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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第五章:狩人を狩るのは人ならざる獣の顎
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報復への道筋


ナンバー9とナンバー6の参戦により

敵接続者3人のうち1人を取り逃すものの、襲撃してきた接続者達を撃退する事に成功した13達

6は飛行する接続者が逃走していった方角を忌々しげに眺めていたが、くるりと振り返ると不機嫌な声で言う


「チッ、つまらねえ仕事だったぜ」


その時、9は大破した車からアイリを運び出し容態を伺っていた


「・・・目立った怪我はないが意識はない。鳥羽監査官、念のため病院に搬送を」

「承知しました宗久様」


9に対しそう応答すると、9の監査官「鳥羽御貴とばみき」は素早く車両の手配をする

その間に、9は手早くアイリの応急処置を済ませていく

冬香はそんな9の側に駆け寄ると、9に向かって頭を下げながら言った


「その・・・お陰で助かりました」


だがそんな冬香に対し、9はアイリの処置をしながら淡々と答える


「気にする事はない。民を助ける事は私にとってただの義務だ」

「そうですか・・・。いえ、それでも感謝します。ありがうございました9さん」


そう答える冬香に対し、9は少し笑みを浮かべ


「9で構わない、霧生監査官殿」


そう答えた


「そうだ。6さんにもお礼を・・・」


そう言って冬香が振り向こうとした瞬間・・・!


「ん~?オレの事呼んだ?」

「ッ!?」


突然、何の気配もなく6が現れた


「あ!えっとその、6さんも救援に応じていただきありがとうございました」


突如として背後に立った6に、冬香は動揺しながらも感謝の言葉を告げる。その時・・・


「・・・ふーん?」

「6・・・さん?」


6は何やら値踏みする様に冬香を眺める、そして・・・


「いやいやオレにかかれば楽勝さ!それよりも・・・」


そう言って6は冬香に向かって一歩踏み出す


「え?なっ・・・!?」


踏み込んできた6と顔がぶつかりそうになりのけ反った冬香の身体を、6は左手で抱き寄せるようにして引き寄せる

そして囁く様に言った


「それよりもだ。命の恩人にはちゃんとお礼をすべきだと思うんだよね、言葉以外のヤツでさ」

「えっ・・・?その、言葉以外・・・とは?」

「そうだなぁ・・・」


そう言うと6は、ニヤリと笑みを浮かべながら続ける


「キミのカラダを貰おうかな。オレと一晩付き合うって事でいいだろ?」

「なっ!?」


6の言葉に激しく動揺する冬香


「何を言っているんだ・・・!?一晩付き合うなんて・・・!」

「オレはキミの命を助けたんだぜ?それぐらい安い物だろう?」

「いや、しかし・・・!」


なんとか6の誘いを断ろうとする冬香

だがその時、6が言った


「おっと、もしかして勘違いさせたかな?」

「勘違い・・・?」


何かの間違いだったのだろうか?一瞬そう安堵する冬香だったが

そんな冬香に対し、6はその表情を冷たい物に一変させながら告げる


「いいか?オレがオマエを欲しいと言ったんだ?シングルナンバーであるこの6がだ。つまり、オマエに拒否権なんてないんだよ」

「なっ!?」


豹変した6の態度に、冬香が叫ぶ!


「誰がお前なんかに!」

「オマエの意思なんて関係ないって言ってるだろ?それとも、まさかこのオレをどうにか出来るつもりか?分かったら黙ってついて来い。何、別に悪い様には・・・」


そこまで6が言いかけた、その時・・・!


チャキッ・・・


6の後頭部にハンドガンが突きつけられた!


「・・・冬香から手を離せ、ナンバー6」

「13!」


そう、それは左手にハンドガンを構えた13だった


「・・・おいおい、何の真似だ?このオレに銃を突きつけるなんざ・・・」

「冬香から離れろ。そうすれば何の問題も起こらない」

「フフッ・・・ああそうかよ。分かった分かった、大人しく・・・」


そうして6が冬香から手を離した・・・その瞬間!!!


「ハッハァッ!!!」

「ッ!?」


ブンッ!


間一髪!

13の鼻先数センチの所を6が振り上げたナイフが掠めていった!だが!


「おせえんだよ!下位ナンバーが!」


ドグゥッ!!!


「かはっ・・・!」


回避行動を取った13に対し6は素早く間合いを詰めると、その胴体に膝蹴りを叩き込んでいた!

