冬香に御音が告げる


「ここから先は俺の仕事だ、離れていろ」


御音は冬香に視線を向ける事もなく言うと、まっすぐレンの前へ歩いていく

そしてレンは、目の前に立った御音に少しだけ嬉しそうな表情を見せると言った


「来てくれたんだ・・・おにーさん」

「ああ・・・」

「トーカを助けにきたの?」


そう問いかけるレン、その問いに御音は・・・


「いや、違う」


簡潔にそう答える


「え・・・?」


その答えにレンは意外そうに目を丸めた後、今度は先程よりも遠慮がちに問いかけた


「じゃあもしかして・・・アタシを助けにきてくれたの?」


すがる様な気持ちでそう口に出すレン、しかし・・・


「それも違う」


やはり御音は否定で答える


「じゃあ・・・なんで・・・?」


そう呟くレンに対して御音は冷静に、静かな声で告げた


「俺は、オマエを殺しに来たんだ」


チャキッ・・・


そう言って御音は手に持っていた拳銃をレンに突きつける


「アタシを・・・殺しに・・・」


それに対してレンは愕然とした表情を見せた後、ゆっくりと俯いた

そして・・・ボソリと呟く


「アタシが・・・接続者だから?」

「そうだ」


そう答えた後、御音はレンに言う


接続者コネクターは全て殺す、それが暗殺者アサシン。だから殺す、俺がオマエを殺す理由はただそれだけだ」


そして周囲を凍り付かせる様な殺気を纏わせながら、御音は・・・

いや、「13」は死神の宣告を告げた


「対象、接続者「羽崎恋」。・・・当該対象の殺害許可を受諾、ナンバー「13」。暗殺開始アサシネイションスタート






13がレンに死の宣告を告げる・・・それと同時に!


ダンッ!ダンッ!


13が両手に持っていた拳銃を発砲する!しかし!


「あっ・・・アハハハハハ!!!」


音速を超える銃弾をレンはいともたやすくかわすと、13に対して右手をかざす!


「ハハハ!!!そうなんだ!そうなんだ!じゃあもういらない!!!おにーさんもトーカも!みんなもういらない!!!」


ゴオッ!!!


レンの右手から火球が放たれた!


「全部全部燃えてなくなっちゃえ!!!」


それは13を飲み込む様に真っすぐに向かっていく!だがそれに対して!


「・・・!」


ドガッ!!!


13は近くにあった机を火球に向かって蹴り飛ばした!


ゴオオオオオッ!!!


13の盾となり一瞬で炎に包まれ燃え尽きる机!だがその時!


「・・・ッ!?」


直感的に危険を察知した13は、その場から飛びのく!


「黒こげになっちゃえええええっ!!!」


直後!炎を突っ切りながらレンが掴みかかってきた!


「くっ!!!」


間一髪!レンの右手をかわす13!次の瞬間・・・!


ゴッ!!!


レンの右手に触れた金属製の椅子が赤熱して溶け出す!


「この威力は・・・!」


間合いを離した13は、拳銃を突きつけながら隙を伺う

その時、13の耳の小型通信機から声が聞こえてきた


「13、解析が完了した。対象の能力適正はB+、「かなり深く繋がっている」と思われる」


それは本部から指示を出す安栖の声だ


「能力は発火能力ファイアスターター、ポピュラーな能力だが彼女の場合そこらの接続者とは威力が段違いだ。特に直接掴んでからの能力は発火なんて生易しい物じゃない。掴まれたら最後、一瞬で骨まで溶かされて終わりだ」

「接近戦は不利か・・・」


そう呟くと間合いを取りながら銃撃を繰り返す13!


ダンッ!ダンッ!


だがやはり、銃弾はレンにかすりもしない!


「アハハハハハ!!!凄い!弾丸がまるで止まって見える!!!これが接続者!!!これが力!!!」


そう叫ぶレンの表情には狂気が混ざりつつある

どうやら戦闘の快楽に、力を行使する快楽に飲み込まれつつあるようだ


「こんなんじゃアタシは殺せないよ!?おにーさん!!!」

「・・・ッ!」


狭い教室の中を縦横無尽に飛び回りながら戦い続ける13とレン!だがその時!


ゴォォォォッ・・・!!!


「炎が・・・!」


戦いの最中、レンが放った炎が周囲一帯に引火していた!

