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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第三章:その手の十字架は死をもたらす嵐となる
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暗殺課の女王


時間は遡る事、数時間前

立川警察署、2038年の現在は東京警察本部となっているその場所に一台の車が止まる

そしてその車の後部座席から一人の男が車を降り、署の入り口に歩いていく

その時入り口に立っていた警官がその男の姿を確認し、それと同時に敬礼をした


「お疲れ様です!本部長殿!」

「お疲れ様」


そう言って敬礼を返すとその男、東京警察本部本部長は署内にある自分の執務室へと向かった

そして執務室の椅子に座ると、備え付けの電話の受話器を取りどこかに電話をかける。しばらくして・・・


「はい。こちら東京特別治安維持課課長室です」


と温和そうな女性の声が受話器から返ってきた、それに対し・・・


「お疲れ様です、吹連すいれん課長。東京警察本部本部長のあずまです」


と、まるで上司へ連絡をするかの様に丁寧な言葉で東は答えた

それに対し、受話器の向こうからやや困惑した様な声で返答が返ってくる


「ええと・・・。それで、何かご用でしょうか?」

「はい。一週間前に逮捕した人身売買組織の構成員についてですが」

「ああ。孤児を拉致して何処かへ移送していたという・・・」

「ええ。その組織の構成員から得られた情報について、そちらへご報告させて頂きたいと思いまして」

「ありがとうございます東本部長。ですが・・・その・・・」


その時、受話器の向こうの女性がやや遠慮がちに言った


「私は課長で東さんは本部長なのですから・・・。わざわざ東本部長自らご連絡頂かなくとも・・・」


その言葉に対し、東はやや言葉を詰まらせながら答える


「いえ・・・その、そういう訳にも」


言葉を濁す東本部長に、受話器の向こうから仕切りなおすと言った様子で答えが返ってきた


「ええと・・・ともかく。ご連絡ありがとうございました、東本部長」

「いえ。それでは私はこれで」


そう言って東は受話器を下ろし、通話が切れた






同時刻、場所は変わり、都内地下の何処かにあると言われている特別治安維持課本部

その課長室の椅子に座っていた女性は受話器を下ろし、そして・・・


「・・・ふぅ」


と軽くため息をついた



彼女の名は吹連双葉すいれんふたば

階級は警部、東京特別治安維持課の課長である

フォーマルなスーツにセミロングの髪をアップにまとめた姿

その目元は常に笑みを浮かべている様であり

大抵の人間が第一印象に優しそうという感想を浮かべる、そんな女性だった



そして彼女が仕事に戻ろうとした、その時・・・


「クックッ。どうやらお疲れの様じゃのう?」


部屋の中のソファーにもたれかかっていた女が、吹連に問いかける


「ええ。妙に畏まって話されるから緊張してしまって、私の方が階級は下なのに・・・」


そう困った様に考え込む吹連に、女が言った


「仕方あるまい。お主はこの特別治安維持課、暗殺課の主なのだからな」


その女の言葉に、吹連は少し頬を膨らませすねた様に答える


「私はもっと普通に接してほしいのだけれど・・・」

「クックッ、それは無理という物じゃろう。敬われながらも同時に畏れられる、それが王というものじゃ」

「王さまになった覚えはありません」

「王だとも。お主は暗殺課の主、いわば全ての暗殺者を従える女王じゃ」


その言葉に吹連は反論しようとするが、途中で言葉を飲み込む

