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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第一章:恋の炎はその身を焦がして燃え上がる
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「キミ」を呼ぶ声


「くそっ!!!」


冬香の目の前でレンを拉致したワンボックスカーは素早くその場を走り去っていった!


「早く追わないと・・・!」


冬香は走り出すと、近くに駐車してあった自分の車へと乗りこむ!

そしてすぐさま!冬香は機械を操作して叫ぶ!


「情報連結!対象!白のワンボックスカー!」


ズラァッ!!!


それと同時に、車内のところどころに設置されたモニターの全てに東京中に張り巡らされた監視カメラネットワークのデータが表示された!


「違う!これも違う!」


その膨大な量のデータを素早く精査していく冬香!そして!


「見つけた!新宿から明治通りを渋谷方面に逃走中!」


ブォンッ!!!


それと同時に冬香は車を急発進させる!


ギャキキキキキィッ!!!


そして凄まじい速度で逃走車両の追跡を始めた!

犯人を追って車を走らせる冬香!

その時、冬香はハンドルを握ったまま音声入力で機械を操作する


「コール!ナンバー13!」


プルルルル・・・プルルルル・・・


その冬香の声と共に、車に備え付けられていた通信機が呼び出し音を鳴らす。そして・・・


「何かあったのか?」


通信機ごしに聞こえてきたのは御音の声だ、すぐさま冬香は叫ぶ!


「レンがさらわれた!今私は犯人を追跡している!」


そう焦りながら叫ぶ冬香!

拉致されたレンがどの様な目にあうのか、時間の猶予はない!


「御音もすぐに来てくれ!」


レンを救出すべく、冬香は御音に応援要請を告げる!しかし・・・


「・・・それで?その件は「接続者」とどう関係があるんだ?」


その冬香の言葉に対して返ってきたのは予想外の言葉だった


「な・・・何・・・?」


その御音の答えに一瞬言葉を詰まらせる冬香、しかしすぐさま正気を取り戻すと・・・


「何を言ってるんだ!?人がさらわれたんだぞ!助けるのが私達の仕事だ!」


そうハンドルを叩きつけながら叫んで答える!

だが、御音は尚も冷静な声のまま答えた


「違う。俺達の仕事は接続者の始末、一般人を助けるのは一般の警察職員の仕事だ」

「なっ・・・!?」


その言葉に動揺する冬香

何故なら、御音の言っている事は何一つ間違っていないからだ

冬香と御音が所属する特別治安維持課の任務は東京の治安を乱す接続者、ならびに接続者に関連する組織の壊滅

そこに一般人の保護などは全く含まれていない、だがしかし・・・


「見知った人間が危険に陥っているんだぞ!?なんとも思わないのか!?」


霧生冬香と言う人間はそんな理屈を許容出来る様な人間ではなかった

大声で通信に向かって再度怒鳴りつける!だが・・・


「思わない。俺は「暗殺者」だ、接続者を殺すのが俺の仕事。それだけだ」


御音の答えは変わらない、あくまでも冷静に事実だけを冬香に告げた


「くっ・・・!」


反論は出来ない、自分が間違っているのは冬香自身が分かっている

だが冬香は反論する代わりに歯を食いしばると・・・


「もういい!!!私一人でなんとかする!!!」


そう叫んで通信を切り、車のアクセルをさらに踏み込む!


(もうあんな人の心が分からない接続者バケモノには頼らない!私一人でレンを助ける!!!)


冬香は乱暴にハンドルを操ると猛スピードで追跡を再開した!

そして同じ頃・・・


「・・・全く」


一方的に切れた通信に対して御音は一言呟くと


バサッ


部屋にかけてあった黒コートを身に纏い、夜の闇へと溶け込んでいった・・・






そしてしばらく経った後

冬香はとある建物の側に停めてあった、白のワンボックスカーを発見する

車を降り、ワンボッスカーの中を伺う冬香


「・・・居ない。建物の中か・・・」


そして正面の建物へ視線を向ける、その建物はどうやら学校の様だった

長らく手入れがされていない様で、恐らく昔に廃校になった学校だろう


「・・・ッ」


冬香は銃を手に慎重に校舎の中へ入っていく

夜の闇に包まれた校舎はシーンと静まり返っており、かなり不気味な様子を見せていた

しかしその不気味さをかき消す様な違和感が、冬香の思考を迷わせる・・・


(静かだ・・・)


そう、静かすぎる

先程建物の外に停めてあったのは、間違いなくレンを拉致した白のワンボックスカーだった

にも関わらず、校舎の中には話し声一つ聞こえていない


(手遅れだったのか・・・?)


最悪の想像をしつつ、冬香は慎重に教室を一つ一つ確認していく。その時・・・


(・・・?何だこの匂いは?)


校舎を探索する冬香の鼻腔を刺激する匂い、どこからか漂ってくる刺激臭

それは今まで嗅いだ事のない匂いだったが、一つだけ言える事はとてつもない悪臭だという事だ


(・・・くっ。だがそんな事を気にしている場合じゃない・・・!)


