時間稼ぎ
一方その頃。
私とプラチナさんとアンバーさんとハクタイさんは事務所の中で戦闘体制になっていた。
私たちはハクタイさんの影に隠れながら音のする方向を見ていた。
逃げようと思ったその時だ。
「夜葉ちゃん」
ハクタイさんが私の名前を呼んだ。
「なんです?」
「イージスの部屋に行って」
ハクタイさんがいきなりそう言う。
「はい?」
「いいから!!」
ハクタイさんが叫んだその時だ。
事務所のドアが蹴破られたのだった。
ドアは部屋の奥の方まで飛んで行き後ろの棚を滅茶苦茶にする。
私は蹴破られたドアの方向を見る。
サディストが立っていた。
「夜葉ちゃん!!プラチナちゃん!!アンバーちゃん!!」
私はそのハクタイさんの叫び声にハッとして急いで廊下に駆けて行く。
「イージスさんの部屋ってどこですか!!?」
「二階の一番奥の呪われてそうな部屋!!」
ハクタイさんが後方で叫ぶ。
私たちはハクタイさんの指示に従って奥まで駆けて行く。
「ここは私が食い止める!!」
ハクタイさんが何処からともなく、鉈のような武器を取り出し構える。
それは鉈と言うには大きく鈍器のようで……武器と言うにはボロボロで錆びついていた。
「……探偵の助手ですかァッ!?」
サディストは涎をボドボドと床に垂らしながら叫ぶ。
「ああ、そうだな」
「私は殺人犯、貴方たちは探偵ッ!!よって対立不可避ッ!!」
サディストが例に漏れず凄まじい勢いで飛び掛かってくる。
サディストは昨日戦った時よりも遙かに速くなっていた。
「機械の刃……。やはり、イージスの言っていた通りだ。
ハクタイさんは機械の刃を素手で受け止めて圧し折る。
受け止めた手から血が凄い勢いで噴き出す。
ハクタイさんは息を荒くして威嚇するようにサディストに顔を近づける。
「素手ッ……!!嗚呼ッ!!ファンタスィックッッッ!!」
サディストは嬉しさのあまりに首をキィゴキィゴと嫌な音を鳴らして叫ぶ。
「鉈なんて必要無かったんですねェッ!!ただしッ!!貴方じゃ私には到底及びませんけどッ!!」
「……ああ、確かに私じゃお前に勝てない……この前戦って理解したよ……だから私はただの足止めだ。私はお前を足止めをする!!」
ハクタイさんは素直にそう認めてしまった。
「となると貴方の上司はかなりの屑と言うことになりますがァッ!!?そこはどうなんでしょうかァッ!!?」
サディストは煽るようにそう質問する。
するとハクタイさんはこれも素直に答えて見せる。
「イージスは本当にクズだよ……私を足止めに使いやがって……ああ、アイツは本当にっ!!クズだ!!」
ハクタイさんはサディストの刃を素手で圧し折ってしまう。
「……ハハハッ!!貴方はとてもファンタスティックだァッ!!」
「……そうだな……私もそう思うよ……サディスト……足止めのついでだ……本気で暴れてやるよ」
ハクタイさんがそう言った次の瞬間、事務所の一室に身を切り裂くような突風が吹いた。