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おじい様

「大変お待たせ致しました。」


私はおじい様が待つ部屋に入った。

私を一目見た途端おじい様の表情が、がっかりした物に変わる。

ごめんなさいおじい様、このお詫びは後程、目いっぱいさせていただきますから。


「夜分遅く、大変失礼をした………。」


がっくりと肩を落とし、去ろうとするおじい様。

気持ちはよく分かるけど、だけど、私の罪悪感が物凄い。


「あの…、

ずいぶんとお疲れの様子。

もしよろしければお茶などいかがですか?」


ごめん、ホント―にごめんなさい。

こんなにおじい様を失望させるつもりは無かったのよ。

辞退しようとするおじい様を、私は何とか引き留めた。


テーブルに案内されたおじい様は、どっかりと椅子に腰を落とし、

大きなため息をついた。

私はルイ―ザが用意してくれたお茶を勧めながら、

話のきっかけを探る。


「突然こんな夜分に押しかけて、本当に申し訳なかった。

常識も考えず、わしも大分耄碌したらしい。」


「いえ、あなたにも何か理由が有ったのでしょう。

もし何でしたら、愚痴でも何でもお相手しましょうか?」


「いや、そんな迷惑はかけられません。

お茶をいただいたら、すぐに暇させていただく。」


「私も目が覚めてしまった事だし、

もしよろしければ、お付き合いいただけると嬉しいですわ。」


私はわざと断りにくいように話を振る。


「それではもう少しお邪魔させてもらおうか。」


きまり悪そうにおじい様は言うけれど、

私にとって初めて会うおじい様ですもの。

ジュリエッタ本人として会うのでは無いけれど、やはりとても嬉しいんです。


おじい様の顔を見ているだけで楽しくなってくる。

”あぁ、目元はお母様によく似ている”とか、

”口元はお母様とあまり似ていないのね。それならおばあ様に似ているのかしら”

などと想像する。

私も目元がお母様に似ていると言われていたから、

それなら私はおじい様似なのかしら。


「本当に申し訳なかった、

あなたの眠りを妨げてしまって。

このお詫びはまた改めてさせてもらいたい。」


「そんな事はお気になさらないで。」


元々は私が原因なのだから、そんな事はさせられない。

でも、おじい様がどのようなお考えなのか、

どうしてここに来たのかを知りたい。


「その様子では、あなたにとって大変な事が有ったのでしょう。

私も何故あなたがここを訪ねて来たのか知りたいです。

単なる好奇心ですが、もしよろしければ、話していただけますか?」


彼は一瞬戸惑ったものの、やがてゆっくりと話し出した。


「よろしければ、爺の戯言を聞いてもらえますかな。

こんなに見ず知らずのお嬢さんに話すのは筋違い、

いや、だからこそこんな愚痴を言わせてもらえるのかもしれない。」


私は喜んでと微笑んだ。


「どうか私の素性を明かすのは許してもらいたい。」


「当然です。私はあなたの弱みを掴もうとは思いませんから。」


すると、おじい様はようやく肩の力が抜けたのか、

ふっと息を付き淡々と話しだした。


「実はわしには一度も会った事の無い孫娘が居ります。

嫁に行った娘からの報告や、

時々その子とやり取りする手紙ぐらいでしか、

様子を知る事は出来ませんでした。」


「そうですか。」


「そのわずかな情報だけでも、

その子がとても思いやりが有り、大そう良く出来た娘だと知る事が出来ます。」


まあ、嫌だわおじい様ったら。

私そんなにいい子じゃ有りませんよ。

そう思いながらも、あいまいに頷いておく。


「周りに気を使い、決して人を不快にしない。そう思わせるような子でした。」


おじい様、それは猫を被っていると言うのです。


「わしはいつもその子の成長を喜び、

いつか会えると信じて、その時を楽しみにしていました。

だが、突然届いた知らせは、孫娘の行方不明の知らせだった。」


するとおじい様は両手で顔を伏せ俯く。

徐々に肩が小刻みに震え出した。

きっと声を殺し、泣いているのだろう。


「大丈夫ですよ。

きっと必ず無事見つかりますとも。

こんなに心配なさっている人がいるんですもの、

きっと連絡が有ります。」


「あなたは何故そう言い切れる……、

あの子が消えたのは家出とは限らないのだ。

不埒物に誘拐された可能性だって有る。

事故の可能性も……。

今どうしているのか、辛い目に遭っていないか、それを考えると………。

一体どうして………。何が有ったんだ。

あぁ、ジュリエッタ……。」


一度も会った事も無い私を思い、こんなにも心配している。

私は後悔する気持ちでいっぱいになってしまった。

私の事を心から心配し、探し回ってくれる人がいるのなら、

私はもう少し我慢をするべきだったのだろうかと。


するとまたルイ―ザがサササと傍に来て、小声で私に耳打ちをする。


「スカーレット様がお戻りになりました。」


「えっ、戻るのは明日のはずよネ。」


「私もそう伺っていたのですが……。」


すると突然扉が開き、スカーレットが飛び込んできた。


「大変よ、ジュリエッタ‼

あ、あら……、お…客様?………。」


スカーレット~~~~~!

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