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記憶喪失の私が世界のどこかで頑張る話!  作者: 不治和
fantasticな道化師
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Fantasticな道化師

気が付くと、どこか小屋の中。

辺り一面には咽るほどの埃とボロボロの木片と使い古された武器が転がっていた。

「ここは……」

私は動こうとした。

その瞬間、私の足と手がグッと止まる。

勢い余って私は鼻から床に転ぶ。

「グブっ!!」

豚のような悲鳴を上げて私は悶絶する。

私は鼻を手で押さえようとした。

しかし、手足が鎖で固定されていて、鼻を抑えられない。

めちゃくちゃ痛い。

私が悶絶している最中、「ファアンタァスティイック!!」と叫び声が聞こえた。

その叫び声がしたのは私の真ん前からだ。

「ぐ……だ、誰ですか?」

私は痛みに耐えながら前に顔を向けた。

そこにはピエロが居た。

ピエロと言ってもそれは不気味な類の姿をしたピエロだ。

ホラー映画などに出てきそうなピエロ。それが居たのだ。

そして、このピエロは変わっていた。

体中に歯車があったのだ。

その歯車はピエロの頭や腹からはみ出ながらグルグルと廻っているのだ。

そして、機織り機のような音を絶え無く小さく奏でていた。

「誰と言われましてもねェ!!困りますよォ!?困りますゥ!!わたくしィ!!自分から名乗るのは大嫌いなのでェ!!」

何だかとても叫ぶし五月蠅いピエロだった。

それにとてもファンキーだ。

見ているだけで鬱陶しい。

「しかし、周りからはこう呼ばれておりますねェ……!!確かァ!!最低で残忍で不気味な殺人鬼ィッ!!……と」

私はその呼ばれ方の殺人鬼に聞き覚えが有った。

今、この国でトレンドの殺人鬼だ。

「サディスト……!?」

「おお、それですッ!!ファンタスィックゥッ!!」

サディストは白目を向けながら気持ちよさそうに仰け反る。

「それにしてもッ!!貴方……怪我をしているみたいですねェ!!」

私の鼻から血がダラーとだらしなく木の床に落ちる。

「……はい」

「なら、紙を差し上げましょうッ!!」

サディストは紳士の如く、素早く、懐に手を入れて紙を引きずり出した。

「これを使ってくださいィ!!」

「あ、今は手が塞がっているので丸めて入れてくれますか?」

「イエス……イエェスッ!!」

サディストは狂気的な笑みを浮かべながら、その場で丁寧にティッシュを筒状に丸めて私の鼻に入れる。

「ふぅ……これで……これでッ!!あなたの鼻の穴の処女は頂きましたァッ!!」

「鼻の穴の処女って何ですか……?」

「おぉっとォッ!!わたくしは悪くありませんよォ!?紳士なのでェ!!あくまでも言われたからやっただけであってェ!?それに紳士ですからァ!?少女の鼻で興奮なんてしませんよォ!?それに処女があるのは貞操だけですのでェ!?貞操だけですのでェ!?」

何故、二回も言ったのでしょう?

頑なに自分が変態ではなく、紳士であると言っていますし。

まるで鼻に興奮しているみたいに見えてしまいます。

どうやら、鼻で興奮するような変態に捕まってしまったようです。

……ここだけの話、以前プラチナさんに鼻にティッシュを入れられたことがあるのは内緒にしておきましょう。

「さて……わたくし殺人鬼なので……あなたを殺します」

ここで、ですか。

彼は殺人鬼だ。

それは忘れてはいない。

「そうですか」

「ハァイッ!!良いでしょうかッ!?」

しかし、彼は残虐な殺しを好むと聞いています。きっとロクでもない死に方をするでしょう。

「嫌ですね」

私は率直にそう言った。

ここまで来たんです。私の正体に一歩迫れたと言うのにここで死ぬのは嫌だ。

「嫌ですかァ!!わたくしがこんなに殺したくてもォッ!?」

「はい」

何となくだけど、私のことを探り始めて私でも判るくらいには自分が変わったと認識できた。

前までは目的も無く生きていたけれども、今は目的があることで死ぬ事に本気で抵抗できる気がするのだ。

全く、どこの誰の吹き込みでしょうか。

前までは死ぬのは只々嫌で、何もできずに泣いていた私でしたが今はこうして立ち向かう勇気が出来たのは……。

「サディストさん悪いですけれど、戦わせてもらいますよ」

私は体を魔法で強化して鎖を砕いて見せた。

強化魔法を使えば鎖なんて簡単に引きちぎれてしまう。

そうして私は近くにあった剣を手に取り、強化する。

「ファアアアアンタァアアアスティイイイックゥッッ!!そうでなければァッ!!そうでなければァッ!!ああっ!!是非ッ!!是非ともォッ!!わたくしめにィッ!!貴方の名前をお教えくださいますかッ!!」

「……夜葉です」

「素直ォッ!!ああ、貴方こそっ!!……わたくしが本当に、本当に、本当に!!殺してみたかった!!殺したかった!!人間でございませんかァッ!!」

そう言うと、サディストは手首から、刃を一瞬で生やして襲い掛かってくる。

その刃は血濡れた刀のように紅く、妖しく光を乱反射していた。

「ファンタァスティックゥッ!!」

私はその攻撃に遅れることなく、サディストを切り裂いて見せた。

私は意外にも運動は出来るらしい。

剣捌きはまるでゴミだが、体を魔法で強化すればプロ並みに動けることは確かだ。

私の剣はサディストの腹を深々と切り裂いた。

サディストは奇怪な機械音を立てて、小屋の壁にぶち当たる。

さらにサディストは壁をぶち破り、場外へ吹き飛ぶ。

「私……魔法で強化すればそこそこ強い!!」


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