7月1日
今日から7月というほど晴れやかな天気ではなく、朝から梅雨空が広がっていた。
午前中の仕事を何とか終わらせ、近くの弁当チェーン店で買ってきた海苔弁当を自分の席で食べていると、佐々木さんとすずさんが近づいてきた。
「お弁当?この卵焼き美味しそうね、もらうよ」
「それ残しておいたのに。」
「ケチな男だね~そんなことじゃ女の子にもてないよ」
どこかの国の暴君のような言い草で、佐々木さんが僕の大切な卵焼きを奪い取っていった。
「そうそう、映画面白かったらしいね。感動してしゅんちゃん泣いてたんだって?」
「わんわん泣いていたのはすずさんの方だと思うけど」と、すずさんの方に顔を向けると、珍しくスカート姿のすずさんが立っていた。
「あれ、スカートなんだ?」
「今頃気づいたの?かわいいでしょ」
「いやそれほどでも……」
「また照れて。こういうときは褒めるもんなんだよ。ダメな男だね」
そんな意味のないやり取りをしていると、佐々木さんが割って入ってきた。
「すず、今日、デートなんだって」
「さっきも言ったけどデートじゃないけどね。香港で世話になった人と飲むんだ」
「月曜から飲むの?」
「あ、しゅんちゃん妬いてるの?」
「そういうわけじゃないけど」
「なんだ、妬いてないんだ」
すずさんは拗ねたふりをして去っていった。
「しゅんちゃんももういい年齢なんだから女心をわかってあげないとね」
そう言い残し、佐々木さんはにやにやしながら、すずさんを追いかけて行った。