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記憶喪失の私が世界のどこかで頑張る話!  作者: 不治和
プロローグ
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PROLOGUE:木葉の国

鉄のぶつかる音が響く。

鋭いその音は肉を裂くような音も稀に出す。

そして、液体のようなものが私の頬にピチャリと張り付く。

眼を私は閉じているのか?と私は瞼を開けようとする。

でも、開けたところで前は見えなかった。

真っ暗な空間が目を覆い隠している。

眼も痛い……。

どうやら、私は目を潰されているようだ。

私は、必死で起き上がろうとするが、手が使えない。

ならば足を使おう。と思い、足を器用に使おうとするが、足は動かない。

どうやら、左手は斬られ両足は折られているようだ。

私は何とか右手だけで這いずった、行き先も解らず、這いずる。

眼が潰れている筈なのに片目に光が差し込んでくる。

良かった、右目は失明してないようだ。

一瞬、また一瞬経つごとに視力は回復している。

そして、目にした光景は血みどろの丘。

夕焼けのように紅い水溜まり。

刀を使い、殺し合う二人。

――ああ。

私は見てしまった。

人が私を手に入れようと、身を張って戦っている光景を。

でも、その人と戦っている人も見てしまった。

深く愛しているのに。

友達以上になれた筈なのに。

私とその人を殺しに来ている。

私の命を守るために戦っている人はもう既に、深い傷を負っている。

腹部貫通、火傷、足打撲、脚部貫通の傷を。

だけれども、私の命を奪いに来ている方もかなりの傷を負っている。

内臓破裂、失明。

二人ともこのまま戦い続けるならば、あと数十秒しか生きられないだろう。

ああ、二人とも死んでほしくはない。

せめて、最後くらい友達の関係に戻りたい。

ずっと友達で居たい。

なのに……なんで殺し合っているんだろう?

いや、私は鈍感で、弱くて、一人じゃ何もできない人だから言えるんだ。

誰かを憎んだことも無い私は、きっと『神様』から憎まれているんだね。

私は泣いても意味がないと知っている筈なのに、涙が出て来る。

ホロホロと。

なんで、なんでなんだろうね。

弱い癖に。

何も出来ない癖に。

貪欲に……言えるんだろうね。

私は何でこんなにも我侭に『みんな憎み合わずに平和で居て欲しい』なんて言えるんだろう。

二人の血が、私に噴きかかる。

これは、神様が我侭な私に課せた『罰』なのだろう。

後悔しても遅い。

懺悔しても遅い。

絶望しても遅い。

遅すぎる。

私は神様の罰に抗わず、一生掛かっても償い切れない罪を償い続けるしかない。

私は血反吐を吐いて、二人に謝っても意味がないのに大声で叫んだ。

≪ごめんなさい≫と。

二人は一瞬こっちに眼をそらすが、戦い続ける。

ああ、死ねば楽になれるのに……私は臆病だから死ねないんだろうな……。

私はなので、自暴自棄に戦いに飛び出した。

そして、殺しに来ている方の体に飛びつく。

動きを封じようとする。

――……一人でも、助ける!!

私は背中から刀で刺される。

私は痛みで悲鳴をあげる。

でも、絶対に手を離さない。

すると、私を助けに来ている方は剣を振るうのをやめた。

止まった……。

静寂が草原を包む。

安心してホッと息をついた。

同時にさっきよりも大粒の涙も出て来る。

でも、それは絶望の嵐の前の静寂だった。

「ありがとう。これで、コイツを殺せる」

助ける方は殺しに来ている方の首を撥ねる。

――あ……え?

彼は勘違いしていたのであろうか?

私がこの人に飛びついた理由は連携攻撃のためだと……。

いいや、違う。

この人は、私が自分の命にも強欲だから、勘違いしたのだ。

この人は、私も一緒にこの人を殺そうとしていると勘違いしたのだ。

――……。



――――――違う……違う。私が求めていた運命はこうじゃない。

みんなが幸せになれる運命。

痛みよりも強い『何か』が心の底から溢れ出て来る。

『何か』が怒りに変わり始めるのが判る。

きっとこれも……!!

