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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第三章:その手の十字架は死をもたらす嵐となる
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追う者たち


13の全弾射撃により身体を撃ち抜かれたラオは、ニヤリと笑みを浮かべたまま倒れ、そして動かなくなった

その時、能力によってその戦闘の様子をモニターしていたアイリが告げる


「・・・対象の生命活動の停止を確認しました」

「了解・・・。暗殺終了アサシネイションオーバー


そう言って、13も両手のハンドガンを仕舞い警戒態勢を解く


「クック・・・、まあ及第点と言った所じゃのう?じゃが・・・」

「4・・・」


4はそう言いながら、13の元へ歩いてくる。だがその時・・・!


「ぐっ・・・!」


突然、13は右腕を抑えながらその場にうずくまる!


「13!どうした!?」

「13さん!まさか負傷を!?」


通信機越しに聞こえてくる心配そうな冬香とアイリの声

だがそれを気にする事もなく4が言う


「どうやら右腕は限界のようじゃな」


うずくまる13を見下ろしながら言う4に対し、13は息を整え答える


「ああ・・・。あと30秒戦いが続いていれば敗北していたのは俺だった・・・」

「まだまだじゃのう?」


そう言いながらクックックと笑みを浮かべる4に冬香が問いかける


「右腕が限界?それは一体どういう事なんですか?」

「ん?ああそれはのう・・・」


そして4は13の技について冬香達に説明をする


「さっき13が使っておった「十字銃術クロス・ガンアーツ」、あれは対接続者用に考案された技なのじゃが。その技を行使する際、想像を超える程の肉体的負荷がかかる」

「肉体的負荷・・・?」

「そうじゃ。とは言え、13の身体はその負荷に耐えられる様訓練されておる為何の問題もない。じゃが・・・「右腕」は別じゃ」


その時、冬香は4の言葉の意味に気付く


「義手・・・だから?」

「そうじゃ。13の生身の部分は十字銃術の負荷に耐えられるが、機械式である右腕は耐えられん。限界を超えた負荷による熱暴走により、モーターや回路が焼き付き停止する。13の右腕が十字銃術に耐えられるのは、おおよそ3分が限界」

「3分だけ・・・」

「そういうわけじゃから、13に全力を出させる時は時間に気を付ける事じゃな」


冬香にそう答えると、4は13に向かって言う


「地上部分は壊滅、地下部分も今の戦闘の間に全員逃げて行った様じゃ。ラオ・フーシェンは殿・・・もしくは、他の者を逃がす為の捨て駒と言った所じゃな」

「4さんの言う通り、地上部分にも地下部分にももう生体反応はありません」

「という訳じゃから、お主はさっさと本部に戻って腕のメンテナンスでもしておけ。細かい後始末は儂がしておいてやる」


そう告げる4に対し、13はスッと立ち上がると


「了解。これより帰投する」


そう言って、その場を立ち去って行った






数時間後

研究室へ戦利品を届け、その後吹連への報告を終えた4が暗殺課本部の通路を歩いていた時


「4、少しいいですか?」

「ん?霧生監査官か?」


冬香に呼び止められ足を止める4


「13の奴はどうした?」

「13はしばらく右腕のメンテナンスで安栖さんの所へ、アイリも13の側についています」

「そうか。で?お主はよいのか?」

「いえ、私は・・・」


そして冬香は少し考えた後、4に向かって真剣な眼差しを向けながら言った


「話があります」


その後、人目を避ける様に二人で近くのミーティングルームへと入る

そして・・・


「それで?話とはなんじゃ?」


そう問いかける4に対し、冬香は何かを考えながら視線を足元へ向け

しばらくしてから意を決した様に答えた


「10年前の事件について教えて欲しいんです」

「10年前?」


何の事かと首をかしげる4に、冬香は告げる


「10年前、この東京を取り戻す為特別治安維持課、そして東京警察本部の総力を挙げた作戦が行われた」

「・・・ほう?」


その言葉にピクリと反応を見せる4


「だが接続者の襲撃により作戦は失敗し、多くの犠牲者を出す結末となった。けれど・・・」


そして、冬香はギュッと右手を握りしめながら続けた


「それ程の大事件だったにも関わらず事件の詳細が一切表に出てこない!作戦とは何だったのか!?襲ってきた接続者とは何者なのか!?肝心な部分の記録が一切残されていない!」


そう苛立った様に言葉を荒げる冬香だったが、呼吸を整えると4に向かって問いかける


「4、特別治安維持課シングルナンバーの一人である貴方がその作戦の事を知らないはずがない、貴方達シングルナンバーも作戦に参加していたはずだ。10年前何があったのか?答えて下さい!」


冬香のその言葉に対し、4はいつも通りの笑みを浮かべたまま


「霧生監査官。お主は何故それを調べておる?」


そう問いかけた


ゾクッ!!!


