躊躇いと憎悪の理由
「行くぜ!!!カズミィィィィィッ!!!」
怒号と共に13に向かって突撃するカズヤ!
そして間髪入れず打撃、斬撃、銃撃のコンビネーションが13を襲う!
「くっ!!!」
その激しい攻撃を13はなんとか凌ぐ!
だが先程までと違い13は防戦一方!完全に戦いの主導権をカズヤに握られていた!
(13が押されている!?いや・・・と言うより・・・!)
これまでずっと13の側でその戦いを見てきた冬香は、カズヤとの戦闘を行っていた13の変調に気付く
どんな相手だろうと冷徹に引き金を引き、処刑してきた死神13
だが今の13から感じるのは躊躇と戸惑い、戦闘を行える心理状態ではないのは明らかだ
「カズヤッ・・・!」
その時!一瞬間合いを離した13はカズヤに銃口を向ける!だが・・・!
「・・・ッ!!!」
引き金を引く事は出来ず、動きを止めてしまう!
そしてすかさず、その隙をカズヤの銃剣が襲う!
ギィンッ!!!
「どうしたカズミ!!!本気を出せよ!!!お前の実力はそんなもんじゃねえだろ!!!???」
そう13を挑発しながら攻撃を繰り返すカズヤ!しかし・・・
(やはり、強い・・・!)
同じ十字銃術の使い手、カズヤの戦闘能力は今の自分とほぼ互角
殺さずに無力化など行える相手ではない
ましてや、今のカズヤは本気で自分を殺そうとしてきている
(殺らなければ・・・殺られる・・・!だが・・・!)
だがその時、自分とカズヤそしてもう一人、共に施設で過ごしてきた少女の顔を思い出す
(カズミ兄さん)
その顔と声が脳裏に浮かぶ度に、13は引き金を引こうとする指を止めてしまう
(また殺すのか・・・!?ミナの様に・・・!俺は・・・!)
その時、13の視界に一瞬冬香の姿が映る!
(アイツを巻き込むわけにはいかない・・・!)
その瞬間!
バシュッ!
13は近くのビルの屋上に向かって腕からアンカーを射出すると、一気に巻き取りながらビルの屋上まで駆け上がる!
それを見たカズヤは、一瞬怪訝そうな表情を見せる
「逃げる・・・?いや・・・俺をあの女から引き離す為か」
そしてカズヤは一瞬だけ冬香に視線を向けた後・・・
「フッ・・・」
すぐに笑みを浮かべ、ビルの壁面を三角飛びで蹴り上がりながら13の後を追っていった!
「なっ!?13!!!13-----!!!」
その場に取り残された冬香は空に向かって叫ぶが、二人の接続者の姿はすぐに闇に紛れ見えなくなった
ダッダッダッダッダッ!!!
ビルの屋上から次のビルの屋上へ!
ビル街の空を飛び回る様に走り抜ける二つの影!
ダンッ!ギィンッ!
時折銃声と共に二つの影が交差し、火花を散らせながら金属音を鳴り響かせる!
そして二つの影は、駅側の大型デバート屋上へとたどり着いた!
「ハァ・・・ハァ・・・」
屋上にたどり着いた13は大きく息を付く
それに対し、後を追ってきたカズヤは苛立った様子で13に向かって問いかける
「どうして撃たない?カズミ」
「・・・」
だがその問いに13は何も答える事が出来ず、無言のまま立ち尽くす
「・・・お前が何を考えてようが、俺は迷いもしないし躊躇いもしないぜ?この5年間、お前を殺す為に生きてきたんだからな」
そう言って、無言のままの13に銃口を向けるカズヤ
「それとも・・・何か喋る気になったか?」
そして再度、13に答えを促す。しかし・・・
「・・・」
その問いにも、13は何も答える事は無かった
カズヤはそんな13の態度に眉をしかめながら言う
「そうかよ・・・。なら今度こそ!俺の全力で殺してやるぜ!カズミ!!!」
そう叫びながら十字銃術の構えに入るカズヤ!
その時!カズヤに両目がぼんやりと輝きを放った!
