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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第四章:もう一人の死神が振るうのは断罪と言う名の鎌か
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罪の足音


とある施設の訓練場、子供を兵士へと変える為の狂った施設

そこでは、まだ十代半ばの子供達が今日も訓練に明け暮れていた

その動きは既に歴戦の兵士もさながらの物であり、この施設で常日頃行われている訓練の厳しさを伺わせる物であった


バッ!ドガッ!!!


訓練場に激しい打撃音が無数に鳴り響く

現在、彼らが行っているのは1対1の模擬戦闘

ゴム製の銃剣が取り付けられた訓練用の模造銃を両手に持ち、実戦さながらの戦闘を行っている

そして、その中でも一際目を引く二人の少年の姿があった


「だらぁぁぁっ!!!」


気迫の籠った掛け声と共に大柄な少年が右の上段回し蹴りを放つ!


「フッ・・・!」


だが相対するもう一人の少年は、この一撃をその場に立ったまま左手をナナメにして受けると

その勢いの方向を反らし、受け流した!


「ッ!?やろっ!!!」


蹴りの方向を反らされバランスを崩した大柄な少年に対し、もう一人の少年はすかさず銃口を向けトリガーを引く!だが!


「あめえ!!!」


大柄な少年はバランスを立て直す事をせず、その勢いのまま体を低くし一回転!

更にその場でバネの様に飛び上がると空中で後ろ回し蹴りを放った!


ドガァッ!!!


「くっ!!!」


この強烈な一撃をもう一人の少年は腕をクロスさせガードする!

だが!その蹴りの衝撃を受けきれず、少年はそのまま後ろへ吹っ飛ぶ!


「もらった!!!」


すかさず!両手の銃で追撃を加えようとトリガーを引く大柄な少年!しかし!


「・・・ッ!」


もう一人の少年はバク転しながらすぐさま体勢を立て直すと、訓練用の銃から放たれた命中判定用のレーザー照射を回避する!


「はぁ!?それをかわすかぁ!?」


驚愕する大柄な少年に対し、もう一人の少年は間合いを詰める為前へ踏み込む!

そして勢いの乗った突撃から、そのまま銃剣を突き刺さそうと右手を前に放った!


「うおっ!!!」


チッ!


紙一重!銃剣が大柄な少年の胴体をかすめる!

もう一人の少年が放った身体ごとぶつかるかの様な突撃を、大柄な少年は身体を捻りなんとか回避する!そして!


「チャンス!!!」


すかさず!突撃をかわされ背を向けた少年の背後から得意の右上段回し蹴りを放つ大柄な少年!だがその瞬間!


パシッ!


バランスを崩し、蹴りの体勢のまま後ろへ倒れる大柄な少年!


「なっ!?」


そう、大柄な少年が蹴りを放とうとした瞬間!

これを読んでいたもう一人の少年は背を向けたまま、蹴りを放とうとする大柄な少年の軸足に向かって足払いを放ったのだ!


ダンッ!


「いでっ!」


背中から地面に打ち付けられた大柄な少年はすかさず立ち上がって反撃に移ろうとする!しかし!


ビーー!!!


もう一人の少年が持っている訓練用の銃からヒット判定のブザーが鳴る

大柄な少年が体勢を立て直すよりも速く、もう一人の少年は倒れた少年に向かってトリガーを引いていたのだ


「あああーーー!くそっ!負けたーーー!!!」


その瞬間、大柄な少年は訓練場に響き渡る様な声で叫びながら手に持っていた銃を放ると、地面に倒れたまま大の字になる


「全く、カズヤは派手な足技ばかりに頼りすぎなんだ」


そう言いながら、仰向けに倒れた大柄な少年「カズヤ」にもう一人の少年が手を差し伸べる、それに対し・・・


「うっせー、カズミこそ地味な手技ばっか使いやがって」


カズヤはそう文句を言いながら、「カズミ」の手を取る



カズミとカズヤ、そう呼び合う二人の少年

しかし、その名は彼らの本当の名前ではない

K・013(ケー・ゼロイチサン)、K・018(ケー・ゼロイチハチ)

彼らに付けられた個体番号、それをもじって互いに名付けあった名前である



「堅実と言え」


カズミはカズヤを助け起こしながらそう言い返すと、続けてカズヤに問いかける


「さてどうする?もう一本やるか?」

「当然だろ!負けたままで終われるかっての!」


カズミの言葉に、カズヤはすかさず銃を手に取ってやる気の構えを取る。だがその時・・・


「カズミにーさん!カズヤにーさん!」


そう叫びながら、二人の元に駆け寄る一人の少女の姿があった



個体番号K・037(ケー・ゼロサンナナ)、二人は彼女の事を「ミナ」と呼んだ

その身体つきは、この異常な環境にある施設ではありえない程に華奢であり

長く伸び、色素を失った白い髪も合わさって、まるで一輪の百合の花の様な少女だった



「ようミナ!」


その少女「ミナ」を、カズヤが笑顔で迎える

それに対し、カズミはやや怪訝そうな顔でミナに問いかける


「ミナ?こっちに来て大丈夫なのか?」


そのカズミの問いに、ミナは微笑みながら答える


「うん。特別に許可が下りたの、もう能力は安定したからって」


そう答えるミナに対し、カズヤが言う


「おお!ホントか!?どんな能力なのか教えてくれよ!?」

「えっと・・・」


カズヤの言葉に言いよどむミナに、すかさずカズミが助け船を出す


「カズヤ。接続者になった奴がどんな能力に目覚めたかは機密事項だ。ましてやまだ訓練生の俺達においそれと話していいわけないだろう?」

「っと、そうだった・・・。悪いミナ」


カズミの言葉に、カズヤはすぐにそう答え頭を下げる


「ううん、いいよ。ただ・・・その事で話があって」


そう言いながら、ミナの表情が暗くなっていく、そして・・・


「実は近日中に、私だけ他の施設に移る事になるかもしれないの」

「なっ!?本当か!?」


驚きの声を上げるカズヤに対し、カズミは静かな声で答える


「・・・能力に目覚めたからか」

「うん。だからしばらく二人には会えなくなるかもしれなくて・・・」


そう言いながら更に声を落とすミナ、だがその時・・・!


