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記憶喪失の私が世界のどこかで頑張る話!  作者: 不治和
夜葉の世界
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帰るべき場所 その8

イージスは血まみれの顔をタオルで拭いてそう言った。

「何だよ、いきなり推理ショーか?」

イージスのシリアスな顔にハクタイがそうツッコミを入れた。

「そうみたいだね、でも今の状態じゃまるで探偵の方が殺人に遭ったみたいだよ?」

スノウもそうツッコミを入れた。その後でシュガーは「推理ショーのシーンとなるとこの中に犯人が居るのでかしょうか?」と首を傾げた。

「当たり前だよねえ?まあ話すぜ!!」

イージスはシュガーの問いにそう答えて話を切り出した。

「……コホン!!俺は一度だけ黒幕君にぶち殺されて居るのを知っているかな?」

直後、イージスのその切り出しにカーム以外の誰もが「聞いてない!!」と答えた。

「ヘマを踏んだってそう言う事!?」

「……殺されたのでありますかイージス様!?」

「殺された?生きてるじゃないか!!」

「ウッソだろ」

この場に居る誰もが右往左往とお互いの顔を見て驚愕し震えた。

そしてこの発言をしたイージスは……。

「……え、知らない?聞いてない?」

このようにあっけらかんとした表情と声音でこの場に集まった人間全員を見つめた。

そしてあまりにも遅い重要な報告に呆れ返ったハクタイがイージスの首根っこを掴んで、壁に押し付けて怒声を轟かせた。

「てめえええ!!!!報告連絡相談が大事って知らねーのかァァァッッッ!!!?」

重要な仕事には付き物の報連相をこの馬鹿探偵は怠っていたのだ。

……今までのサスペンスチックだった黒幕の捜索も……これからのカッコいいであろう推理シーンも全部がっかりな結果になってしまったのだった。が、この探偵は「まあごめん」とだけ澄まして話を進めるのだった。

「そして聞いてくれたまえ、」

「反省しやがれ、こいつはカッコ悪いぞ」

「あはは」

イージスは反省の色無しの乾いた笑いを吐き出して言う。

「まあ魔女の事を調べていたらね、魔女の文化が儀式だったっていうヤバい真相にたどり着いちゃってねぇ、俺殺されたんだよ。でもカームが最初っから俺の後を付けていてくれたおかげで期間限定の蘇生を遂げれてね……で、殺された時に自分に残留した魔力を抽出して相手の魔力を特定したんだよ……おかげで俺を殺した奴の魔力属性が進化と永久だって事に気が付いたわけですけれども……今回は黒幕の目的を説明したいんだ。あ、スカル俺をしっかり護衛していくれよな?」

「当たり前だ」

「よろし。んで黒幕の目的だけれども、黒幕は魔女の代を3000年以上かけて200代まで続かせて、その200代目の魔女を吸収するのが目的なのさ。こんな事をする理由は不明だけれどもね!!で、黒幕がこの200代まで続いた魔女の末裔を吸収した時、黒幕は全てを超越した永久機関的存在へと進化する。これになられたら終わりだ、今の魔女は199代目。あと1世代で200代目だねえ?黒幕は200代目になった瞬間に魔女を吸収する気だ……そしてこの黒幕と言うのがねえ」

イージスはねっとりとした口調で「ゴング・コング、お前なんだよね?」と言う。

そしてここに居る全員の顔がゴング・コングに向けられた。

しかし顔を向けられたゴングもゴングで意外そうな顔をして「え、俺かい?なんで俺なのさ?」と答えた。

ハクタイは「この推理間違いじゃねーのか?ゴングさんが犯人だなんて証拠も無いしよ!!」とゴングの弁護を唱えた。

しかしイージスは薄汚い笑顔を作り「もう既に自供したような物じゃろお?」と言い切った。

「なんだよ?」

「ゴングは今さっきここに出てくる時に、『おいおい、誰だい……?もうアリスちゃんの友達なんて居ない筈じゃ……?』とかまるで俺が死んでいる事を知っているかのような事を言って出て来たじゃねーか?」

……確かにゴングはそう言った。思い出したかのようにスカルがハッとした。

しかしハクタイはそれでもカッコ悪い探偵に弁明を唱えた。

「ただの度忘れかも知れねーじゃねーか、ゴングさん結構歳いってんじゃねーか」

「そうかな?店を一人で切り盛りしていて、まだまだ魔法を扱えて”永久”に肉の減らない”進化”した魔牛も飼育できているんだぜ?ここに来て、突然歳が来ただなんて不自然じゃねーか?それに俺とスカルの事は知っているだろう?でも、この野郎は木葉の魔女であるアリスの名前なんて今まで全然知らなかった一般人だろう?……なんでアリスの事を知っているのかなあ?合っていたらヤバいよね?ここまで俺、たどり着いちゃったワケだものね、どうかな?」

イージスが最後までそう言い切った時の事だった。

槍のように鋭く尖った黒い影が突如としイージスの目の前に出現し、点一秒無い間にイージス目掛けて黒い霧の槍が突き飛んで来たのであった。

出現した槍とイージスの間は約1m半程度であった。それが点一秒も無い間に突き飛んで来るとなれば、戦闘技能の無いイージスでは避けるのは絶対的に不可能であろう。

黒い霧の槍が出現したことに気づいた誰もがイージスの死とゴングの裏を悟った。

しかしスカルは違った。

スカルは槍が出現したと同時にイージスの危険を悟り、人間しからぬ脚力のみで一瞬にしてイージスと槍の間に入り込んで、さらに人間離れした咬合力を駆使し槍を真正面から受け止めて見せたのであった。

スカルは霧の槍を噛み砕いて、一瞬にしてゴングと自分の間合いを詰めて強力な回し蹴りをゴングにクリーンヒットさせた。

「何ィ!!?」

ゴングはたちまちに顎を砕かれ、吹き飛んで石の階段に激突して大穴を開けた。


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