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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
最終章:世界を殺す、最後の暗殺者
102/105

果たされる契約


「安栖・・・研究主任が・・・?」


数々の状況証拠から吹連課長が暴き出した暗殺課の裏切り者、安栖宗次

しかし、その名を聞いた鳥羽監査官は不可解と言った様子で吹連に問いかける


「ですが、彼は「1」によるゾーフ襲撃の際に亡くなって・・・」


そう、「1」がオリジンの間へと侵入した際

偶然その場に居合わせた安栖は、他の警備員達と共に「1」によって殺害された

と、公式では記録されている。しかし・・・


「死体よ・・・」

「死体?」

「ええ、私達は誰も彼の死体を確認していないわ」


だが、その吹連の言葉に鳥羽は反論する


「いえ、ですが! 死体なら確かに・・・!」


そう、確かに鳥羽を含め多くの人間が「1」によって燃やし尽くされた死体を確認しているのだ

しかしその鳥羽の言葉に対し、吹連は静かに答える


「あれが安栖の物であったと言う証拠は?」

「え・・・?」

「私達が確認したのは「1」によって焼き尽くされ、原型を留めていない灰の山だけよ。何故それが安栖研究主任の物だと?」

「それは・・・」


そう呟くと、鳥羽は当時の状況についての記録を思い起こす


あの日安栖研究主任は、能力を酷使し体調を崩したアイリ候補生を医務室に運んだ後オリジンの間へと向かい

オリジンの間にて「1」と対峙している所までは確認されている

だが、この直後監視カメラが破壊された為正確な状況は不明となっていた


そのすぐ後、オリジンの間へと踏み込んだ霧生監査官が

安栖主任と思われる人物を「1」が拘束している現場に遭遇

銃を突きつける霧生監査官に対し、「1」はその人物はすでに死んでいると告げ投げつけるが

「1」の能力によりその遺体は空中で発火、後には身元不明の死体だけが残った


それが当時に状況の全て

頭の中で改めてそれを確認すると、鳥羽は言う


「確かに・・・! よく考えれば私達は誰も彼の死を確認していない・・・! ですが何故・・・!?」


何故その様な不可解な状況で安栖の死が全員の共通の認識となったのか?

それに対し、吹連の答えは・・・


「自白よ」

「え?」

「そう・・・私も含め全ての人間が、たった一つの言葉で操られていた。それは・・・」


(しかも今の貴様は何だ? 暗殺課を率いる立場にありながら、単独で私に仕掛けてくるなど。安栖を殺されて逆上したのか? 感情のままに動くなど・・・、10年前、貴様を守って死んだ「3」も無駄死にだったな)


それはオリジンの間で襲い掛かってきた吹連に対し「1」が告げた言葉

そしてその言葉の中に・・・


(安栖を殺されて逆上したのか?)


「あ・・・」


確かに、その言葉は隠されていた


「そうあの時確かに、「1」はその言葉で自分が安栖を殺した犯人であると認めていた。殺害の実行犯である「1」の「自白」、それは何よりも確かな「証拠」だと言えるわ」

「それは・・・確かに・・・! でもだとすれば・・・!」

「ええ、そう。「1」はあの時「嘘」をついていた。そしてそれらは全て、安栖研究主任こそが暗殺課の裏切り者だったという結論を導き出している・・・」


そして吹連は、当時の状況と照らし合わせながら順を追って解説し始める


「まず前提として安栖主任が裏切り者だと考えると、当時の状況は180°違って見えてくる。オリジンの間で「1」と遭遇した安栖主任、それはもちろん偶然などではなく、仲間である「1」と合流する為。直後監視カメラが破壊されたのもそれを隠す為の物でしょう。そして霧生監査官が見た安栖主任と思しき人物、しかしそれはこの一連のトリックを完成させる為の第一段階だった」

「トリック・・・?」

「ええ。あの時「1」は霧生監査官の目の前で、安栖主任と思われる死体を燃やした。来る前にではなく、目の前で。その行動の意味はつまり・・・」


その言葉に、鳥羽は納得した様に頷く


「なるほど・・・。彼女を、安栖研究主任殺害の証人にさせる為ですね」

「ええ。おそらくあの時「1」が焼いたのは、安栖が用意した偽装用の死体。遠目から見れば間違いなく安栖本人と相違ない出来だったと思われるわ。しかしそのまま死体を残しておけば、いくら精巧に作っていたとしてもその死体が安栖本人でない事が発覚する。そこで「1」はまず、その死体を安栖だと勘違いする誰かが来るのを待った」

