表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/77

ジュリエッタは見た!

それから間もなくのある朝、

たまたま階段の上からのぞくと、お隣さんのご主人が出勤の様子。


「それじゃあ言って来るよ。」


「ええ、行ってらっしゃい。

あの…早く帰って来てね。」


「あぁ、そうする。

今日は仕事は休みなんだろ?」


「はい。

だから私も家事をするぐらい。

心配しなくても大丈夫よ。」


「あぁ、でも無理はするなよ。」


それから二人はチュッとキスをし、軽く手を振ってご主人はご出勤。

奥様は姿が見えなくなるまで手を振っていた。


「仲がよろしい事で。

はー、羨ましい。」


そして私も中に戻った。



そしてその日の昼頃、

私とルイ―ザが買い物に出かけた時、

表通りに有るお茶所で、ブレットさんを見かけた。

あまり目立たない席で、じっと家の方向を見ている。

お昼なら自分の家に帰ればいいのに。

その方がローナだって喜ぶはずよ。

そう思ったけど、人にはいろいろ都合が有る。

私が言うのも大きなお世話だろう。

だから私はルイ―ザにも言わず、その場を通り過ぎた。


しかし、次の日もその店でブレットさんを見た。

それもお昼時ではない、普通だったら仕事をしている時間だ。

おかしいなと思いつつ、その日も通り過ぎました。


でも、気になりだすと気になってしまうのが乙女心。 

外に出ると、ついその場所を見てしまう。

すると、かなりの確率でブレットさんがそこにいるんです。

時間だってバラバラのはずなのに、

いつもその席にいらっしゃるんです。


「ねぇ、ルイ―ザ、

ベイリーさんって、何か有ったのかしら。」


「いえ、ローナさんからは何も聞いておりませんが。」


そうよね、私も聞いてない。

もしかすると……。

いえ、きっとローナさんもあの事は知らないんじゃないかな。


「実はねルイ―ザ、私見ちゃったの。

隣のベイリーさんのご主人がね…………。」


それから私は見た事や、感じた事をルイ―ザに話した。


「ね、おかしいわよネ。

私が見る度にあそこにいるって事は、

ご主人お仕事に行ってないんじゃないかしら。

もしかしたらリストラされたとか…。

で、ローナさんに話しずらいから内緒にしていて、

それでもローナさんの事が心配だからあそこから家を見ているのよ。」


そうだ、そうに違いない。


「ジュリエッタ様、それが事実であろうと、勘違いであろうと、

家庭にはそれぞれ事情と言うものが有ります。

ここは黙って、見守る方がよろしいかと。」


「それはそうかもしれないけれど、

でも何か大変な事が起きていたらどうするの。」


「もし、どうにもなら無くなったなら、

その時はきっと本人から助けを求めて来るはずです。

ですからその時まで、そっとしておいてあげましょう。」


それはそうかもしれないけれど、

でも、私で助けになれるなら、何とかしてあげたい。

出来るのであれば、力を貸してあげたい。

でもそれは、余計なお節介かしら。



でもその件は、私の杞憂に終わった。

その日の午後、

スカーレットがブレットさんの手を引き、教室の事務所に現れたのだ。


「ここのところベイリーさんがこの近辺をウロウロしていて、

おかしいなぁと思ったから捕まえて話を聞いてみたのよ。

そしたら仕事を首になったっていうじゃない。

彼って器用そうだし、色々な事が出来そうじゃない?

だから私の所で雇う事にしたのよ。」


「ス、スカーレット!?」


ズケズケとそんな事を言って、ここにはローナだっているのに。


「いえ、私も多分そうではないかと思っていたんです。

でも、私には何もできないし、主人に任せるしかなくて…。

本当にダメな妻ですね。」


「それだけ愛されているって事よ。」


スカーレットはそう言って豪快に笑い飛ばした。


「取り合えず仕事は、私がこちらにいる間の秘書をしてもらう事になるけど、

私もいつもこちらにいる訳じゃ無いから、そんなに忙しく無いと思うの。

だから暇な時は、マーガレットの手伝いに使ってやって。」


「えっ、雇うって、ひ、秘書?

ベイリーさんって大工さんよね。

そんないきなり秘書をしろって言っても、大変じゃない?

スカーレット、人には適材適所と言って…。」


「あ、その事でしたら、

私は4年ほど、秘書としての経験がありますから大丈夫です。

それに、隠れずに妻の安全を確認できるなら、

これほど適した職場は有りません。」


ラブラブですね……。

こうもあっさりと解決するとは、あれほど悩んだ私の苦労をどうしてくれよう。


「でも、良かったですね。

これからは隠れずに奥さんの傍に居られるし、

あの茶所のご主人もさぞや安心できるでしょう。」


そうよ、1日中、1つの席を独占されれば、店だってきっと大損害だわ。

これ位の嫌味、言ってもいいわよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