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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第四章:もう一人の死神が振るうのは断罪と言う名の鎌か
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絶対回答


ビル屋上にて13とカズヤの戦いが繰り広げられていたその時

空の暗闇に目を凝らしながら池袋の街を走る女性、霧生冬香の姿があった


「クソッ!一体何処に・・・!」


13達が飛び去っていった方角だけを頼りにビル街の間を走り抜けていく冬香、その時・・・!


ダンッ・・・!


遠くのビルの屋上から銃声が鳴り響く!

そして連続して聞こえてくる銃声と金属がぶつかり合う音!


「あそこか!」


冬香はすぐにそのビルへ目を向けると、通信機を手に屋上へと向かっていくのだった






それから数分後

13の右腕をカズヤが斬り飛ばし、二人の戦いは決着を迎えようとしていた

そして膝を付く13に対し、カズヤがトドメの一撃を放とうとした・・・その瞬間!


「・・・悪いが、そういう訳にもいかんのでな」

「何っ!?」


二人の目の前に現れたのは、暗殺者「4」の姿だった


「誰だ、テメエ・・・」


突然現れた4に対し、警戒体勢に入りながら問いかけるカズヤ

それに対して4は全く無防備としか思えない様子で立ったまま、ニヤニヤと笑みを浮かべ答える


「儂は暗殺者「ナンバー4」じゃ。ついでに言うとそこの13の師匠でもあるが・・・」


そう言ってチラリと13の方へ目を向ける4、そして・・・


「13をここまで追い詰めるとはなかなかの腕じゃのう。監査官殿が言っていた通り13と同じ施設、同じ十字銃術使いだと言う話は本当の様じゃな」


カズヤに対し笑みを浮かべたままそう告げる4

その目はまるで子供が新しいオモチャを手に入れた時の様な、喜びが見て取れた


「チッ・・・」


だがカズヤは、そんなある種異様とも言える4の気配に飲み込まれる事もなく

逆に殺意の籠った銃口を向けながら言った


「邪魔だ・・・!これは俺とカズミの問題、関係のない奴が間に割って入るんじゃねえ!」

「さっきも言ったがそういう訳にもいかん、ここで13に死なれると儂が困るのじゃ。それに・・・」


その時、一瞬だけ4の表情から笑みが消える


「あの崩壊した施設から片腕を失った13を回収し、暗殺者に仕立て上げた張本人としては、多少の責任という物もある」

「何・・・?」


そしてまた唇を歪ませ笑うと4は戦闘態勢に入った!


「じゃからまあ、邪魔させてもらうぞ!」

「そうかよ・・・。だったら死ね!」


カズヤはそう告げると即座に4に向かって突撃!


ダンッダンッ!


そして十字銃術のセオリー通り弾丸を発射しつつ間合いを詰める!


「クックッ!」


笑みを浮かべたまま迫りくる2発の弾丸をかわす4!

そして4が突撃してくるカズヤに対し構えた、その瞬間!


(俺とカズミの邪魔をする奴は容赦しねえ!最初の一撃で殺す!)


カズヤの両目が光り能力「方位転換ベクトル」が発動!

4の脇をすり抜けていった弾丸2発が空中で突然方向転換し再度4へ向かって襲い掛かる!

そして同時に!銃弾と挟み込む様に放たれる両手の斬撃!


(終わりだ!死ね!)


3方向から襲い掛かる攻撃に対し4は絶体絶命の様に思われた!だが次の瞬間!!!


ドグォッ!!!


攻撃が繰り出された瞬間!激しく鳴り響いたのは・・・!


「ぐっ・・・がぁ・・・!」


カズヤの腹部に直撃した4の拳の、強烈な打撃音だった!


(ありえねえ・・・!俺の攻撃は完璧だった!なのに何で俺が攻撃を食らっている・・・!?)


その一撃の威力に崩れ落ちそうになるカズヤ、だがその時


「クックッ・・・。どうした?今の一撃が拳ではなくナイフだったなら、お主はもう死んでおるぞ?」


そう言いながら嘲笑の笑みを浮かべる4


「儂が直々に教育をしてやるなど滅多にないのじゃからな、さっさとかかってくるがいい」

「・・・殺すッ!!!」


そう叫ぶと同時に銃術を繰り出すカズヤ!


(アサルトパターン31・・・!25!42!)


蹴りから斬撃!斬撃から銃撃!

攻撃から攻撃への継ぎ目がほぼ全くない怒涛の連続攻撃!

あえて攻撃をパターン化する事により、攻撃の合間の思考による遅延を極限まで減らす

接続者という化け物を殺す為だけに作られた速さに特化した技!

