31/45
9月30日
「早速電話しちゃった。時差は1時間しかないから、そっちは12時頃かな?」
すずさんの変わらない大きな声が受話器の向こうから聞こえてきた。
「そうだね。ちょうどシャワーを浴びて、寝る準備をしていたところだね」
「そっか、あの狭いシングルベッドも懐かしいわね。ここではダブルベッドで優雅に寝ているのよ」
「狭いシングルベッドっていうのは余計だけどね」
「まあ良いじゃない、事実なんだから。早速別の女連れ込んでいないでしょうね」
「そんな余裕はないよ」
「余裕の意味が分からないけど」
結局離れていても会話は同じようなものだった。
「早く年末が来ないかな。年末に向けていろいろ探索しておくわ。楽しみにしておいてね」
結び目が外れてしまった糸を再度結びなおすべく、僕たちは1時間くらい年末に何をするか話し合った。
空間としての距離は埋めようがないが、一緒にいることを二人で想像することで、心の距離は埋められる気がした。




