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記憶喪失の私が世界のどこかで頑張る話!  作者: 不治和
木葉の魔女
9/107

大成功

「夜葉様、似合っておりますよ」

シュガーは私にそう声を掛けた。

私は悪趣味な魔女の格好をさせられて、祭壇へと登らされていた。

どうやら、私はこれまでのようだ。

プラチナさんもアンバーさんも殺され……私は何もできなかった。

そんな暗い気持ちに押しつぶされている中、アリスさんが私に声を掛けて来た。

「夜葉ちゃ~ん、少し見て欲しいものがあるんだよね~」

私はそうしてアリスさんに首根っこを摘ままれ、何処かへと持っていかれたのだった。

そうしてたどり着いた先は城の外だった。

玄関を開けると見渡す限りの青い草原が瞳に飛んでくる。

草原は丘になっており、丘の上に城が建っているみたいだ。

しかし、その平和な草原には似合わない物が転がっていた。

紅い塊だ。それも1つ落ちており、布切れが見える。

「これな~んだ?」

アリスさんが私の肩を掴んで言った。

「何ですか……肉塊ですか……?」

「うん!でもこれは特別な肉塊だよ」

アリスさんは肉塊を拾ってクチャクチャと汚らしい音をワザと音を立てて食べてしまう。

「……まさか」

私はその時、理解した

「これはね、ハクタイちゃんの肉だよ」

私は言葉を失った。

私は只々、茫然と肉を食べるアリスさんを見ていた。

その時だ、足音がした。

その足音の正体はスカルさんだった。

「……やっほースカル」

アリスさんはスカルさんの名前を呼び、スカルさんの後ろに行く。

「……スカルさん」

私はスカルさんに助けを求めようとした。しかし……。

「夜葉、お前を……殺しに来た」

スカルさんの口からはそんな在り得ないような言葉が飛び出した。

私は耳を疑った。

「嘘ですよね……?」

……スカルさんがそんな野蛮なことをするワケが無い。

「君はスカルの事は完全に理解していないわよねえ?スカルがそんなことをする筈が無い……とでも思っちゃったかしら?」

アリスさんがそう言った。

確かに私は完全にはスカルさんを理解していない……。

私の前でスカルさんは飄々と立っているだけだ。

「さあ、始まりました!!スカルVS夜葉ちゃん!!試合の解説はこの木葉の大魔女!!アリス・ブラッキアリがお送りします!!」

アリスさんは砕けた口調でコミカルに言う。

「……試合って……私たち、殺し合う必要もない筈です!!」

「夜葉……こうなった以上俺は本気だ。全力でお前を殺すぞ」

スカルさんはステッキに銀色のボックスを装填してライフルへと変える。

《ライフルボォーックスッ!!レッツ!!狩猟ライフッ!!狩リライフルッ!!》

そんなコミカルな音声が静かな草原に響き渡る。

「……夜葉構えろ。俺なら狩猟用のこのライフルでも簡単にお前を撃ち抜くことが出来るからな……」

そんな音声とは裏腹にスカルさんは酷な言葉を私に投げ掛けてきた。

スカルさんは私を淡々と見ている。

……いつでも殺せると言うことなのだろう。

「……やるしか……ないのか!!強化魔法(リインフォースメント)……!!」

私は体を強化した。

それと同時にスカルさんが「行くぞ!!」と声を上げて銀色の弾丸を私目掛けて撃ち放った。

私は右横に避けて、その後で強靭な脚力でスカルさん目掛けて飛びついた。

「……やるな」

しかしスカルさんは強化魔法も使わずに素の力だけで私を引きはがししてしまった。

「……次はこれだ」

スカルさんは銀のアーティファクトボックスを取り出して黒のアーティファクトボックスをステッキへ装填した。

《サイズボォーックスッ!!オレモカーマーチョォォォ!!死二神ノオオガマ!!》

ステッキは大鎌の形へと変化する。

その時、私も覚悟を決めることにした。

「……魔女のボックスを使えばもしかしたら……」

私は懐からボックスとステッキを取り出した。

「……魔女のボックス!!」

「……貴方たちに渡されたこれを使います!!」

私はステッキに魔女のボックスを装填した。

次の瞬間、ステッキが杖のような竪琴の形へと変化した

杖と竪琴が中途半端に混ざったような癖のある形だ。

竪琴は木製で変化前の素材が鉄とは思えない程軽い。

そして弦は7色に分かれておりとてもカラフルな物だった。

「……これって、ハープ?……もしかして使えるの?」

私は杖の下に生えているペダルを一つ踏みながら緑の弦を一つ弾いてみた。

するとだ。斬撃が竪琴から放たれるではないか。

斬撃はスカルさんから大きく外れて、後ろの木々を斬り倒す。

「……じゃあこれ!」

私は次に白の弦を弾いた。

するとだ。……何も起きなかった。

「え?」

他の色の弦を弾いても何も起きない……。先ほどの緑の弦を弾いても何も起きない。起きなくなってしまった。

「嘘でしょ!?」

私は黒の弦を弾いてから赤の弦を弾いた。

すると、前方に凄まじい高さの火柱が上がった。

「うわっ!?」

炎は草木を燃やしきってしまう。

私は再び白の弦を弾いてから赤の弦を弾いてみた。そのところ何も起きない。