その炎はあっという間に教室中を覆いつくしていく!


(チッ!ここで戦うのは不利か!?)


13は両手の拳銃をホルスターに仕舞うと、教室の隅に座り込む冬香の元へ駆け出す!

そして13は問答無用で冬香を左手で抱えると・・・!


「なっ!?お前一体何を!?」

「一旦後退するぞ!」


ドガァッ!!!


教室のドアを蹴り破り廊下へ飛び出す!そして!


ガシャァァァンッ!!!


そのまま廊下のガラスを突き破って宙へ飛び出した!


「ッ・・・!?ここ三階・・・!!!」

「口を閉じろ!!!」


バシュンッ!


その瞬間!13の右手からワイヤー付きのアンカーが射出される!


ギュンッ!


そして近くの電灯に固定されたワイヤーを使いスイングする様に地面スレスレを滑走、着地する!


「くっ!・・・とりあえず広い場所には出られたか・・・。アンタも早く立て」

「あ・・・ああ」


抱えていた冬香を下ろして安堵する13。だがしかし!


「アハハハハ・・・逃がさないよ?おにーさん」


後ろから聞こえてきた声に振りかえる13と冬香!

そこに居たのは炎上する校舎を背に笑うレンの姿だった!

レンの方に視線を向けながら、13は冬香に告げる


「アンタは下がっていろ・・・」

「だ、だが・・・!」

「邪魔だと言っているんだ」


そう言いながら再び拳銃を抜くと戦闘態勢に入る13!


「行くよ?おにーさん」

「ああ、今度こそ殺してやる」


そして再び接続者と暗殺者の戦いが始まった!






ダンッ!ダンッ!


校庭を走り回りながら銃撃を繰り返す13!だがしかし!


「無駄だって!こんなんじゃ何発撃ったって私は殺せないよ!?」


接続者となったレンに対して、13の銃撃は効果が薄い!


(・・・なら!)


次の瞬間!レンの周囲を走っていた13が方向転換!

レンに向かって突撃!近接戦を挑む!


「13!危険だ!!!」


通信機ごしに安栖が叫ぶ!だが!


「捕まらなければ問題ない・・・!」


ダンッ!


そして銃をレンに突きつけ至近距離から発砲する!しかし!


「だから無駄だって!」


至近距離からの銃撃!だがこれもレンにはかすりもしない!

当然ながら、至近距離から放たれた音速を超える銃弾を撃たれてから回避するのは如何に接続者と言えど不可能

だが常人離れしたレンの感覚は、銃撃を「撃たれる前に回避する」事を可能にしていた!


ダンッ!ダダンッ!!!ダンッ!


しかし!そんな事には一切構わず、13は次々と弾丸を連射する!

何発かわされようと一発当たれば致命傷となる、それは人間も接続者も変わらない!

そして次弾を撃ち込もうと銃を構えトリガーを引いた・・・!その時!


カチッ!


「!?」


13の右手の銃が弾切れを起こす!すかさず13は左手の銃を構えようとするが!


「遅いよ!!!」


ドガッ!!!


レンは右手の手刀で13の左手を下から払う!13の左手にあった銃が宙に舞う!


「チッ!」


たまらず後方へ下がろうとする13!だがしかし!


(チャンス!!!)


右手の銃は弾切れ、左手の銃は13の手を離れた!

今が好機と見たレンは13に向かって間合いを詰め、炎を纏った手を振りかざそうとした!・・・だがその時!


「ッ!!!」


レンの視界に入った13の瞳、それは追い詰められた者の瞳ではない!

それは獲物を仕留める時の狩人の様な、冷静で冷酷な瞳!


(しまっ・・・!フェイク!?誘われた!?)


ブンッ!!!


次の瞬間!

振り上げられた13の蹴りをレンは紙一重でかわす!

もしあのまま踏み込んでいればその強烈な一撃をもらっていただろう・・・!

だが!13の攻撃はそれで終わりではない!


スッ・・・


ポロリと13のブーツから落ち、二人の間の宙に舞った物

それは13のブーツに取り付けられていたナイフだった・・・そして次の瞬間!


ヒュンッ!!!ドシュッ!!!


二人の行動はほぼ同時だった!

落ちてきたナイフを左手でキャッチすると、そのまま逆手でレンの心臓を貫こうとした13に対し!

