■■■・■■■■■■■■
しかしだ、サディストはいつ襲って来るか分からない。
夜中か昼間か……。
いつ襲って来るか判らない恐怖。私はそれを初めて知った。
私はイージスさんの事務所で寝ることにした。
周りには完全警戒態勢のアリスさんとスカルさん。
そして私の横にはハクタイさんとプラチナとアンバー。
イージスさんは自室でパソコンを弄っている。
イージスさんは「僕はこれからトイレ以外で外に出ることは無いから、ここに僕が来たら警戒しておいてくれ」と言い残して引き籠っている。
……あれ、パソコン?1819年にパソコン?
……あれ?なんで私、1819年に……。
記憶が……。
「……は……よる……夜葉!!」
私はアンバーさんの声にハッとして目を覚ます。
私はアンバーさんの方に顔を向ける。
「ど、どうしました?」
「……いや、顔色悪いなーって。まあそりゃそうだよね。やべー殺人鬼に殺人宣言されているんだし」
アンバーさんは少し悲しそうに私から眼を背ける。
……今の感覚。
私は脳の内側を突かれるような熱くて酷い頭痛に頭を揺らして、ソファーに座る。
ソファーに座った瞬間、私の目の前の景色が一転した。
「え?」
私の目の前の景色は暗い夜の探偵事務所から一転して、綺麗な昼間の夏の空の下にある草原に変わっていた。
綺麗な入道雲だ。
空の青さもここまでくると鬱陶しいレベルの綺麗な青さで目を焼かれる。
草原の植物も風に揺られて靡いている。
知らない場所だ。でも、どこか懐かしい。
胸の奥がドクドクと激しく音を鳴らす。
何も悲しいことは無いのに熱い涙が出てきて止まらない。
「これって……」
考えれば考える程に胸が痛くなる。
「ここって……」
私は後ろを振り向いた。
振り向くと家があった。
一軒の小さな家だ。
小さな木材で組まれた家。
屋根は赤く塗られており、爽やかなイメージをそそられる。
「……住んで居る?」
私は涙を拭い、家の前に歩いてゆく。
進んでゆくとポストがあった。
ポストには「■■■・■■■■■■■■&■■■・■■■■■■■■」と名前らしき何かが書いてあった。
「上手く読めない……」
私は涙のせいか名前がよく見えなかった。
前が涙で見えない。
拭ってもすぐに前は濡れて見えなくなってしまう。
……でも二人が住んで居る?
人数は把握できた。
「もう少しで……読めるのに……」
私がポストに手を当てた瞬間。
「夜葉!!」
怒鳴るような声が私に響いた。
え?と思い、前を見るとプラチナさんが立っていた。
私の手はプラチナさんに捕まれていた。
「プラチナさん……?」
プラチナさんは心配そうに私の手を握る。
「夜葉……もしかして何か思い出した?」
プラチナさんは私に抱き着いて言う。
「……はい」
私は頷く。
「それってどんな……」
その時、ドンという音が外から響いてきた。
「何!?」
アンバーさんが慌てて外を見る。
外で煙が舞っている。
煙は事務所どころか周りの民家までも埋め尽くしているため、外の様子は一切確認できない。
しかし、ここに居るみんなが直感で分かったであろう。
サディストとスカルさん、アリスさんが交戦していると……。