次の瞬間!冬香の背筋に冷たい物が走る!

突然、周囲が戦場へと変わったかの様な殺気に満ち溢れた物となっていた!


「・・・答えてもらおうか?」


普段通りの笑みを浮かべながら、4の瞳は冬香にこう告げていた


ーー理由によってはこの場で殺す


その尋常ならざる殺気を浴びせられながらも、冬香は視線を逸らす事なく答えた


「・・・10年前の作戦には父も参加していた、そしてその事件で父は殺された。私はその犯人の接続者を追っている」


その冬香の答えに対し4は少し考え、そしてハッと気づいた様に言った


「父・・・?そうか・・・お主、霧生彰きりゅうあきら本部長の娘か」

「ッ!?父の事を知っているんですか!?」


そう詰め寄る冬香に、少し面を食らった様子で4が答える


「お、おう。だが・・・作戦前に少し話した程度じゃ。そう言えば、娘が居るとは聞いておったが・・・」


そして4は先程までの殺気に満ちた雰囲気とは全く違う、子供を気遣う母親の様な表情で冬香に問いかけた


「動機は復讐か?」

「・・・」


その4の問いに対し、冬香は無言のまま迷いのない瞳で答える


「そうか。父を殺された娘が復讐の為にこの東京へ来たという事か・・・」


そう呟きながら、4は冬香に真実を告げるべきか考え込む

そして考え込む4に対し、冬香がさらに強く問いかけた


「教えてください!10年前何があったのかを!」


4はその言葉に更に考えこむが、しばらくして・・・


「・・・残念じゃが、教える訳にはいかぬ」

「なっ・・・!?」


キッパリと、冬香に対してそう答えた


「なっ!?何故ですか!?」


納得がいかないと言った様子で詰め寄る冬香に、4がその理由を答える


「10年前の事件。それは東京特別治安維持課にとっての汚点、この東京全体を揺るがしかねぬ程のスキャンダルなのじゃ」

「汚点・・・?」

「もしこれが表に出れば、ギリギリのバランスで保たれている東京の治安が、完全に崩壊する事にもなりかねん。よって誰にも詳細を語る事は出来ぬ、すまんな」


そう冬香に対し謝罪する4、それに対し冬香は・・・


「そんな・・・。目の前に・・・!目の前に仇の情報があるのに・・・!」


納得はしているが納得できない

そんなどうしようも無いくやしさを込めた眼差しを地面へと向ける。だがその時・・・


「・・・その代わりと言ってはなんじゃが、詳細を語る事の出来る人物なら教える事が出来る」


4がニヤリと笑みを浮かべながらそう言った


「ッ!?そ、それは・・・!?一体誰が!?」

「まず一人は「東京特別治安維持課課長・吹連双葉」」


確かに暗殺課の長である吹連課長であればそれを語る事が出来る

冬香はそう納得するが・・・


「一人は・・・?」

「うむ。もう一人は「研究室主任・安栖宗次」じゃ」

「あ!安栖主任が!?」


4の口から語られた意外な人物の名に、冬香は驚きの声を上げる


「奴は儂らシングルナンバーと同じ、東京特別治安維持課創設初期メンバーの一人じゃ。そして10年前の作戦でも重要なポジションを担っていた男じゃ」

「吹連課長と安栖主任・・・」


4が告げた二人の人物の名前を反芻する冬香


「当然ながら二人の口も堅いじゃろう、教えてくれと言って簡単に教えてくれるとは思えん。だがまあ、後は自力でなんとかする事じゃな」


そんな冬香に対し4は冬香の横を通り過ぎ、部屋を出て行こうとする


「い、いえ!ありがとうございました!」


そう頭を下げる冬香に対し、4はニヤリと笑みを浮かべ耳元に唇を近づける


「ククッ・・・可愛い奴じゃな。・・・もう一つだけ、サービスで教えてやろう」


そして・・・


「ッ・・・!!!!!」


耳元でボソりと冬香に呟き、部屋を出ていった

部屋に残された冬香は微動だにせず、地面に視線を向けたままその場に立ち尽くしていたが。しばらくして・・・


「・・・フッ・・・フッフッフッ・・・・アッハッハッハッハッ!!!!!」


突然!笑い声をあげる冬香!

そして冬香は、狂気に満ちた目で叫んだ!


