7月5日
「なんだかもう習慣のようだね」
佐々木さんはビールジョッキを片手にキムチをつついている。
「今週は韓国料理だから、いつもと違って刺激的だよね」
いつもと違ってと言いつつも、すずさんのビールジョッキを傾けている姿は、先週末のデジャブのようだ。
「今週は忙しかったんでしょ?」
僕は、佐々木さんの問いかけにうなづきつつ、締切直前の書類の提出に追われていた今週を振り返っていた。
「忙しかったんだ?焦っている感じには見えなかったけど」
すずさんの質問に答える間もなく、佐々木さんが言葉をかぶせてきた。
「そうなのよ、しゅんちゃんは淡々と仕事しているから、外からはそう見えないのよね。何か嫌な奴よね」
「嫌な奴だね~」
すずさんが楽しそうに相槌を打つ。
「そうそう、しゅんちゃん、来週はどこか行くの?休むって聞いたよ」
ようやく到着した参鶏湯に舌鼓をうちながら佐々木さんが話しかけてきた。
「耳が早いですね、この前休日出勤したこともあり、金曜日から1週間休む予定ですよ」
「で、どっか行くの?」
「タイでも行って、ちょっと国境沿いにラオスにでも渡ろうかなと」
「何しに?」
「何となく」
「そっか」
「えっ、これで会話終わり?」
すずさんが笑いながら口を挟んできた。
「まあ、行ってみたら何かあるかもしれないですしね」
「何が?」
「何か」
と、また不毛な会話が再開された。
「じゃ、来週は飲み会もお休みだね」
「すず、大丈夫だよ、私がいるから」
「そっか、佐々木さんはいるもんね」
と、性懲りもなく不毛な会話が再開された。