1/45
6月14日
「何黙って飲んでんのよ」
僕がその声の発信源に向かって顔を向けると、少し酔っ払った愛くるしい笑顔が目に飛び込んできた。これが僕の彼女の最初の印象だ。
当時、僕は4月から出向という名の人員提供で、勤めている会社の親会社で勤務していた。元々人見知りをする性格の僕は、まだ新しい職場にちゃんと溶け込んでいるわけではなく、少し居心地の悪さを感じている頃だった。
そんな中、職場の年齢の同じくらいの人たちが仕事終わりに飲みに行くということで誘ってもらい、皆が楽し気に会社の愚痴などを話し合っている中、周りの人の会話に合わせつつも、とりあえずひたすらビールを飲んでいる、少し周りから浮いた姿が彼女の視界に入ったようだ。