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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第六章:十字架と黒き願いが交わり扉は開く
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物語の終わり


「カズミィィィィィッ!!!」

「カズヤッ!!!」


咆哮と共に、二人は左右の手を頭の前で交差させた構えのまま突撃を開始する!


(まずは突撃しながら発砲、銃弾を盾にして間合いを詰めるのが十字銃術のセオリー。それはカズヤも分かっているはず!)


そして突撃しながら、二人は相手に銃口を向ける!しかし・・・!


(そう、それがセオリー。だがそれは、相手がカズミ以外ならの話だ。無駄弾は使えない!)


互いに銃口を向けたままにもかかわらず、発砲する事なく間合いを詰めていく!

銃口を向けたまま突撃する13とカズヤ!

その距離、20メートル!10メートル!5メートル!!!


「・・・ッくぜぇ!!!」


最初に仕掛けたのはカズヤの方!

突撃の勢いを乗せたまま中段の右足刀を放つ!


「ッ!?」


まるで槍の様に飛んでくる蹴りを13は左に回避!

そしてその勢いのまま身体を回転させる!


「!!!」


そこから13が繰り出したのは後ろ回し蹴り、アサルトパターン36の始動技!だが!


ブンッ!!!


13の一撃が空を切る!

先程まであったはずのカズヤの姿はどこにも無い!

だが瞬間!本能が13の身体に回避行動を取らせる!


「下ッ!!!」


それと同時に!地を這う様に回転していたカズヤが足払いを放つ!

だが13は即座に後ろへ飛びこれを回避!そして・・・!


(35!銃撃が来る!)


後ろへ向かって飛ぶ13に、背中を向けたまま銃口を向けるカズヤ!

足払いからの背面銃撃、アサルトパターン35だ!


ダンッダンッ!


13に迫る2発の弾丸!

だがこの攻撃を予測していた13はこれをかわしつつ、背を向けたカズヤに向かって反撃!

両手の銃から弾丸を撃ち込む!


ダダンッ!


「フッ・・・」


だがカズヤはこの背後からの攻撃を見る事もなく、ほんの少し身体を横に向ける!


ヒュンッ!


カズヤの身体のほんの数センチ横を弾丸が掠めていく!


「ッ!?」


そして最小限の動きで弾丸を回避したカズヤは、そのままゆっくりと振り向く






その時、二人の戦いをビルの屋上から眺めながら4は考察していた


「あやつらの使う十字銃術、肝は何と言ってもスピードじゃな」


対接続者用として編み出されたと言う戦闘術、それが十字銃術

接続者の驚異的な思考速度に追いつく為、行動の大半をパターン化

思考を介さず反射で行動する事により、攻撃速度を限界まで引き上げている


さらにそこから繰り出されるのは、敵の虚を突く事を重視し組み上げられたアサルトパターンと呼ばれるコンビネーション

手技、足技、様々な状況から始動する打撃、斬撃、銃撃の複合攻撃であり

初見でそれを見切るのは不可能と言えるだろう


「いわば究極の初見殺し。だがパターンさえ見切ればその威力はグンッと下がる。とは言え・・・」


そう、それは二度目があったならの話だ

十字銃術の技は全てが一撃必殺

一撃当たったなら、それで決着は付く


「一撃食らえば敗北、敗北すれば死。故に、実戦に二度目などという物は無い。初見殺しは合理的な戦術と言えるじゃろう。しかし・・・想定外はいくつかあるようじゃな」






最初の攻撃を終えたカズヤは、13に向かって言う


「まあ、やっぱりこうなるな・・・。お互い無傷」


二人が交差したのはほんの一瞬、10秒にも満たない時間

だが通常の相手であれば、その一瞬で決着は付いていたはずだ


「十字銃術は一撃必殺の技。だが俺達は互いの手の内を知り尽くしているからな。攻撃方法も回避方法も、全てがこの身体に染みついちまってる」

「・・・」

「だからまあ、こうなる。相手が十字銃術使いの時に限り、長期戦にならざるを得ない。それがこの技の唯一の欠点だな」


その時、13はチラリと自身の右腕を見る


(長期戦になれば、不利になるのは・・・)


そう、13の全力の行動に右腕の義手は付いてこれない

戦闘可能なのは3分間のみ

だがその時、そんな13の考えを見透かした様にカズヤはニヤリと笑うと言った


「お前の考えてる事分かるぜ?長期戦なら右腕が保たないって考えてるだろう?右腕が動かなくなれば十字銃術は使えない。そうなれば俺に勝つ事は不可能だってな」

「・・・」

「けどな、カズミ。そんな事考える必要なんてない」

「何・・・?」


その時・・・!ぼんやりとカズヤの両目が紫色に輝く!


「忘れたのか?俺もお前と同じ接続者なんだぜ?」

「ッ!?」

「ここからは本気で行く、あっさり死ぬなよ?」


その言葉と同時に!カズヤは再度突撃を開始する!


ダンッ!


そして構える13に向かって、今度は迷わず発砲!

当然13はこれを回避するが・・・!


クンッ


回避したはずの弾丸が空中で向きを変え!再度13に襲い掛かる!