膝蹴りの直撃を受け崩れ落ちる13を見下ろしながら、6が言う


「下位ナンバーがシングルに勝てるとでも思ったのか?大体テメエはさっき散々ボコられた後だろうが、その傷で・・・」


そこまで言いかけた所で、6が何かに気付いた様に言った


「ん?つーかその傷、さっき奴らにやられた傷じゃねーな?テメエここに来た時、既に怪我してたわけか」

「くっ・・・」

「なるほどなるほど?愛しい監査官の為に無理して救援に駆け付けたってわけか!そりゃ残念だったな!オマエが必死に守った監査官様は俺が貰ってやるよ!まあ安心しな、ちゃんと明日の朝には家まで送っておいてやるからさぁ!」


笑いながら言う6の言葉に、冬香が言った


「まさか、一週間前カズヤにやられた傷がまだ・・・!」

「あ?一週間前の傷・・・?」


その言葉に6は怪訝そうに首を傾げると、もう一度13の身体に目をやる。そして・・・


「・・・何だその身体。オマエ・・・本当に接続者か?」


6がそう呟く様に言った、その時・・・!


「そこまでにしておけ、6」

「あん・・・?テメエも文句があるのか、9」


アイリへの処置を終えた9が、6の前に立ちふさがる!


「この国の民を護る。それが私の使命であり、彼女とそこのナンバー13も私が守る民の一人だ。これ以上は見過ごすわけにはいかない」


そう堂々と告げる9に対し、6は一歩も引かず9を睨みつけながら言った


「ハッ・・・またお得意の護国ってやつか?こんな最低の場所まで堕ちてきたくせに、まだ名家の御曹司のつもりかよ」

「・・・例え家名を失おうとも、私のやる事は変わらない。これは私自身が望んでやっている事だ」


互いに一歩も引かない9と6!

その間に激しく殺意と言う名の火花が飛び散る!


「相変わらずご立派な事で・・・。気に入らねえな」

「そうか。私も同意見だ・・・」

「上等・・・!」


そして二人同時にその獲物を抜こうとした!その瞬間!


「クックックッ!相変わらずじゃのう!貴様ら!」

「・・・ッ!?その声・・・!」


突然辺りに響いた声に、6が素早く振り返る!そこに立っていたのは・・・!


「テメエ!!!4!!!」


妖艶な笑みを浮かべる最強の女暗殺者、4の姿だった!






「クック・・・元気でやっとったか?9に6」


不敵に笑いながら二人の元に歩いていく4


「4か・・・」


9はそう呟くと刀にかけていた手を離す

それに対し6は、9に向けていた殺気を今度は4に向けながら呟く


「テメエ・・・4・・・!」


だがそんな6に対し、4は笑みを浮かべたまま言う


「どうした?そんなに儂を睨みつけおって。貴様らが逃がした接続者なら儂が片付けておいてやったぞ?」

「ッ!?クソが・・・!」

「それにしても、また女がらみでトラブルを起こしておるのか?懲りんやつじゃのう。そんなに女が欲しいなら、もう一度儂を襲ってみるか?」

「くっ・・・!」

「まあ、今度は刺されるだけでは済まんかもしれんがな。なんなら今後トラブルを起こさん様に、今ここで「切り落としてやろう」かのう?」


そう言うとクックと笑い声を上げる4

だがそんな愉快そうな笑みとは裏腹に、周囲に放つ圧力は同じシングルナンバーである6を飲み込む程に強大な物だった。しかし・・・!


「いつまで上位面してやがる・・・」

「ん?何か文句でもあるか?」


そんな4に対し、6はその瞳を睨みつけながら言う


「俺達のナンバーは別に格付けを表す物じゃねーんだぜ!?今現役で残っている3人の中でテメエがトップナンバーだからと言って、テメエが最強の暗殺者を名乗る事に納得した覚えはねえ!」

「ほう?確かにそうじゃのう。ならば「最強の暗殺者」の名・・・実力で奪いとってみるか?」

「テメエがいくら強かろうが、ほんの少しでも傷をつければオレの「死の六階段」は発動するんだぜ!?」

「クックッ・・・、たわけめ。カウントが6もあれば、儂の「絶対回答」は6度お前を殺せるわ」


そう言って殺気を膨らませる4と6!

その時、二人の間に割り込む様に9が構える


「やはりこうなるか・・・。致し方あるまい」


そしてまたもや一触即発の状態!しかし!