さらに能力をプラスしたカズヤの攻撃は、上位の暗殺者と同等の殺傷力を誇っていた!だが!!!


(何故だ!何故当たらない!)


一撃が必殺の威力を秘めた連続攻撃!

しかもそのほとんどが初見であるにも関わらず!4は慣れた物という感じで間をすり抜けていく!そして!


ドガッ!!!


「がっ・・・!」


顔面に拳を食らいよろめくカズヤ!


「二度目じゃ!」

「ぐっ・・・!くそっ!!!」


攻撃を食らったカズヤは、すかさず体勢を立て直し反撃を行おうとする・・・!だが!


ドガガガガガッ!!!!!


「三度目!四度目!5!6!7!8!9!10・・・!!!」


4の拳が!蹴りが!

連続して放たれる打撃を、カズヤはなすすべなく食らっていく!その時・・・!


「13!」


屋上のドアが開け放たれ、息を切らせた様子の冬香が現れた!

そして周囲を見渡すと倒れていた13を見つけ駆け寄る!


「無事か!?13」

「冬香・・・」


右腕を失い、満身創痍の状態となった13の応急手当を行う冬香


「来たか、監査官殿」


後ろを振り返りながら冬香に向かって言う4

その様子を見ながら13は冬香に問いかける


「冬香。4はアンタが・・・」

「ああ。お前があの場から離れた後、すぐに4に救援を送っておいた」


13がカズヤとの戦闘中に見せた違和感

それに気づいた冬香は13達がビルの屋上へと姿を消した後、すぐに4に向かって応援を要請していたのだ


「どうやら間に合ったようだな・・・。それにしても・・・」


そう言いながら冬香はカズヤの方へ視線を向ける


「ハァッ・・・ハァッ・・・」


4の前で膝を付きながら荒い息を吐き出すカズヤ

それに対し4は腕を組んだまま余裕の笑みを浮かべている


「13を圧倒する程の接続者をあんな一方的に・・・」


シングルナンバーの一人、現在最高位の暗殺者

4の強さに関しては冬香も知っているつもりだった、だが・・・


「ここまで圧倒的なのか・・・」


予想を遥かに超える4の戦闘能力に、味方である事を知りつつも畏怖する冬香

その時!カズヤが再び4に向かって攻撃を仕掛ける!


「クックックッ!まだ攻撃を繰り出す体力が残っているとは!お主も13と同じく見込みがあるのう!」


しかしその攻撃はことごとく空を切り!カズヤの体力だけが消耗されていく!


(どうなっている!?何故俺の攻撃が当たらない!)


速さではない

4のスピードはせいぜい13と同じ程度だ


(だとするなら・・・。能力か・・・!?)


4の回避動作は決して速くはない

だが「ここしかない」という回避ポイントを的確に押さえる事によりカズヤの攻撃を回避している


(俺の攻撃が見切られている・・・?いや、カズミの十字銃術ならいざ知らず、俺の十字銃術・改は初見のはずだ・・・!)


しかもカズヤが繰り出しているのは施設から離れた後編み出した、自分だけのオリジナルのアサルトパターン

この戦いでも初めて見せるパターンであり、初見でこれに対応する事は不可能に近いはずだ


「これならっ!!!」


そして新たなパターンの攻撃を仕掛けるカズヤ!

だがその時!カズヤの目に映ったのは不可思議な4の動きだった!


ダンッ!


カズヤの銃から放たれた弾丸、4はそれを回避・・・!

すかさずカズヤは「方位転換」により弾丸の向きを変えようとする、だがその瞬間!


スッ・・・


確かに見えた・・・!

4が行った回避動作、それはカズヤが「能力を発動する前」だったのを!


ヒュンッ!


一瞬遅れて「方位転換」が発動!しかしすでに回避行動を終えていた4の横を弾丸はすり抜けていき・・・!そして!


ドゴッ!!!


「があっ・・・!!!」


カウンターの4の蹴りを食らい後ろへ吹っ飛ぶカズヤ!

