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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第五章:狩人を狩るのは人ならざる獣の顎
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狐狩り


「「竜の尾」だよ。言っとくが抵抗しても無駄だぜ?」

「接続者・・・!」


突然、白昼堂々と冬香の前に現れた接続者!


(竜の尾・・・「竜尾会」!)


それは先日13と4で潰した研究施設、その母体と思われる組織の名

東京東エリアで3つの指に数えられる大型犯罪組織だ


「くっ!くそっ!」


すかさず冬香は手を振りほどこうとするが

筋肉質な男の腕はその見た目通り、いや見た目よりも遥かに強靭な力で固定されビクともしない!

男は余裕の笑みを浮かべながら言う


「無理無理。俺の握力は女の力で振りほどける様な物じゃないぜ?ましてや俺は接続者でオマエはただの人間、基本性能が違いすぎるってもんだ」


全く振りほどける気配のない男の腕に対し、冬香は男の手の指を取ろうとする。だが・・・!


「くっ・・・!指一本すら開かない・・・!」


空いている右手全ての力を使っても、男の指一本すら動かせない!

恐らくだが、この男の肉体は接続者になる前から鍛えていた物だろう

接続者は人知を超えた力と感覚を得ると言うが、元から高いスペックを誇っていたならばその効果も倍増する

ならばと、冬香は拘束を解くのを諦め

スッと右腕を懐に差し込むとリボルバーを抜こうとする。しかし・・・!


「おっと抜く気かい?だが、周りをよく見た方がいいんじゃないの?」

「!?」


辺りには何事かと視線を向ける野次馬達

もし弾丸を外したなら、確実に周りの誰かに当たってしまうだろう


(駄目だ。ここでは撃てない・・・!)


一瞬で状況を理解した冬香に対し、男はニヤリと笑みを浮かべると言う


「そういう事。まあ別に殺せって命令されてるわけでもないし、大人しくついてきな」


そして男は冬香の腕を掴んだまま歩き出す

冬香は引きずられるようにしながら男に向かって叫んだ


「くっ!何の為に私を連れて行く気だ・・・!」

「オマエは誰かをおびき寄せる為の餌なんだとよ。なんて言ったかな・・・たしかカズミとかなんとか」

「カズミだと・・・!?」


その言葉を聞いた冬香が驚きの声を上げる


(間違いない、13の事だ・・・。コイツの目当ては13をおびき出す事・・・!そして、13を「カズミ」と呼ぶのは私の知る限り一人しかいない・・・!)


暗殺者殺し、13と同じ十字銃術の使い手、「カズヤ」だ


(奴は竜尾会と繋がりがあったのか・・・!)


自分を狙う目の前の接続者と、その背後に居るであろう竜尾会とカズヤ

だがどうにかしようにも、13の居ない今、冬香にはこの男の腕を振りほどく事すらも出来ない

そして人込みをかき分け男が冬香を連れて行こうとした、その時・・・!


ドガァッ!!!!!


「がっ!?」


突然!人込みの間を隠れるようにして近づいてきた影が、男の横腹に強烈な打撃を加え吹っ飛ばした!


「大丈夫ですか!?冬香さん!?」

「アイリ!」


それは一緒に買い物に来ていたアイリだった

車を取りに行く冬香と別れ、その場で待っていたアイリだったが、遠くから聞こえてきた冬香の叫び声を聞いて駆けつけてきたのだ


「うっぐお・・・いってーな・・・」


不意打ちを食らい倒れこむ男、しかしその肉体にダメージはほとんどない

あくまで予期せぬ攻撃で体勢を崩しただけの事

すぐさま立ち上がり冬香を追おうとするが・・・!


「これでも食らえ!」


すかさず!冬香は倒れている男に向かって「ソレ」のピンを抜くと投擲する!


「なっ!?グレネー・・・!」


目の前に投げられたそれに男が驚愕する!そして次の瞬間!


カッ!!!


一瞬!男の視界が完全に白く染まる!


「ぐあっ・・・!スタングレネードかよ!」


視界を奪われた男はその場で悶絶する!

そしてその隙に、冬香はアイリの手を引いて走り出していた!

