表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/77

婚約破棄へのプロローグ

ちょっと長めの短編です。

「アンドレア王太子殿下、本日ここにおきまして、あなたとの婚約を破棄させていただきます。」


私は我が国の第一王子である、アンドレア様をにらみつけ、そう宣言した。


「なっ!一体何を言っているんだ!」


何って、今の私の言葉を聞いてなかったんですか?

あなたと私の婚約を破棄すると言ったのですよ。


私ジュリエッタとアンドレア様は、幼少の頃からこの婚約を余儀なくされた。

理由はいたって簡単。

わが父にも王位継承権があったからだ。

その上かなりの人望もあった。

それを脅威に思った王室は、私とこの王太子殿下を結婚させ、

この国に波風を立てず、且つ我が家が継承権を行使しないようにと、一方的にこの婚約を進めたのだ。

両親は何とか断ろうとしたらしいが、王室の声がかかっている上級貴族からの圧力が有り、断れなかったと言う。


「だが、お前が大きくなって、この婚約が嫌になったら必ず私たちに相談するんだよ。

必ず何とかしてあげるから。」


両親は、私が幼い頃から、まるで呪文のようにそう言っていた。


でも、私にだって、考える頭は有る。


押し付けられた結婚など、普通は反感を持つだろう。

たとえ相手の事が気になっていたとしても、

押し付けられた相手を、素直に好きだなんて言えないのがセオリーだ。


王子さまとの結婚。

最初の頃は、子供ながらにドキドキもした。

それも王太子殿下が嫌がらせを始める迄の話だ。

誰が意地悪をされてまで、相手の事を好きでいるものか。

(まあ、中には例外もいるかもしれないけど。)

それでも私は、淑女であれとの教育を素直に受けた。

婚約が成立した以上、一応王太子妃となる身だ。

その為の教育も我慢して受けた。

この結婚がなされた場合、それを身に付けていない事で、後々恥をかくのは自分だ。

だから小さい頃から、不平も言わず、顔にも出さず、王太子妃たるものの教育を受けのだ。

かなりきつかったけれど、努力したなりの見返りは必ず有る筈だ。


だが、限度にもほどがある。

アンドレア様は、多分私との結婚に反感を持ったのだろう。

いつも私に冷たく当たり、そのうち嫌がらせをするようになった。

そのくせ、陰では私の事を熱い目で見ていた。

何て大人気の無い。


ところがそれだけでは済まなくなった。

ある時から、アンドレア様は、たまたま舞踏会で知り合った男爵令嬢のミレニアと、

まるで私に見せつけるかのように親密になっていった。

アンドレア様にとっては、私に対する嫌がらせだったのかもしれない。

しかし、相手のミレニアは、まるで自分がシンデレラになったかの様子だった。

それはそうだろう。

しがない男爵令嬢に、いきなり王太子妃への夢が降ってわいたんだ。

もう、今の彼女にはアンドレア王太子殿下の事しか考えられないだろう。


「ごめんなさい、ジュリエッタさん。

でもアンドレア王子様は、私を愛してしまったの。

どうか私達をそんなに責めないで下さい。

そしてお願いだから、何も言わずに身を引いてちょうだい。」


馬鹿ですか。


おまけに王子様ですか。

ちゃんと王太子殿下と仰い。


ミレニアは伯爵令嬢でもある私に、人の目のある所で声を掛け、堂々と裏庭に呼び出し、

まあ予想はしていたけれど、いきなり直球でそんな事を言う。

彼女の周りには、10人ほどの少女が、皆同じように目を潤ませ、私を見つめている。

多分、同じ男爵令嬢や、大地主の娘、大手の商家の娘達だろう。

夢見る一団と言う表現がぴったりだ。

大方、ミレニアと、王太子殿下のラブロマンスに萌え、

まるでコバエの様にミレニアの周りに群れているのでしょう?


私は呆れかえって深いため息をついた。


「あなたは、爵位と言うものをご存じなの?

私は伯爵令嬢、そしてあなたは男爵の娘。

これがどういう意味を持つのか、教えてくれる人はいなかったの?」


「そ、それは知っているわ。

確かに今の私は、あなたより格下よ。

でも、アンドレア王子様と結婚すれば、私は王子様の妻になるの。

あなたは私に逆らう事は許されない立場になるのよ。」


いかにも勝ち誇ったような顔で私を薄ら笑う。

そうね、何事も無く、無事にあなたたちが、結婚すればの話だけれど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