過去探し
私は魔法総合学校に来ていた。
私とプラチナさんとアンバーさんはクラスメイトだ。
運良く、私たちは同じクラスになり、悠々自適に学園生活に勤しんでいた。
そんな何気ない日常の中での話だ。
アリスさんのドッキリが終わって1週間くらいが経過した日の事。
ある事件がこの国のトレンドワードとなっていた。
その名も“レグウォルツ殺人事件”。
レグウォルツとは何か?
私はレグウォルツが気になりレグウォルツについて調べてみた。
レグウォルツとは、木葉の国の北部に位置する、町の事である。
……ちなみに私の住んで居る、町の名前はガーデンと言うらしい。
因みにレグウォルツはガーデンからすぐの町だ。森を抜ければレグウォルツと言った感じだ。
さて、そのレグウォルツと言う町で殺人事件が起きたのは明確だ。
しかし、その殺人事件はとても残忍で最低で不気味で狂っていて、国民の誰もが「犯人よ捕まれ」と言うほどの物だった。
犯人の手口は男女を拉致、監禁、拷問。そして殺害に至るという。
犯人はその残虐性と度を越した性的な犯行から“サディスト”と呼ばれている。
(聖騎士十字軍調べ)
無論、私の通っている魔法総合学校でもその事件はトレンドワードだ。
「最近、連続殺人鬼が出てるからねー、気を付けてねー」
私のクラス担任の先生はのんびりと話す。
「なあ、夜葉―」
その時、アンバーさんがボソッと声を掛けて来た。
「何です?」
私もコソコソと話す。
「こんな時に関係ないけどさー、記憶戻す気無い?」
「……戻すのは怖いですけど……まあ、記憶を失う前の私のことくらいは知りたいですね」
「じゃあ、調べようぜ」
「どうやってです?」
「………………頑張って記憶を失う前の夜葉を調べる!!」
根拠のない根性論で記憶を探そうと言うのでしょうか?
アンバーは笑顔で親指をグッと立てる。
「……無理ですね」
「なんで?」
「この数カ月の間に私が自分の身元を探っていないとでも?探しましたよ、でも私が何処の誰かも分からなかったです。唯一の手掛かりはそこそこの魔法使いだったってことくらいです」
「高位の魔法使いならば、簡単に足が付くのでは?」
アンバーはロジカルにそう答える。
しかし、私もそう思って捜査していたが一向に正体も掴めなかった。
「付きませんでした。私じゃあ捜査できませんでした」
「みんなとならどう?きっと私たちとなら記憶を失う前の夜葉を見つけれると思うよ」
私は溜息を吐いた。
私はアンバーさんの言葉に動かされてしまったのか、私はまた、大きな溜め息をついて、アンバーさんの方に顔を向けて、「ですね」と答えてしまった。
その後、私とアンバーとプラチナで私の事を調べ始めた。
方法は、町の人たちに「数カ月ほど前に私に似た人物を見たことは無いか?」と聞きこむという原始的な方法だ。
学校のある日は街中。
休日は遠くに足を運び、聞き込み。
最初こそは、全く手掛かりの一つも手に入らなかった。
「見た覚えはない」
街の人たちは口を揃えてそう言う。
しかし、ある日だ。
7月31日以前に私らしき人物を見た事があると言う、お姉さんを見つけることができたのだった。
「うん、見たわよ」
あっさりと彼女は答えた。
11月24日の事だった。
私は、「へ?」と間抜けな声を上げた。
「うん見たわね」
「マジですか」
「マジよ。その子、ここら辺で儀式道具を買っていたし」
「なんでそんなことを知ってるんです?」
「だって、私半年くらい前にそよ風の国から木葉の国に来たばっかりだしね。それに変わった子だったから覚えてるのよ。」
そう答えてくれたのはエレスティアと言う、そよ風の国出身の十代後半の女性だ。
そよ風の国、ここからかなり遠く離れた島国の事だ。
彼女は金のメッシュが入った綺麗な白髪を指でクルクルと絡めながら話す。
「それにかなり態度が悪かったわ、それにメガネをかけてた」
エレスティアさんは結構重要なヒントをくれた。
記憶を失う前の私は態度が悪かった……。
なんだか複雑な気分だ。
「ありがとうございます」
「いいよ~なんせ、私っていい人だからね~聖騎士十字軍だし仕方ないか~」
どうやらエレスティアさんは聖騎士十字軍に入っているみたいだ。
聖騎士十字軍。簡単に言えばこの周辺諸国の警察みたいなものだ。
木葉の国だけじゃなく、隣の国や遠くの国を股に掛けて魔法などによる事件を捜査する国家公務員。
みんなのなりたい職業ランキング一位を独占している。
エレスティアさんは聖騎士十字軍の制服とマントを格好よく纏っている。
……綺麗な人ってどうしてここまで格好よく制服を着こなせるのだろうか?
「聖騎士十字軍なんですか?」
「そうよ~」
彼女はマントの文様をちらりと見せて自慢してくる。
確かに文様がカッコいい。
中二を感じるくらいにカッコいい。
文様のデザイナーは中二病であろう。
「どやっ」
エレスティアさんは見事なドヤ顔を中学生に見せつける。
「カッケー!!」
アンバーさんは前屈みになり目をキラキラと光らせる。
「まあ、私が話せるのはこれくらいかな。さあ帰った帰った!!私も仕事あるしね!!」
「……仕事ですか?」
「うん、最近有名でしょう?サディストの事件」
ここでもサディストだ。
最近サディストの話ばっかりで耳にタコができそうだ。
「もともと、薬物とか禁忌の魔法を取り締まっていたんだけれどもね~、上からの命令で仕事がサディストの捜査に変わっちゃったんだよね……」
エレスティアさんは若干涙目になりながらよく判らない資料を手に持って町のどこかに消えて行ってしまった。
でも、最終的に……。
「情報は入ったよな!」
アンバーさんはガッツポーズを作る。
「いい情報も手に入ったことだし、今日は解散にしない?もうそろそろ日が暮れ始める時間だし」
「そうですね」
私たちはいい情報を聞き出せて、いい思いをして家路についた。
アンバーさんとプラチナさんと別れた後一人になってふと、夕焼け空を見上げた。
夕焼けが妙に気持ちいい。
もう寒い季節だと言うのに頬が暖かい。
「やってやりました!!」
私は夕焼けに報告するように言った。
そんなワケで今日と言う日は終わる。
……筈だった。
その時、私の後頭部にズンと大きな衝撃が入った。
私は何事かと思ったが、どうにも体に力も入らず振り向くことも、状況を確認することも出来なかった。
頭が割られてしまったのかと思い恐怖した。
私は自分の頭に手を伸ばした
血は出ていないみたいだ。
ホッとした矢先だったが、打ち所が悪かったのか私はドサリとその場に倒れて気を失ってしまったのだった。