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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第三章:その手の十字架は死をもたらす嵐となる
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対接続者用近接格闘双銃術


ラオの強力な一撃を食らいながらもなんとか立ち上がった13、しかし・・・


「くっ!このままでは13が・・・!」


ビルから1キロ程離れた社内から戦闘をモニターしていた冬香が焦った様に叫ぶ

13が身に纏う各種センサー内臓の戦闘服

そのセンサーから送られてきている13のバイタルデータは危険領域まで低下していた


「13!無茶だ!ここは4に任せて撤退しろ!」


これ以上の戦闘を危険だと判断し、13に撤退を指示する冬香だったが・・・


「・・・我々は死をもたらす弾丸である」

「聞こえていないのか!?13!」


13は冬香の命令に従わず、何かの言葉をブツブツと呟き始めた


「くそっ!4聞こえているんだろう!?」


通信に応答しない13の代わりに、冬香は4へ通信を入れる


「ん?なんじゃ?もちろん聞こえておるぞ?」

「なら今すぐ13を下がらせてくれ!これ以上の戦闘は・・・!」


しかし、冬香に返ってきた答えは意外な言葉だった


「断る」

「なっ!?何を言っているんだ4!?」

「そのままの意味じゃ。儂は手を出さぬ」


ラオ・フーシェンは能力適正は低い物の、それをもろともしない高い格闘能力を持つ強力な接続者だ!

今の状態の13では勝ち目はない!


「13が死ぬぞ!弟子なんじゃなかったのか!?」


そう怒りを込めて叫ぶ冬香に対し、4はいつもどおりククッと笑うと答える


「師であるからこそ弟子に試練を与えておる。この程度の試練も超えられぬ弟子なら必要無い」


弱いなら捨てると、いともたやすくそう言い放つ4


「そんな・・・!」


しかし、そんな言葉に驚愕する冬香に対し4は続けて言った


「まあそんなに心配する事はない。確かにラオ・フーシェンは強敵だが、お陰で本当の死神が目を覚ましそうじゃからのう」

「本当の死神・・・?」


十字に腕を構えた13は目を閉じながら更に言葉を唱える

そしてそれと同時に、辺りにピリピリとした緊張感が漂っていく


「まあ見ておれ。さっき儂とやった時もそうじゃったが、どうやら13の奴随分と鈍っていた様じゃからな」


徐々に高まっていく殺気に、ラオの背筋にもゾクっとした冷たさが漂う

その冷たさに、ラオはニヤリと笑みを浮かべると呟いた


「ふふっ・・・、どうやら貴様も修羅の類であったか・・・。ならば吾の拳を振るうに一切の不足無し!」


拳を構えるラオ!

そして13もカッと目を見開くと・・・!


「目の前の全てを殺しつくす!弾丸の嵐となれ!!!」


両手に銃を構え!ラオに向かって襲い掛かった!






両手を十字に構えたまま突撃を開始する13!そして!


ダンッ!


右腕の銃をラオに向けると発砲する!


「フンッ、この程度の攻撃など!」


しかしラオは、この銃弾を紙一重でかわしながら間合いを詰めようと前へ踏み出す!だが、その瞬間!


ビュンッ!


「何っ!?」


ラオの頬を13の銃剣が掠める!


「自ら吾の間合いに飛び込んできたか!」


銃撃を行った後、突撃しながら右の銃剣でラオの顔面に刺突を行った13!

だが、ラオはこの一撃をすんでの所でかわす!


「祈れ、殺せ。祈れ、殺せ・・・!」


しかし突撃を回避された13は、その勢いを殺す事なく体を回転させ左手で攻撃する!


(裏拳・・・、いや銃剣による斬撃か!)


薙ぐ様にして迫ってくる銃剣をバックスウェーでかわそうとするラウ、だが!


ピタッ!


その瞬間!勢いよく横に振っていた13の左手がラオの目の前でピタリと止まった!


「ッ!?」


そして左手のハンドガンの銃口がラオの顔面に狙いを定め・・・!


ダンッ!


即座に銃撃!しかし!


「ふっ・・・肝が冷えたぞ?」


発砲される直前、ラオは13の左手を弾き銃口を反らしていた!


「フッ!」


そしてすかさず!今度はラオが肩から突撃!身体ごとぶつかるかの様な打撃を放つ!


ドンッ!!!