「そしてその時現れたのが、その死体を安栖主任と呼ぶ霧生監査官・・・だったと」

「そう。今考えれば、あの場で「1」が霧生監査官を殺害出来る状況はいくらでもあったはず。しかし「1」はそうしなかった。それは彼女を生かしておかなければならない理由があったから、と考えるのが妥当。そしてそれが、彼女に安栖の死を証言させる為・・・」


そう、それがあの時の「1」の行動の真相だったのだ


「その後、「1」は彼女の前で死体を燃やし偽装の痕跡を抹消しつつ。嘘の自白により安栖殺害を誤認させた」

「嘘・・・。やはりそれも・・・」

「ええ、これも安栖と「1」が繋がっていたと考えれば辻褄が合う。あの時「1」は仲間である安栖の死を偽装する為、わざとあの「嘘」をついた。それも含め全てが彼の計画通り、全てが安栖研究主任による自身の死の偽装工作だったのよ・・・」


「1」によるゾーフ襲撃の裏に隠された真相

しかし、それを知った鳥羽は怪訝そうな表情で吹連に問いかける


「ですが・・・まだ納得出来ません。私の知る限り、安栖研究主任という人物は裏切りの様な事をする人物だったとはとても・・・。温厚な平和主義者、彼にはこの様な混乱を引き起こす動機と呼べる物がない様に思えます」


鳥羽の言葉に、吹連は安栖宗次という人間の事を考える


「ええ・・・そうね・・・。私も鳥羽監査官と同意見です・・・」


そう、吹連自身も含め、誰もが彼の事をその様な人物ではないと答えるはずだ。だが・・・


「私達は見誤っていたのかもしれない・・・本当の彼を・・・」

「本当の・・・?」

「彼が本当に目指している場所・・・彼の理想の果て・・・。それが何処にあるのかを、私達は見落としていた・・・」


暗殺課創設初期から20年近く、接続者の研究に没頭した安栖と言う人物

その穏やかな顔の裏で、彼が本当に目指していたのは一体何だったのか・・・?


