やり方(千鶴)
車を運転していると体操服を着た学生が掛け声を掛合いながら走って行くのが見えた。
・・・ そういえば、桃花ってあんまり運動してないわよね ・・・
あの子はいつも漫画やゲームでサッカーとか体を動かして遊んでいるところを私は見たことがなかった。
・・・ 体育の授業は受けていると思うけど。少し運動した方がいいんじゃないかしら? ・・・
「桃花、あんた少しは運動してるの」
自分の部屋で布団に寝転がりゴロゴロして漫画を読んでる桃花。
「今もやってるよ」
「寝転がって漫画見てるようにしか見えないけど」
「うん。ページをめくる時に手を使っているし、足だって時々組み替えてるよ。
喉が渇いたら起き上がってキッチンの冷蔵庫までウォーキングするし」
・・・ そういうのを屁理屈っていうのよ ・・・
「はぁ、」
私はため息をついて桃花の部屋を後にする。
学校の成績はいいのだが頭がいいと屁理屈を考えるのもご覧の通り。
まだ私の方が弁が立つので言い争いであまり負けることはないが毎日ともなれば面倒になる。
「何?そのため息。私に勉強だけじゃなくて体力測定でもいい成績を残せ、と?」
「そこまでは言ってないけど」
「だったら運動しなくてもいいじゃん」
「はいはい。私が悪かった」
「子供に色々求め過ぎ!!」
桃花は漫画を読むのをやめると少し怒りながら外に出かけた。
最初の言い方がまずかったのだろうか。
「勉強したの?」みたいな聞き方だったので催促しているようにあの子には聞こえたのかもしれない。
散歩をしようとか買い物に行こうと言ってあの子を誘ってから、どこかのお店でボールでも買って一緒に遊ぶ流れを作ればうまくいったのかもと、過ぎたことを私は考えてしまう。
人の苦手なものやできていないことばかり言うのは不快な思いをさせるだけよね。
少し反省しながらコーヒータイム。
一口飲んで息を吐く。
「ふー、なんか今日のコーヒー苦いわね…」