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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第六章:十字架と黒き願いが交わり扉は開く
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彼と彼が望んだ答え


13が襲撃した施設の奥で待っていた人物


「・・・よう。遅かったな、カズミ」

「カズヤ・・・」


それは13と同じ施設で育った孤児の生き残り、カズヤだった

暗闇に包まれた広い部屋の中央で、椅子に座ったまま13を待つカズヤ

13はゆっくりとそのカズヤの元へ歩いていく

その時、カズヤがクンッと首で何かを指し示す


「・・・?」


そこにあったのは、カズヤとやや離れた位置で向かい合う様に置かれたパイプ椅子


「座れよカズミ、話をしようぜ」

「・・・」

「この間は5年ぶりの再会だったのに、ロクに話をする暇もなかったからな」

「・・・ああ」


そう呟くと13は椅子に座り、カズヤと向かい合う。その時・・・!


ガタンッ!


突然部屋が振動すると、天井が開いた!

そして床全体が地上へ向かって昇っていき・・・


ドンッ・・・!


軽い衝撃と共に、部屋が地上へとたどり着く

たどり着いたのは低い柵に囲まれた、グラウンドの様に広く開けた場所だった


「月が出ていないのが残念だが。こっちの方が風情があっていいだろ?」


そう言ってカズヤはフッと笑みを浮かべる。そして・・・


「さて、何の話からすればいいかな?」


そう質問するカズヤに、13が問いかける


「この施設を壊滅させたのはお前なのか?」


カズヤはその質問に少し目を丸くしながらも答える


「5年ぶりだってのにそんな事が聞きたいのか?まあいい・・・お前の言う通り、この施設の連中を皆殺しにしたのは俺だ」

「組織を・・・裏切ったのか?」

「裏切り?いいや違うね、先に裏切ったのは奴らの方さ」

「何?」


そのカズヤの言葉に13は疑問の表情を浮かべる


「オイオイ、忘れたわけじゃないだろう?奴らが俺達に何をしたのか、そして「何をしようとしていたのか」」

「何をしようとしていたのか・・・?」


その時、カズヤは何かに納得した様に頷くと答えた


「ああ・・・そう言えばお前は知らなかったんだな」

「・・・どういう事だ?」

「ちゃんと教えてやるよ。5年前のあの日、施設が崩壊した日。奴らは唯一の成功例、接続者になったミナを別の施設に移送しようとしていた。それはお前も知っているだろう?」

「ああ」

「そしてそれと同時に、奴らは施設に残った残りの実験体。つまり俺達を処分しようとしていたんだよ」

「っ!?」


カズヤの口から語られた言葉に、13は驚愕する


「組織が、俺達を処分しようとしていた?」

「そうだ。偶然それを知った俺はミナを連れて施設からの脱出を図った。だがお前達と合流する前に見つかり、・・・ミナが暴走した」

「・・・暴走」


5年前、正気を失ったミナの様子を思い出す


「そして暴走したミナの能力、「接続リンク」により施設は地獄と化した・・・」

「ッ!?「接続」・・・!?」

「ああ、お前と同じ能力だよ。ただし、ミナの能力はお前が使う「接続」より遥かに強力だったがな」


13の能力「接続」

視線を合わせた人間と感覚や記憶を共有する能力

だが、カズヤが語ったミナの能力は13の物とは全くレベルが違っていた


「・・・ミナの「接続」は、範囲1キロ以内の人物の精神に介入し強制的に操る事が出来る能力」

「人を操る能力・・・」

「操れる人数に制限はあるが。範囲内であれば障害物等も一切関係なく操り、自らの意思で自由自在に人を動かす事が出来る強力な能力だ」


13の「接続」とは正に格が違う能力

だがその違いは能力者としての力の強さ、能力適正の違いなのだろう

人の精神に干渉するという意味で、根本的には同じ能力である事は間違いない


(5年前のあの日、ミナを殺した俺はミナと同じ能力に目覚め接続者になっていた?これは偶然なのか・・・?)


