Episode1. いつもの日常のままでよかったんだが。①
それはとある一般家庭のごく普通の風景。
「なんですか!?その四方八方に逆立っているその寝癖はっ!!」
「······なにか問題あるの?」
「大アリです!!早く整えてきてくださいっ!!」
「はいはい······」
早朝から早々に僕のことを叱ってくる少女ーー翠色海未は毎朝毎朝こんな感じで僕に文句を言ってくる。
海未は青葉高等学校の1年生で、僕の妹だ。僕とは違い海未は学級委員で、成績優秀、運動神経バツグン、そしてしっかり者といった感じで世間一般的に言う”完璧超人”と言った感じだ。
「············眠い」
意味も分からないくらい狂いまくった寝癖をなおしながら僕はそう呟いた。
目を擦りながらリビングへ向かうと、テーブルの上には2人分の食事が用意されていた。
「兄さん、早く席に着いてください」
「はいはい······今日は目玉焼きか」
「昨日は兄さんの嫌いなお魚でしたから、今日は兄さんの好きな物にしようと思いまして」
「それはどーも」
そう言いつつ僕はテレビをつけた。ちょうどお天気お姉さんとやらが、天気予報を報道していた。
それにしても、あの朝から元気100倍と言わんばかりのテンションの高さはどうにかならないものか。
「······そういえば、母さんたちはいつ帰ってくるって?」
「前回帰ってきたのが1ヶ月前でしたら、あと2ヶ月後くらいじゃないですか?」
僕らの母さんと父さんは3ヶ月に1度くらいにしか顔を見せない。
仕事で海外や国内のあちこちを回ってるらしい。なんの仕事をしているのか問い詰めたことは無い、それを聞いても意味が無いと思ったからだ。
そんな感じでゆっくり朝食を食べていると、海未がこちらを見つめていることに気がついた。
「······兄さん、今日の朝食はどうですか······?」
「目玉焼きが最高に美味い」
「そうですか······えへ、えへへ······」
海未は毎回顔を赤らめて嬉しそうにする。女性は男性より感情豊かというが、海未を見て毎回確かにそうだなと思う。
それと同時に女性にはなりたくないなとも思う。一々、感情が現れるのは無意味につかれそうだし。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
そう2人で言って、自室に戻って制服に着替えて登校する準備をしてから僕は海未と一緒に学校へ向かった。