「クッ!能力か!?」

「そうさ!俺の能力「方位転換ベクトル」!そして・・・!」


二度目の攻撃をかわし体勢を崩した13にカズヤの銃剣が迫る!


「これがお前も知らない俺だけの銃術!十字銃術・改だ!」


キィンッ!


カズヤの銃剣による斬り下ろしを、同じくハンドガンの銃剣で受け止める!

だがその瞬間!カズヤは斬り下ろしてきた腕の銃で発砲!


ダンッ!


「なっ・・・!?」


狙いが定まっていなかった為、あらぬ方向へ飛んでいく弾丸!

だが接続者であるカズヤにとってそんな事は問題ではない!


クンッ


「また曲がっ・・・!」


13の後方から襲い掛かる弾丸!

狙いが定まっていなくとも発射さえすれば相手に向かって飛んでいく!

それがカズヤの能力、方位転換!


「っくう!」


だが13は上半身を思いきり横に逸らせ、この銃弾も回避する!

もはや本能とも言うべき危険察知能力がそれを可能にしていた!


「はっ!流石だなカズミ!だが!!!」


ドズッ!!!


「くっ・・・がはっ!」

「弾丸をかわすのが精一杯で、俺の攻撃を避けるのは無理みたいだな!」


13が弾丸を回避する為に身体を反らせた瞬間!カズヤの肘が13の身体に突き刺さっていた!そして・・・!


(ッ・・・マズイ・・・!アサルトパターン41・・・!)


肘を放った腕で斬り上げ!そして逆の腕での刺突!


ヒュンッ!ブンッ!


続く追撃を回避する13!

しかし一瞬反応が遅れ、カズヤの銃剣が13の頬に傷を付ける!


(反撃を・・・!反撃をしなくては・・・!)


ダダンッ!


咄嗟に弾丸を放ちながら後ろへ下がる13!しかし・・・!


「撃ったな?カズミ」

「ッ!?」

「ソイツを待っていたんだよ!」

「まさか・・・!」


瞬間!13の放った弾丸が180度方向転換する!


「俺の方位転換が操作できるのは、自分が撃った弾だけじゃないんだぜ!?」

「ぐうッ!!!」


自分の放った銃弾をなんとか回避する13!

だがカズヤはその隙に間合いを詰める!


(つ・・・強い!!!)


能力に加え、弾丸での攻撃をも封じられた13

もはや万策尽き、13はカズヤの前に追い詰められていくのだった






「あれは・・・まさに相性最悪と言った感じじゃのう・・・」


その時、その様子を遠くから眺めながら4は呟く


「接続者が得る能力はその本人の性質が大きく関わる。あの「方位転換」と言う能力。あれは自らの銃術を強化すると同時に、同じ銃術使いを封殺する為の能力でもあるわけか」


それがカズヤが望み、オリジンが答えた結果だったのだろうか?


「もはや・・・万事休すか?13・・・」






カズヤの怒涛の連続攻撃

銃撃をも封じられた13は防戦一方となっていた。その時・・・


(どうして俺は・・・まだ抗うんだ・・・?)


迫りくる攻撃をなんとか捌きながら13は考える


(分かっているはずだ・・・。罪人は俺の方・・・正しいのはカズヤの方だ)


致命傷だけはなんとか避けているものの、その身体には無数の傷が刻まれていく


(ミナを殺した罪を贖う為、カズヤによって裁かれる。これこそを俺は望んでいたはずだ・・・なのに・・・どうして俺の身体は動きを止めない・・・?)


心は既に死を受け入れている

だが本能がそれを拒んでいるという事なのだろうか?




もういい、もう止めてくれ


俺はもう耐えられない、生きていたくない


ミナを殺した罪にもう俺は耐えられない


これは俺に取って救いなんだ


だからもう・・・抗わなくていい




次の瞬間!


キィンッ!


カズヤの激しい攻撃を捌ききれず、激しい金属音と共に13のハンドガンが宙に舞う!


「ッ!!!終わりだ!!!カズミィィィィィッッッッッ!!!!!」


そしてその咆哮と共に!カズヤの渾身の一撃が!

カズヤの右の銃剣が13に向かって突き出される!


「あ・・・」


その瞬間、13は理解した

この攻撃はかわせない


(俺は・・・死ぬのか・・・?))


トクンッ・・・トクンッ・・・


全てを理解した瞬間

それまで激しく鼓動を刻んでいた心臓の音も緩やかになる


(ああ、そうか・・・。ようやく俺は死ねるのか・・・)


ミナを殺し、暗殺者として生きてきた5年間

その苦痛に満ちた人生もようやく終わる


(これで俺は・・・ミナの所に・・・)


その最後を、彼は全て受け入れ目を閉じた・・・

そして・・・




ドスッっと、刃が肉を突き刺す音が聞こえた


だが不思議な事に痛みは全くない


いつまで経っても・・・


いつまで待っても、死はやってこなかった




「・・・?」


その違和感に彼は目を開く、そして・・・


「1・・・3・・・」


自分をかばう様に立っていた女性

霧生冬香が胸から血を流し、崩れ落ちるのを見た

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