「「生きている」!!!父さんを殺した仇が「生きている」!!!!!」


そう、4が去り際冬香に呟いた言葉とは・・・


ーーお主の仇は生きているぞ


「なら「殺せる」!!!「生きている」なら「殺せる」!!!!!待っていろ!!!必ず見つけ出して殺してやる!!!!!」


そして未だ見ぬ仇に向かって憎悪を燃やし、虚空を睨みつけるのだった






同時刻

復讐を誓う女が憎悪を燃やしていたのと同じ頃・・・


「施設は壊滅か・・・やってくれるぜ」

「・・・」


13と4が壊滅させた施設跡に、二人の男の姿があった

死体だらけの施設をニヤニヤと笑みを浮かべながら闊歩する男と、その男の後ろに続く寡黙な男

そして二人は地下の通路に倒れている死体の側にやってくる


「あの野良の接続者はともかく、ラオまで殺られたのかよ!?ハハッ!やるなぁ!」


ラオ・フーシェンの死体を見ながら笑う男に対し、寡黙な男が口を開いた


「ラオ?誰だ?」

「こいつだ、ラオ・フーシェン。武器を使わず拳で戦う変なジジイだったが、野良にしてはかなりの実力者だった」


その言葉を余り興味無さそうに聞いていた寡黙な男が問いかける


「首がないぞ」


そう、倒れていたのは間違いなくラオの死体だったが

その首から上はバッサリと切り落とされ、近くにも頭部は見当たらなかった


「ん?ああ、おそらく殺ったのは「暗殺者」だ」

「特別治安維持課とかって奴らか?」

「そうそう。奴らは殺した接続者の死体を回収していやがるんだよ、それが難しい時はこうやって首から上だけを切り取って持っていくらしい」

「何の為に?」

「ハッ!知るか!まあ国の機関とか言っても、裏では何か怪しい事をしてるんだろうさ」


その言葉をまたもや興味無さそうに聞き流す寡黙な男に対し、もう一人の男はラオの死体を観察していく


「胴体に9mmの弾痕が多数。サブマシンガンか何かか?接続者のくせに撃たれて死ぬなんて間抜けな奴だ。それに・・・なんだこりゃ?」


その時、男はラオの身体に奇妙な傷跡を見つける


「・・・ナイフでの刺突あとのすぐ側に弾痕?獲物は銃剣付きのハンドガンか?」


それは13がラオの発勁に対しカウンターで撃ち込んだ時の傷

不思議そうに死体を観察していた男が呟いた、その瞬間!


「どけ!!!」

「うおっ!」


先程まで興味なさそうに辺りを眺めていた寡黙な男が、死体を観察していた男を押しのけ傷あとを見始めた

そして食い入る様に死体と辺りを観察していた寡黙な男が呟く・・・


「・・・間違いない。アサルトパターン「53(ファイブスリー)」、敵の攻撃を回避しつつ懐に飛び込んでの刺突銃撃・・・。そしてトドメの至近距離からの全弾射撃、アサルトパターン「99(ダブルナイン)」・・・!!!」


そう呟きながら、それまで無表情だった男の顔が狂気の笑みに歪んでいく


「間違いない・・・!これをやったのは「銃術ガンアーツ」使いだ・・・!!!そして・・・この世に残っている銃術使いは・・・!!!!!」


その時、ブツブツと呟く男に対しもう一人の男が呼びかける


「おい!何か分かったのか!?」


だが寡黙な男はその言葉に答えずブツブツと呟き続ける

無視されたもう一人の男は苛立ったように舌打ちをし、そして・・・!


「おい聞いてんのか!?「K・018(ケー・ゼロイチハチ)」!」


もう一人の男がそう呼びかけた、その瞬間!!!


「ッ!!!!!」


ドガッ!!!


「がっ!テメェ!!!」


突然!ブツブツ呟いていた男がもう一人の男に掴みかかると、その首を掴んだまま通路の壁に叩きつけた!


「二度と・・・オレをその名で呼ぶな・・・!」

「な、何を・・・!?」

「オレの名は「カズヤ」だ。もう一度言った時はお前を殺すぞ」


そう言いながら、凄まじい殺気を込めた瞳を向ける男!

同じ接続者のはずが、男はその瞳に圧倒的な恐怖を感じ咄嗟に叫ぶ!


「わ、分かった!分かったから放せ・・・!」

「・・・」


叩きつけられていた男がそう答えると、カズヤと名乗った男はあっさりとその手を放し

男に背を向け、虚空を見つめながらブツブツ呟く


「そうか・・・暗殺者か・・・どうりで見つからないはずだ・・・。だが、ようやく見つけた・・・5年間・・・探し続けた・・・!ようやく会えるな・・・!嬉しいなぁ・・・ハッハッハッ・・・!」


そして・・・


「お前達もそう思うだろ・・・?「カズミ」・・・「ミナ」・・・」


もう一人の追う者は、ニヤリと笑みを浮かべるのだった

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