吹連自身、女の言葉が正しいという事を理解してしまっていたからだ

諦めた吹連は先程送られてきた情報を確認すべく、デスクの上のパソコンの画面に目を向ける


「・・・これで、こちらで掴んでいた情報の裏が取れそうね」

「先程東本部長殿から送られてきた情報か?儂が暴れられそうな案件か?」


そうワクワクした様に問いかける女に、吹連が女をたしなめる様に言った


「自分の立場を弁えて。貴方を投入する様な事態なんて滅多に起きないわ」

「なんじゃ・・・つまらんのう・・・」


そう不満そうに唇を尖らせる女に、吹連が事の次第を説明する


「一週間前に、路上孤児を拉致していた組織の移送現場を暗殺者が潰したのだけれど」

「何じゃそれは?いつから儂らは正義の味方になった?」

「孤児とは言え都民を守るのも私達の仕事よ。ともかく、その時逮捕した構成員の供述と暗殺者が掴んでいた情報を合わせて、組織の支部の一つが割り出せそうなの」

「ほう・・・。で、どうするんじゃ?」


あまり興味無さそうに問いかける女に、吹連は画面を操作しながら答える


「その件については担当した監査官から作戦の提案が来てたはず・・・。えっと「当該施設に対して暗殺者を投入しての殲滅作戦」・・・」


その時、吹連の言葉にソファーにもたれかかっていた女が噴き出す


「殲滅作戦!?暗殺者を使って犯罪者共を皆殺しにしてやるという事か!クックッ!!!なかなか派手な事を考える奴じゃのう!それで誰じゃ?そんな豪気な事をやらかそうと言うのはどこの監査官じゃ?6か?それとも9の所か?」


ゲラゲラと笑いながら問いかける女に、吹連が答える


「えっと監査官は「霧生冬香警部補」、担当する暗殺者はナンバー「13」ね」


その時、女がピクリと眉をしかめる


「13・・・じゃと?」


その時、何かに気付いたと言った様子で吹連が言う


「ああ。そう言えば13と言えば貴方の・・・」


そしてパソコンの画面から目を離し、顔を上げる。だが・・・


「あら・・・?」


そこにあったのはシーンと静まり返った室内

吹連が顔を上げた時、もうすでに女の姿はそこにはなかった


「まさか、もう行ったの?全く・・・過保護なんだから」


吹連は少しため息をつくが、すぐに気を取り直すと呟く


「まあ貴方なら問題ないでしょう。久しぶりの現場、存分に殺すといいわ「4」」


そして、普段通りの仕事に戻るのだった






シングルナンバー

15年前、2023年に設立された特別治安維持課に所属した暗殺者

ナンバー1.2.3.4.5.6.7.8.9

最初期メンバーにして、最強の9人の通称である


(この女性が、その・・・!)


目の前の女を見ながら、冬香はゴクリと喉を鳴らす

全身黒のボディスーツ、その身体のシルエットは地を一瞬で駆け抜ける豹の様に一切の無駄がない

無造作に伸ばした背中まで届く紫に輝く髪

同じ様に無造作に伸ばした前髪の間から、まるで悪魔の様な無邪気な笑みを浮かべている。その時・・・


「と言うか13よ。儂の事を紹介するなら、他にもっと言う事があるじゃろうが?ほれほれ」


4が両手の人差し指をトントンと突き合わせ、体をクネクネとしならせながら13に問いかける


「ああ・・・」


13はどことなく嫌そうな顔をするが、仕方ないと言った様子で冬香とアイリに向かって言った


「・・・この変な言葉づかいの女は、俺に暗殺者の仕事を叩き込んだ俺の師匠でもある」

「シングルナンバーが師匠!?」


その言葉に思わず驚きの声を上げる冬香


(暗殺者の師弟などと言う関係は聞いた事がないが。あのシングルナンバーの弟子という事であれば、13の戦闘能力の高さも頷ける・・・)