「くっ!?」


ラオの体当たりで体勢を崩す13、そこにラオは肘で追い打ちを仕掛ける!しかし!


「何っ!?」


肘を放った瞬間!目の前から13の姿は消えていた!


「下か!!!」


ガッ!!!


伏せた状態からほぼ真上に放たれた13の天を突くかの様な蹴り!

意表を突いた攻撃をラオはなんとか防ぐものの体勢を崩し咄嗟に後ろへと飛ぶ、だが!


「祈れ、殺せ。祈れ、殺せ・・・!」


後ろへ飛ぶラオに対し、すぐさま13は間合いを詰め追撃を仕掛ける!


「この吾相手にあくまで接近戦で挑む気か・・・!?面白い!」


ガッ!ドガガガガッ!!!


腕を伸ばせばすぐにでも相手の急所に手が届く必殺の間合い!

その超近接戦で13とラオの攻撃が凄まじい速さで交差する!


ギィンッ!


至近距離から放たれた13の銃撃を硬化した拳でいなしながら、ラオはその頬に冷や汗を流した


(ただ拳を固くするだけのつまらない能力。だがしかし吾の能力が「これ以外」であったなら、吾の命はとうになくなっていた!)


矢継ぎ早に放たれる打撃、斬撃、銃撃の複合連続技

超近接から放たれるそれらはそのどれもが必殺の威力を秘めた一撃

通常の拳であれば即座に抜かれ、命を落としていただろう


「この様な技がこの世にあったとは・・・!面白いな!ハッハッハッ!!!」


怒涛の連続攻撃を仕掛ける13に対し、ラオは笑い声を上げながら正面から打ち合う!

両者一歩も譲らぬ・・・いや、譲ればその場で死に至る!激しい攻撃を繰り広げるのだった!






その時、目まぐるしい速さで攻防を繰り返す13を見ながら、4が笑みを浮かべる


「ククッ・・・そうじゃ、それでこそ13じゃ・・・」


頬を紅潮させながら13を見守る4

その時、通信から冬香の声が聞こえてきた


「な・・・なんなんだアレは・・・。13があんな戦い方を・・・」


今まで見た事のない程鬼気迫る13の戦いに、驚愕に声を上げる冬香

その言葉に4が笑みを浮かべたまま答える


「アレが本来の13の戦闘スタイルじゃ」

「本来の・・・?」


そう問いかける冬香に4は、13があの若さで異様な程の戦闘能力を得るに至った生い立ちを話し始めた


「あやつは幼い頃ある組織に拉致され、組織の為の戦闘員を養成する施設へと収監された」

「施設!?それは一体・・・!?」

「攫ってきた子供達を使って人工的に接続者を作り出し、組織の戦闘員に仕立て上げる為の実験施設じゃ。あやつはその施設での過酷な戦闘訓練、そして拷問にも似た能力を覚醒させる為の実験に5年近く耐え抜いてきた」

「ッ・・・!?」


何人もの仲間が訓練や実験で命を落とす中、13は生き抜いてきた

戦えなくなった者から死んでいく過酷な環境

その環境で生き抜いてきた13にとって、生きる事とは戦う事と同義である事を意味する


「そして5年前。儂ら暗殺課が施設の情報を掴み襲撃を行おうとした丁度その時、事件が起こった」

「事件・・・?」

「詳細は儂にも分からん。施設に居たある接続者が暴走し施設の人間を虐殺し始めた。施設の人間はその大半が死亡し、その接続者も儂が潜入した時にはすでに死んでおった。その時拾ったのが右腕を切断され死にかけていた小僧、13だったわけじゃ」

「では13は・・・」

「うむ、あやつはその施設の生き残りと言った所じゃな。そして生きる意味を失っておったあやつに儂は「13」のナンバーを与え暗殺者として育てあげた、元々施設の訓練のお陰で高い戦闘技術を持っておったし、13は隻腕でも問題なく任務をこなしておった。じゃが・・・」