「けれど・・・一つだけ確かな事があるわ」

「それは・・・?」


問いかける鳥羽に対し、吹連はハッキリとした声で断言する


「彼は今、オリジンの元に居る。全てを終わらせる為・・・」











「安栖・・・研究主任・・・」


目の前に現れた意外な人物に対し、冬香は唖然とした表情で呟く

だがその時、冬香に支えられていた「13」が顔を上げ言った


「そうか・・・そういう事だったのか・・・。安栖さん・・・アンタと「1」は・・・」

「ああ、僕は彼の仲間だ。同士と言った方がいいかな。これまで君達を欺いていた事は申し訳なかったと思っている」


そう普段と変わらない様子で告げる安栖に対し、冬香が信じられないと言った様子で叫んだ


「なっ!? どういう事なんですか!? 安栖研究主任! 仲間!? 同士!? 貴方は一体・・・!?」

「言葉通りの意味さ。僕と彼は共通の目的を持った共犯関係だったという訳だ」

「共通の目的・・・?」

「そう。この世界を救う、それが僕の目的だ」


安栖の言葉に、冬香はハッとした様に言う


「では貴方も・・・! オリジンを手に入れこの世界から人間を根絶する為に・・・!」


だがその言葉に対し、安栖は首を横に振る


「いいや、それは違う」

「え・・・?」

「それは彼の・・・ナンバー・「1」の目的だ。僕の目的はあくまでこの世界の救済。その点で「1」と目的は一致していたが、手段に関しては意見の相違があった」


そう答える安栖に対し、ほんの少しだけ安堵した様な表情を見せる冬香。だがしかし・・・


「けれど勘違いをしないで欲しい。もしこの場に現れたのが君達ではなく彼だったのなら、僕は喜んで彼の理想の実現に手を貸した」

「なっ・・・!?」


そう答える安栖の表情には一切の迷いがない

その答えに対し、冬香は苛立ちと焦りを織り交ぜた様な声で叫び声を上げた


「分からない! 一体貴方は何なんだ!? 世界を救う!? どうして貴方がそんな事を!? 安栖研究主任・・・! 貴方は一体何を考えているんだ!?」


信頼、裏切り、不安、期待

色々な感情が混ざった叫び声に対し、安栖は周囲を眺めながら静かに答える


「「13」、霧生監査官・・・、君達はこの街をどう思う?」

「え・・・?」

「この壁に囲まれた世界、暴力と混沌に支配された世界を」

「それは・・・」


「13」と冬香が見てきたこの街、隔離都市東京

そこに住んでいた人達は決して幸せとは言えない人生を送ってきた


「・・・そう、僕も同じだ。この壁に囲まれた街を救いたいと、そう思った」


しかし、そう言った安栖の表情は悲しみの色へと変わっていく


「だがそれは不可能だ。人間には出来る事と出来ない事がある」


そう告げる安栖に対し、冬香は言葉を詰まらせながら言う


「けれど・・・その為に私達は・・・私達治安維持課がこの街を・・・」

「無理だよ、霧生監査官。暗殺課による治安維持など所詮は対処療法、僕達にこの世界を救う事なんて出来やしない」

「それは・・・」


安栖の言葉に対し、冬香は何も言えず口ごもる


今なお増え続ける「接続者」と、彼らが引き起こす事件

暗殺者達が何十人、何百人と殺そうとそれらが全て収まる事はない


それがこの街の現実なのだ。しかし・・・


「そう不可能だ・・・。けれど・・・それは人間ならの話だ」

「人間・・・なら・・・?」

「そうだ。人の力では変えられないなら神の力で変えてみせる。そう、ゼロ・オリジンと言う名の神の力によって」


そして安栖は、その計画の全容を二人に告げる


「10年前、9人の接続者によるオリジンの接続実験があった」

「それは父さんが死んだ時の・・・!?」

「ああ。だが知っての通り、実験は多大な犠牲を払い失敗に終わった」


選ばれた9人の暗殺者、シングルナンバー達によるオリジンとの接続実験

しかしオリジンの制御には全く至らず、「1」の離反を招く結果となってしまった

それは暗殺課にとっての汚点として、長年の間隠されてきた忌むべき事件でもある。だが・・・


「けれど・・・僕は諦めなかった。9人で無理なら1000人・・・、1000人で無理なら10000人の接続者を集めてくればいい」


その安栖の言葉に、冬香は唖然とした様子で呟く


「10000人の接続者・・・? 一体それはどういう・・・?」


意味が分からないと言った様子で呟く冬香に対し、安栖は落ち着いた声で答える


「そもそも君達は、何故彼らが「接続者コネクター」と呼ばれているか考えた事はあるかい?」

「え?」

接続者せつぞくしゃ、接続する者ならConnectedコネクテッド personパーソン。他にもコネクターよりもっと適切な呼び名があるはずだ。だが彼らはコネクターと呼ばれている、僕がそう名付けたからだ」

「安栖研究主任が・・・?」

「ああ、そして見せよう。これが彼らの真の姿だ・・・!」


そう言うと安栖は、オリジンの周囲に設置された巨大な機器を起動させる。それは・・・!


「これはまさか・・・「外部電脳デバイス」!?」


そう、それは暗殺者が携帯している物とは規格外の大きさではあるが

確かに「外部電脳」だった。そして・・・


「チップが・・・こんなに大量に・・・!」


外部電脳にセットされているのは数千、数万にも及ぶ数のチップだった

それらに圧倒される冬香に対し、安栖が告げる


「霧生監査官はこのチップがどうやって作られているか知っているかい?」

「チップが・・・?」

「ああ、これはね。接続者の「脳」を加工して作られた物なんだ」

「なっ・・・!?」

「人間が死ぬと、その身体の一切の機能が停止する。だが接続者は違う、肉体の生命活動が停止しても脳の一部機能・・・。具体的に言うとオリジンとの接続だけは消えていない事が分かった。そしてその性質を利用したのが、このチップと「外部電脳」。脳を加工しチップへと変え、外部電脳というハードウェアを与える事によって彼らが生前使っていた脳の機能をエミュレートする事に成功したんだ」

「では・・・暗殺課が殺した接続者の死体を回収していたのは・・・?」

「彼らの死体をチップへと加工する為だ。外部電脳にセットして暗殺者の力とする為・・・」


そう、それが暗殺課が治安維持の傍らで行っていた実験の結果だ。しかし・・・


「けれど、そんなのはチップを集める為の建前だ」

「建前・・・?」

「そう、チップの本来の用途は暗殺者の武器とする為なんかじゃない。これこそが、このチップの本来の用途・・・」


その時、冬香はハッとした様に呟く


「じゃあ・・・まさか・・・これが・・・!」

「そう、ここに居るのが「10000人の接続者」。10年もの歳月をかけて集めた、人と神の世界を繋ぐ「接続部品コネクター」だよ」






そう、それこそが接続者の真実


「接続者」は人間ではない


接続者は最初から、人と神を繋げる為の「接続部品」だったのだ






落ち着いた声で告げる安栖に対し、冬香は・・・!