そう心の中で納得する冬香に4が付け加えて言った


「その通り。5年前に拾った隻腕の小僧にありとあらゆる技法を叩き込んで、暗殺者に仕立て上げたという訳じゃ」

「ありとあらゆる技法・・・」

「そうじゃ。戦闘技術だけではなく、武器の扱い、薬物の調合、潜入のイロハなどなど。それから・・・」


そこまで言うと、4は13の左手を取りしな垂れかかる


「女の扱い方もじゃ」

「女の扱い・・・ですか?」

「そうじゃ。一から十まで、全て手取り足取り叩き込んでやった。儂のカラダでこやつが触れておらぬ場所は一か所もないからのう・・・?」

「・・・ッ!!!」


そう意味ありげに微笑む4に対し、その言葉の意味を理解した冬香は顔を真っ赤にする


「えっと・・・?」


端末を操作しながら二人の会話を聞いていたアイリが、何の事かよく分からないと言う顔を浮かべる

それに対し、4がニヤリと笑みを浮かべ答える


「つまりじゃな。儂と13は所謂男女の・・・」

「あー!!!ストップ!!!そこまでにしてください!アイリにはまだ早い!!!」


そう叫びながら、冬香が4の言葉の続きを阻止する


「別にそこまで過剰反応せんでもよいじゃろうが・・・。もしかしてお主・・・」

「あーーー!!!」


何かを察した様な4の態度に、冬香がまたもや顔を真っ赤にしながら叫ぶ、そして・・・


「お・・・お前・・・!」

「・・・何故俺の方にそんな恨めしそうな視線を向ける、俺が何かしたか?」

「ッ!何でもないっ!」


そう13に向かって冬香が吐き捨てる様に言った。その時・・・


「聞こえますか?霧生監査官、それに13くんとアイリちゃん」

「え?」


突然、通信機から聞こえてきた声にその場にいた全員が耳を傾ける


「こちらは「4」の監査官、吹連です」

「吹連・・・?吹連課長!?」


その名前に冬香がビシッと姿勢を正す


(特別治安維持課課長吹連双葉警部!私が配属された時に一度だけお会いした事があるが、まさか監査官でもあったなんて・・・!)


ある意味秘密組織とも言える特別治安維持課

よって滅多な事がない限り他の監査官と顔を合わせる事などはないのだが

事もあろうに、その組織のトップである課長が直々に通信を入れてきた事に動揺する冬香


「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ、霧生監査官。それよりも済みません、4が迷惑をかけたみたいで」

「いえ!その様な事は・・・」


ある、とは言えず言葉を濁らせる冬香

その時、4が不満そうに言った


「なんじゃ、いつからお主は儂の保護者になった」

「似たような物よ。それより、勝手に出撃しないでもらえる?最高位がこれじゃあ、他の監査官や暗殺者に示しがつかないでしょう」

「知った事ではないわ。儂は儂の好きに殺るだけじゃ」

「全く・・・」


通信機の向こうでため息をつきながら、吹連が言った


「とにかく、出撃してしまった物は仕方ないわ。霧生監査官、そちらの作戦に4も参加させたいのだけれど宜しいかしら?」

「は、はい!問題ありません!シングルナンバーの暗殺者であれば頼もしい限りです!」

「では、作戦の詳しい内容だけれど・・・」


その時、端末を操作していたアイリが答えた


「施設のマッピング完了してます。情報共有しますね」

「ありがとうアイリちゃん。宗・・・安栖研究主任から聞いていた通り、凄い能力ね」

「えっと・・・ありがとうございます」


温和な声でアイリをほめる吹連に、アイリが頬を染めて照れてみせる

そして、全員でマップを確認しながら作戦を確認する


「・・・マップによると地上部分のビルが8階、それと地下に巨大な研究施設があるみたいね」

「地上はダミーじゃな、本命は地下の方じゃろう。さてどうする?儂と13なら皆殺しにするのはたやすい事じゃが」


その4の言葉に、吹連は少し考えた後


「今回の作戦は元々霧生監査官が提案した物ですし、作戦の詳細については霧生監査官に一任します」

「・・・ッ!了解しました!」

「ただ・・・一つだけこちらから要望があるのだけれど、良いかしら?」

「はっ!何でしょう?」


そう緊張した様子で答える冬香に、吹連が言った


「地下の研究施設の方だけれど、出来ればデータを取ってきて欲しいの」

「研究施設のデータですか・・・?」

「ええ、恐らく地下には接続者関連の研究データがあると思います。私達治安維持課としては、得られるデータは全て回収しておきたい。接続者のデータはいくらあっても足りないくらいなの」


その吹連の言葉に13が答える


「なら潜入しデータを奪取した後、殲滅作戦に移行を・・・」


だが即座に、その提案を4が却下する


「別にそんなまだるっこしい事せんでもええじゃろう。儂が陽動も兼ねて地上から8階まで殲滅しておいてやるから、13は地下へ向かえ」

「陽動?だが一人では・・・」


と13が口を開こうとした、その瞬間!


「13、儂を誰だと思っておるのじゃ?」


その一瞬の間に、4は13の喉元にナイフを突きつけていた


「・・・そうだったな」


そう納得する13に対し、4はニヤリと笑うとナイフを突きつけたまま耳元に囁く


「それに言うたじゃろう?「本命は地下」じゃ、お主は自分の心配でもしておれ」

「・・・了解」

「・・・良い子じゃ」


そして4はナイフを仕舞うと、冬香の方へ向き直り言った


「そういう訳じゃ、よろしいかの?監査官殿」

「はい、その作戦で行きましょう。それでは・・・」


そう言いながらスッと真剣な表情になると、冬香は二人の暗殺者に向かって命令を下す


「作戦を開始します。ナンバー13、ナンバー4、出撃を」

「了解」

「了解じゃ」


そして夜の闇に紛れながら、二人の暗殺者がその牙を光らせるのであった

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