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隠れ家

ダイバリーとはかなり大きな町だ。

都会から農地までバリエーション豊富。

スカーレット様と、そこのどこに行こうかと言う話になった。


「その前に、一つお願いが有ります。」


スカーレット様が改まった様子でそう言う。


「いくら同級生だったからと言って、

貴族のあなたが、ただの商人の嫁の私に敬語を使うのはどうかと…。」


「どうしてですか?

だって、今までずっとそれで通して来たのに。」


「確かに昔は同級生でしたが、やはり今は貴族様と庶民。

格が違います。」


それは違うでしょう。

今は私にとって、格差など一番忌み嫌う事。

それにingで、私があなたに迷惑を掛け頼る状態だ。

反って私がそれを言うべきじゃないか?


「あの、スカーレット様。

私としましては、これからお世話になる方に対し、

それは心苦しいのですが。」


「いえいえ、やはりあなたは伯爵令嬢であり、

あのマリーベル様のお孫様。

私はただの商店の嫁。

やはりこれは不自然では無いかと…。」


ただの商店て、かなりの豪商でしょうが。

王家との取引から、賄い食材に至るまで、

グレゴリー国内だけでなく、かなり手広くやっていましたよね。


ですからそう言われましても。いえ、すじが有ります。そうではなく。

いえいえそんな訳には。それではこうして。

水掛け論の応酬の結果、二人は友達、友達に敬語は不要と言う事になった。


「でね、ダイバリーにもうちの支店が幾つか有ってね、

街中でしょ、田舎にも有るし、裏方面にも。

で、どこがいい?」


どこがいいって、厄介になる場所よね。

でも裏方面って何ですか?

ちょっと怖い想像をしちゃうんですけど。


「人から隠れるのなら、何処がいいのかしら。

人気の少なそうな田舎?」


「あら~、田舎なんてよそ者が来たら注目の的よ。」


「それならやっぱり町中がいいのかな。」


裏方面は出来るだけ避けよう。



だけど連れて来られたのは、どうやらその裏方面だったらしい。

スカーレット様曰く、ただの店と称するバカでかい店の奥、

その外階段を上がったところにそれは有った。


「この建物は、一見すると隣の家と言うか、物置にしか見えないけれど……」


そこで口を切り、階段を上がっていく。

そうして開けた入り口の奥には、広い玄関と幾つものドアが有った。

そしてその向こうには広々としたバルコニーが見える。

なんて作りだ…。


「入り口がこうでも、実は店の3階に繋がっているの。

で、ここのドアは唯一店に繋がっているわ。

ただ、普通は施錠されているけれどね。」


スカーレットはそう言いながら、目立たない所に有る小さなドアを指さした。


でも確かこの建物は2階建てにしか見えなかった。

どういうカラクリなんだろう。


ここはトイレ、ここはバス。

そしてここはあなたに使ってもらう寝室。

この部屋は私が立ち寄った時に使う部屋だけど、

別に見られて困るものは無いし、とにかく私がいない時も、

この家は自由に使ってちょうだい。

自由にって、ずいぶん不用心じゃ無いかい?

そんなに私を信じていいのか?


「だってお友達ですもの。」


スカーレットは屈託のない笑顔でそう言う。

そんなふうに信用されると、悪い事は出来無いわよ。

するつもりも無いけれど。


一通り説明をしてもらって、バルコニーに出た。

さすがに店が大きいだけある。

3階に当たるここも、居住面積それなりに有っても、

バルコニーもかなり広い。


「あ、成程…。」


見ると、バルコニーは店の2階部分から、かなり内側に冊が有る。

そこから見下ろしても、屋根が邪魔をして下が見えない。

つまりよっぽど注意しなければ、

この居住部分は建物が密集している裏方面だ。

だから3階部分は人から見えない構造になっている。

これを考えた人って頭いいな~。

一通り感心した後は、室内に戻りお茶を取る事になった。


「この家はお気に召しました?」


「スカーレット、また敬語。」


「あっ、ごめん。

で、どうよ。」


「十分すぎるわ。

それに此処を目立たないように考えた技術、凄いわね。」


「でしょ、あのサンタモニカ・ダールにお願いしたの。」


サンタモニカ・ダール

確か、新進気鋭の噂の建築士の事だろう。

確か城下町にも、幾つか彼の設計した建物があった筈だ。


二人でお茶をすすり、一息つくと

スカーレットがそれでさ、と話し出した。


「このままいつまでも此処に居てもらってもいいんだけど、

それじゃあ何の解決にもならないでしょ。

この先どうするのか考えなくっちゃ。」


確かに、正論だ。

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