「ふ・・・ふざけるなっ!!!」


激昂した様に叫ぶと、リボルバーの銃口を向ける!


「貴方は・・・!!! その為にこれだけの数の接続者を・・・!!! いや、接続者だけじゃない!!! 接続者同士の争いに巻き込まれてもっともっと大勢の人が犠牲になったはずだ!!!!! それなのに貴方は・・・!!!!!」


その罪を告発する様に叫ぶ冬香

だがその言葉に対し、安栖は冷静に答える


「弁明をするつもりはない。君が言う通り、僕は何万もの命を奪った大罪人。君が僕の死を望むのなら、僕はそれを受け入れよう。だが世界の誰にも許されないとしても・・・僕にはやる事がある・・・それを終えるまでは死ねない・・・」


そして安栖は・・・


「「13」。10人目の資格者、この戦いに生き残った最後の暗殺者。君がなるんだ、この世界を救う神に・・・」

「・・・」

「君には資格がある。いや・・・君だけがその資格を持っている。この世界に全てを奪われ、それでもここまでたどり着いた。人の愚かさと美しさの両方を知る、ただ一人の心優しい暗殺者。「13」、僕は君にこの世界の未来を託したい」


その手を差し出しながら告げた


「頼む、「13」。オリジンの力で、この世界を救って欲しい」











オリジンの前で静かに告げる安栖

そんな安栖に対し、冬香は茫然とした様に立ち尽くす


(私には無理だ・・・)


目の前に立っているのは「敵」でも「悪」でもない

矛盾を抱えその手を汚し、それでも世界の未来を託そうとする純粋な願いだけだ


スッとその手の銃を下ろす冬香

理解してしまったのだ、自分にあの人物を殺す事は出来ないと。だがその時・・・


「冬香・・・」

「「13」・・・?」


冬香に支えられていた「13」が冬香からスッと離れると、その左手を差し出しながら言った


「銃を・・・貸してくれ・・・。俺のは、落としてきたみたいだからな・・・」

「ああ、構わないが・・・。だが・・・」

「問題ない・・・。1発あれば十分だ・・・」


そして「13」は残り1発となったリボルバーを受け取ると、ヨロヨロとオリジンの元へと向かう


「・・・」


「13」の目の前に立ちふさがる安栖

彼はその場から動く事なく、静かに「13」を見つめる

どんな結果になろうとも受け入れる、そんな決意を宿した眼差しで


そして「13」は安栖へと近づいていき・・・


「・・・」


ゆっくりと、その横を通り過ぎて行った


それに対し、安栖はほんの少し目を伏せると


「ありがとう・・・「13」。・・・「外部電脳」を起動する」


そう言って、「外部電脳」の制御に入った

そして「外部電脳」を起動させ、オリジンの前に立った「13」に対し告げる


「「接続リンク」を使うんだ、「13」。僕も全力でフォローする。頼む・・・人と神の世界を繋げ、この世界を救う為に・・・!」


その言葉に頷くと「13」はオリジンの正面に立ち・・・!


「「接続」・・・!」


その能力を発動させた・・・!!!


キィィィィンッ!!!!!


それと同時に、オリジンが激しく光り輝く!!!


「ぐっ・・・!!!」


「13」の表情が苦痛に歪む!!!

だがそれに対し、安栖は即座に外部電脳を操作し対応する!


「外部電脳全機の出力を最大に! リミッターも解除! ここで全部終わってもいい!!! 「13」!!!!!」


更に輝きを強めていくオリジン!!!

その時・・・!


「・・・「13」!」


冬香は思わず、その手を伸ばそうとする。しかし・・・


(「13」の命はもう残り少ない・・・。けれど、もしオリジンの力が神の力だと言うのなら・・・)


それは最後の最後で現れた希望


安栖の計画によって世界がどうなってしまうのか? それは分からない

もしかしたら世界全体が取り返しのつかない事になってしまうのかもしれない、そんな不安はあった。けれど・・・


(それでも・・・彼は生き残る)


世界と一人の青年の命を天秤に掛け、彼女は青年の命をとった


そして辺りが眩い閃光に包まれ、光が全ての闇を払い・・・!!!


キィンッ!!!






(ボクノコエガキコエマスカ?)






