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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
断章:その物語は語られる事なく、いずれ流れる血と共に消え去る
53/105

殺し屋 暗殺者 殺人鬼


暗殺者アサシン


東京特別治安維持課、通称暗殺課に所属する戦闘員であり

その主な任務は、その名の通り接続者の「暗殺」


警察組織に属する人員でありながら

そのイリーガルな任務内容故に、半ば存在しない人員として扱われている


暗殺者となった者、その出自は様々であり

スカウトされた一般市民や、自ら志願して暗殺課に来た者

その他にも、その戦闘能力を買われスカウトされた元犯罪者等も存在する


そう言った組織の中で、その男は一際謎に包まれた存在であった


「ナンバー・6」


暗殺課創設初期メンバー、「シングルナンバー」の一人であり

能力「死の六階段カウントダウン」を使う強力な暗殺者


任務、つまり接続者殺しを愉しむ快楽殺人鬼

趣味は接続者を殺して、能力をチップとして収集する事


その出自は不明だが、彼を知る人間の大半が


「ヤツは暗殺者になってからああなったのではない、ヤツは暗殺者になる前からろくでもない人間だ」


と評している






ハハハッ!

そう、全くもってその通りだ






「ハァッ・・・! ハァッ・・・!」


深夜1時頃、ビル街を必死に走り抜ける一人の男の姿があった

超人的な身体能力で街を駆ける姿は、まるでパルクールの様にも見える


男は接続者だ


人間を超えた圧倒的な身体能力に、特異な能力を持つ存在

その中でも、男は強力な能力と高い戦闘力を持った接続者だった


だがそんな男が、今は脇目も振らず逃げ続けている


「何だアイツ・・・! いや、何なんだ「アレ」は・・・!?」


数分前、路地裏の闇の中にソイツは居た


スーツ姿の金髪の男、両手にはバタフライナイフ

男は即座に目の前にいるのが暗殺者だと理解した


だが、歴戦の接続者である男にとって暗殺者とは恐怖の対象ではない

返り討ちにすべく即座に戦闘態勢に入る。だがその時・・・


ゾクッ・・・!


こちらを見ながら笑みをうかべる金髪の男、歓喜に満ちた悪魔の様な笑み

それと目が合った瞬間、男は一目散に走りだしていた


戦おうなどとは微塵も考えなかった

それ程までに圧倒的な恐怖を感じたからだ


「このまま・・・! グラウンド・ゼロの中まで逃げれば・・・!」


そこまで逃げれば暗殺者は追ってこない

いくら暗殺者と言えども、何の準備もなくグラウンド・ゼロ内部へと踏み込むのはリスクが高いはず


そしてグラウンド・ゼロの外縁部まで踏み込んだ、その直後・・・!


「はいそこまで。随分遠くまで逃げるなぁ・・・?」


男の前に立ちふさがる様に現れた影!

先程見た金髪の暗殺者!


「お、お前・・・!」

「追っかけるのも楽じゃあないんだぜ? まあ獲物を追い詰めるのも狩りの醍醐味って事かもしれないが・・・」


その時! 男の眼が鈍く光を放つ!

金髪の暗殺者が最後まで言い終わる前に、男は仕掛けていた!


(逃げられないなら!)


先手必勝!

相手が戦闘状態に入る前に一撃で殺す!


バキンッ


僅かに音を立て暗殺者の背後から飛来する物、それは近くの看板から外れた釘!


そう、男の能力は「磁力マグネティック

周囲にある金属製の物体を自由自在に動かす事が出来る能力!


暗殺者の心臓に向かって真っ直ぐ飛んでいく釘!

超高速で飛来する釘はもはや鉛の銃弾と遜色ない威力! しかし・・・!


キンッ・・・!