そのまま全速力で逃げる冬香とアイリ!その途中・・・


「ハァッ・・・!ハアッ・・・!もしもの為に13に渡されていた物が役に立ったな・・・!」


冬香は先日、メディカルルームで怪我の治療にあたる13を冬香が訪ねた時の事を思い出していた






メディカルルームで絶対安静中の13

その見舞いに来た冬香に、13はいくつかの道具を渡すと言った


「俺が居ない間は、それで自分の身を守れ」

「グレネード?」

「いや、一見普通のグレネードに見える様加工してあるが、それはスタングレネードだ。そっちがスモークグレネードに嗅覚を潰す為の特殊薬剤・・・」

「・・・こんな物が接続者に効くのか?」


手渡されたいくつかの道具を訝し気に眺めながら冬香が呟く、しかし・・・


「奴ら接続者は人間より優れた五感を持っている。だがだからこそ、これらの道具は効き目が高い」

「なるほど・・・」

「だがあくまで時間稼ぎだ、決して接続者と戦おうなんて考えるなよ。もし接続者と出会ったなら全力で逃げろ、いいな?」

「心配しなくても分かっている。結構心配性なんだな、お前は」


13はその言葉にほんの少し、ピクリと眉を動かしたが

すぐに普段の無表情な顔に戻り言った


「とにかく。もう一度言うが、自分の身は自分で守れ」

「ああ」


そんな13に、冬香はほんの少し笑みを浮かべながら答えた






「まさか本当に使う事になるとは・・・、こんな街中で白昼堂々襲ってくるなんて・・・!」


13から受け取った後、ジャケットのポケットに入れっぱなしにしておいたのが役に立った様だ

冬香は後ろから走って付いてくるアイリに向かって言う


「大丈夫かアイリ!?」

「問題ありません。「索敵」で見えてますから!」


先程のスタングレネードは男だけでなく、同じ接続者であるアイリにも効果を及ぼしていた。しかし・・・


「それにそろそろ効果が・・・!」


その時!遠くからまっすぐこちらに向かってくる物体をアイリは感知していた!


「くそが、やってくれるぜ!ガキの接続者が居るなんて聞いてねーぞ?」


それは先程の接続者!


「咄嗟の事で逃がしちまったが、大分目も耳も復活してきた。今度は逃がさねーぜ!」


そして冬香達を追い、男が全速力で路地の角を曲がった・・・その瞬間!


「何っ!!!???」


突然!男の目の前に現れた一台の車!

その車は一切スピードを緩める事なく男に向かって加速する!そして!!!


ゴシャッ!!!


接続者の感覚を以てしてもそれを回避出来ず、男は思いっきり空中へ吹っ飛ばされる!

そしてその車は目の前に立ちふさがった男を跳ね飛ばした後、猛スピードで走り去っていった!


「よし!道路に出てしまえばこっちのものだ・・・!」


そう冬香がアクセルを全開にした車を制御しながら叫ぶ!

だがその時、アイリが動揺した様に冬香に向かって言った


「い!今!思いっきり轢いちゃってましたけど!」

「ん?そうだな。咄嗟だったから思いっきり車をぶつけてしまった・・・」


しかし動揺するアイリに対し、冬香は何のことはないと言った感じで答える


「・・・あれで死んでいてくれればラッキーなんだがな」

「冬香さん・・・バイオレンスです・・・」


苦笑いをしながら答えるアイリに対し、冬香は車のバックミラーを見ながら答えた


「・・・いや、どうやらまだ危機は去っていないらしい」

「えっ・・・!?」


振り返ったアイリの視線の先

冬香達の乗る車を猛スピードで追走してくるバイクがあった!

そして、それに乗っているのは先程の接続者!


「くそっ!しつこい奴だ!」


冬香はさらにアクセルを踏み込み加速するが、バイクもスピードを上げ追ってくる!

バイクに乗っている男は、先程車に跳ね飛ばされたと言うのに全くの無傷!


「追ってきます!どうしましょう冬香さん!?救援要請を・・・!」

「もうとっくに出してる!助けが来るまで逃げるしかない!」


先程は不意打ちだったからアイリでもなんとかなったが、二度目はない

追いつかれたら終わりだ・・・!

冬香は必死に車を走らせバイクから逃げる!その時・・・!


「・・・!?な、何だ・・・!?アイツ何をしているんだ・・・!?」


バックミラーに映った異様な光景に冬香が動揺の声を上げる

車は現在時速160キロ、当然追ってきている相手も同じスピードを出しているという事になる。しかし・・・!


「フフフ・・・」


なんと男は時速160キロで走るバイクの上に直立に立っていたのだ!

そして男はテレビで見慣れたある構えを取る!


「何だ・・・!?まさか・・・あれは・・・!?」

「ピッチャー第一球ぅ~・・・」


そのまま男はバイクの上に立ったまま足を踏み込み、腕を振りかぶると・・・!


「投げました・・・!」


「何か」を!冬香達の車に向かって投擲した!!!


「何だ!?何かを投げた!?」


接続者が取ったのは明らかに、野球の投手の投球モーションだ!

しかし!バックミラーには何の飛来物も見えない!だが・・・!


「・・・ッ!?かわして冬香さん!!!」

「ッ!?」


アイリの言葉に咄嗟にハンドルを切る冬香!そして次の瞬間!


ドゴォッ!!!


冬香の車の真横の地面が突然!爆発し砕けた!


「なっ!?何だこれは!?」


動揺する冬香に対し、アイリが叫ぶ!


「「空気」です!あの接続者はさっきとてつもなく圧縮した「空気」を投げたんです!」

「圧縮空気だと!?」


「空気」を操る接続者!

