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記憶喪失の私が世界のどこかで頑張る話!  作者: 不治和
fantasticな道化師
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機械仕掛けの神

「ファンタスティックッ!!ファンタスティックッ!!ファンタスティックッ!!ファンタスティックッ!!ファンタスティックッ!!ファアアアアンタスティックゥッッッ!!!!」

サディストが一直線に素早く動きながら俺の懐に飛び込んでくる。

だが、奴と俺のスピードは圧倒的に俺の方が有利だ。

獣の強化魔法は全種族の中で最も強力だ。

人間、獣、魔女、エルフ、錬金術師、魔法使い、ヴァンパイア、オーガ、ホムンクルスetc多々いる種族の中で強化魔法だけでなら最強に君臨している。

圧倒的な脳筋特化。

魔獣が人々から恐れられている理由はその破壊力とスピード。

並みの魔獣なら家一つを破壊できる。

そして、俺は人間の強化魔法をも使える。故に強化魔法なら絶対的な自信がある。

俺はサディストが懐に飛び込んできた時点でサディストを蹴り飛ばす。

「サディスト、お前の力じゃあ俺には到底及ばない。」

サディストは塀に激突して瓦礫の下敷きになる。

「アリス、お前は戦わないのか?」

「ええ、私は木葉の魔女だしね~戦ったら凄いことになるからねえ」

アリスはそう言うと、指を鳴らす。

鳴らした瞬間、指から異様なオーラが周りを包んでゆく。

「だから結界を張って帰っちゃうわね~」

アリスは決壊を張るだけ張って文字の通り、煙のように消えてしまう。

「……どうやら、貴方たちは私をほんの少し勘違いして見ているみたいですねエ……」

「勘違いか……お前はただ人を殺すのを愉しむだけの、蟻を訳も無く潰して遊ぶ道徳の無い子供みたいな奴だよ。違うか?」

「なら、答え合わせですッ!!見ィって驚けェッ!!」

その時だ、人型の何かが現れてゴトンと倒れる。

人型の何かは二、三転して俺の足元に転がってくる。

俺は理解した。

その何かがアリスだと。

「アリス!?」

アリスは体中が機械と化していて、元の人間の形を留めていなかった。

顔は鉄で塗れて手足もぐちゃぐちゃの金属の塊と化している。

在り得ない。

俺の知っている中での人間でアリスを倒せる人間など存在などしていない。

寝ている間の不意打ちも効かず、毒も効かず、呪いも効かず、物理的な高威力の爆弾でさえ効かないアリスが何らかの手で機械にされて動けずにいるのだ。

「どういうことだ……アリスが攻撃された?」

「……あはァ……スカルさァん……貴方は解っていない。私は……人を殺すのではないィ。生きている物の命を殺すのですゥ。私は命をも道具にできるッ!!何でも殺せるゥッ……!!あはァ……スカルさん……私を理解できなかった貴方たちの負けです……」

「……貴様、何をした」

「木葉の魔女には攻撃は通らないッ!!ですがァ……そのルールを変えてしまう攻撃ならどうですゥ?」

「まさか……」

俺はこの時に奴と言う者を理解した。が、もう遅い。

何故ならば俺は既に奴の術中に落ちていたのだから。

「世界のルールを変えたのか!!」

「正解ですッ!!」

これは現実改変魔法だ。

それは世界の禁忌とされ世界政府からは手厚く“隠蔽”対象とされている魔法だ。

この世界の人間は数える程度しかその存在を認知しておらず、存在を認知している人間でさえその魔法を忌み嫌っている。

俺ですらその存在は名前でしか認識していない。

一般人には都市伝説として扱われているレベルの魔法だ。

「どうやら、世界を変える魔法が存在するらしい」と……。

俺はこの時、奴から出来るだけ離れようとした。しかしだ。俺の体ももう、人間の物ではないらしい。

この世界も同じだ。町中の建物も珍妙な機会と化し、人々もオートマタのように姿を変えられてしまっている。

探偵事務所の周りは何とかアリスがやられる前に張った結界で機械化を押しとどめられていた。が、時間とともに探偵事務所も機械と化してゆくであろう。

俺の足は棒のその物のように動かず、腕も鉄のように重い。

腕はギギギ……と耳障りな鉄の擦れるような音を立てて犇めいている。

膝も同じだ。

「冥土の土産にファンタスィックゥッ!!……な事を教えて差し上げましょうッ!!この魔法は機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナァ!!……と言いましてねェ……私が作り出した最終兵器でございますゥッ。能力は全てを機械に変える素晴らしい物ですッ。そしてこれは現実を変えてしまうのですッッッ!!」

サディストは子供のように無邪気に笑いながらクルクルと回る。

その姿は世間を震撼させた殺人鬼の姿には全く見えなかった。

「……お前、頭悪いだろ?」

俺はただそう言った。

「何か、私に面白おかしい所でもォ?」

「全部が面白おかしいのさ。現実改変魔法を自分で生み出したのはとても頭の良い証拠だ。だが、この行動は面白おかしく、頭が悪いと思ってな。いくら知能は高くても、所詮は殺人鬼か……。行動が馬鹿みたいに単純で面白いが、アイツよりは面白くないな」

「……ファンタスィックッ!!この私が馬鹿にされておりますねェッ!!しかしッ!!負け惜しみにしか聞こえませんねェッ!!それに私が面白おかしいのはピエロだからなのでッ!!悪しからずッ!!」

「悪しくよ。……まぁアイツの事を教えてやる。アイツは……お前よりも知能が高くて行動がロジカルで言動がコミカルな、クソムカつく野郎だ。会えばカルチャーショックを受けるどころか殺意と怒りが湧くはずだぜ筈だぜ」

「ほおォ……ッ!!それはッ!!面白いですねェッ!!会ってみたいものですッ!!」

サディストは蝦反りなって天に向かって叫ぶ。

「探偵事務所に居るよ。だがお前は必ずアイツと出会えばアイツに面白味を覚えず、真っ先に殺意と怒りを覚える筈だ」

そうして事を言いながら俺は虹色の光に飲まれてゆく。

意識もここまでのようだ。

「……ファンタスィックッ!!……なら殺すまでェッ……!!!!」

サディストは倒れるスカルを超えて事務所の扉を開けて中に入って行く。

「……結局、イージスが良い所取りか……」

敗因は舐めプ。これからは慢心せず戦うことにしよう……。

そう思いながら俺は機械の体と思考になっていった。


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