カッと「13」の眼が見開かれると同時に

光は穏やかな物へと変わった


「やった・・・成功だ・・・! 今、世界を救う神が誕生した・・・!!!」


歓喜の声を上げる安栖

そう、「13」によるオリジンとの完全接続は成功に終わったのだ。だが・・・


「ああ、そうか・・・。やはりそうだったのか・・・」


そんな安栖とは対照的に「13」は静かに呟き。そして・・・


「これは・・・この世界に存在してはならない物だった」


スッと、その手のリボルバーをオリジンへと向けた


「な!? 何を「13」!!!」

「安栖さん。俺はオリジンとの完全接続を果たし、オリジンの全てを理解する事が出来た。そしてその上で、俺はオリジンを消滅させる」


そう冷静に答える「13」に対し、安栖は納得出来ないと言った様子で問いかける


「何故だ!? 君は神の力を手に入れたんじゃないのか!? その力でこの街を、この世界を救いたいとは思わないのか!?」

「アンタの理想は正しい・・・心からそう思ってる。けれど、その為にオリジンの力に頼ったって意味はない。こんな力で世界を救った所で、これがなくなればすぐに元通り。本当の意味で世界が救われる事はない。だから・・・」


そう言ってオリジンに銃口を向け続ける「13」

しかしそんな「13」に対し、安栖はゆっくりと首を横に振る


「・・・無理だ「13」。人知を超えた存在であるオリジンは誰にも滅ぼす事は出来ない。きっと未来永劫この場に在り続ける、これは変えようのない事実なんだ」


そう告げる安栖に対し、「13」は静かに頷く


「ああ、安栖さんの言う通りだ。だが・・・」


しかし次の瞬間・・・「13」は・・・!


「これなら・・・どうだ?」


ゆっくりと、手に持っていたリボルバーの銃口を自分の頭に突きつけた・・・!


「なっ!?」

「何を!? 「13」!!!」


焦った様に叫ぶ冬香と安栖

そんな二人に対し、「13」は自らに銃口を向けたまま静かに告げる


「今の俺はオリジンと完全に接続している。その俺が死ねば、オリジンは「死」を理解する。不滅の存在であるオリジンに、死の概念を理解させる事が出来る。これがオリジンを滅ぼす事の出来る唯一の方法だ」


そう告げる「13」に対し、安栖は叫ぶ


「止めるんだ「13」!!! 人には神の力が必要なんだ!!! オリジンを失えば、人にこの世界を救う術はない!!!」

「俺はそうは思わない・・・。オリジンがなくたって、人間は自分達の力で世界をより良い方向に導けるはずだ。俺はそう信じるよ、安栖さん・・・」


そう穏やかに告げる「13」

しかし、それに対する安栖の答えは・・・


「だとしてもだ!!! 何故君なんだ!!! 君がそんな事の為に命を捨てる理由にはならない!!! 君の人生はもっと幸せであるべきだ!!! 報われるべきだ!!!」

「安栖さん・・・?」

「君の人生は辛い事ばかりだったはずだ!!! なのに何一つ報われないまま終わるなんてそんなのは駄目だ!!! 責任や不幸は全部僕に押し付ければいい!!! 幸せになるんだ!!! 君にはその権利がある!!! だから止めるんだ!!! 「13」!!!!!」


それは安栖の本当の心の叫び


5年前、「4」によって拾われてきた白髪の少年

彼にとって安栖宗次という男は父親の様な存在であり

そして同時に、安栖宗次にとって「13」とは自分の息子の様な存在でもあったのだ


「・・・ありがとう、安栖さん」


安栖に対しそう答えると、「13」はゆっくりと冬香の方を振り向く


「「13」・・・」


その彼の選択に対し、冬香は茫然と立ち尽くす

そんな冬香に対し、「13」は穏やかな声で告げる


「冬香・・・これで契約通りだ」

「契約・・・?」

「ああ、これでこの世界から全ての「接続者」は消える。そしてその後の世界は、冬香の様な普通の人間が支えていってくれ・・・」


静かに告げる「13」に対し、冬香は茫然としたままその手を伸ばす


「違う・・・待ってくれ・・・。契約なんて・・・私の本当の願いは・・・」


だがその手は「13」には届かず。彼は・・・


「後は任せた・・・俺の・・・パートナー・・・」


穏やかに微笑むと彼女に背を向ける。そして・・・!






(殺せ・・・! 全ての接続者を・・・!)






あの時の契約を今果たす


これが俺の、最後の暗殺だ






「・・・暗殺終了アサシネイションオーバー


パンッ!!!


その、引き金を弾いた・・・!

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