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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第四章:もう一人の死神が振るうのは断罪と言う名の鎌か
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彼と彼の追憶


AM2:00 池袋

魔都と化したかつての首都東京、池袋周辺も例外ではなく

華やかなネオンが輝く大通りからほんの少し離れれば、様々なモノが徘徊する闇が広がっている

犯罪者、諜報員、接続者、そして・・・暗殺者


「ぎゃああああっっっっっ!!!!!」


そして今日もまた、闇の中に接続者の断末魔が響き渡った


「ナンバー17、暗殺終了アサシネイションオーバー


獲物が動かなくなった事を確認すると、狩りを終えた暗殺者はその場から立ち去ろうとする

だがその時・・・


コッコッコッ・・・


路地裏にブーツの音が響き渡り、暗殺者の前に一人の男が現れた


「誰だ?」


男に対して警戒状態を維持したまま暗殺者が問いかける


「・・・」


だが男はそれに答える事はなく無言

そして答えの代わりに、スッと懐から銃を取り出した


「何者かは知らんが敵なのは確かな様だな・・・。監査官」


暗殺者がそう呼びかけると、小型通信機から監査官の指令が戻ってきた


「確認した。当該対象の殺害を許可する」

「当該対象の殺害許可を受諾。ナンバー17、暗殺開始アサシネイションスタート


その言葉を合図に、暗殺者が目の前の男に襲い掛かった!






場所は変わり

東京地下、所在地は極秘とされている暗殺課本部

その課長室では暗殺課課長である吹連と

その直属の暗殺者である4が、先日壊滅させた施設について話をしていた


「先日、貴方とナンバー13が持ち帰ったデータの解析結果が出たわよ」

「ほう?」

「まず、あの施設は「竜尾会りゅうびかい」の物で間違いないわ」

「竜の尾・・・ドラゴンテイルか」


竜尾会

東京東部エリアを中心に活動する犯罪組織の中でもトップ3に入る大型組織である

麻薬、銃器密売、人身売買等、その活動は多岐に渡るが

その中でも彼らが重視しているのが、接続者の研究である


「あの施設で行われていたのは人工的に接続者を造り出す実験。路上孤児を攫っていたのはその為みたい」

「じゃろうな。地下には「使えなくなった材料」が大量に廃棄されておった。原型を留めていなかったせいか、あの小さい娘には見えておらんかったのが幸いじゃが」

「そうね。でも研究データを見る限り、実験成果はあまり芳しくなかったみたい。偶発的に何人かの接続者が造り出されているみたいだけれど、意図的に接続者を造り上げるまでは行っていないようね」


だが、その吹連の言葉を4は鼻で笑ってみせた


「当然じゃ。「アレ」を人間の力でどうにかしようと言うのが間違っておる。人為的に接続者を造り出すなど上手くいくはずがない」


「アレ」の恐ろしさ、強大さ

それは人知では計り知れない事を、4はすでに「その身で知っている」


「・・・ええ、そうね」


その言葉に頷き、吹連は指を組んだまま俯き答える


「・・・それにしても竜の尾か。名は体を表すと言うが、それは奴らも例外ではないぞ?」

「ええ、分かっているわ。「ただの犯罪組織」がこれだけ大規模な接続者の研究を行えるわけがない。当然バックにはもっと巨大な組織が付いている、国家規模の・・・」

「クックックッ・・・下手をすれば外交問題に発展するかものう?」


ニヤニヤと笑みを浮かべる4に対し、吹連は毅然とした態度で言い放つ


「関係ないわ。私達の仕事はこの東京の治安を守る事、政治は政治家がやる事よ」


その目には一切の迷いもない、相手が誰であろうと戦う者の覚悟が確かにあった

そんな吹連に対して愉悦の笑みを浮かべながら、4は13の事を考える


「竜の尾・・・。あやつにとっては因縁の相手ではあるが・・・さて」






夢を見ていた

今はもう失われてしまった頃の夢


苦楽を共にした仲間達、互いに支え合った兄弟、そして必ず守ると誓った存在

今はそのどれもが失われてしまった


ーー何故俺は生きている?


何度となく繰り返した自問自答をまた繰り返す

だが、当然その答えは見つからない


ーー何もかも失ったバケモノのくせにどうして?


答えはない

ただ暗闇の海の中を藻掻く様に彷徨い続ける


だがその時、暗闇の意識の中に声が響いた


「カズミ・・・」


いつかどこかで聞いた事のある様な声、ひどく懐かしい声だ

その声に耳を傾ける


ーー何を言っている?オマエは誰だ?


「お前は・・・俺が・・・」


虚ろな声、それを聞き取ろうと必死に意識を伸ばす。そして・・・


「ーーーーー・・・!」






「ッ!!!」


その瞬間、13はベッドから飛び起きた


「今のは・・・夢か・・・?」


懐かしい頃の夢を見ていた

施設で皆と共に訓練に明け暮れていた頃の夢を、そしてもう一つ


(最後に何か声が聞こえてきた気がするが・・・)


夢の中で聞こえてきた声

13はそれを思い出そうとするが、どうしてもそれを思い出す事は出来なかった

だがその代わりに・・・


(カズミ) (カズミ兄さん)


懐かしい二人の事を思い出す、血よりも固い絆で結ばれた兄弟達

だが今はもう居ない二人の事を


(どうして今更こんな事を思い出す?もう何もかも失ってしまったのに・・・)


意識しない様にしていた、考えない様にしていた

だがふとした時に、それは13の意識を苛み蝕む。そして・・・


「俺はどうして生きている・・・?」


また、13は同じ自問自答を繰り返すのだった






「ッ!!!」


どうやら一瞬意識を失っていたらしい、男は正気に戻ると辺りを見渡す

目の前には接続者の死体が一つと、そしてもう一人倒れている男、暗殺者だ


「ナンバー17応答しろ!17!!!」


暗殺者の側に落ちている通信機から叫び声が聞こえてくる


「フンッ・・・」


グシャ!!!


男は耳障りな音を立てる小型通信機をブーツで踏み砕く

倒れている暗殺者、ナンバー17はすでに息絶えていた

だが男はそんな死体には一切の興味を持たず、路地裏の闇から見える空を眺めながら呟いた


「懐かしい・・・夢だったな・・・」


先程、一瞬だけ見ていた光景を思い出す


(カズヤ) (カズヤ兄さん)


懐かしい二人の事を思い出す、血よりも固い絆で結ばれた兄弟達

だが今はもう居ない二人の事を


(いや、まだ何も失われてなんかいない!俺達の物語は終わってなんかいない!)


絶対に忘れない、ひと時たりとも意識から手放したりしない

それは失われてなどいないのだ、自分がここに存在し続けている限り


「ああ、もうすぐだ・・・。早く来いよ、カズミ・・・。お前は・・・俺が・・・」


そして男は壁に一つのメッセージを残すと、その場から立ち去って行った

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