恐らく車に跳ね飛ばされた時も、空気を操りエアバッグの様な物を作り上げダメージをなくし

立ったままバイクを操っているのも、アクセルを空気で固定しているだからだろう


「さあ・・・どんどん行くぜ~・・・?球はいくらでもあるからな」


そして再度投球モーションに入る男の手に圧縮空気が精製されていく!


「第二球・・・投げました!」


再度冬香達の車に襲い掛かる空気の球!


「かわして!」

「くっ!!!」


だがこれも!アイリの指示により冬香は回避に成功する。だがその時・・・!


ドガァッ!!!


「うっ!うわあああ!!!!!」


道路沿いのビルの入り口が圧縮空気により爆破され、近くに居た一般市民が瓦礫の飛礫を浴びる!


「なっ!?しまった・・・!」


周囲への被害に咄嗟に声を上げる冬香、それに対し・・・


「おおっと大暴投・・・?俺ってば球の速度はともかく、コントロールはイマイチなんだよねぇ」


男はニヤニヤと笑みを浮かべたまま、血まみれで倒れている一般市民には一瞥もくれず通り過ぎて行った

そして!男は次の圧縮空気投擲の構えに入る!


「くそっ・・・!マズイ・・・!このままじゃもっと周囲に被害が・・・!」


男が次弾の構えに入ったのを見て冬香は焦りを募らせる・・・!だがその時・・・!


「ッ!?」


周辺のマップを見た冬香はある事を思いつく!

そして車を運転したまま、後部座席のアイリにある物を渡した


「アイリ!私が合図をしたらそれを車の後ろに向かって投げてくれ!」

「えっ・・・!?これって・・・!」

「タイミングが命だ!頼む!」


そう叫ぶ冬香に対し、アイリは力強く頷きながら


「はい!分かりました!」


と答えた


「それじゃあ、第三球・・・」


そして男が球を投げようとした、その時!


「今だアイリ!」

「はい!」


アイリはソレを車の後ろに向かって放り投げる!次の瞬間!


バシュゥゥゥッ!!!


アイリが放り投げたそれから凄まじい煙が噴き出し、男の視界を遮った!


「煙幕!?俺の狙いを反らす為か!?だが・・・!」


しかし男は、投球モーションのままバイクを走らせ煙に突っ込む!


「こんな煙幕、何の意味もないぜ?」


そしてすぐに煙を突っ切ると正面に目を向ける。だがその時!


「なっ!?何!?消えた!?」


煙を抜けた瞬間男の視界に入ってきたのは、目の前の車が忽然と姿を消した光景だった

男はすぐさま五感を集中させ、冬香の車を探す!


「・・・!?まさか!?」


車の走行音を感知し横に目を向ける

コンクリートの壁の向こう側、「上」へと向かう車線に冬香の車の姿があった!


「チッ!」


キキィィィッッッ!!!


男は急ブレーキをかけバイクを停止させると、すぐさま道路を逆走し冬香達を追う!

だがその間にも、冬香の車は加速し離れていくのだった!






煙幕を放ち、突然の車線変更でバイクを振り切った冬香はそのまま道路を直進していく


「冬香さん!こっちって・・・!」

「ああ!「首都高」だ!10年以上前に封鎖されて、今はただのだだっ広い道路跡だが!」


冬香の目の前にあるのは首都高速道路の入り口、だが封鎖されている今はバリケードが立てられ車の侵入を防いでいる。しかし・・・!


ドガアッ!!!


冬香は迷わず車を突っ込ませバリケードを吹き飛ばすと、そのまま首都高へと侵入する!


「ここなら周囲に被害を出す事はない!このまま振り切る!」


そしてアクセルを踏み込む冬香!その時・・・!


「聞こえますか・・・!?霧生監査官・・・!?こちら吹連です・・・!」


通信機から聞こえてきた声に冬香はすぐさま応答する!


「ッ!課長!?こちら霧生です!現在接続者の襲撃を受け首都高速道路跡を逃走中!」

「ええ。そちらの状況、現在地共に把握出来ています。すでに近くの暗殺者を救援に向かわせています、霧生監査官はそのまま・・・」


そう吹連が続けようとした、その時・・・!


「えっ!?き、来ます!追手です!?」

「何っ!?」


アイリの言葉にすぐさまバックミラーを覗き込む冬香、しかし・・・


「何処だ!?見えないぞ!?何処から追ってきている!?」


車の後方には何の影も見えない!

だがすぐさま、アイリが冬香に向かって叫んだ!


「後ろじゃありません!「上」です!」

「上・・・!?」

「空を・・・!空を飛ぶ接続者です!!!」

「何だと!?」


サイドウィンドウを開き、車から乗りだすようにして上空を見上げる冬香!

そこには冬香達を追う、人間の形をした飛行物体があった!

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