暗殺者が紡ぐ命
「死ねぇぇぇぇぇ!!!!!カズミィィィィィッ!!!!!」
怒号と共にカズヤが突撃を開始する!
「フウッ・・・!」
そしてそれに呼応する様に、軽く息を吐き出し13もカズヤに向かって走り出す!
(殺すッ!俺の全力でカズミを!!!)
間合いを詰めてくる13に対し、殺気をむき出しにしながらカズヤが銃を構える!だがその時!
ヒュンッ!
「なっ・・・?」
空を切り裂きながらカズヤの目の前に迫る物体、それは8mmの弾丸
(いつの・・・間に?発砲音すら・・・!)
カズヤが戦闘に意識を向け銃を構えるより速く、13は既に弾丸を撃ち込んでいたのだ!
だが!カズヤの思考は瞬時にこれに対応する!
(ッ!俺に向かって「弾丸」だと!?こんな物俺の「方位転換」でッ!)
キィンッ!
瞬間!カズヤの両目が輝き能力が発動!
カズヤは13の放った弾丸をそのまま13に向かってそのまま返そうとする!しかし!
「なッ!?」
その刹那の間に!13はカズヤの懐に飛び込んできていた!
「ッ!!!」
「方位転換」によって返ってきた自らの弾丸を回避しながら、すかさず左の銃剣による刺突を行う13!
「ちいっ!」
バッ!
だがこの13の先制攻撃をカズヤは右手で捌きつつ一歩後退する!
(ここはカズミの間合い!一度間合いを離さなければ!)
自らが得意とする蹴りの間合いまで離れようとするカズヤ!しかし!
「引くなら追い打つまでだ・・・!」
カズヤが後退すると同時に前方に踏み込む13!
カズヤが引こうとするのと同じ距離だけ間合いを詰め、今度は右の銃剣による斬撃を放つ!
「クッ!」
キィンッ!!!
銃剣による攻撃を同じく銃剣で受け止めるカズヤ!
甲高い金属音が周囲に鳴り響く!そして!
キィンッ!ギィンッ!!!
その後も連続して鳴り響くナイフとナイフが打ち合う音!
13の怒涛の連続攻撃に対し、カズヤは防戦一方となっていた!
(ッ!速いッ!!!何だこの速さは!?さっきまでのカズミと比べ物にならない速さだッ!!!)
13が繰り出す凄まじい速さの攻撃に動揺するカズヤ!
二人の戦いは13が優勢のまま進んでいく!
その二人の戦いを遠く、ビルの上から眺めている影
夜の闇にその肉食獣の様な瞳だけを輝かせながら、4が呟く
「迷いと言う物は技を鈍らせる」
4が語る言葉
それは、今まで13がカズヤに勝てなかった理由
「今までの13は繰り出す技の一つ一つに迷いがあった。そして心に迷いがあれば、技の速さにそれが出る。それは時間にしてみればほんの一瞬じゃ。0.1秒にも満たない程度の差。だがそのほんの少しの差が、我々暗殺者の戦いでは大きな差となる」
その時、13の攻撃を捌いていたカズヤの表情にじょじょに焦りが見え始める
ほんの少し、ほんの少しづつカズヤの足がすり足で後ろに下がっていく
「恐らく、今奴には13の攻撃が今までの倍以上に速く見えておる事じゃろう。そう・・・」
そして4は、ニヤリと笑みを浮かべながら断言する
「今の13に迷いはない」
「はあっ!クソッ!」
13の攻撃に圧倒されるカズヤ!だが!
(いや!これでこそだ!)
その表情から殺意や焦りが消え、熱い鉄を打って鍛え上げる様に闘争心だけが鋭さを増していく!
(俺はずっとこのカズミと戦いたかったんだ!俺達の中で最強だったカズミと!そして・・・!)
「ッ!?」
その時!防戦一方だったカズヤが反撃の体勢に入る!
「俺はそんなお前に勝つ為にここに来た!!!」
ヒュンッ!
カズヤの銃剣が13の頬をかすめていった!
