第二幕 開幕
前回の”約束”で原文の貼り付けミスをしてしまいました。
本当にごめんなさい。
11/11 23:35に張り付け直しました。
申し訳ありませんでした。
ぜひ読み直してください。
よろしくお願いします。
「ジュリエッタ嬢、そなたはそれほどまでに……。
惜しい、惜しいぞ。
アンドレア、お前は何故に,このようにできたジュリエッタ嬢を蔑ろにしたのだ。
ジュリエッタ嬢のどこが気に入らなかったのだ!」
「そんな…、私はジュリエッタを愛…。」
「父上、今更そんな事を言われても手遅れです。
此処はジュリエッタ嬢の気持ちに沿えるよう、さっさと書類を書かれてはいかがですか?」
アンドレア様の言葉を遮り、スティール様がそう言った。
相変わらずのスティール様ですこと。
アンドレア様の発言でややこしくなる前に、手を打っていただいて助かりましたわ。
「お、おう、そうだな。
誰か、紙とペンをここに持て。」
すると、速やかにその場にテーブルと椅子が用意され、王家専用の紙とペンが乗せられた。
国王陛下は、どっしりと椅子に腰かけ、時々考えながらペンを走らせる。
「さて、ジュリエッタ嬢、これで宜しいかな?」
そう言って一枚の紙を私に差し出した。
私はそれをじっくりチェックし、確かに何の不備も無い事を確かめ、ニッコリ笑う。
「はい、確かに。
おめでとうございます。アンドレア皇太子殿下並びにミレニア男爵令嬢様。
これで晴れてお二人は婚約者同士。本当にようございました。」
茫然とこちらを眺めているアンドレア様と、
幸せ絶頂のミレニア様。
「では、ジュリエッタ嬢…。」
「ええ、分かっておりますわ。」
私は国王陛下の退かれた椅子に腰かけ、ペンを取った。
サラサラサラ…と。
さっ、書けたわ。
私はそれを仰々しく国王陛下に渡した。
陛下はそれをざっと読み、晴れ晴れとした顔で笑っている。
ようございましたわね、国王陛下。
これで我が国は安泰と安堵しているのでしょう?
でも、本当にそれでよろしいのですか?
私は”グレゴリー帝国のエトワール伯爵であるお祖父様の屋敷に行かない。”と書いたのですよ?
私でしたら、ただ一言”グレゴリー帝国に行かない。”としますけどね。
まあ、あなたがそれで喜んでいらっしゃるので、
二人の利害が一致したと言う事で、めでたしめでたしとしましょう。
確かに私は王太子妃にはなれませんでしたが、
元々そんな面倒くさいもの、まっぴらごめんですわ。
私は晴れて、アンドレア様から逃げられたのよ。
おまけにこの顛末は多く人が見ていたから、
誰も私の事は笑いものにしないはず。
だって、一連の出来事を見ていた方にとって、私は悲劇の主人公的立場だもの。
さて、では第二幕目と参りましょう。
「国王陛下、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか。」
「おうおう、何かわしに用でもあるのか?ジュリエッタ嬢。」
国王陛下はニコニコと満面の笑みで問い返した。
ええ、ございますのよ、大切な事が。
「私は幼少の頃から、スティール様とご一緒させて頂きました。
来年からは国政にも携わるとの事。
一言、お祝を申し上げたくて……。」
「それは…そなたは本当に他人の事ばかりなのだな……。」
それは違いますわ。私は自分が可愛いのです。
ですから此処からは、ちょっとした復讐。
「スティール様は、とても利発で賢こくていらしゃる。
ご存じですか?
スティール様は机の上の学問だけでは、真の国民の事は分からないと仰って、
幼い頃から町に出て、民の生活をご覧になって来た事を。」
「そ、それはまことか?」
「はい、私は見て参りました。
街をご自分の足で歩かれ、その状況を把握し、
物価などを調査し、果ては、子供の様子まで気に掛けていらっしゃいました。」
まあ単に、買い食いしたり、同じ年代の子供達と走り回っていたのですけどね。
それでもアンドレア様よりは、よっぽど国の情勢を知っていると思いますよ。
「何と、スティールが……。」
「ええ、しかも勉学の方でもかなり優秀とお聞きしました。
私を蔑むことを生きがいにし、他の女性と浮名を流す方より、
よっぽど国王に相応しいのではと、私は常々…………。
いえっ、今の言葉はお忘れ下さい。
出過ぎた事を申しました。」
「ジュリエッタ嬢。
ふむ…。」
「お二人で何をこそこそなさっているんですか?」
そこに登場したのは、話の中心人物のスティール様
「いえ、来年から国政を手伝われるスティール様の、
その成長ぶりを、国王陛下とお話していましたの。
本当に立派になられて……。
そうそう、陛下。
殿下はとてもお優しいのですよ。
私が困っていても、知らぬ間に助けて下さるのです。
その優しさはきっと国民の為の良い力に、
惹いては国を引っ張って行かれる、強い力となる事でしょう。」
「やだな~、ジュリエッタの方がよっぽど優しいじゃないか。
おまけにとても強い。
いえ、父上、力が強いと言う意味では有りませんよ。
芯が強いと言うか、とても頼りになる人です。」
「何を仰いますか、私などまだまだ未熟者。
皆様を手本に、勉強しなければいけない事が、山のようにございます。」
スティール様ったら、子供のくせに生意気な事を言って……。
私にとってあなたは弟同然。
まだまだチビちゃん………、あ…あらら……?
いつの間に、目線が上の方に?
あんなに小さくてかわいらしかった子が、いつの間にかこんなに大きくなって……。
私は感慨深く、ついその成長ぶりに見惚れてしまいました。
その時、国王陛下の目がギラリと光ったのを、私はウッカリ見逃してしまったのです