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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第八章:革命の生贄は起源へと捧げられ
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「2」


ナンバー・「1」が率いる接続者達によるゾーフ襲撃より3日後

治安維持課本部会議室では、治安維持課主要メンバーによる会議が行われようとしていた


会議が始まる直前、「4」が吹連に向かって言う


「双葉、病院で寝てなくてよいのか? あばらも折れたままなんじゃろ?」

「ありがとう「4」、でも大丈夫よ。こんな時期に黙って寝てなんていられないわ」


そして会議に参加する全員が揃った事を確認すると

会議を始めるべく声を上げた


「ではこれより、会議を・・・」


だがその時、副課長の飛山がその言葉を遮る


「その前に、吹連課長」

「何でしょう? 飛山副課長」

「そこの二人は?」


飛山が口に出した「二人」

それは、左腕に包帯を巻き会議室の椅子に座る冬香と

その後ろに控える様に立つ「13」の事だった


飛山の視線からその事を察すると、吹連は答える


「彼女、霧生監査官と彼女の担当する暗殺者ナンバー・「13」は先日のゾーフ襲撃事件の際、ナンバー・「1」がオリジンを持ち去った現場に居合わせていました。その為、この会議に参加させるべきと私が判断し、この場に招集しました」


その答えに対し、飛山は周囲を伺うが・・・


「・・・」


同じく会議に出席していたナンバー・「4」、ナンバー「9」は静観、「9」の監査官鳥羽も同様だ

「6」は今回も会議には参加していない


仕方なく、飛山は納得した様な態度を見せると吹連に向かって言った


「・・・まあいい。ではまず、先日の事件の概要について私から説明させてもらいますが、よろしいか?」

「ええ、お願いします」


その言葉と同時に飛山は立ち上がると、資料が映し出されたモニターの前に移動し説明を行う


「先日、×月×日に行われた国連監視団とルミリアム皇女によるゾーフ視察。その移動中、国道246号沿いにゾーフへと向かっていた国連監視団と護衛隊が謎の武装集団による襲撃を受けた。護衛に当たっていた警察職員、及び暗殺者の活躍により国連監視団の方々に怪我はなく、武装集団の撃退にも成功。ですが・・・それらは全て敵による陽動作戦だった。こちらの通信が途絶したタイミングで襲撃犯の本隊が攻勢を開始、その機に乗じてゾーフ内部へ敵の侵入を許す結果となった」


その時、モニターに映っていた画面が切り替わり、ある男の顔を映し出した


「侵入してきたのは元暗殺者ナンバー・「1」。「1」はゾーフの警護に当たっていた職員等を殺害しオリジンの間へと侵入。ここ10年間何の反応も見せなかったオリジンに何らかの手段で介入し、これを持ち去った。その後「1」が率いる武装集団は北東に移動、旧東京スカイツリー付近に拠点を構え、そこから移動する様子は見せていない。以上が現在までの状況となっている」


そこまで説明を終えると、最後に飛山は被害状況について補足する


「なお、「1」が率いる武装集団によるゾーフ襲撃の被害は怪我人が28名、死者15名。死者の中には研究主任の安栖宗次も含まれている」

「・・・ッ」

「他の人員はともかく、安栖が死亡したのは治安維持課にとってかなり大きな損失だ。治安維持課創設時のメンバーでもあり、接続者とオリジン研究の第一人者でもあった安栖を失い、我々治安維持課はオリジンを制御し東京の治安を取り戻すと言うプランで大きな後退を余儀なくされるだろう」


飛山の言葉に、その場に居た全員が口を閉ざす

研究者としてだけではない、安栖と言う人物は様々な意味で治安維持課を支えてきた支柱と呼ぶべき人物だったのだ


(安栖さん・・・)


それは「13」にとっても同じだった


施設の崩壊により死にかけていた所を「4」に連れられ暗殺者となった「13」

戦う事以外全てを失った、そんな「13」を安栖はよく目にかけてくれていた


「4」の元を離れた後も、安栖は監査官として「13」の面倒を見続けてくれた

「13」にとって安栖は、まるで兄か父親の様な尊敬する人物だったのだ


(アンタの分も、俺が仇を討つ・・・)