今まで間合いを離してからの蹴り技が主体だったスタイルを、13と同じく手技主体のスタイルに切り替える!
(引くのを諦めた!?いや!)
カズヤの動きがより実戦的なコンパクトな動きに変わり、先程までとは逆に今度はカズヤが前に足を進めていく!
「今度はこっちの番だぜ!?カズミ!!!」
「クッ!」
左の刺突から間髪いれず首への斬撃!
虚を突かれた13の回避が一瞬遅くなる!そして!
「ここだっ!!!」
ダンッ!!!
その一瞬の隙を突いて、カズヤのハンドガンから銃弾が放たれる!
人間同士の戦いに於ける銃撃の威力、殺傷能力は言うまでもないだろう
そして接続者の戦いに於いても、それは変わらない
「ッ!!!」
その銃弾をギリギリで回避する13!
もちろん撃たれてから回避している訳ではない
近接戦の間も常に相手の銃口に意識を向けておくのは十字銃術の鉄則
(なんとかかわせた・・・!だがまだだ・・・!)
そう、カズヤの本命はこの後・・・!
「「方位転換」!そして!!!」
方向を変え再度13に襲い掛かる弾丸!それと同時に銃剣による斬撃が迫る!
(もらった!!!)
完璧なタイミングの同時攻撃!
銃撃と斬撃、両方を回避するのは不可能に見えた!だが・・・!
「・・・ッ!!!」
スッ・・・
「なっ・・・!?」
その間を縫うようにして13はこれを回避!
(何・・・!?どういう事だ・・・!今のは完璧のタイミングだったはず・・・いや・・・!)
その時、カズヤは自分の攻撃の軌道に違和感を感じる
(遅れていた・・・!ほんの僅かだが、連携に綻びがあった・・・!俺がミスをした・・・!?)
完璧に思われていた攻撃
しかしほんの僅かな反応の遅れにより、それは完璧ではなくなっていたのだ
絶好の好機を逃し動揺するカズヤ
その時!攻撃を回避した13は即座に反撃に移る!
ヒュンッ!
カズヤの左胴体に迫る銃剣!
「チッ!」
動揺しながらも、身体を捻りこれを紙一重で回避しようとするカズヤ。だが・・・!
シュッ!
「ッ!?」
13の銃剣がカズヤの腕をかすめ、赤い血の飛沫を地面に飛び散らせる!
(今のはかわしたはず・・・!いや!さっきの攻撃といい何かがおかしい!)
カズヤの感じる違和感
その時、それを見ていた冬香はその原因に気付く
「あれは・・・!?あれはまさか・・・!」
ほんの僅かにタイミングが遅れるカズヤの攻撃!
それと同時に13の右腕、義手の肩の部分に搭載されていた外部電脳が駆動音を上げる!
(頼む、ユウヤ・・・!「遅延」)
そう、それはグラウンド・ゼロの少年の能力
(私は戦ったり出来ませんし。私が持っているより、13さんが有効に使ってくれた方がお兄ちゃんも喜ぶと思うんです。だから・・・)
アイリから託された、ユウヤのチップから引き出された能力だ
(俺達は共に同じ十字銃術を学んだ銃術使い。だがそれに能力を組み合わせたカズヤの戦い方がある様に、俺には俺の・・・)
その時!
「くっ!調子に乗るなっ!!!」
ダンッ!
カズヤが放った弾丸が「方位転換」により向きを変え13の頭部に向かってきた!
「ッ!!!」
直撃コースの弾丸!それに対し・・・!
(借りるぞ・・・!ラオ・フーシェン!!!)
13は咄嗟に外部電脳から別の能力を発動!
「「硬化」!!!」
ギィンッ!!!
左手の甲で銃弾を弾き、軌道を反らせる!
「なっ!?素手で弾丸を!?」
その時、これまでの違和感の正体に気付きカズヤが叫ぶ!
「まさか!機械で発動させているっていう別の人物の能力か!?つまり、このズレも!?」
そう叫ぶカズヤに答える様に、13はカズヤに言い放つ!
「「暗殺者」には「暗殺者」の戦い方がある・・・!」
そして外部電脳で再度「遅延」を発動させ、カズヤの視覚をかく乱する13!