しかし4は追撃をする事なくその場に立ったまま笑みを浮かべ、カズヤが立ち上がるのを待っていた。その時・・・


「・・・予知か?」

「ん?」


そう呟きながら立ち上がるカズヤ、そしてカズヤは続けて言った


「テメエは初見のはずの俺の攻撃を「放たれる前に回避している」。予知能力でもなきゃありえねえ・・・」

「ほう・・・?やられっぱなしと思いきや、儂の能力を分析しておったか」


そう言って感心した様な笑みを浮かべる4、しかし・・・


「まあほとんど正解じゃが、「予知」ではない」

「何・・・?」

「特別に教えてやろう、儂の能力を・・・」


そしてなんと、4は自らの能力をカズヤに向かって明かし始めた


「ここに100枚のクジがあったとする、アタリは一枚で99枚がハズレじゃ。アタリを引く確率は1%と言う事になる」

「・・・」

「じゃが・・・、もしこの中のアタリがどれか分かっていたとしたら?」

「何・・・?」

「そう、アタリを引ける確率は100%じゃ」


そう言って笑みを浮かべる4に、眉をひそめるカズヤ


「生きるという事は選択の繰り返し、時に間違った選択をしてしまう事もあるじゃろう。じゃがそれらの選択、全ての「正解」が分かっているとしたら?」

「・・・ッ!」

「ありとあらゆる事象の未来、その中から自分にとって一番都合の良い「正解」を導き出しつかみ取る・・・」


そして肉食獣の様な凶悪な笑みを浮かべながら、4はカズヤに告げた


「それが儂の能力「絶対回答アンサー」じゃ」


それを聞いていた冬香は思わず呟く


「「絶対回答」・・・そんな能力、もう・・・」

「ああ・・・無敵。1対1・・・いや、何人がかりであろうと4を倒すのは不可能。あれが暗殺者のトップ「ナンバー4」だ・・・」


圧倒的な4の力を目の当たりにしながら、そう静かに答える13

そして4はカズヤに向かってゆっくりと歩いていく


「さあどうした?儂の能力まで教えてやったんじゃ、もっと愉しませろ」


それに対しカズヤは銃を構えたまま攻撃を仕掛ける事が出来ずにいた


(「絶対回答」だと・・・!?無理だ・・・あの能力を破る方法は今の俺にはない・・・!)


何をしても無意味

力もスピードも能力も、4の前では全てが等しく無意味になる。しかし・・・!


(こんな女に・・・!俺の十字銃術が・・・!あの施設で地獄の訓練に耐えながら身に付けた技が負けるのか・・・!)


悔しさに歯を食いしばるカズヤ、だが・・・!


(いや!負けねえ!十字銃術は・・・!)


そしてカズヤは4にギラリとした視線を向ける!

その瞳の奥に燃え盛っていたのは闘争心!


「俺の・・・!「俺達」の銃術は無敵だァッッッッッ!!!!!」


ダダンッ!


そして腕の銃を左右にクロスさせると発砲!更に!


ダダダダンッ!


クロスさせた腕を戻しながら4発!計6発の弾丸を放ち、それを能力で操作!


「っ!?」

「うおおおおおっっっっっ!!!!!」


そして半ば特攻にも近い突撃から、渾身の力を込めて右手と左手の銃剣をナナメ上からXの字を描く様に振り下ろす!


「4!!!」


冬香がそう叫んだ、その瞬間!


ドグォッ!!!


4は身を翻し全ての弾丸をかわしながら、反撃の拳をカズヤに叩き込んでいた!しかし・・・!


「ッ!!!」


攻撃を食らったカズヤはすぐに体勢を立て直すと、4が追撃を行うより速く大きく間合いを離し屋上の端まで飛び退いた!


(浅かったのう)


先程の攻撃、カズヤの渾身の一撃ですら4には届かなかった、しかし・・・


(じゃが、儂の「絶対回答」をもってしてもあれが「最善」じゃった・・・。儂の未来にあそこまで浸食してきたのは・・・これで二人目じゃな)


軽く脇腹に痛みを覚える

ずっと昔に付けられた古傷、4が唯一その身に付けられた傷跡

だが4はすぐに意識を切り替えると、大きく間合いを離したカズヤに向かって言う


「どうした?まだ教育の途中じゃぞ?かかってこんか」


そしてカズヤに向かって手招きをして見せる、しかし・・・


「いいや・・・もう十分だ」


カズヤはその挑発に乗る事はなく、そう言いながら両手の銃を懐に仕舞う


「今の俺じゃどう足掻いても勝てそうにない、ここは退かせてもらう」

「ほう。直情的と思いきや、戦闘に関しては冷静な様じゃのう」

「誉め言葉として受け取っておくぜ。・・・だが次はない、次こそは必ずお前を殺す」


そう言いながら殺気の籠った眼差しを4に向けるカズヤ、そして・・・


「カズミ。お前の命もそれまで預けとくぜ」

「カズヤ・・・」

「俺が殺しにいくまで・・・ミナを殺した罪を存分に噛みしめておけ・・・。じゃあ、またな」


そう言って13に向かって笑みを浮かべると

タンッとビルの屋上から飛び降り、そのまま闇に紛れて去っていった・・・


「カズヤ・・・俺は・・・」


13はそう呟きながら、カズヤが去って行った方角に浮かぶ暗闇を見つめ続けるのだった

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