皆がそれぞれの想いを抱き沈黙する中、続けて飛山が放ったのは意外な言葉だった。それは・・・


「さて・・・。続けて、この被害に対する吹連課長の責任について問わせてもらう」

「!?」


飛山が放った言葉に、その場に居た全員に動揺が走る


「責任とはどういう事じゃ? 飛山隆鳴副課長」

「どういう事も何もないだろう「4」。みすみす敵をゾーフに侵入させ、多くの死傷者を出しオリジンまで奪取されたのだ。これを失態と呼ばずとして何と言う? その責任を、治安維持課のトップである吹連課長に問うのは当然の事だ」


その飛山の言葉に「9」も口を開く


「だが飛山副課長。今はオリジンを奪ったナンバー・「1」への対処を考えなくてはならない大事な時だ。今組織体系を乱し、足並みを崩すわけには・・・」

「今だからこそだ。オリジンを奪ったナンバー・「1」は全世界を脅かす脅威になりつつある。これを叩く為、二度目の失敗は許されない。次の作戦は完璧なプランを、完璧な指揮の元行わなければならないのだ」


飛山の内心、この機会に暗殺課の実権を握ろうという魂胆は「4」も「9」も理解していた

だが、飛山の言い分を真っ向から否定する事は難しい


「それでも今は・・・」

「そんな事を言っている場合では・・・」


互いに牽制しあう中、そのやりとりを聞いていた吹連が声を上げた


「分かりました」

「双葉・・・!?」

「飛山副課長の意見ももっともです。今回の失態の責任を取り、私は課長職を辞任する事を約束します」

「フッ・・・」


勝ち誇った様に飛山の唇の端がニヤリと吊り上がる。しかし


「・・・ですが。私が課長職を下りるのは、今回の作戦を終えてからです」

「何だと・・・?」


吹連の言葉に一転し、飛山の顔から笑みが消える


「吹連課長、先程の言葉を聞いていただけなかったのだろうか? 次の作戦はこれまでにない程重要な物となる、それを今回の様な失態を犯した貴方に指揮させるわけにはいかないのだと、私は言っているのだ・・・!」


ギロリと、吹連を睨みつけながらそう告げる飛山

だが・・・次の瞬間・・・


「ええ。ですがそれは却下します」

「ッ!!!」


ゾクリと、冷たい物が飛山の背に伝わる


こちらを見つめ返す吹連の瞳

静かな湖の様に澄んだその瞳の中にあるのは、泥の様に濁った殺意・・・!