「チッ!!!小賢しいんだよッ!!!カラクリさえ分かれば・・・!」
だがカズヤはすぐに動きを修正!
ズレをものともせず攻撃を繰り出す!
(俺の能力適正では「遅延」の効果も下がるか・・・!)
本来のユウヤの「遅延」に比べ、13の「遅延」はその能力適正の低さ故に格段に効果が下がっている
それはほんの少し、カズヤの行動を鈍らせる程度の効果
(だが今は・・・カズヤに食らいついていくにはそれで十分だ!)
そして13は能力を発動させたまま、更に激しく攻撃を仕掛けていった!
互いに能力を駆使し銃撃、斬撃、打撃の応酬を繰り返す二人!
ダンッ!!!
カズヤの弾丸が13の左腕の肉を削り吹っ飛ばす!
ザシュッ!!!
すかさず放たれた13の刺突をガードしたカズヤの腕が、銃剣によって貫通される!
ダンッ!ダダンッ!キィンッ!!!
だがそんな負傷を意に介す様子すら見せず
空になった薬莢と鮮血をまき散らしながら攻防を繰り返す二人!
「おおおおおっ!!!」
「フウッ・・・!!!」
13とカズヤの戦い、それは完全に互角の戦いに見えた
だがしかし、それを見守る冬香の表情に少しづつ焦りが見え始める
(互角・・・二人の戦闘能力はほぼ互角だ。だが・・・このままでは・・・!)
冬香の視線の先にあるのは、十字銃術による超高速接近戦を行う13
そしてその間、全力稼働を続ける右腕の義手だった
(マズイ・・・!もう戦闘を始めて2分は経っている・・・!つまりあと60秒程で13の右腕は限界を迎える・・・!)
刻一刻と迫るタイムリミット!
そしてそれは当然13とカズヤも理解していた
(仕留められねぇ・・・!だが・・・決定打がないのはカズミも同じ・・・!)
(全てのアサルトパターンが見切られている・・・!やはり十字銃術使い同士では長期戦にならざるをえない・・・!)
(だが、アイツの右腕で長期戦が出来ないのは分かっている。ならどうする?俺がカズミならならどうする?)
(残りの時間で決着を付けるには、一撃必殺の賭けに出るしかない。至近距離からの銃撃なら・・・。だが残弾は残り僅か、外せば終わりだ・・・)
(・・・だがそれでも、俺を倒す為には残りの弾丸に全てを賭けるしかないはずだ・・・!)
最後に出す手は決まった!
互いに一度間合いを離すと構え直す!
(一か八か・・・!)
(それしかない!・・・だろう!?)
そして!13はカズヤに向かって突撃!
いや!吶喊を行う!!!だが・・・!!!
「何!?」
最後の賭けに出ようとする13に対し!
なんとカズヤも同時に前に出る!
「舐めるなよ!!!時間切れを待つつもりはねえ!お前が最後の賭けに出るって言うなら、もちろん正面から受けて立つぜ!!!カズミィィィィィッ!!!!!」
予想外のカズヤの行動に一瞬、13は動揺する!
そしてその一瞬の動揺の間隙を突き・・・!
ダダンッ!!!
カズヤが左右のハンドガンから発砲!先手を取る!
同時に二挺のハンドガンが両方ともスライドストップ!
カズヤの銃が弾切れである事を示した!
(これで残弾はゼロ!だがリロードは必要ない!これで終わらせる!!!)
13に取っては予想外の先制攻撃!だが・・・!
「ッ!!!」
意表を突かれながらも、それをかわしながら突撃する13!
当然その後にくる「方位転換」への警戒も怠っていない!
(カズヤの能力「方位転換」、一度発射された弾丸の向きを変える能力。だがこれまでで分かった事がある。カズヤの能力は自由自在に弾丸の向きを変えられる訳ではないという事だ。方向を変えるのは直線のみで曲射などは出来ない。そして変える事が出来る回数は一発の弾丸で一度のみ・・・!)