「心配するなってミナ!」


ニカっと笑みを浮かべながら、カズヤが答える


「俺とカズミも、すぐに接続者になってそっちに行くからさ!」

「カズヤにーさん・・・」

「それで二人でお前を守る!約束しただろ?」


そう笑顔で言うカズヤ

カズヤのその言葉に、ミナは横目でカズミの方を伺う


「・・・ああ約束だ、俺とカズヤがミナを守る。血は繋がっていなくとも、俺達はこの世で3人だけの兄妹だ」

「・・・うん!」


その言葉にミナは笑顔で答え、3人はその場で笑いあった

二人の少年と一人の少女が一つでいられる、それが最後の日であるとも知らず






「「カズヤ」・・・なのか・・・?」


目の前の男に問いかける13

それに対し男は仮面を外し微笑みながら答えた


「よお・・・?久しぶりだな・・・「カズミ」」


その男の声に、姿に

13は声を詰まらせながら問いかける


「生きて・・・いたのか・・・」


それに対しカズヤは笑みを浮かべたまま答えた


「ああ、なんとかな。あの施設が崩壊した日、重傷を負いながらもなんとか逃げ延びたってわけさ」


その二人の会話を聞きながら、冬香は疑問を浮かべる


(どういう事だ・・・?「カズミ」?それが13の名前なのか・・・?じゃあ、あのカズヤという奴は13が居たという施設の仲間という事か・・・?)


それが正しければ、5年ぶりの旧友との再会という事になる、だが・・・


(だが・・・、あの男から13に向けて放たれている殺気は先程までと同じ、いや・・・むしろさっきよりも強くなっている!?)


そして、カズヤは笑みを浮かべながら13に向かって言った


「この5年間、ずーーーっと探してたんだぜ?カズミ、お前の事をな」

「探していた・・・?」


そう答えた13に対しカズヤはニヤリと唇を歪ませ、静かな声で答える


「ああ。ミナを「殺した」お前をな、カズミ」

「ッ!!!!!」


瞬間、普段感情と言う物を全く見せない様な13の顔が明らかに驚愕の色を浮かべた


「カズヤ・・・お前はあの時・・・」

「ああ、見てたぜ?右腕を切断されて膝を付いたお前とそれを見下ろすミナ、そしてお前が左手で銃を抜き・・・」


そしてカズヤは、13にその罪を突きつけるかの様に言い放つ


「ミナを撃った、そうだろ?カズミ」

「・・・」


その言葉に、13は何も答える事が出来ず

しばらくの間、沈黙だけが二人の間に流れる。そして・・・


「なあ?何か言えよカズミ、言い訳ぐらいなら聞いてやるぜ?どうしてミナを殺した?俺達のたった一人の妹を、守ると誓った相手をどうして殺した?なあ、答えろよ」


カズヤは13に答えを促す様に問いかける

そしてしばらくの沈黙の後、13は一言・・・


「・・・すまない」


とだけ呟いた・・・その瞬間!


ゴォッ・・・!


まるでその場に立っている者を一瞬で焼き尽くす地獄の業火の様な!激しい怒りの殺気が放たれた!


「それが・・・お前の答えかよ・・・?カズミィィィィィッッッッッ!!!!!」


先程まで笑みを浮かべていたカズヤの表情が憤怒へと変わっていく!


「ミナを殺しておきながら!!!何も言う事は無いってか!?ああ!!!???」

「・・・」


怒りのまま大声で叫ぶカズヤに対し、13は何も答えず無言のまま項垂れるだけだ

そして、何も答えない13にしびれを切らしたのか、カズヤは両手の銃を構える!


「そうかよ・・・!だったら殺してやる・・・!ミナの仇を俺がうつ!「復讐」を果たさせてもらうぜ!カズミ!!!」

「カズヤ・・・」


怒りの形相で叫びながら臨戦態勢に入るカズヤ!

だがその状況にあっても、13は銃を下ろしたまま動こうとしない


「・・・どうした?構えろよ。無抵抗のお前を殺したって何の意味もないだろ?」

「・・・」

「やる気が出ないって言うなら、そっちの女から先に殺してもいいんだぜ?」


そう言いながら、カズヤは冷たい視線を冬香に向ける


「ッ・・・!!!」


瞬間、まるで蛇に睨まれたカエルの様に冬香の足がすくむ!

3人もの暗殺者を殺した手練れの接続者!

その相手から自分に対して向けられる本気の殺意!

カズヤの言葉は脅しではない、13が動かないのならばすぐにでも冬香を殺しにかかるつもりだ。しかし・・・


「・・・ッ」


冬香に殺気を向けられた事により、13は苦し気な表情を浮かべながらも両手の銃を十字に構える

それを見たカズヤはニヤリと笑みを浮かべると言った


「ああ・・・それでいい」


互いに十字の構えを取る13とカズヤ、そして・・・!


「行くぜ!!!カズミィィィィィッ!!!」

「カズヤ・・・ッ!」


かつて兄弟の契りを交わした二人の少年は互いを殺す為、その銃を向け合うのだった!

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