「あの男、ナンバー・「1」を殺すのは私の役目。その為に、私は暗殺課を率いてきました。途中で誰かに任せるわけにはいきません」

「だ・・・だが・・・!」

「ご心配なく。次の作戦での失敗はありえません。あの男はどんな手段を使ってでも・・・確実に殺します」

「・・・っ、くっ」

「今回の作戦の後をどうされるかに関しては、飛山副課長の好きにして構いません。それで構いませんね?」


吹連が放つ異様な圧力に押される様に、飛山は口を閉ざす

それを肯定と受け取ると、吹連は全員に向かって話し始める


「では次の作戦についてですが・・・」


その時、それまで口を閉ざし周囲のやり取りを眺めていた冬香が声を上げた


「質問よろしいでしょうか? 吹連課長」

「何でしょう? 霧生監査官」


首を傾げる吹連に対し、冬香は感情を抑える様な静かな声で吹連に問いかけた


「あの男、ナンバー・「1」とは何者なのか? そして、何故暗殺者であるはずの「1」が裏切ったのか? そして・・・」

「そして・・・?」

「10年前に何があったのか・・・?」

「・・・」

「答えてください吹連課長・・・! 10年前の事件について・・・! 私の父が殺された事件について・・・!」


その言葉に、吹連は無言のまま冬香を見つめ返す。そして・・・


「・・・分かりました。もう貴方もこの件に無関係ではありませんしね。10年前に何があったのか、その全てを話します」


ゆっくりと頷くと、10年前の事件

とある実験について語りだした











10年前、2028年


旧国会議事堂跡に建設された研究施設ゾーフ

そこである実験が行われようとしていた


その実験が始まる数十分前

ゾーフの一室で実験の開始を待つナンバー・「2」

現暗殺課課長吹連双葉の元に、一人の女性が訪ねてきた


「双葉ちゃん、どう? 調子は? 緊張してる?」


そうのんきな笑顔で話しかけてくる「2」とそっくりの顔をした女性

それは「2」の姉の吹連瑞葉だった


「双葉じゃなくて「2」よ。他へのシメシもあるし、本名で呼ばないで」

「そんな事言っても、私にとって双葉ちゃんは双葉ちゃんだし」


そんな姉に対し、「2」は軽くため息をつくと言った


「私はいいから、姉さんの方こそ準備出来てるの? 研究班の方で今回の実験のデータ取るんでしょ?」

「んー、そうなんだけど・・・。そっちの方は宗ちゃんがはりきってるから、私はあまりやる事がないって言うか・・・」

「だからって完全に暇ってわけじゃないんでしょ? それに・・・」


その時、部屋のドアが開き白衣を着た男性が現れる


「ああ! こんな所に居たのか瑞葉!」


温和そうな顔の白衣を着た男

それは研究室主任の安栖宗次だった


ここまで走ってきたのか、安栖は荒い息を整えながら言う


「もうすぐ実験が始まるんだぞ!? 25番の機材チェックの報告は!?」

「え? ・・・あ!!!」

「やっぱり忘れてたのか・・・。とにかく時間がない! 急ごう!」


そう言って慌ただしく部屋を出て行こうとする二人

その時、「2」の視界にキラリと光を反射する物が見えた


二人の左手薬指にはめられた一対のリングが


「2」が無意識にそれから顔をそむけた、その時


「じゃあ、双葉ちゃんも頑張って」


部屋を出ていく直前、安栖が「2」に向かって言う


「ええ・・・」


それに対し「2」はいつも通りそっけなく返すと

静かに3度、深呼吸をして部屋を出た











「2」が今回の実験の場、オリジンの鎮座する部屋に到着した時

周りにはすでに、「1」を除く今回の実験に参加するシングルナンバー達が揃っていた



ずっと二人で延々と会話している15~6程の双子の兄妹、「7」「8」



無言のまま壁によりかかって目を閉じている筋肉質の元軍人「5」



同じく無言で静かに時間を待っている元華族「9」



何を考えているのか分からない不気味な笑みを浮かべる元殺し屋「6」



実験前にもかかわらず何やら気の良さそうな男性と世間話をしている女「4」



それから・・・



「よう! 遅かったな「2」」


馴れ馴れしく話しかけてくる軽薄そうな・・・いや、軽薄な男「3」


「時間には間に合ったはずよ、何か文句でもある?」

「? 別に文句なんて言ってないだろ? 何か機嫌悪い?」

「・・・そんな事ないわ」


そんな3の追求から逃れる様に視線を反らす、その時・・・


「全員揃っている様だな」


部屋のドアが開き、圧倒的な程の威厳を放つ男が姿を現す

最初の暗殺者、暗殺課を創った男、ナンバー・「1」


その威厳に、思い思いに行動していた他のシングルナンバー達も自然と背を正し視線を向ける


「今日この実験が成功すれば、我々暗殺者と日々増え続ける接続者との無益な戦いも終わりを告げる。我々9人がこの東京をあるべき姿に戻す、争い止まぬこの街を救う救世主となるのだ」


そう8人に告げる「1」、だがしかし


(「1」には悪いが、私は救世主になんてなりたいわけじゃない。でも・・・)


この街を元に戻す、それに関しては同意だ


全てが元に戻り、平和で何の変哲もない日常が戻ってくる

それでようやく、私は「諦める」事が出来るはずだから・・・


「では始めよう。オリジンを我ら人類の手で制御する実験。オリジンとの完全接続実験を」


そして実験が始まる

何もかもが歪んだ、その実験が

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