後方へ消えた弾丸を警戒しつつ、カズヤが能力を発動させる瞬間を見極めようとする13!
(注意していればかわせない攻撃じゃない・・・!この最後の弾丸をかわしてこちらの攻撃を叩き込む・・・!)
そのまま前へ踏み込もうとする13!だが・・・!
(・・・なんて事を考えてるんだろ?カズミ)
それらの思考は、全てカズヤの想像通り!
(そう、確かにこれが最後の弾丸だ。だがな・・・!)
キィン!
その時!カズヤの両目が輝き能力が発動!
(来るッ!!!)
それと同時に13は回避行動に移った!
ヒュンッ!
そして銃弾がその方向を変え!13に襲い掛かる!
しかし既にその軌道上から13は退避しており、銃弾は13には当たらない!
(かわした!このまま間合いを・・・!)
そしてそのまま最後の攻撃に移るべく左手の銃を前に構える13!
だがその時!攻撃の体勢に入る13を前に、勝利を確信した様にカズヤが叫ぶ!
「最後の攻撃をかわしたって油断したな・・・?」
「なっ・・・!?」
「・・・切り札は最後まで取っておくものだぜ!!!」
一度方向を変えた弾丸は再度能力で向きを変える事は出来ない!しかし・・・!
「ッ!?」
その時13が見たのは、向きを変えた弾丸の軌道・・・!
その軌道上に割り込む様に曲がってきた「もう一発の弾丸」!!!
「2発目!?まさかッ!?」
ギィンッ!!!!!
激しい音を立て弾丸と弾丸がぶつかり跳弾!二度目の方向転換を行う!!!
バスッ!!!
そして!その跳弾は13の胸部に直撃した!!!
「13!!!!!」
胸部に弾丸を受けた13の姿に冬香が叫び声を上げる!
「がっ・・・!」
大ダメージを受け、口から血を吐き出す13!
ガシャンッ!
そしてそのダメージに、構えていた13の左手からハンドガンが地面にこぼれ落ちる!
「勝った!!!」
銃を落とし、前のめりに崩れ落ちようとする13に対し
カズヤが勝利を確信した・・・その瞬間!
トンッ・・・
カズヤの胸に13の右拳が突き刺さる
「・・・何?」
だがその手にハンドガンは握られていない、銃剣による刺突ではなくただのパンチ
それも壊れかけの右腕をつんのめる様にカズヤの胸に押し当てただけの、打撃とも言えない攻撃だ
「一体何を・・・?」
そうカズヤは疑問の声を上げようとするが・・・
「やはり・・・お前の銃術に・・・俺の銃術では一歩及ばないか・・・。お前の切り札・・・かわす事は出来なかった・・・。だが・・・」
重傷を負いながら、13はカズヤに向かって言い放つ!
「「暗殺者」は・・・この程度では倒せない・・・!」
その時、カズヤは13の右腕が何かを握っている事に気付いた
「それは・・・まさか!!!!!」
「ああ・・・これが俺の「切り札」だ」
その手に握られていた物、それは・・・!
「グレネード!!!!」
13の右腕から発射されるグレネード、その予備弾だった!
(いつの間に・・・!!!いや、さっき「左手」の銃を構えた時か・・・!)
最後の攻撃に移るべく左手の銃を構えた13
だが、それは本命を隠す為のフェイク
左手の銃を見せたその隙に、右手の銃を捨てコートの内側から予備のグレネード弾を取り出していたのだ!そして・・・!
「外部電脳起動・・・レン・・・「発火能力」・・・!」
グレネード弾を握っていた13の右拳が炎に包まれる!!!
瞬時に13の意図を、13の行動を察知したカズヤが叫んだ!
「まさか!!!カズミ!!!!!」
「これが本当の最後の攻撃だ。耐えろよカズヤ・・・!」
「ッ!おおおおおッッッッッ!!!!!」
次の瞬間!
グシャッ!!!
炎に包まれた右手で13はグレネード弾を握り潰し・・・!!!
ガァァァンッッッ!!!!!
激しい爆発が、13諸共カズヤを吹っ飛ばした!!!!!