その事実に作為的な物を感じる13、だが答えは出ない

そしてそんな13に構わず、カズヤは話を続ける


「・・・だが暴走したミナはその能力を制御出来ず、ただその殺意だけを周囲に伝播させてしまった」


その時、13は突然正気を失い仲間達を殺していった警備兵の事を思い出した

そしてその一瞬前・・・


(コロシテヤル・・・)


脳裏に直接響いてきた声・・・


「あれがミナの・・・」

「・・・結果。奴らは味方同士で殺し合い、施設は壊滅したってわけだ」


それが5年前の真実

あの日、施設を崩壊させたのは能力を暴走させたミナだったのだ

そして・・・


(ミナァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!)


そんなミナを、13は殺す事でしか止められなかった

俯く13に対しカズヤが告げる


「そう・・・、お前がミナを殺した」


カズヤが告げた言葉、ミナを殺したと言う事実

それは13の心に深く突き刺さる


(ずっと、ずっと考えていた。他に道はなかったのかと?他にミナを助けられる方法がなかったのかと?どうして・・・俺は間違えてしまったのかと・・・)


今も13を蝕み続ける後悔と言う名の棘

そしてそんな13に対し、カズヤは以前と同じ質問をする


「なあ、もう一度聞くぜ?・・・どうしてなんだ?」

「・・・」

「答えろよカズミ。どうしてお前は・・・いや」


それは裁きの間の番人の様に、13に弁解を求める


「どうしてお前が・・・ミナを殺したんだ・・・?」


しかし、そんなカズヤの言葉に対し13は・・・


「・・・すまない」


と、以前と同じ答えを返すだけだった

そんな13に対しカズヤは、少しだけ表情を曇らせる


「そうか・・・答えは変わらずか・・・」


カズヤはそう呟きながら、椅子から立ち上がり。そして・・・


「なら・・・こうなるしかないよな?」


懐から銃剣の付いたハンドガンを2艇取り出し、構えた・・・!


「俺が復讐し、お前が裁きを受ける。「俺達」はこうなるしかないんだろ?」

「ああ・・・そうだな」


そして13も椅子から立ち上がると十字銃術の構えに入る!


「本気で来いよ?じゃないと意味がない」

「・・・」

「「決着」を付けようぜ?カズミ・・・!」


その言葉と共に、辺りがシンっと静まり返る

人の声はおろか、虫の鳴き声すらも聞こえない

まるで時間が止まったかの様な時が過ぎていき。そして・・・!


「「ッ!!!」」


同時に!二人の目が見開かれる!


「カズミィィィィィッ!!!」

「カズヤッ!!!」


そして施設の最後の生き残り

二人の銃術使いの戦いが火蓋を切った!






13とカズヤの戦いが始まる少し前

その施設に向かい闇の中を駆ける女性の姿があった

闇夜と化した東京の空を駆けていく女、暗殺者4の姿だった


「4!何処へ向かうつもり!?聞こえているの!?」


通信機から監査官である吹連の叫び声が聞こえてくる

4はその叫び声に対し、普段通りの調子で答える


「そんなに叫ばなくても聞こえておるとも。儂はただ見届けに行くだけじゃ」

「見届けに?一体何を?」

「もちろん、13とヤツの戦いをじゃよ・・・」


その言葉に吹連は疑問を浮かべる


「13?彼は今回の作戦不参加のはず。まだ怪我でメディカルルームに・・・」


即座に部下にメディカルルームをチェックさせる吹連、だが・・・!


