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はんぶんこ  作者: 具志堅
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6月28日

梅雨の合間のまぶしい太陽がようやく沈みかけたころ、都内のデパートの屋上では夏を待ちきれないサラリーマンたちがひと時の休息を満喫していた。


 「やっぱり外での生ビールは格別だね。ただ持ってくるのが遅いのが欠点よね」

 「そうですかね、佐々木さんが飲むの早いんですよ」

 「ビールは冷えているうちに飲まないとおいしくないでしょ、しゅんちゃんも早く飲みな」


 「そうそう、しゅんちゃん、うだうだ言わずに早く飲む!」とすずさんも周りの騒がしさに負けない大きな声でけしかけるので、

 「いつの間に、しゅんちゃん呼ばわりなんですか……」と言いながら僕も急いでビールを喉に流し込む。

 「しゅんすけって呼び捨てよりはいいでしょ?」

 「まあ、何でもいいですけどね」と佐々木さんに適当に合わせ、少し冷たくなった焼き鳥をほおばっていると、

 「はっきりしない男ね」とすずさんは、先ほどよりも大きな声で楽しそうにビールを飲み干していた。

 

忙しいせいかなかなか注文に来ないまったりした時間に嫌気がさし、当然のように違う居酒屋に場所を移すことにした。


「さて、とりあえず生で良いよね」

聞きなじみのあるフレーズが佐々木さんから飛び出したところ、つまみにポテトフライを注文した。


辺りを見回してみると金曜日ということもあってか、そこかしこに少し年季の入ったサラリーマンが一週間のうっぷんを積極的に吐き出していた。


「じゃ、二度目の乾杯!」

佐々木さんには吐き出さなければならないうっぷんはきっとないのだろうと思いつつグラスを重ねると、早速ポテトフライも運ばれてきた。

「やっぱり、生ビールはこれくらい冷えてなくっちゃね」とこちらもうっぷんがあるのかはた目にはわからないすずさんが続ける。


「そうだ、佐々木さん、明日映画見に行こうよ。昔香港で見た韓国映画が上映されるようだし」

「あ~、この前言っていたやつね。でも明日は土曜日でしょ。さすがに旦那もいるし私はいいや。しゅんちゃんと行ってきなよ」

「そっか、残念、絶対泣ける映画でお勧めなのに。いつかちゃんと見るんだよ。しゅんちゃんは暇だよね?」

「僕ですか?それなりに忙しいですよ」

「予定あるの?」

「朝起きて、ご飯食べて、掃除して…」

「そんなのいつでもできるじゃない。明日会社の前に13時ね。よろしく」

「じゃ、しゅんちゃん、また感想聞かせてね」


僕には決定権がないようで、ポテトフライを完食する前に、勝手に週末の予定が入っていた。


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