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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
序章:死神は夜の闇から現れる
1/105

暗殺者・死神の13


西暦2038年

東京 新宿 PM11:00


ネオン煌く歓楽街、新宿

日付も変わろうかという時間にも関わらず、大通りを大勢の人が闊歩している

それは数十年前と変わらぬ風景、至って平和な光景に見えた


だが、実態は違う

違法な銃や薬物などが、大通りで堂々と取引されており

それを取り締まる警察もおらず、治安は悪化の一途

その為、道を歩く人々の大半が護身用の拳銃を所持している


その光景は、以前の新宿を知っている人間には異常としか思えないだろう

だがそれでも、ここは「至って平和」な場所なのだ

少なくとも西暦2038年の東京では・・・


「ぎゃあああああっっっっっ!!!!!」


その時、その大通りから一つ離れた裏路地に男の叫び声が響き渡った!

男の右腕が肩から切断され地面に落ち、傷口から血が噴水の様に噴出す


「ひ・・・ひぃ・・・」


その傷口は鋭利な刃物で斬ったかの様に、綺麗に切断されている

よく見ると同じく何かに首や胴体を切断された死体が3つ、その男の側に転がっていた

その時、傷口を押さえながら呻く男に金髪の男が近づいていく


「どうした?「ブッ殺す」んじゃなかったのかぁ?」


ニヤニヤしながらそう言う男

パンクロッカーの様な派手な服装に、逆立てた金色の髪が特徴的な男だ

だが全体的にヒョロりとした印象で、とても暴力沙汰に強そうには思えない


「か・・・勘弁してくれ・・・アンタが「接続者コネクター」だなんて知らなかったんだ!」


片腕を斬られた男が慌てた様子で言った

こちらはヒョロリとした「金髪」(と呼称する事にする)とは対照的に、如何にも暴力沙汰を好みそうな筋肉質の男だ

恐らくは、男はどこかの暴力組織の一員に違いない

しかし今現在、命乞いをしているのは強そうな筋肉質の男で、それを見下ろしながら笑い声をあげているのが弱そうな金髪なのだ


「そうかそうか!知らなかったのか!?じゃあしょうがないなぁ~アッハッハッ!!!」


そして金髪が高笑いをし、目の前の男から視線を外した。次の瞬間!


「馬鹿が!死ね!!!」


パンッ!


男は左腕で懐から銃を取り出すと、金髪に向けて発砲した!


「!」


二人の距離は5メートル程、この至近距離で放たれた銃弾に対処出来る人間が存在するだろうか?

答えはもちろん存在しない、この距離で音速を超える弾丸を避ける事など人間には不可能だ。ただし・・・


キンッ!


次の瞬間!

金髪の後方の闇へ「二つ」に分かれた弾丸が消えていった


「え?」


何が起こったのか分からず、発砲した男が茫然とする。そして・・・


ズルッ


男の視界が急に上下反対になったかと思うと、地面へと落ちた

そう、落ちたのは男の首だった

筋肉質の男の表情は、自分の首が斬られた事にも気付かない様に呆けた顔のまま・・・。そして次の瞬間


ドシャ・・・


首から上を失い、生命活動を終えた物体が路地に横たわる

そして呆けた表情のままの頭部が、路地をゴロゴロと転がっていった

至近距離から放たれた銃弾を切断し、そして男の首を飛ばしたもの。それは「能力」だ

見えない「真空の刃」が音速を超える銃弾を両断し、そのまま男の首も切断したのだ


改めて言おう

音速を超える銃弾に対処出来る人間など存在しない、ただし・・・






接続者コネクター」は人間ではない






鼻歌を歌いながら、返り血を拭う事もせず血まみれのまま大通りに出て行く金髪


「~~~♪」


彼の姿を見た周囲の人間が一瞬ギョッとした様な表情を見せるが、すぐに何事も無かったかの様に歩き去っていく

何故なら、この様な殺人はこの街では日常茶飯事だからだ

路地裏の死体を見ても誰も通報などしない

好き好んで「接続者」に関わろうと思う者など、この街には誰一人居ないという訳だ


それがこの街で長生きする方法だという事を、この街に住んでいる全員が理解している

闇には踏み込まない、それがこの街を「至って平和」に生きる為の術

たった一つのルールなのだ






路地裏で4人を殺した金髪はその後、鼻歌を歌いながら大通りを歩いていく

そして・・・


「・・・」


金髪の後方、黒いコートを羽織り目深にフードを被った黒ずくめの男の姿があった

その男は20メートル程の距離を保ったまま、金髪の後をつける


そのまま二人は大通りを抜け、じょじょに人気の無い方へ歩いていく

そしてしばらく歩いた後、金髪は近くにあった立体駐車場の中へと入っていった


「・・・」


その後をつけていた黒ずくめの男も、駐車場の中へ入っていく。その瞬間!


ドガッ!!!


黒ずくめの男のすぐ側にあったコンクリートの柱に、見えない刃が叩きつけられた!