「・・・えっ!?課長!」

「どうしたの?」

「ナンバー13が居ません!監査官の霧生警部補と共に出撃した記録が残されています!」

「何ですって!?・・・ッ!?まさか4!!!」


その吹連の言葉にも、4は冷静な口調のまま答える


「なに、これはただの取引じゃ。何の心配も要らん」


そう言いながら4はニヤリと笑みを浮かべ、その時の事を思い出す






そう、それは先日の話

竜尾会について情報提供をしたいと言う者との取引場所に4が赴いた時の事


「・・・まさかテメエが来るとはな」

「こちらも意外じゃったぞ?竜尾会の裏切り者が、まさかお前じゃったとはのう?」


4の前に現れた男

それは以前池袋で相対した双銃使い、カズヤだった


「何故裏切りを?」

「フン・・・。俺が奴らの下に付いてたのはカズミを探す為だ。だからカズミが見つかった以上奴らは用済み、テメエらが潰してくれるなら手間が省ける」

「なるほど。それで?情報は?」


4の言葉にカズヤは懐からUSBメモリを取り出す


「ここにある。竜尾会の保有する施設、その所在地、全ての構成員の情報だ」

「ふむ。ならばそれを渡してもらおうか」


そう言って手を伸ばす4、しかし・・・


「まだだ。これを渡すには一つ条件がある」

「条件?」


首を傾げる4に対し、カズヤが要求した条件


「俺とカズミ・・・ナンバー13が1対1で戦える場を用意する事」

「何?」


それは、13との決着の場を用意する事だった


「この条件が飲めないのなら・・・」


カズヤが軽く力を込めると、その手のUSBメモリがミシリと音を立てる

だがそんなカズヤの要求に対し、4は・・・


「いいじゃろう。飲もう」


あっさりと、条件を受け入れた


「・・・何?」

「ん?何を怪訝な顔をしておる?13と一対一で戦いたいのじゃろう?お前が指定する場所に13を向かわせる、もちろん他の暗殺者は手出しせん。それでいいじゃろう?」


どうという事もないと言った感じで条件を確認する4

そんな4の態度に、カズヤは逆に不審がってみせる


「テメエ・・・何を企んでいる?」


そんなカズヤに、4はクックと笑みをを浮かべ答えた


「何も企んでなぞおらんよ。13を強くさせる為には強者との戦いが必要じゃ。そしてお前は丁度良い当て馬になりそうじゃからのう、断る理由がない。まさにwin winの関係じゃな」


だがその4の答えに対し、カズヤは更に疑念を強くし問いかける


「アイツを・・・カズミを強くして何をする気だ・・・?」


その言葉と同時に!カズヤから殺気が放たれる!

答えによっては殺す、とその瞳が研がれたナイフの様にギラリと輝く。しかし・・・


「儂の目的か?それはのう・・・。儂は13のーーーーーー」

「・・・は?」


それから4が語った目的に、カズヤは目を丸くする

そして、呆れた様に問いかけた


「テメエ・・・狂っているのか?」


その言葉に、4は一瞬キョトンとした表情を見せるが・・・


「クッ・・・クックック!!!儂が狂っておるのかじゃと!?ああ、もちろん「狂っておるとも」!」


笑いながらそう答え、そして続けて言った


「接続者などという連中は皆「正気のまま狂っておる」!!!いや、もしかしたら狂う事こそが接続者になる為の条件なのかもしれんのう!クックック!!!」

「・・・」


愉快そうに笑う4に対し、カズヤは興味がないと言った様子のまま。しかし・・・


「貴様とてそうじゃろう?13に対する異常な復讐心・・・」


その時、4は自分の言葉にやや首を傾げ言葉を飲み込む

そして改めて、こう言った


「いや、違うのう。今まで儂は様々な接続者や暗殺者を見てきたが、お主から感じるそれは「復讐心」ではない。お主が13に執着する理由、それは・・・」


瞬間!


ダンッ!!!


カズヤは目にも止まらぬ速さで懐から拳銃を抜くと4に向かって発砲した!しかし!


「クック・・・危ないのう。当たったらどうする気じゃ?」


カズヤの電光石火の一撃を4はなんなくかわす!

そんな4に対し、カズヤはチッと舌打ちをすると・・・


「テメエが余計な事を喋るからだ。カズミはミナを殺した、だから俺がアイツに復讐する。これが「俺達」の望んだ事だ、誰にも口出しはさせねえ」


静かにそう告げた


「クック・・・まあ良い。理由がなんであれ、13の糧になるのなら儂は文句ない」


そう言って4は手招きをする


「フン・・・」


それに対しカズヤは手に持っていたUSBメモリを投げてよこす

パシッと4はそれを受け取ると、ニヤリと笑みを浮かべながら言った


「取引は成立じゃな。場所は後程指定しよう」


そして4は背を向けその場を去ろうとする、だがその時・・・


「俺がカズミを殺したらどうする気だ?」


カズヤは4に向かって問いかける

その問いに対し、4は・・・


「その時は・・・13の代わりにお前を育ててやってもいいぞ」


妖艶な笑みを浮かべ、そう答えた






そして現在・・・

近くのビルの上から戦いの開幕を見下ろす影


「カズミィィィィィッ!!!」

「カズヤッ!!!」


それは悪魔の様に笑みを浮かべると・・・


「さて・・・同じ施設で育った同じ術の使い手、生き残るのはどちらかのう・・・?クックック!!!」


そう高らかに笑い声を上げた

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