あらゆる生あるものの目指すものは死である。
力と力のぶつかり合いによって凄まじい爆発に似た衝撃波が発生して城のエントランスホールを粉々に破壊した。
玄関までも破壊され、巨大な城に大きな吹き抜けが誕生してしまった。
勝敗の行方は……。
「……がは」
カームは体力の消耗により戦闘不能。
「……」「……リ……さま……」
ハクタイ&シュガーは気絶。
「エネルギーが……」「キュウ……」
スノウ&ギベオンは魔力切れにより行動不能。
ここまでカーム、ハクタイ&シュガー、スノウ&ギベオンが倒れた。
煙の中で最後まで立っていたのは3人。
イージス、スカル、ゴングの三人だ。
この状況を見てゴングはすぐに背を向けて外へ出て行こうとした。
「今回はこの辺にしますか、俺の強さもまだ発展途上だしねえ」
ゴングはそう言って余裕そうに腕を後ろに組んで言った。
しかしスカルは「待てッ!!戦いは続いてるぞ!!」とゴングの後を追い戦闘を再開するように求めた。
するとゴングは白々しく眉を上げて笑う。
「おいおい、また殺し合うか?いいぜ、戦闘不能のマヌケ共の掃除も出来るしなあ?」
ゴングは膨大な禍々しい魔力を見せしめにと言わんばかりに露わにした。
「逃がせスカル!!奴と戦えばみんな殺されるぞ!?みんなやられればお前も確実に負ける!!」
イージスはスカルに止を入れた。
スカルも理解したのか押し殺すような声を上げた。
「分かってくれたかあ、んじゃアディオス」
ゴングは気さくにそう言うとシュッと姿を消した。
そしてゴングが消え、平穏な時が流れ始めたと同時にだカームが口と目と鼻から血を噴き出したのだ。
「ガロォ!!」
カームが血を吐いて苦しみだしたのだ。
「カームッ!!」
スカルはカームに近寄ろうとした。
しかし。
「来るな!!」
カームはスカルに向かってそう叫んだ。
「……もう俺は最初からこうだったんだよ!!来ても治らないと分かっていた……死ぬ前にかつてのクラスメイトと同行しようと思ってここ……まで……来たんだ……っ」
カームは言い終えると更に血を噴き出して苦しみだした。
カームの血が止まらなく溢れてくる。
「血を吹きだしたか……!!白凶の末期症状だ……カームは……駄目だ自発呼吸に近い……何か声を……」
イージスはカームの死を悟った。
「そんな急にか……ッ!!」
スカルは絶望と切望に満ちた顔をイージスに向けた。
イージスならば白凶を治せるとでも思ったのだろう。スカルはキャラにも無い顔をした。
しかしイージスもここまで病状が進んでいたとは知らなかった。
イージスは諦めて、カームに遠くから声を掛けた。
「……俺、お前の事は好きになれなかったけれど、意外と馬鹿やれて本当に迷惑で楽しかったぜ?」
「……俺……もだ」
スカルは突然の友人の死とイージスの悲しそうな顔を見て居られず、二人のやり取りに割って入った。
「なに湿気た事を……!!」
イージスは顔を横に振り、冷静に答える。
「スカル、こうなったらもう終わりだ。もう何も出来ないよ」
スカルはイージスの答えに絶望した。
全てが終わるかのような重い空気が場を詰めた。
そんな重苦しい空気の中で、死にかけのカームが声を上げた。
「……ゴ……ングを……止めてくれ……ないかな、二人で……ゴング……を……!!」
カームは真面目にスカルの眼を見て真剣に伝えた。
カームはサムズアップのポーズを取った。
「……お前」
スカルはここでやっと悟った。
カームは絶望なんかしちゃいない事を。
それどころか希望に満ちた笑顔でカームはいる。
まるでみんながゴングを止めてくれることを知っているかのように。
「なあ、俺……たち……いつ……までも……仲間……だぜ……?ふう……。」
カームはスカルに自分の言いたいことが全て伝わった事を心で理解すると、フシュ―と鼻で息をする。
カームは言い終えると息を止めてしまった。
肺からハァーという思いの外コミカルな音がした。
そして間もなく心臓の鼓動がド……ド……とゆっくりと止まり、次第に生気を失っていった。
……カームが命を落とした。
イージスは動かなくなったカームに寄り添い、開いていた目を閉じさせた。
「任されたぞ」