■■……■■■■■■■■■■■■。 


何かが私に話しかける。

■■■■■■■■■■■……。■■、■■■■■■■■■……?


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!


何を言っているかは判らないが、きっと最悪なことだと認識できた。


――――――私は……。


その日、私のせいで世界が大きく変わった。

その代わりに私は力を得た。忌み嫌うべき、最悪な力を。

―――――――――――――――――――――――――――――――




……酷く残酷な夢を見た。

殺し合いの夢だ。その末に沢山の絶望が巻き起こっていた凄惨な夢だ。

「お、おはようございます……」

私は目を開け、呪文のように唱える。

その後に寝汗でびっしょりの枕をドッと押しのけて、被さっていた布団をバッと手で払いのけた。

「どうしたの夜葉ちゃん?もしかして何か思い出した?」

少女が私に声をかける。

少女の容姿は凄く綺麗で、見ているだけで落ち着くほど愛らしい。

私の少ない語彙力では表現出来ないほど綺麗だ。

強いてそんな綺麗な彼女の特徴を挙げるなら、薄い桃色の髪の少女。

高校生くらいに見えるが彼女はまだ中学生だ。

そんな彼女の名前はプラチナ・モリス。

性格は少しマイペースで掴み所が無い。

プラチナさんはマイペースに私を見て小さく笑う。

私も笑顔に合わせて笑顔を作って見せた。

「プラチナさん……いえ、夢を見ていただけです」

そんな台詞を私は吐いた。

私の名前は“夜葉(ヨルハ)”。

苗字は思い出せないが名前はそうだ。

そして記憶喪失の身だ。

私はほとんどスッカラカンの頭を右に左に震わせて、ベッドから起き上がる。

「というか、なんで私の家に?」

私は着替えとバスタオルを用意して薪を用意しながら質問した。

「友達同士で合鍵は基本だよね?あ、部屋は暖めといたたよ~」

プラチナさんは親切そうに言う。

ん、基本……?

そういうのが許されるのは恋人か家族関係のみでは?

――――――というかちゃっかりと暖炉にも薪がくべてあるし。

私はショックで手にある薪を落としてしまった。

「……こういう人からお金を盗まれそう……。」

「私は自分で言うのもなんだけど私の家、お金持ちだからその心配はないよ~?あ、鍵は返す」

と憎たらしいまでの言葉回しで笑いを取る。

そんな中でだ。

「おお、起きたのか~?よ~るは~!!」と明るい琥珀色の目と金色の髪をした少女が大声を出しながら走ってきて、私に抱き着いた。

「ぐぶえ!!?」

私はベッドに押し倒されてしまった。

そんなアホそうな彼女の名前はアンバー・オールゲート。

私の友達だ。

空気が読めず阿保だけど根っからの善人。

「起きました……ので、お風呂入りたいです……アンバーさん?離してもらえますか?」

「断る!」

「なにゆえ!?」

「夜葉にこうしてたいから!」

うわ……恥ずかしいことを躊躇なく……。

後ろでプラチナは「あら~」なんて言って微笑んでいるし……。

「とにかく今は離してください」

私はアンバーさんを軽く振り払い、ベッドに突き飛ばす。

アンバーさんは「あはあ」とベッドに倒れて寝てしまう。




ここは木葉の国。

人口6万人ほどの小さな国。

国民の平均年収は日本円で約800万程。

国の面積は160㎢。

首都は木葉の国南西に位置するグラム。

今、私が住んで居る場所は木葉の国の西部に位置する町、ガーデンだ。

私は記憶を失い、森の奥を彷徨ってからアンバーとプラチナに拾われて、とある人物にこの家を貰い、住み始めた。

現在1819年の10月30日。

薄らと雪の積もった町は寒い中でも活気に満ちている。

レンガ造りの家が多数を占めている為か景観はどこか懐かしく感じる。

木と温泉とレンガの町。

木葉の国の中でもこの町はとても美しいとされる。

どうやらこの国には“魔法”といった技術があるらしく、人々の半分ほどは魔法を使い生活をしている。

現代とはまた違った文明らしく、各屋には魔力が電気やガスのように通っている。

人々はそれを燃料にして、器具を扱う。

その燃料から生み出された熱エネルギーの蒸気が窓を白く染める。


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