「そこまでよ!3人共!」


全員の通信機に割り込んできた声に、3人ともピタリと動きを止める


「それ以上の戦闘行動は許しません。東京警察本部特別治安維持課課長として命令します」


それは特別治安維持課課長、暗殺課のトップである吹連課長の声だった


「4、私は二人を止めろと命令したつもりなのだけれど。どうして三つ巴になるのかしら?」

「うっ・・・。いやなんというか、つい熱くなったというか・・・」

「6と9もよ。殺し合いがしたいのなら接続者相手にいくらでもすればいいわ。しかし暗殺者同士での戦闘は許可していません。即刻戦闘行動を中止しなさい」

「了解」

「チッ・・・」


そう言うと大人しく戦闘態勢を解除する9と6。その時・・・


「聞こえるか6。速やかに帰投しろ」

「飛山か・・・」


そう通信機越しに命令を下したのは、6の監査官「飛山隆鳴ひやまりゅうめい」副課長の声だった


「貴様にはある程度自由にさせてやっているが、今回は大人しく引け。十分な報酬は用意してある、それで良しとしろ」

「クソ・・・。ああ、了解だ」


6は飛山監査官に対しそう応答すると・・・


「どっちが上か。近いうちに決着は付けるぜ、4」

「クックッ・・・。いつでもかかってくるがいい」


4に向かって吐き捨てる様に言い、その場を去って行った


「では、私も帰投する。後の事は任せる、4」

「うむ」


そして6に続く様に、9もその場を立ち去ろうとする

だがその時、9は冬香達の方を向くと彼らに向かって言った


「霧生監査官、それにナンバー13。これからも同じ特別治安維持課の一員として、この国を護る為戦おう」

「は、はい!こちらこそよろしくお願いします、9」


姿勢を正しながら答える冬香に対し、13は・・・


「・・・ああ」

「ああ、って!おい13!助けてもらったんだからもっと言い方があるだろう!?」


ぶっきらぼうに一言だけ返す

だが9は、そんな13に優し気な笑みを返すと・・・


「フッ。また会おう、死神の13」


そう言って、夜の街に飛び去って行った


「二人とも行ったか・・・。それじゃあ・・・」


そして4は二人が去ったのを確認した後、13の側に来て問いかける


「無事か?13、怪我の具合はどうじゃ?」


13の眼を覗き込みながら心配そうに問いかける4、それに対し・・・


「・・・問題ない」

「んむ、そうかそうか・・・」


13がそう答え、4が笑顔で頷いた・・・その直後!


「この馬鹿弟子がッ!!!」


ドゴォッ!!!


「がっ・・・!」

「なっ!?4!?」


突然4が放った強烈なボディーブローにより、13は昏倒する!


「よっ・・・と」


膝から崩れ落ちる13を両手で抱き留めながら、4は呟く


「何が問題ないじゃ、たわけ。限界ギリギリにも程があるじゃろう、やせ我慢しおってからに」

「い!いきなり何を!?4!」


突然の攻撃に戸惑う冬香に対し、4は平然と答える


「何、少し眠らせただけじゃ。そっちの娘と一緒にメディカルルームまで搬送するのがいいじゃろう」

「は・・・はあ・・・」


そう言って、気を失った13を冬香に預ける4


「全く・・・心配させるな。馬鹿め・・・」

「4?今何か?」

「ん?いや何でもないぞ」


しばらくして

やってきた暗殺課専用の救急車は13とアイリの二人と、付き添いの冬香を乗せ暗殺課本部へ走って行った





そして、最後に現場に残った4は通信機に向かって言う


「さて、これで問題解決。めでたしめでたし・・・という訳にはいかんじゃろうな」

「ええ。そうね・・・」


その4の言葉に、深刻そうな声で吹連が答える


「日中、しかも街中での襲撃。さらに彼らは、霧生警部補が暗殺課の関係者だと分かった上で拉致を行おうとした。それはつまり・・・」

「クックッ・・・そうじゃ。つまり儂らは「ナメられておる」という事じゃ」


愉快そうに4は答えるが、それは暗殺課にとって深刻な事態だった


「我々、治安維持課の存在理由、それは暗殺者による暗殺の恐怖をこの東京中に敷く事により、恐怖で秩序を維持する事。その我々が恐れられなくなるという事は、つまりこの東京の秩序が崩壊するという事に他ならないわ」

「そうじゃのう。今回の襲撃は、儂ら暗殺者による恐怖が薄れてきた事も原因の一つかもしれん。さて、ならばどうする双葉?暗殺課の女王よ」


そう問いかける4に対し、吹連は・・・


「忘れたというのなら思い出させるまでよ。犯罪組織、接続者、それからこの街に住む全ての人々に対して。今一度、認識させる必要があるでしょう」


静かに、だが冷厳に処刑を下す処刑人の様にハッキリと告げた


「我々を怒らせるという事がどういう事かを・・・」


その吹連の言葉に、4はゾクリと背筋を震わせながら笑みを浮かべる


「ならば任せておけ。儂ら暗殺者が、この街に血の雨を降らせてやろう。これから何十年も乾くことのない、血の雨をな・・・」


その言葉は、間もなく始まるであろう暗殺者達の報復

かつてない規模の殺戮を予感させるのだった

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