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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第六章:十字架と黒き願いが交わり扉は開く
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生を求める理由


最初に視界に入ってきたのは真っ白な天井

窓はないが、白い蛍光灯に照らされた清潔感のある部屋


そこまで見渡した所で、自分がベッドに寝ていた事に気付く

俺は痛む身体をゆっくり起こしてベッドから降りる

そして部屋の中にあった鏡の前に立ち、写っている自分の姿に違和感を覚えた


「これ・・・は・・・?」


鏡に写っていたのは右腕を失い隻腕となった「白髪」の少年だった

真っ白になった自分の髪を左手でつまむ


「白い髪・・・まるでミナの様な・・・」


その時、ミナに向けて引き金を弾いた時の事を思い出す

突然、何もかもが終わったあの日

まるで酷い悪夢、夢の中の出来事だった気がして実感が湧かない。だが・・・


「右腕は・・・ない」


ミナによって切断された右腕

隻腕になった自分の姿が、あれが現実だった事を嫌でも証明している

しかし、だとしたら・・・


「なんで・・・俺は生きているんだ?」


そう呟いた、その時・・・!


「クック・・・どうやら目が覚めたようじゃのう?」

「ッ!?」


背後から聞こえてきた声に素早く振り返る!

声が聞こえてきたのは俺が寝ていたベッドの隣、もう一つのベッドの上から・・・!


(今まで全く気配を感じなかった・・・!)


ベッドに寝ていたのは女だった

変な言葉使いだが、年齢は若く見える

武器などは持っていない様だが、ニヤニヤと余裕を浮かべた笑みでこちらを見ている


(何者だ・・・?)


未知の状況に俺は警戒を強める、しかし・・・


「ああ、別に警戒せんでもよい。儂はお主の敵というわけでもないしのう」

「何?」

「それに今、「誰かさんのせい」で脇腹が痛むので荒事は勘弁じゃ」


そう言って当てつける様に、イタタタと脇腹を押さえ下手な演技を見せる女

だが、そうされる理由に全く心当たりがなく

俺はただ無言で、怪訝な眼差しを女に向けるだけだった


「・・・?なんじゃ?もしかして何も覚えておらんのか?ふむ・・・」


そこまで言った所で女は何やら考え事を始める

丁度その時、部屋の入り口の自動ドアが開き白衣を着た一人の男性が部屋に入ってきた


「ん?ああ、目が覚めたのかい?」


そう言って男は、温和な笑みを浮かべたままこちらへ歩いてくる


「もう立ち上がって大丈夫なのかい?あまり無理はしない方がいい。ここに運び込まれて3日間眠り続けていたんだから」

「・・・問題ない。それよりここは何処だ?それにアンタ達は」


人当たりの良さそうな温和な男性、と言うのが彼の印象

とりあえず彼が自分に危害を加えてくる敵の様には思えない、俺は状況の把握を優先する事にする


「ここは東京特別治安維持課の施設内のメディカルルーム」

「治安維持課・・・?」

「聞き覚えがない、って感じだね。まあ君が居た施設の特殊性を考えるとそういう事もあるだろう。東京特別治安維持課はその名の通り、治安維持を目的に設立された国家機関だよ。まあ暗殺課という名前の方が有名かもしれないけどね」