レンは何の躊躇もなく、そのナイフを右の手のひらで受け止めた!


「アハハハハ!!!今のは惜しかったね!おにーさん!!!」


その時!ナイフを受け止めたレンの右手から炎が吹き上がる!


「チッ!!!」


その瞬間!13は素早くナイフを手放すと後方へ飛ぶ!

そしてレンは右手のナイフを引き抜くと無造作に放り捨てる


「アハハ・・・ハハハハハ・・・!!!楽しい!!!戦うってこんなに楽しいんだ!?ねえ!おにーさんもそうでしょ!?」


狂気に満ちた眼差しで13に問いかけるレン、だがしかし・・・


「いいや、全く」


パシッ!


その瞬間落下してきた先程レンに打ち上げられた左手の銃を、13は視線を動かす事もなくキャッチすると

そのまま両手の銃の空になったマガジンを捨て、リロードをする


「これはただの仕事だ」


と冷たい眼差しを向けたまま言い放つ


「冷めてるなぁ、おにーさんは・・・。だったら!もっと熱くしてあげるよ!アタシの炎で!」


そして暗闇を炎上する校舎が照らす中、更に尋常ならざる戦いを見せる13とレン!






その時、冬香はその接続者同士の戦いを校庭の隅に座り込みながら見つめていた・・・


「霧生監査官、聞こえるかい?」

「あ、安栖研究主任!」


突然、冬香の通信機に安栖から通信が入る


「13に頼まれてそちらの状況をモニターしていた、とにかくその場から離れるんだ」


安栖は冬香に避難する様告げる、しかし・・・


「で、ですが!レン、彼女は一時的に正気を失っているだけで・・・!」


なんとか二人の戦いを止めさせるべく行動しようとする冬香

だが、安栖は落ち着いた声で冬香に告げる


「・・・霧生監査官。羽崎恋は接続者だ、しかももう3人殺している」

「でも彼女は・・・!」

「もう手遅れだ。人を殺した以上、彼女はもう普通の社会では生きられない。放っておけば、彼女は生きる為にもっと大勢の人間を殺していく事になる。だからその前に始末するのが、僕達「暗殺課」の仕事なんだ」


安栖の言葉が間違っていない事、それは冬香自身が誰よりも理解していた


(東京の治安を守る為、接続者を殺す。私はその為にこの東京にやってきた・・・でも・・・!)


冬香は意を決した様に立ち上がると呟く!


「それでも・・・私は彼女を助けたい・・・!」

「待つんだ!霧生監査官!!!」


そして冬香は安栖の制止を振り切り、レンに向かって呼びかける!


「もう止めるんだレン!」

「トーカ!?」

「・・・アンタ!?一体何を!?」


突然飛び出してきた冬香にレンと13が動揺する!


「この事は私がなんとかする!君の事は私が守る!だから・・・!」


大声でレンに向かって呼びかける冬香!だがその瞬間!


「うう・・・あああああっ!!!」


その言葉に、レンが苦しみの声をあげた!

そしてレンが苦悶の表情のまま叫ぶ!


「五月蠅い!五月蠅い!五月蠅い!!!もうアタシは誰かに守ってもらう必要なんてない!!!」

「レン!?」


そしてレンは頭を両手でかかえると勢いよく首を振る!


「アタシはもう弱い昔のアタシじゃない!!!もう誰にも奪わせない!!!これからはアタシはアタシの好きに生きるんだ!!!だから!!!」


そして狂気に満ちたレンの瞳が冬香の姿を捉えた!それと同時に!


「邪魔をする奴は消えちゃえええええ!!!!!」


ゴオッ!!!


火球が冬香に向けて放たれた!


「えっ・・・?」


その瞬間、まるで世界が制止したかの様に冬香には思えた

目の前に迫る火球、それはまさに死そのもの

そしてゆっくりと、それは冬香に迫り・・・


「あっ・・・」


冬香の命は成すすべなく、その業火に焼き尽くされようとした・・・だがその直前!


「くそっ!!!」


ダッ!!!


全力で駆け出し、飛び込んできた13が右腕を思いきり伸ばす!そして!


ゴォォォォォッ!!!


「くおおおおおっ!!!!!」

「御音ッ!!!」


冬香に向かって放たれた炎を受け止めた13の右腕が業火に包まれた!

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