8月20日
平日ではあったもののすずさんが話をしたいというので、仕事が終わってからすずさんの家に寄ることになった。
家にはシチューとサラダが用意されていた。
「レトロトじゃないよ」
すずさんがシチューを作るのにどれだけ手間がかかったかを得意げに話し始めたので耳を傾けつつ、食べ進めた。
「美味しいでしょ?」
「そうだね、でもあまり料理とかしないタイプでしょ?」
「まあね、でもやればできる子なのよ。しゅんちゃんは幸せだね。料理もできてこんなにかわいい子をお嫁さんにできるんだから」
「はい、はい」
「だから、「はい」が多いっていうの」
「でね、私、香港に行っても安心だよね?」
「ん?行くの決まったの?」
「この前話した以前香港でお世話になった人の会社で一人空きが出たんだって。香港に赴任している日本人の家族向けの旅行や福利厚生を手配している会社なんだけど。10月から来れないかって」
急な話に戸惑っていると、すずさんは続けた。
「この前も言った通り、中途半端に帰ってきてしまったし、行こうかどうしようか悩んでいるの。どう思う?」
「そうだね……」
頭を無理やり働かせても話す言葉は最初から決まっていた。
「すずさんらしく、と言えば、やっぱり行くんじゃないの?」
「そうだよね。やっぱりしゅんちゃんはなんだかんだ言っても私のことちゃんと理解しているね」
すずさんは少しはにかみながら微笑んだ。
「でもね、寂しいでしょ」
シチューのおかわりを注いでいるときに、すずさんは少し考え込んで、また話しかけてきた。
「最初から分かっていたことだしね」
「何だか冷たいわね。ちゃんと遊びに来てよね。香港だと近いよ」
「そうだね、香港は行ってみたいと思っていたのでちょうどよいかも」
「ついでみたいに言わないでよ。せっかくだから佐々木さんと一緒に来てよ」
「旦那放っておいて?」
「別に旦那付きでも良いけど、本人が嫌がるだろうね」
香港のおすすめの場所等で盛り上がり、結局、翌日の朝始発で家に帰ることにした。




