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内緒話 1

余り長居をしては、もしスティールの見張りが付いていた場合、

怪しまれるだろうと言い、おじい様は次の日、早々に帰って行かれた。


お帰りになるおじい様に、何度か自分の屋敷に来ないかと誘われたけれど、

やはり私はこの仕事をやり通したい。

せめて今いる子達を、立派な紳士淑女にする…、

いや、一通りのマナーを身に付けさせるまで、

ここを動く訳には行かない。

そんな私の気持ちを思ってか、おじい様は諦めモードで旅出って行った。


「ごめんなさいおじい様。

お休みを勝ち取ったら、必ず訪ねて行きますから。」


私は心にそう誓った。


さてさて、授業も順調に進んできたが、ある日ふと気が付いた。

サラ・ハガードのポッチャリが、始めに比べて少々増しているのだ。


美を保つのも、淑女のたしなみ。

私は授業が終わった後、彼女を引き止めた。


「こちらに通うようになって…、いえ、それを理由にする訳では有りませんが、

つい、こちらでいただくお菓子がとても美味しくて、

ついついつい、買い求めてしまうんです。」


確かにお菓子の説明をする時に、どこで買えるかを伝えている。

つまり彼女は、週三回ここで美味しいお菓子を食べてから、

家でも気に入ったお菓子をタラフク食べていると見た。


「先生のおっしゃりたい事はよく分かっております。

以前に比べて、少し…大きくなりました。

自分でも自覚しているのですが、どうしても止められなくて。」


少し…そうね、少しよりちょっと多めみたいだけれど。


「先生にご相談しようと思っていたんです。

けれど、ついズルズルと…。」


ズルズルと食べていたのね。


「いいわ、以前お約束もしましたし、

今度の授業は、皆でお茶会をしましょうか。」


「えっ、そんな、お茶会と言えば美味しいお菓子…。

そんな殺生な。」


そう言いつつも、サラの顔のは歪み切っていた。


「それまでにあなたは、自分でもどうしたらいいのか考えておきなさい。」


そう言って窘めたつもりだったが、

彼女の考えは、どうやら違う方を向いていたようだ。


今日のおやつは、先週教えていただいたお店のマドレーヌにすべきか、

それとも今日教えていただいた、バームクーヘンにすべきかよね。

悩むわ………。


まあそれもサラの憎めない個性だろう。



さて、当日は、レディー講座Aクラス。10人全員が出席をした。


「今日はお茶会をいたしましょう。

と言いますか、女の子同士の秘密のお話です。

だから今日は無礼講。

お友達と過ごすように話してね。

では、最初のお話はダイエットに付いてです。

皆さんはダイエットをした事が有りますか?」


すると、大多数の子が手を挙げた。


「そうね、私もした事が有るわ。

では皆さんの経験を、結果も含めて聞かせてもらいたいわ。

では、そうですねぇ、カトリーヌはどういうダイエットをなさったの?」


「はい、私は甘いものを一切取らない様にしました。

でも凄く辛くて。

だってお姉さま達がおやつを食べていても、我慢しなくてはいけないし、

大好きな甘いオムレツも我慢したんですよ。

結局6日で挫けてしまいました。」


「まあ、それを6日も。」


「ずいぶん頑張りましたね。」


「私には無理ですわ。」


かなりの賛辞を受けている。


「甘い物を我慢するのは辛い事ですものね。

では、ケイト、あなたの話を聞かせて?」


「はい、私は食べ物を最小限にしました。

パンは食べず、主食を野菜にして。と言ってもその量も極力減らしました。

お肉やお魚も一切取らず、お腹が空いたら、お水でごまかしました。」


何人もの驚きや驚愕の声が聞こえた。


「随分と無茶をしましたね。

体は大丈夫でしたか?」


「いえ、結局7日で倒れました。

お母様たちにもひどく怒られました。

実は私には好きな方がおりまして、

もっときれいになって、その人の気を引きたいと思っていたんです。

だから、お母様の忠告も聞かず、我を通していたんです。」


「あの…、ケイト様、その好きな方とはどうなったんですか?」


「結局は私の一人よがり、その方には他に好きな人がおりました。

だから私は、外見だけでなく、内側も綺麗で立派なレディーになって、

もっと素敵な恋を見つけるんです。」


動機はどうあれ、自分を磨くと言うのはいい事だわ。


「先生!先生もダイエットをなさった事が有るんでしょ?」


サーシャが興味津々と言うような顔をして聞いてくる。


「ええ、有ったわね。」


「先生は、スタイルはいいんですもの、一体どういう事をなさったんですか?」


おっと~、”は”と来ましたか。

まあ、自分の容姿に自信を持っている訳では無いけれど、

少しばかりショックだったわ。

まあいいでしょう。

私は気を取り直して、その質問に答える事にした。


「私は、ちょっとちょうだい作戦をしました。」


「「「「ちょっとちょうだい作戦?」」」」


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