口元をハンカチで覆いながら尚も校舎の中を探っていく冬香。そして・・・


ガラッ・・・


3階の端、慎重にドアを開けた教室の中にその姿はあった


「・・・ッ!レン!!!」

「・・・トーカ?」


教室の中に立ち尽くしていた少女、それはレンだった

すぐさまレンにかけよる冬香


「どうやら無事だったみたいだな!」


そう嬉しそうに呼びかけながら、冬香はレンの様子を伺う

少し衣服が破れている箇所はあるがレンはどうやら無傷の様だ、暴行の後などもない

冬香が安堵しホッとため息をついたその時、レンはボーっとした声で冬香に問いかけた


「・・・どうして、トーカが此処に?」


そのどこかハッキリしないレンの様子に首を傾げながら、冬香は答える


「どうしてって、助けに来たんじゃないか」

「助けに・・・?」

「ああ、とりあえずここを出よう。レンをさらった奴らが戻ってくるかもしれない」


そう言ってレンの手を引く冬香、しかし・・・


「そっか・・・助けにきてくれたんだ・・・」


レンはその場に立ち尽くしたまま動こうとしない


「レン?」


動こうとしないレンに首を傾げる冬香に向かって、レンは静かな声で呟いた


「でもね?もう助けてもらう必要ないよ」

「?」

「だってさ・・・アタシ強くなったから・・・もう守ってもらう必要ないんだ」

「・・・?だから何を言って・・・」


その時・・・


ゴロンッ・・・


「ッ!!!」


部屋の端で何かが動いた!咄嗟に身構える冬香!


「誰か居るのか!?」


瞬時に警戒を強める冬香!

そして慎重にその何かに近づく・・・その時!


「なっ・・・!?」


冬香の視線がそれを捉え、同時に冬香は物体の正体に気づいた!

真っ黒な物体、夜の闇のせいではない・・・!


「うっ・・・!これは・・・死体か!?」


それは真っ黒に「焼き焦がされた」人間の死体だった!


(まさか!この異臭の正体は!!!)


先程から漂っていた刺激臭・・・!

その正体に気付いた冬香は思わずその場で嘔吐しそうになるが、必死に吐き気をこらえるとすぐさま・・・!


「レン!ここは危険だ!早く脱出するぞ!!!」


レンの手を引いて脱出しようとする!だがその時・・・!


「・・・」


暗闇の中、異様な輝きを放つレンの瞳が冬香を見つめていた!


「・・・ッ」


その光に思わずたじろぐ冬香、そしてそんな冬香に向かってレンは呟く・・・!


「だから言ったでしょ?もう守ってもらう必要ないって・・・」

「レン・・・?まさか・・・!これをやったのは・・・!」


異様な雰囲気を放つレンから後ずさる冬香、そしてレンは笑みを浮かべながら言った


「うん。アタシ「接続者」になったみたい」

「ッ・・・!」


後ずさる冬香に対し、笑みを浮かべながら近づいていくレン


「どうしたのトーカ?」


そう言ってレンが首を傾げた瞬間!


「止まれ!!!」


冬香はその手に持っていた銃をレンに突きつけた!


「トーカ?」


レンは銃を突き付けられたまま、不思議そうに目を丸める

そんなレンに対し、冬香は眉間に皺を寄せて告げた


「レン・・・!君は殺人を犯したんだぞ・・・!?分かっているのか・・・!?」

「・・・?それが何?・・・別にこんなクズ、殺したっていいでしょ?」


冬香の言葉に訳が分からないと言った様子で答えるレン


「それでも人間だ!人を殺すのは罪だ・・・!」


そんなレンに向かって、そう悲しそうに冬香は叫んだ

その冬香の様子に、レンは静かに語りかける


「ねえ冬香。そいつら覚えてる?その炭の塊、アタシ達が初めて会った時の奴らだよ」

「なっ!?」

「コケにされた復讐だってさ?笑っちゃうよね、ただの逆恨みじゃん」


そう、もはや黒い物体となったそれらは

先日レンをを助けた時に御音が叩きのめした暴漢達だった

だがレンはその元人間であった物体に何の興味も示さず、冬香に続けて語り掛けた


「けどね・・・。アタシ、あいつらにここに連れて来られて襲われそうになってさ・・・凄く怖かった。助けてって何度も心の中で叫んでたよ?・・・けど、誰も助けに来てくれなかった。トーカもおにーさんも・・・来てくれなかった」

「・・・レン」

「・・・でもね?代わりに何か聞こえてきたんだ」

「何か・・・?」


その奇妙なレンの言葉に思わず問い返す冬香


「そう、何か。ただの音みたいな・・・でも言葉みたいな・・・「何か」。それがなんなのかは分からなかった、けど・・・」


ボッ!


その瞬間!レンの目の前に炎が浮かび上がる!


「けど分かった、これが「力」だって。アタシは「接続」したんだって・・・!」


そしてゆらゆらと炎が照らす中、レンは冬香に近づいていく!


「止まるんだ!レン!!!」


再度銃を突きつけたまま警告をする冬香!

だがレンはそれを全く意に介さず距離を詰めていく!


「だから・・・もういらない。アタシはアタシを守る力を手に入れたから・・・」


そして・・・!


ガシッ!!!


「ぐっ・・・!あああ・・・!!!」


冬香の目の前に立ったレンは左手で冬香の首を掴むと!そのまま片手で持ち上げた!


「もう・・・トーカはいらない」

「ァッ・・・!!!」


そしてレンは冬香を持ち上げたまま!その左手に力を入れた!!!

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