それは4年程前のある日

隻腕の少年を拾って一年程が経ち、研究主任の安栖が彼に専用の義手を与えた時の話だった


「お主から儂に訓練を行ってほしいとは珍しいのう?」

「ああ、4に見てもらいたい技があったんだ。今の俺で使い物になるかどうかは分からないが」


そして訓練が始まり、両者の攻撃が交錯した後

地面に倒れていたのは13だった、しかし・・・


「ククッ・・・。まさか儂に「能力」まで使わせるとはのう・・・。それがお主の本当の技か?」

「ああ、俺があの施設で学んだ殺しの技だ。右腕がなくなっていたから、もう使う事は無いと思っていたんだが・・・」

「確かにその技は片手では使えんじゃろうな。銃剣を付けた特殊ハンドガンを両手に構え、相手の懐に飛び込んでからの打撃、斬撃、銃撃の複合連続技。接続者であろうとも超至近距離からの銃撃を回避するのは容易ではない、しかも当たれば必殺・・・。とは言え危険なのは自分も同じ、突撃と言うよりは吶喊じゃな」


接続者を「殺す」事だけに特化した技

それはつまり、「殺す」為であれば使い手が「死ぬ」事すら厭わない玉砕覚悟の戦法


「しかし・・・」


その時の4はこう考えた


(もしこれを完全に使いこなせたのなら、13は儂をも超える最強の暗殺者になれるかもしれん・・・)






そして現在、目の前で繰り広げられる13とラオの激しい攻防!

互いに必殺の一撃を打ち合いながらも、これを紙一重でかわし攻撃を繰り返す!


「ふっ!なんと凄まじい攻撃!正に死を体現したかの様な技!だが!」


その時!13の攻撃を左手で捌きながらラオが右の膝で13の顎を狙う!


ガシィ!!!


13はこれを両手の銃を交差させ受け止める!

だがその威力を殺しきれず後方へ飛び衝撃を緩和させる!しかし!


ビキィッ!!!!!


次の瞬間!大地を震わせるかの様な音が周囲に響き渡った!

ラオが膝蹴りで振り上げた右足を下ろすと同時に地面を踏みつけたのだ!!!


「あれはっ!?13!!!」


ラオが行ったのは震脚!

そして同時にその運動エネルギーを身体に循環させ右拳に集中!

膝蹴りを受け間合いを離した13の胴体に狙いを定める!


「吾の渾身の発勁!その身で受けて砕け散れ!!!」


回避も防御も不可能!

ラオが放つ最強で最速の打撃が放たれた!!!


ゴオッ!!!!!


凄まじい圧力を放つ必殺の一撃に対し13は!


グッ!!!


なんと「正面から突っ込んだ」!

そして目前に迫るラオの拳に対し!


ダダンッ!!!


二発の銃弾を撃ち込む!

ラオの拳は「硬化」の能力により銃弾をはじき返す!だが!


「何っ!?」


その銃弾はラオの拳の軌道をほんの僅かにずらした!


チッ!


13の頬をかすめるラオの拳!

ラオの拳がズレたほんの僅かの間を縫うようにして!ラオの懐に飛び込みながら13が真っすぐに左手を突き出す!

その手にあるのは銃剣の付いたハンドガンだ!


ドスッ!!!


「ぐふっ!!!」


ラオの一撃と交差する様に13の左手の銃剣がラオの身体に突き刺さる!そして!!!


ダンッ!!!


放たれる銃弾!

13は銃剣を突き刺したままゼロ距離から弾丸を撃ち込んだ!


「ぐっ・・・おっ・・・!」


そして体勢を崩しふらつくラオの身体から左手の銃剣を引き抜くと!

13は両手のハンドガンを構える!!!


「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!!!!」


ダンダンダンダンダンダンダンッ!!!!!


そのままありったけの弾丸を連射!!!


「ぬっ!ぐおおおおおっっっっっ!!!!!」


至近距離から数十発の弾丸を撃ち込まれ!ラオの身体が吹っ飛び通路の壁へと激突する!


キィンッ・・・


そして最後の弾の薬莢が排莢され地面へと転がる

全弾撃ち尽くしたハンドガンを構える13に対し、ラオは壁に寄り掛かった状態で呟く


「み・・・見事だ・・・。修羅よ、この技は何という技だ・・・?」


全身を撃ち抜かれ血まみれになりながらそう問いかけるラオに、13が答えた


「対接続者用近接格闘双銃術「十字銃術クロス・ガンアーツ」だ」

「十字銃術か・・・斯様な技があったとはな・・・」


そして血を吐きながらもラオはニヤリと笑みを浮かべ・・・


「我が武ここに潰えども、一切の後悔は無い・・・。吾の生涯において、貴様との死合は最高の戦いであった・・・。また・・・地獄で死合おうぞ」


そのままドサリと、その場に崩れ落ちた

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