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記憶喪失の私が世界のどこかで頑張る話!  作者: 不治和
fantasticな道化師
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Nightmareの夜

私は自分の魔法の才能に酔っていた。

最近、急に強化魔法ができるようになり、そして空間を裂いて物を出し入れできる魔法も使えるようになった。

「ふふ……イージスさんが私って記憶失う前は高位の魔法使いだったって、言ってましたしね。そりゃあ強いですよね。ええ」

私は外に飛んで行ったサディストを見て言う。

そして、この小屋の外は森だったようだ。

深い、深い森だ。

「どうですか?諦める気になりましたか?」

私はサディストを追う形で小屋から森の中に出る

「まさかァ……寧ろやる気が出ましたァッ!!」

逆にサディストのやる気を引き立たせてしまったようだ。

しかし私は強い。

この調子ならサディストに負けそうもない。

私は調子に乗って近くにあった剣をもう一本手に取って強化した。

「諦めるなら、今のうちですよ」

しかしだ。私がどれだけ言おうともサディストは手を緩めることは無かった。

何度もサディストの攻撃を弾いては吹き飛ばして。弾いては切り裂いての繰り返しだ。

その状況が30分以上経った時だ。

サディストが攻撃を止めた。

「……あれ?諦めましたか?」

私は若干悪いことしたなーと思いつつも自分の強さに酔って自惚れていた。

「いいえェッ!!そろそろ頃合いですねえェッ!!……と思いまして」

「負け惜しみですか?なら……」

とどめを刺そうと剣を振り下ろしたその時だ。

私の手がグッと止まった。

急ブレーキを掛けたみたいにグッと止まってしまったのだ。

「あ……れ……?」

なんと、持っていた剣がぐにゃぐにゃに変形して私の手を絡め捕るように羽交い絞めにしていたのだ。

私の手は1ミリも動かない程に拘束されていた。

「何で……これ魔法ですか!?」

「はい、そうでございますッ!!」

サディストが叫んで答えた。

「わたくしの今使っている魔法は機械仕掛け(キカイジカケ)と言うものです」

サディストはそれ以上叫ぶことなく、丁寧に説明して見せた。

「キカイジカケはわたくしが考案した魔法でしてね……どの魔導書にも載っていないオリジナルの魔法なんですよ。で、魔法の効果はと言いますと機械、絡繰り仕掛けの物、鐵具を操る魔法でございます。そして、今あなたを拘束している剣ですが……それも私の魔法の効果範囲内です。お判りいただけましたか?」

「そ、そうですか……でも、拘束しただけじゃ私は死にませんよ?」

「そうです……だから、今からゆっくりと苦しめるように殺すのですよ?判りますよねェ?」

私の額にサディストの鋭い爪がプツリと浅く刺さった。

「さて、殺しのメニューですが……まず爪を剥ぎましょう」

「……え」

次に、パギと言う音を立てて爪の爪が引きはがされた。

「ぐぅっ!!」

鼻からティッシュが噴き出るほどの凄まじい痛みだ。

私はどうしていいか分からなかった。

どうすれば……。

「これだけじゃありませんよォ?爪が一通り剥ぎ終わったら指の皮を剥きましょう。そして骨を折りましょうッ!!そして切断して、手も同じように皮を剥いでから折って切断して、足も爪と皮を剥いで骨を折って切断してを繰り返してッ!!内臓もかき混ぜてッ、特製スープにして飲ませてあげましょうッ!!だから……まだ終わりじゃありませんよォ?」

どうすれば……どうすれば……。

このままじゃ死ぬ。せっかく目的を見つけたのに死ぬ……何とかして……。

「あっ……」

私はふと空間を裂いて物を出し入れする、あの魔法を思い出した。

そうだ……あれならこの状況を逃れられるかもしれない。

私は考え抜いた末にある策を思いついたのだ。

「一か八か……!!」

「おや?無駄ですよォッ!?このキカイジカケは完全に貴方を捕らえていますよォ?強化魔法をしても無駄でございますッ!!」

私は賭けに出るようにあの魔法を自分に掛けた。

その瞬間、私の体が拘束していた剣ごと、その空間から消えた。

一瞬の出来事だったため、サディストの表情も見えなかった。

しかし、してやった!!と言う気分になれた。

だが、この空間は異常だった。

この空間は宇宙のように暗く、無限大に広かった。

「……息がッ」

この空間は熱くもなければ寒くもない。平均20度と言った所だ。

しかしだ。

この空間には水がどっぷりとあった。

息が出来ない。呼吸はいくら強化しようとも、ほぼ無駄だった。

続かない。ここに居るのならば意識が持っていかれる。

……息がしたい。

それにしても、ここに居るだけで何故か死にそうな程に疲れる。

今度は逆にマズい気がするんですけど!?