「!!!」


すぐさま物陰に姿を隠す黒ずくめの男!その時!


「おっと~?外しちゃったかな?一発で真っ二つにしてやるつもりだったのに」


金髪の声が立体駐車場に響き渡った!

そして駐車場の闇の中から姿を現した金髪は、ニヤニヤと笑いながら続けて言う


「もしかして、尾行に気付いていないとでも思ってた?残念!「接続者」になってから、五感も鋭くなってんのよ!お前が路地に居た時からつけてたのは、バレバレだったわけ!ずっとタバコ臭くて、鼻が曲がるかと思ったぜ!?「接続者」を尾行するなら、禁煙した方がいいなぁ!」

「・・・」


その言葉に答えず、物陰に隠れたまま黙っている黒ずくめの男

姿を見せようとしない男に向かって、金髪はさらに挑発をする


「どうした?びびって出て来れないのかぁ!?相手が「接続者」だと分かってびびっちゃったのかぁ!?逃げたいなら逃げたっていいんだぜ~?」


そう言って金髪は舌なめずりをし


「・・・ま、逃がさないけどなぁ」


と呟いた。だが次の瞬間・・・


ザッ・・・


「あ?」


呆けたような声が金髪の口から出た

それまで物陰に隠れていた黒ずくめの男が、堂々と金髪の正面に姿を現したからだ

その時、黒ずくめの男が耳に手を当てて呟く


「・・・了解。当該対処の殺害許可を受諾。「NO.13(ナンバーサーティーン)」暗殺開始アサシネイションスタート


黒ずくめの男がそう呟いた、次の瞬間!


ダッ!!!


黒ずくめの男は地面を蹴ると、一気に金髪に向かって突っ込んでいった!

そして腰のホルスターから銃剣が取り付けられた二挺のハンドガンを取り出すと発砲する!


ダンッ!ダンッ!


「なっ!?」


突然の銃撃にうろたえる金髪!だが!


「銃なんかで「接続者」を殺れるとでも思ってんのか!?」


すぐさま「能力」を使って迎撃を行う!


ギュンッ!!!


それは真空の刃!触れれば何者であろうと一撃で両断する、目に見えない刃だ!


キィンッ!


飛来する銃弾を切断し、そのまま黒ずくめの男へ襲いかかる真空の刃!だが!


「・・・!」


ダッ!!!


黒ずくめの男は近くの柱を蹴り上がり跳躍!その勢いで空中を疾走し、これをかわす!

その人間離れした身体能力を見た金髪が叫ぶ!


「なっ!?オマエも「接続者」か!!!」


黒ずくめの男はそのまま金髪の頭上を飛び越えると、立体駐車場の上階に向かって凄まじいスピードで走っていく!


「逃がさねえ!!!」


すぐさま後を追う金髪!

こちらもその外見とは不釣合いな程のスピードだ!


ダンッ!ダンッ!


追ってくる金髪に向けて、黒ずくめの男が走りながら銃弾を放つ!


キィンッ!


しかしその銃弾をいともたやすく迎撃し、金髪は逃げる黒ずくめの男に対して「能力」を放つ!


ギュンッ!!!


黒ずくめの男に襲いかかる見えない刃!

だがそれをかわしながら、黒ずくめの男は走り続ける!


「俺の能力を!目に見えない真空の刃をかわすだと!?アイツ戦い慣れてやがる!だが・・・」


黒ずくめの男の行動に疑問を抱く金髪

そう。不思議な事に、黒ずくめの男は銃撃と逃亡を繰り返すだけで

一度も「能力」を使っていない


(どうして能力を使ってこない?もしかして、戦闘向きの能力じゃないって事かぁ?)


後を追う金髪がニヤリと笑みを浮かべる

そして、二人は立体駐車場の8階、最上階へとたどり着く


「・・・どうやら終点みたいだなぁ!?」


駐車場の最上階に、金髪の声が響き渡る

黒ずくめの男は、駐車場の端に追い詰められていた


「どうする?もう逃げ場は無いぜぇ?それとも、そこから飛んでみるかぁ?」


ニヤニヤと笑いながら、続けて言う金髪

黒ずくめの男の背後の柵は壊れており、遠くに地面が見える


「じゃなけりゃ。逃げるのは止めて、正面から俺と戦うかぁ?オマエも「接続者」なんだろ?能力を見せてみろよ!まあさっきから逃げてばっかりだし?大した能力じゃないってのは間違いなさそうだけどなぁ!?ハッハッハッハッハッ!!!」


大声で下卑た笑いを浮かべる金髪。だが・・・


「・・・」


黒ずくめの男はその言葉に答えず、無言のまま立ち尽くしていた


「ケッ!喋る気はねーってのか?・・・だったら死ね!!!」


ギュンッ!!!


金髪が叫ぶと同時に!真空の刃が放たれた!

駐車場の端に追い詰められた黒ずくめの男にその刃を避けられる場所は無い!だが次の瞬間!


ダッ!!!


「なっ!?」


突然!黒ずくめの男が背後の空中へ飛び出した!