そして、黒の弦を弾いてから赤の弦と緑の弦を弾いてみると斬撃と火柱が出現した。

「この白と黒の弦はスイッチみたいなものなのかも……」

私は理解した。

白を使えば弦の力は失われてしまうが、黒を使えば弦の力は戻る……。

私はスカルさんに向かって青の弦を弾いてみた。

すると、突風が噴き出してスカルさんを包む。

どうやら、青の弦は突風を起こすようだ。

緑の弦は斬撃を作り出して、赤の弦は炎を作り出す……。

「……これが魔女のボックスの力……?世界を10回も捻り潰す力……?なんだかパッとしない気が」

次の瞬間だ。

スカルさんが高速で移動してきてあっという間に魔女のボックスを解除してしまったのだ。

「……うあ」

そして私を片手で持ちあげて言う。

「お前が死ねば、アリスはみんなを生き返らせる……そう言っていてな……だから……」

「分かりました!!殺してください」

私は、この試合で死ぬ覚悟をした。

私がそう言うとスカルさんはそうか。とだけ言い大鎌を首に当てる。

私は死を覚悟し目を瞑った。

ここまで大切な人が死んで……私はもう死んであの世で再会したい気分になっていた。

私はもう……。

頭にボズっと言う軽い音がした。

……軽い。衝撃も無ければ……別に全然痛くない……。

何かがおかしい。

死は無様で痛くて情けない物だと思っていたけれど……。

そのうち、はあ……ため息とクスクスという笑い声が聞こえ始めた。

いつになっても死ねないのだ。

私はやはりおかしいと思い、目を開けた。

「はい、お疲れ様」

スカルさんは私の頭に紙を丸めた物を当てていただけだった。

「え?」

お疲れって……。ああ、そうか死ぬからお疲れって意味か。

そう思っている矢先だったが、スカルさんが紙を広げて私にバンッと紙を見せつけて来る。

“ドッキリ大成功”

紙にはそう書かれていた。

ドッキリ大成功……。

……は?

私は何が何だか理解できなかった。

「ドッキリだよ、ドッキリ」

ドッキリ、ここまでの事をされてドッキリ。

ドッキリって、どこまでがドッキリなんでしょうか?

ドッキリかあ……あはは。

私は納得いかなかった。

ここまで精神をズダボロにされてドッキリ?

「ドッキリって……そんな筈が!!プラチナさんもアンバーさんも死んだ……」

するとだ、後ろの茂みからガサガサとアンバーさんとプラチナさんが出て来たのだった!!

「……なるほど、幽霊ですね……分かりますとも……ああ、迎えに来たんですね?」

するとだアンバーさんが「残念だけど足があるぜ。幽霊じゃのうて、人間じゃ」と言ってのけたのだった。

同じくプラチナさんにも足が生えている。

……幽霊じゃあない?えっと……?

「わ、私の内臓とかぐちゃぐちゃにしてたじゃあないですか?悪意濡れ塗れだったじゃあないですかっ!?」

「ごめんね~それ幻。そもそもあの洞窟一帯が私とシュガーの工房だったからねえ。」

幻覚なら仕方ない。

そして少しずつ、事の真相が見えてきた気がした。

「ハクタイさんの肉とか!!」

「それ、ちょっと人間風に彩ってみた魔獣豚のハム」

そう言う、アリスさんの隣でハクタイさんが流し目で居る。

「……で……で…でも!!」

私は反論したかった。しかし私のボキャブラリーが壊滅状態だった。

意味の分からない涙と鼻水が沢山出てきて私のボキャブラリーを破壊しつくしたのだった。

「夜葉、私たちが午前中に呼び出したのはハメる為だったんだよ。つまりグルです!!ごめんなさい!!」

……もう、なにも信用できない……。

「いやあ、夜葉ちゃんにならこれくらいのドッキリ仕掛けてもいいかな?って」

リアクション芸人でもここまでのドッキリは受けないであろう。

私の知っている限りじゃ、テレビでニセのロケをさせられて、落とし穴に落とされる程度のドッキリまでしか知らない。

「夜葉ちゃんごめんね、このドッキリは私とイージスが仕組んだの」

アリスさんは私に深々と謝る。

心より誠心誠意込めて謝った。土下座と言う形で。

「……」

何も言えずに私は俯いて、立ち尽くした。

「……怒っちゃった?」

私は別に怒ってなど居なかった。ただただ、唖然としていたのだ。

そして唖然の興奮に耐えかねた、私は凄まじいショックによりガクガクと震え、喀血しながら鼻血と血涙を流して倒れたのだった。

「げ、ごふっ!!ぶぐっ!?」

「よ、夜葉ちゃん!?」

アリスさんが慌てて私に駆け寄って来て私を治療する。

するも、私のダメージの殆どは精神だった……ので起きることは出来なかった。

「夜葉!!」

アンバーさんも慌てて、私に駆け寄る。

「夜葉あああ!!」

プラチナさんまで駆け寄って来た。

「怒らないで夜葉~っ!!!!」

とプラチナさんはどさくさに紛れて私の胸を触る。

……怒りますよ。この淫乱ピンクめ!!……と、私は言いたかったものの私にはそんな体力も残っていなかった。

そうして私の意識はゆっくりと暗闇へと堕ちて逝った。


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