「・・・ッ!?能力!?」
「見せてやる、俺の本当の力を!!!」
そう叫びながら突撃を開始するカズヤ!
ダンッ!
そして十字銃術のセオリー通り、弾丸を盾に間合いを詰めようとする!
13はこれを回避しつつカズヤの次の攻撃に備える!だがその瞬間!!!
クンッ・・・!
突然!カズヤが放った初弾!
13が回避した弾丸が空中で方向を変え、再度13に襲い掛かった!
「なっ!?」
かわしたはずの弾丸による背後からの奇襲!常人ならば反応する事さえ出来ない攻撃!
だが13の本能とでも言うべき危機察知能力はこれを捉え、咄嗟に身体に回避行動を取らせる!しかし!
バスッ!
「ぐはっ!!!」
弾丸は13の左肩に命中し貫通!
急所への直撃は避けたものの、13に深刻なダメージを与えた!
「弾丸が・・・曲がった・・・!?」
そう呟きながら自身のダメージを確認する13!
(肩に直撃・・・!だが、まだ腕は動く・・・!)
しかしその瞬間!
ドゴォッ!!!
「くっ!!!」
カズヤが放った強烈な蹴りを右腕でなんとかガードする!
「ぼんやりしてんじゃねーぜ!銃撃、斬撃、打撃のコンビネーションこそが十字銃術!そして・・・!」
ダンッダンッ!!!
カズヤが弾丸を発射!13に向かって迫りくる2発の弾丸!
13はこれを回避するが・・・!
クンッ!
またもや方向転換し襲い掛かる弾丸!
「やはり!曲がっ・・・!」
今度はなんとか曲がってきた弾丸を回避する13!しかし!
ドゴォッ!!!
「ぐはっ・・・!」
その隙に放たれたカズヤの中段の足刀蹴りが13の腹部に直撃!
蹴りの衝撃で、13の身体が後方へ思いきり吹っ飛ぶ!
ガシャンッ!!!
派手な音を立てながら近くの椅子やテーブルの残骸に突っ込む13!
倒れた13に対し、蹴りの構えを維持したままカズヤが告げる
「・・・それに俺の能力「方位転換」を併せた最強の戦闘術。これが「十字銃術・改」だ!」
「ぐっ・・・」
激しいダメージを受けながらもなんとか立ち上がる13!
それを見たカズヤは唇を歪ませ笑うと、攻撃を再開する!
ダンッダンッ!ギィンッ!
13に向かって襲い掛かるカズヤの本当の力!
「どうした!?この後に及んでまだ迷ってるのか!?それとも!本当に手も足も出ないって事か!?カズミィッ!!!」
ギリギリで致命傷だけは避ける13!
しかし全ての攻撃をかわす事は出来ず、その身体には確実にダメージが蓄積していく!
(つ・・・!強い!)
ここに来て、能力を解放したカズヤの戦闘能力は圧倒的に13を上回っていた!
今度は銃口を向ける余裕すらない、完全な防戦一方!その時!
「この程度なのかよ!?カズミ!!!お前にもあるんだろ!?能力が!」
「ッ!!!」
「お前の接続者としての能力!見せてみろよ!本気で来いカズミ!!!」
そして更に放たれた弾丸が空中で方向転換!
銃弾と挟み撃ちにする様にカズヤの銃剣が13を襲う!その瞬間・・・!
(・・・ッ!)
13の暗殺者としての直感が告げた、「この攻撃はかわせない」と・・・!
(駄目だ・・・!直撃を食らう・・・!)
回避、不可能
反撃、不可能
予想されるダメージ、甚大
(死・・・!)
その言葉が脳裏に浮かんだ瞬間・・・!
13の右目が紫色に輝いた・・・!
「接続!」
「何っ!?」
瞬間!発動する13の能力「接続」!しかし!
バチィッ!!!
空中に火花が散ったかと思うと接続が強制的に解除される!だが!
ヒュンッ!
空を切るカズヤの弾丸!
一瞬の能力発動、それによりカズヤの動きが一瞬鈍り、13はなんとか攻撃を回避し間合いを離す事が出来た!