「ここは8階だぞ!?この高さから落ちればいくら「接続者」でも無事で済むわけが!!!」


金髪が放った真空の刃は黒ずくめの男の顔を覆っていたフードをかすめて、後方の空へ消えていく!

そしてフードに覆われていた黒ずくめの男の顔が露わになった!


「仮面の男・・・!?」


顔全体を覆う仮面

右半分は笑っている様に見え、左半分は悲しんでいる様に見える

そんな、異様なデザインの仮面だ


そしてもう一つ特徴的なのは、黒ずくめの服とは対照的な真っ白な髪

しかし老人には見えない、何かの原因で色素を失ったと思われる髪だ


チャキッ・・・


その時!宙に飛んだ黒ずくめの男はそのまま空中で金髪に銃を向け・・・!


パンッ!


発砲した!しかし!


「無駄だって言ってんだろ!」


キィンッ!


金髪は目の前に迫る弾丸をいともたやすく両断する!だが同時に!


バスッ!


一発の銃弾が金髪の胴体を貫いていた!


「は・・・?」


それは黒ずくめの男が放った銃弾ではない!

金髪の背後、車の陰に仕掛けられていたトラップから放たれた銃弾だった!

腹部から血を流し膝をつく金髪を確認しながら、闇の底へと落ちていく黒ずくめの男!


「こんなトラップで・・・」


傷口を押さえたまま呟く金髪

そして這いずる様にしてその場から逃げようとする。その時


「・・・?」


地面を這って行こうとする金髪の目の前に透明な管の様な物が落ちていた

中には何も入っていない様に見えるが、金髪はその中身を一瞬で把握する


「これは匂い・・・タバコ・・・?」


その瞬間、金髪は今の状況に至るまでの全てを把握した!そして・・・!


「・・・!?」


その金髪の背後に・・・!

先程宙に飛び出し地面に落ちていったはずの黒ずくめの男が、音もなく立っていた・・・!


「誘いこまれてたってわけかよ・・・」


背後に立つ黒ずくめの男に向かって金髪が呟く

そして、それに答える様に黒ずくめの男が言った


「俺はずっとオマエをつけていた。オマエが何処で寝泊りをし、何処で飯を食った後、何処で人を殺すかを調べていた。そして今日、この駐車場のこの場所に立つ様オマエを誘導した。トラップを設置してあったこの場所にな」

「じゃあコイツも・・・」

「ソレはオマエら「接続者」の感覚を麻痺させる特別な匂い。オマエがトラップ銃に気付かなかったのもそのせいだ」

「つまり最初から・・・俺が尾行に気付いたわけじゃなく・・・」

「・・・俺が「気付かせてやった」んだ。オマエが俺をこの駐車場に誘い込んで殺そうとする様にな」


そう、全ては黒ずくめの男の計画通り

金髪は自らの足で己の墓に飛び込んだ・・・いや、飛び込まされたのだ


「テメエは一体・・・?いや・・・まさか・・・!」


その時、その男の正体に気付き金髪の顔が驚愕に見開かれる

そして、黒ずくめの男は金髪に銃を突きつけながら言った


「俺はオマエ達「接続者」を狩る者。「暗殺者アサシン」だ」

「・・・クソがぁ!!!」


振り返ると同時に能力を発動させようとする金髪!だが!


ダンッダンッ!!!


それよりも早く!金髪の頭と心臓に一発づつ弾丸が撃ち込まれた!


「この距離なら、銃の方が早い」


その黒ずくめの男の呟きを聞きながら、金髪は絶命する直前・・・


「・・・政府の犬め・・・」


そう呟き倒れ・・・動かなくなった

そして完全に金髪が死亡したのを確認し、黒ずくめの男が耳に手を当てて言う


「・・・こちら「13(サーティーン)」、暗殺終了アサシネイションオーバー


その時、彼の耳に装備された小型通信機から応答が返ってきた


「確認した。死体の回収はこちらで行う。「13」、キミは速やかに帰投してくれ」

「了解」


それだけ呟くと、金髪の死体に背を向けて「13」と呼ばれた黒ずくめの男はその場から立ち去る

そして再びフードを目深に被り、夜の闇の中に溶け込んでいくと


そのまま、見えなくなった






ここは東京


「接続者」の出現により、世界一危険な街と化した魔都「隔離都市・東京」


そしてこれは、「隔離都市・東京」の闇に蠢く者達


超常の力を持つ「接続者コネクター


それを狩る者「暗殺者アサシン


その暗殺者の一人、「13(サーティーン)」と呼ばれる青年。そして・・・






同時刻

外から東京の内部へ繋がるゲートの一つに、一人の女性の姿があった


「ここが・・・東京」


そう呟くと、彼女はゲートをくぐり東京へと踏み入る

その胸に復讐の念を抱いて・・・






そして・・・彼の監査官、パートナーとなる女性。霧生冬香きりゅうとうか


これは13と冬香、二人の物語


二人が「世界を殺す」物語だ

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