「治安維持・・・暗殺・・・。殺すのは・・・接続者か?」


俺が呟いた言葉に、目の前の男は軽く驚く


「へえ?理解が早くて助かるよ。そう、僕達の標的は東京中で暴虐の限りを尽くす接続者。及びそれを利用したり、加担するテロリストや犯罪組織等だね」

「アンタもその組織の一員なのか?」

「ああ。でも僕は戦闘要員じゃない、ただの研究職員さ。東京特別治安維持課研究室主任、安栖宗次。研究内容は主に接続者に関する事だね」

「なら・・・」


そう言って俺はベッドの女の方へ視線を向ける


「紹介するよ。彼女の名は「ナンバー・4」、同じく特別治安維持課に所属する暗殺者アサシンだ」

「クック・・・よろしくのう?小僧」


不敵な笑みを浮かべながらそう挨拶する女、4

一見ただベッドに寝そべっているだけに見えるが、その行動からは全く隙が伺えない

最悪の場合を想定して部屋の二人を制圧する状況を脳内でシュミレートするが、何をどうしても勝てる気がしない


「あの施設から瀕死の状態の君を発見し、救出したのも彼女だよ」

「何?」


その言葉を聞いた俺は、女が寝ているベッドの横へ歩いていく


「何か聞きたい事がある、と言った表情じゃのう?」

「・・・俺の近くに、他には誰か居なかったか?」

「あの施設の生き残りはお前だけ、接続者の少女の事なら儂が見つけた時には既に息絶えておった。遺体はこちらで回収してある」

「・・・ッ!」

「・・・確認するか?」


激しく心を揺さぶる感情を抑えながら、俺は4の言葉に無言で頷いた






そして俺は二人に連れられ別の部屋へとやってきた

部屋の壁には何やらカプセルの様な物が大量に仕舞われてあり、安栖が何やらコンソールを操作するとその一つがゆっくりとせり出してくる

安栖が続けてコンソールを操作すると、プシューっと音を立て中に充満していた冷気と共にカプセルが解放される

俺はカプセルの側に近づくと、中に眠っていた少女の顔を見て呟く


「ミナ・・・」


そして、俺はその場にガクリと崩れ落ちる


万が一、もしかしたら

自分が生きていたのだからミナも・・・

その瞬間まで抱いていた希望はあっさりと崩れ去った


眠る様に目を閉じる白髪の少女

だがその身体の生命活動が既に停止しているのは、一目しただけで明らかだった


その時・・・項垂れる俺に向かって4が問いかける


「これからお前はどうする?小僧」

「これ・・・から・・・?」


4の言葉に、俺は一瞬考えた後答えた


「分からない・・・」


同じ施設で暮らした孤児達、家族と呼び合った二人

何もかもなくしてしまった


「もう俺には何もない・・・」


そう、俺は生きているだけだ

ただ肉体が生きているだけ、心は今この時に・・・


「家族も・・・生きる意味も・・・」


そして俺の心がゆっくりと息絶え

闇の中に閉ざされようとした・・・その瞬間!


「そうか。ならば死ね」


ヒュンッ!


その言葉と同時に、4が俺の懐に飛び込む!


「何を!?4!!!」


咄嗟に安栖が叫ぶが4の動きは止まらない!

そして目にも止まらぬ速さでナイフを取り出すと俺の首元へと突き出した!次の瞬間!


「ッ!!!」


俺の左目が輝き!そして!


ザシュッ!!!


ポタリと血が地面に落ちる

血は俺の左手の手のひらから流れ落ちていた


「・・・今のは?」


4がナイフを突き出した瞬間

俺は自分でも信じられない様な速度でナイフの刃を掴み、それを止めていたのだ


それを見ると、4はニヤリと笑みを浮かべながら問いかける


「どうした?もう生きる意味などないのではなかったか?何故ナイフを止めた?」

「・・・」


4の言葉に俺は何も答える事が出来ない、何故なら・・・


「答えられんか?・・・だがどうやら、お前の身体はまだ生きる事を諦めてはおらんようじゃな?」


そう、それは完全に無意識の行動だった

目の前に迫る死に対して、俺の身体は明確に拒絶を示したのだ


「どうして・・・俺は・・・」


自分でも説明の出来ない不可解な行動

だが、そんな俺に4はニヤリと笑みを浮かべながらあっさりと言い放つ


「分からないのなら自分で探し出すのじゃな。お前の「能力」もそう言っていたぞ」

「能力・・・」


そう、さっき4がナイフを俺に突き刺そうとした瞬間

俺の左目と彼女の目を通して、二人の心が「接続」したのを感じた


「「接続リンク」、それがお前の能力じゃな」

「俺が・・・接続者に・・・」


唖然とする俺に対し、4が問いかける


「小僧、名は?」

「俺は・・・」


その時・・・


(カズミ) (カズミ兄さん)


俺の名を呼ぶ二人の声が聞こえてきた気がした、だが・・・


「名前は・・・ない」


その名を呼ぶ者はもう居ない

あの日、「カズミ」は死んだのだ


「K・013(ケー・ゼロイチサン)。施設ではそう呼ばれていた」

「ほう?13か。ならば丁度良い、確かそのナンバーは少し前から空いていたはず。小僧、お前は今から「ナンバー・13(サーティーン)」じゃ」

「13・・・?」

「そうじゃ。接続者となった者の行く道は二つに一つ。接続者として儂らに殺されるか、暗殺者となって戦いの中で死ぬか。儂に殺されるのを拒絶した以上、お前の行く道は一つだけじゃ。13、お前は暗殺者となれ」

「暗殺者・・・」


4の言葉をぼんやりと反芻する

その時、ズキリとナイフを受け止めた左手が痛んだ


ポタリ・・・ポタリ・・・


傷口から滴り落ちる血、そして神経を刺す様な痛み

だがその痛みが、靄がかかっていたかの様な心を晴らし、俺が行くべき道を示した


「俺は・・・暗殺者・・・ナンバー13」






生きる意味を失った名もなき少年

こうして彼は暗殺者となった


何故自分が生きるのか、生きようとするのかを知る為に

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