次の瞬間

高速で飛来していた釘が真っすぐ地面に向かって落ち、金属音を鳴らす


「へぇ? 「磁力」か。でも、その能力なら俺も使えるんだよねぇ」


それは暗殺者専用装備「外部電脳デバイス」の機能

セットしたチップの能力を自身の能力として使用可能とする機能だ


金髪の暗殺者はそれにより、外部電脳にセットされていた「磁力」を発動

男の使う「磁力」と相殺させ、飛来する釘を防いだのだ


「さーて。能力も見たし、殺すか」


そして金髪の暗殺者は笑みを浮かべた

男の背に再びゾクリとした物が駆け上がる、だがその時・・・


「ッ!? そうか! 思い出したぞ!!!」


金髪の暗殺者から感じていた恐怖の正体

それに気づいた男が口を開く


「お前! 殺し屋「6(シックス)」か!?」


その言葉を聞いた途端、金髪の暗殺者の顔から笑みが消える


「・・・へぇ? 俺の事知ってるのかオマエ」


金髪の暗殺者、「ナンバー・6」の言葉に

男は冷や汗を流しながら答える


「俺も元々は「裏」の人間だったからな。金次第で誰でも殺す、殺し屋「6」の噂は何度か聞いてたし。一度実際に、お前が仕事をした現場を見た事もある」

「ふ~ん・・・」


男は20年程前、まだ東京が壁に覆われて居なかった時の事を思い出す


その時、「6」のターゲットになっていたのはとある政治家だった


男はその護衛の任務に付いていたが、ある晩

他の案件で現場を離れる事になった男は、他の仲間に一時的にその場を任せて任務を離れた


そして翌朝、依頼人の自宅に戻った男が見た物は

ベッドの上で頭を撃ち抜かれている依頼人、首を掻っ切られて殺されている護衛達


それと、依頼人の隣で殺されていた依頼人の妻と15歳の娘の死体だった

その惨状に男は


(「殺し屋」だと? ふざけるな。これは殺し屋の仕事じゃあない、これは「殺人鬼」の仕業だ)


凄まじい嫌悪感と寒気を感じたのを覚えている


「ふぅん? 元同業者か。だがまあ見ての通り、今は殺し屋じゃなくて暗殺者だ」

「ハッ・・・。似たような物じゃねえか、外道には変わりないだろ」

「外道? ・・・そう言われりゃそうかもなぁ。フッ・・・ハッハッハッハッ!」


男の言葉に「6」は笑い声を上げる

その笑い声に戦慄を覚えながらも、男は殺意を滾らせる


(人の事を言えた義理じゃあないが。コイツは生かしておくわけにはいかねえ!)


そして男は「磁力」によって、近くにあった鉄の塊を引き寄せる!


「おっ?」

「同じ「磁力」だって言うなら話は早い。お前以上のパワーで潰せばいい!」


そして! 周囲にあった鉄の塊が「6」を押しつぶそうと迫る!


グシャッ!!!


だが! 「6」はこれを直前で回避!


「あんまり乗り気になれないが・・・。しょうがねぇなぁ・・・」


そして素早くナイフを構えると男に向かって突撃!


「接近戦を仕掛けるつもりか!? させん!」


その時! 「6」と男の間を遮る様に巨大な鉄板が空から落ちてくる!


ドガァンッ!!!


「・・・っと!」


「6」は突撃の状態から急ブレーキをかけると、後ろに向かって飛びこれを回避!

だが男はすかさずこの鉄板を縦から横に向けると、「6」に向かって放つ!


「真っ二つになれ!」


まるで真横に飛んでくるギロチンの刃の様に「6」に迫る鉄板! だがそれに対し・・・!


「おおっとおっ!!!」


そう叫びながら!

「6」は地面から1メートル程の高さで迫る鉄板の下をスライディングでくぐりぬける!


「なかなかスリルあるな! ハッハッハッ!!!」

「チッ! この異常者が!!!」


ほんの少し回避が遅ければ即死だったにも関わらず、まるで遊園地のアトラクションを楽しんでいるかの様に笑い声をあげる「6」

その異様さに男は焦り、更なる攻撃を仕掛けようとする! だがその時・・・!


「ッ! ・・・なっ!? 何っ!?」


突然! 男の身体がピクリとも動かなくなった!

それを見ると「6」はニヤリと笑みを浮かべながら男に告げる


「どうやら行動権を使い切ったみたいだな。ゲームオーバーだ」


その時、男の左手の甲には赤く「0」と言う文字が浮かんでいた


「死の六階段カウントダウン


傷を付けた相手に「6」のカウントを付け

6回の行動を終えた相手を行動不能にする能力


男の追跡を始めた時既に

「6」は男自身も気付かない程の小さな傷を付け、能力を発動させていたのだ


「残念。俺に追いつかれた時はまだ行動権が残ってたのになぁ。お前にとって最善の行動は「移動」、つまり俺から「逃げる」事だったのさ」

「ぐっ・・・! 「6」!!!」


勝負はついた

「6」の術中にハマった男に逆転の目はない


だがその時、圧倒的優位に立ったはずの「6」の表情から笑みが消える

そして「6」ははぁ~っとため息をつきながら言った


「にしても・・・。またハズレか・・・」

「ハズレだと・・・?」


「6」の言葉に男が問いかける

だが「6」の方は、男の事など眼中にないかの様に頭をかきながら呟く


「強力な接続者だから期待したのになぁ・・・。何処かにあるはずなんだよ・・・、何処かに・・・」


ガッカリと言った感じに俯きながらそう呟く「6」

だがすぐに、気を取り直した様に顔を上げると


「まあいいや。とりあえずお前は死ね。お前は「一回」で十分だし」

「一回・・・? 一体何の・・・!?」


男が疑問の声を上げようとする

だがそれを言い切る前に・・・!


グシャッ!!!


「ぐふっ・・・!!!」


男の心臓が潰され、男は口から血を吐きしながら絶命する


しかし、「6」の興味はすでに男にはない

ビルの隙間から見える月を見上げながら「6」は


「何処かにあるはず・・・俺の求めてる「能力」が・・・」


そう呟いたのだった

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