(意識を同調させる前に接続が強制解除された・・・。接続者としての能力適正値もカズヤの方が上・・・)
相手との意識を同調させ、記憶や思考を共有する13の能力「接続」
しかし能力適正値が上の接続者に接続を使えば、逆に意識を乗っ取られる危険性がある
(もう接続も使えない・・・)
万策尽きた事を再度認識する13。しかしその時・・・
「・・・あ・・・あ」
「・・・カズヤ?」
それまで激しい攻撃を仕掛けてきていたカズヤが突然、その攻撃の手を止めた
その場に茫然と立ち尽くし、焦点の合わない目で何かをブツブツと呟く。そして・・・!
「どうして・・・」
「・・・ッ!!!」
次の瞬間!
「どうしてお前が「その能力」を使っていやがる!!!???カズミィィィィィッッッッッ!!!!!」
これまでと比較にならない程の殺意が!カズヤから放たれた!!!
「能力・・・ッ!?何を言っている!?」
意味の分からないその言葉に、13は戸惑いながらも問い返す!しかし!
「返せ・・・!「ソイツ」を返せェェェェェッッッッッ!!!!!」
カズヤは凄まじい程の殺気を噴出させながら問答無用で襲い掛かる!!!
「カァァァァァズゥゥゥゥミィィィィッ!!!!!」
ギィンッ!!!!!
最大の威力と速さで繰り出される連続攻撃!
13はなんとかその攻撃を捌こうとするが!その時!
ギッ・・・ギギッ・・・!
「ぐっ・・・!右腕が・・・!」
カズヤの攻撃を捌いていた右腕の動きが鈍る!
その時、先日4が言っていた言葉を思い出す
(13の右腕が十字銃術に耐えられるのは、おおよそ3分が限界)
ギギッ・・・!
「時間切れか・・・!」
そしてその瞬間!!!
「ウオオオオオッッッッッ!!!!!」
「ッ!!!!!」
放たれるカズヤの渾身の斬撃!
13の意識はこれに反応するものの右腕の反応は間に合わない!そして・・・!!!
ザシュッ!!!
その渾身の一撃と共に13の右腕が宙へと舞った!
カズヤの銃剣による斬り上げは、鋼鉄製の13の義手を斬り飛ばしたのだ!
そして宙に舞った13の右腕が地面に落ち砕けると同時に・・・
ガシャンッ!!!
「くっ・・・」
13は力尽き、その場に膝を付いた
「ハァ・・・ハァ・・・!」
カズヤは息を整えながらそんな13を見下ろす
「まがい物の右腕・・・不完全な銃術・・・。無様だな、カズミ。俺達の中で一番強かったお前が・・・」
苦々しい表情でそう呟くカズヤ
そしてカズヤは続けて言った
「この光景、あの時と同じだな。お前が右腕を失って、ミナがそれを見下ろしていた・・・5年前と同じだ・・・」
カズヤの脳裏に刻み込まれていたその光景
家族と呼んだ男が、もう一人の家族を殺したその日の光景
「あの時と同じ様に俺も殺すか?」
そう言ってカズヤは。地面に転がっていた13の右腕の銃を蹴ってよこす
「どうする?カズミ」
カズヤはそう言って13が動くのを待つ、しかし・・・
カシャン・・・
13は目の前の銃を拾う事はなく、左手で払いのけた
「そうか・・・」
それを見たカズヤは、その手に持っていた銃をゆっくりと13の頭部へ向ける
「じゃあな、カズミ・・・。先にミナの所で待っててくれ」
そしてその引き金にかけた指に力を込めた・・・。その瞬間!!!
「・・・悪いが、そういう訳にもいかんのでな」
「何っ!?」
ダンッ!!!
突然!別の方向からの銃撃!
カズヤは咄嗟に後ろへ飛びそれをかわす!
そして、カズヤに立ちふさがる様に13の目の前に現れたのは・・・
「クックッ・・・。さて暗殺者狩りを狩るとするかのう!」
全ての暗殺者の最高位!最強の暗殺者!
ナンバー4の姿だった!




