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12月26日
朝から僕たちはすずさんの案内に従い、寺院を中心に観光した。
さすがにすずさんは少し疲れやすくなっているように見えた。
佐々木さんはそんな様子を気にかけつつも、病を知らないことになっていることもあり、いつも以上に率先して動き回っていた。
観光客がよく訪れると聞いていた文武廟で天井に吊り下げられている渦巻き型のお香を眺めたところで一日の観光を終えた。
「ねえ、私たちって、昼間から3人で一緒にいることってあまりなかったよね」
すずさんお勧めの中華料理屋で紹興酒を飲みながら、佐々木さんは言った。
「そういえばそうですね」
僕は適当に相槌をうちながら、本場の広東料理に舌鼓を打っていた。
「2人が結婚しても3人で飲めるのかな」
「3人で飲めるさ」
すずさんは僕の意見を聞くまでもなく当たり前のように答えていた。
「でも、何か目の前でイチャイチャされたらいやだしな」
「じゃ、旦那さん連れて4人で飲めば何も問題ないじゃないですか」
何が問題ないのかよくわからないが、希望のある近未来的な話を膨らませるように、僕は少し話をそらしてみた。
「それは恥ずかしいから嫌」
「恥ずかしいの意味がよくわからないんですけど」
「ま、それも一つの夫婦の形さ」
すずさんは簡潔に話題を閉めた。