私は意識が途切れる前に、元の世界に顔を出した。

「ぷげはぁっ!!」

元の空間に戻ると、サディストが居た。

サディストは何が起こったのか理解できていない様子だった。

そして戻った時に気が付いた。私の拘束された腕が動くようになっていた。

私の腕を拘束していた剣はどこへやら。

「い、一体ィッ!!何をしたのですかァアアアッ!!?」

サディストは激昂するように叫んだ。

「……魔法を使って一時的に逃げました。だけど……」

だけれども……私の体は限界だった。

爪は剥がされて、鼻血も止まらないし、体も先ほどの異空間への退避でヘロヘロだった。

……精々腕を動かすのがやっとだ。強化をしても体力が無いんじゃ意味がない。

私はサディストの前で、へナリと倒れた。

「クカカッ……クカカカカッ!!今度こそッ!!私の殺人が完了するゥッ!!ああ、私の手でッ貴方が死ぬのですッ!!先ほどの逃げなど最早ッ!!どうだっていいッ!!あああああああッ!!早く貴方の死に顔が見たいッ!!」

ここで殺される……と思った次の瞬間、私は新しい策を思いついてしまった。

「止まってください」

私は異空間から先ほどの剣を取り出し、切っ先を首に充てる。

「な、何故ェエエエッ!!剣が元の形にィッ!!」

「分かりません。ですが何となく理解できます。あの空間に入った時、貴方との魔力の交信が途切れたから元に戻った……とか?」

魔法関連の事はよく判らない私でしたが、何となくそんな想像は出来た。

そしてこの状況は最悪だった。

生きる目的を見つけたのに死ぬ一歩手前。

しかしこの状況は実は相手にとっても最悪の状況だと確信が付いていた。

そしてそれは賭けに近いような物でもあった。

「来たら、私はこの剣で自分から死にます」

私はサディストに向かってそう言い放った。

するとサディストは嗚咽し狼狽して夜葉の自殺を止めようと叫ぶ。

「……止めろッ、止めるのですッ!!自分から死ぬのは良くないのですッ!!良くないのですッ!!」

私は賭けに勝ったと確信した。

賭け。それはサディストの殺人を続ける理由との賭けだった。

サディストは自分の手で殺した時の爽快感が病みつきなのだろう。

そして、サディストにとって目の前で死なれるのは後味が悪い。

この状況で私が引き出した賭けに、私は心の中で「流石の私」と自分の土壇場での駆け引きの強さに感嘆の声を出した。

「そんな汚いものは捨てて……さぁ、こちらにィッ!!」

サディストはジリジリと詰め寄ってくる。

私は後ろにどんどん下がって行く。

「貴方に殺されるくらいなら自死を選びます(棒)」

私は棒読みで答えた。

しかしサディストは面白いくらいに必死に叫んで呼び止める。

「止めなさいッ!!自死などッ!!神が許しても私が許しませんッ!!さあ、生きる喜びを思い出すのですッ!!この世界はそこにあるだけで美しい物だとッ!!思い出すのですッ!!」

なにが、世界はそこにあるだけで美しい物だ、だか。

それは自分の手で私を殺したいというだけの方便なのに……ちょっといい事、言っちゃっていますけど。

「死にますよ。こっち来ないでください?」

私はさらに後ろへ下がる。

「ああッ!!駄目ですッ!!駄目ですッ!!自死はッ!!」

さらに下がった所でだ。

私はふと、サディストの方を見て叫ぶ。

「いい加減にしてくださいッ!!殺人鬼サディストッ!!」

私が叫んだ瞬間、森が静かになった。

無論サディストも静かに立ち尽くした。

「サディストッ!!貴方は今まで貴方に殺された人々の事を何も思わなかったんですかっ!!少なくとも、貴方は後悔するべきです!!」

私はなるべく大きな声で叫んだ。

「……思う事ですか……無いですね。これからも殺しは続けますッ!!」

「そうか。腐れ外道」

その瞬間、サディストの体を大鎌が切り裂いた。

「へェッ?」

サディストの上半身は空中で三回転して木に激突する

下半身はゆっくりと地に倒れ伏せて四散しまった。

「お、お前はァッ!!?ギルド最高戦力と名高いィッ!!」

「俺はただのしがない狩人(ハンター)だよ」

スカルさんはサディストの上半身の前に立ち尽くして言う。


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